サンリオSF文庫価格表

2024年2月27日現在のものです。

下北沢にある小さな古本屋における値段であることをご理解ください。

古本の価格は、状態や各書店の判断により、かなり大きな幅があります。

 

サンリオSF文庫
01-A ビッグ・タイム フリッツ・ライバー 500
01-B 妻という名の魔女たち フリッツ・ライバー 500
01-C バケツ一杯の空気 フリッツ・ライバー 2000
02-A 辺境の惑星 アーシュラ・K・ル=グイン 300
02-B 天のろくろ アーシュラ・K・ル=グイン 1500
02-B 天のろくろ(カバー違い) 1500
02-C ロカノンの世界 アーシュラ・K・ル=グイン 300
02-D 幻影の都市 アーシュラ・K・ル=グイン 500
02-E マラフレナ(上)
02-F マラフレナ(下) 上下2000
02-G コンパス・ローズ アーシュラ・K・ル=グイン 1000
03-A 時は乱れて フィリップ・K・ディック 500
03-A 時は乱れて(新装版) 1000
03-B 死の迷宮 500
03-B 死の迷宮(カバー違い)500
03-C 暗闇のスキャナー 300
03-D 流れよ我が涙、と警官は言った 300
03-E ヴァリス 500
03-F 聖なる侵入 500
03-G 怒りの神 フィリップ・K・ディックロジャー・ゼラズニイ 1200
03-H 銀河の壺直し 500
03-I ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック1 300
03-J ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック2 300
03-K 最後から二番目の真実 500
03-L ティモシー・アーチャーの転生 800
03-M ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック3 500
03-N ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック4 500
03-O テレポートされざる者 500
03-P あなたを合成します フィリップ・K・ディック 800
03-Q シミュラクラ 500
03-R 虚空の眼 500
03-S アルファ系衛星の氏族たち 500
03-T ブラッドマネー博士 500
03-U アルベマス 1500
04-A ノヴァ急報 ウイリアム・S・バロウズ 1500
04-B 爆発した切符 ウイリアム・S・バロウズ 5000
05-A レベル・セブン モルデカイ・ロシュワルト 500
06-A 万華鏡 レイ・ブラッドベリ 500
06-A 万華鏡(新装版) レイ・ブラッドベリ 500
06-B ブラッドベリは歌う 500
07-A カインの市 ケイト・ウイルヘルム 500
07-B クルーイストン実験 ケイト・ウイルヘルム 1000
07-C 杜松の時 ケイト・ウイルヘルム 1000
07-D 鳥の歌いまは絶え ケイト・ウイルヘルム 1000
08-A 妖精物語からSFへ ロジェ・カイヨワ 1000
09-A ステンレス・スチール・ラット ハリイ・ハリスン 200
09-B 囚われの世界 ハリイ・ハリスン 300
09-C ステンレス・スチール・ラットの復讐 200
09-D ステンレス・スチール・ラット世界を救う 200
09-E 大西洋横断トンネル、万歳 ハリイ・ハリスン 500
09-F ステンレス・スチール・ラット諸君を求む 200
09-G ステンレス・スチール・ラット大統領に 200
10-A 大地への下降 ロバート・シルヴァーバーグ 500
10-B 確率人間 ロバート・シルヴァーバーグ 800
10-C 内死 ロバート・シルヴァーバーグ 1000
10-D 内側の世界 ロバート・シルヴァーバーグ 1000
11-A  ザ・ベスト・オブ・サキ 500
11-B ザ・ベスト・オブ・サキ2 500
12-A 解放された世界 H・G・ウェルズ 500
12-B 神々のような人びと H・G・ウエルズ 1500
12-C ベスト・オブ・H・G・ウエルズ 800
13-A 旅に出る時ほほえみを ナターリャ・ソコローワ 1000
14-A 猿とエッセンス オルダス・ハックスリイ 1000
15-A 口に出せない習慣、奇妙な行為 ドナルド・バーセルミ 800
15-B 罪深き愉しみ ドナルド・バーセルミ 800
15-C アマチュアたち ドナルド・バーセルミ 800
16-A 失われた部屋 フィッツ=ジェイムズ・オブライエン 800
17-A クローン リチャード・カウパー 500
17-B 大洪水伝説 リチャード・カウパー 500
18-A 馬的思考 アルフレッド・ジャリ 1500
19-A 天国の顔 ブライアン・M・ステイブルフォード 500
19-B 地獄の幻影 タルタロスの世界2 500
19-C 無限の煌き タルタロスの世界3 800
19-D ハルシオンローレライ(宇宙飛行士グレンジャーの冒険) ブライアン・M・ステイブルフォード 200
19-E ラプソディ・イン・ブラック(宇宙飛行士グレンジャーの冒険) 200
19-F プロミスト・ランド(宇宙飛行士グレンジャーの冒険) 200
19-G パラダイス・ゲーム(宇宙飛行士グレンジャーの冒険) 200
19-H フェンリス・デストロイヤー(宇宙飛行士グレンジャーの冒険) 300
19-I スワン・ソング(宇宙飛行士グレンジャーの冒険) 300
20-A ムーンスター・オデッセイ デイヴィッド・ジェロルド 500
20-B H・A・R・L・I・E デイヴィッド・ジェロルド 1000
21-A バロック協奏曲 アレッホ・カルペンティエール 500
22-A 334 トマス・M・ディッシュ 2000
22-B 歌の翼に トマス・M・ディッシュ 500
22-C キャンプ・コンセントレーション トマスMデイッシュ 1500
23-A ウルフヘッド チャールス・L・ハーネス 500
24-A 時は準宝石の螺旋のように サミュエル・R・ディレーニ 1000
24-B エンパイア・スター サミュエル・R・ディレーニ 1500
24-C アプターの宝石 サミュエル・R・ディレーニ 500
25-A 五月革命’86 ジャック・ステルンベール 800
26-A 緑色遺伝子 ピーター・ディキンスン 1500
26-B キングとジョーカー ピーター・ディキンスン 1000
26-C 生ける屍 ピーター・ディキンスン 5000
27-A ナボコフの一ダース ウラジミール・ナボコフ 500
28-A 枯草熱 スタニスワフ・レム 800
28-B 天の声 スタニワフ・レム 800
28-C 浴槽で発見された手記 3000
29-A 楽園の崩壊 ジョーン・D・ヴィンジ 500
30-A 蛾 ロザリンド・アッシュ 500
30-B 嵐の通夜 ロザリンド・アッシュ 1500
31-A 暗黒のすべての色(ダーゼック・シリーズ) ロイド・ビッグルJr. 300
31-B 暗黒の監視人(ダーゼック・シリーズ) 300
31-C この暗黒化する宇宙(ダーゼック・シリーズ) 300
31-D 沈黙は死の匂い(ダーゼック・シリーズ) 300
31-E 時の復讐(ダーゼック・シリーズ) 300
32-A ラーオ博士のサーカス チャールズ・G・フィニー 500
33-A 新しいSF ラングドン・ジョーンズ編 800
33-B レンズの眼 ラングドン・ジョーンズ 800
34-A 女の千年王国 ヴァージニア・キッド編  500
35-A 飛行する少年 ディディエ・マルタン 800
36-A 不安定な時間 ミシェル・ジュリ 800
36-B 熱い太陽、深海魚 ミシェル・ジュリ 9000
37-A 迷宮の神 コリン・ウィルスン 300
37-B ラスプーチン コリン・ウィルスン 300
38-A 影のジャック ロジャー・ゼラズニイ 500
38-B わが名はレジオン ロジャー・ゼラズニイ 500
38-C ロードマークス ロジャー・ゼラズニイ 800
39-A コンピュータコネクション アルフレッド・ベスタ― 1500
40-A バドティーズ大先生のラブ・コーラス ウイリアム・コッツウィンクル 1000
41-A 愛しき人類 フィリップ・キュルヴァル 500
42-A アルクトゥールスへの旅 デイヴィッド・リンゼイ 800
42-B 憑かれた女 デイヴィッド・リンゼイ 1500
43-A 伝授者 クリストファー・プリースト 1500
43-B 逆転世界 クリストファー・プリースト 500
43-C アンティシペイション(アンソロジー) 500
44-A 灰と星(オメガ・ポイント三部作) ジョージ・ゼブロウスキー 200
44-B オメガ・ポイント(オメガ・ポイント三部作) ジョージ・ゼブロウスキー 3000
45-A ブロントメク! マイクル・コニイ 500
45-B ハローサマー、グッドバイ マイクル・コニイ 1500
45-C 冬の子供たち マイクル・コニイ 2000
45-D カリスマ マイクル・コニイ 3000
46-A 猫城記 老舎 4000
47-A 手で育てられた少年 ブライアン・W・オールディス 500
47-B 兵士は立てり ブライアン・W・オールディス 1000
47-C 世界Aの報告書 ブライアン・W・オールディス 800
47-D マラキア・タペストリ ブライアン・W・オールディス 800
47-E 突然の目覚め ブライアン・W・オールディス 1500
48-A ビアドのローマの女たち アントニイ・バージェス 800
48-B アバ、アバ アントニイ・バージェス 1500
48-C どこまで行けばお茶の時間 アントニイ・バージェス 500
49-A 殉教者聖ペテロの会 ジョン・ソール 500
50-A どこからなりとも月にひとつの卵 マーガレット・センクレア 2000
51-A コスミック・レイプ シオドア・スタージョン 2000
51-B スタージョンは健在なり シオドア・スタージョン 3000
52-A パステル都市 M・ジョン・ハリスン 800
53-A 二重の影 フレデリックターナー 800
54-A この狂乱するサーカス ピエール・プロ 1500
55-A 深き森は悪魔のにおい キリル・ボンフィリオリ 1500
56-A 愛の渇き アンナ・カヴァン 2500
56-B ジュリアとバズーカ アンナ・カヴァン 2500
56-C 氷 アンナ・カヴァン  1000
57-A メデューサの子ら ボブ・ショウ 500
57-B 去りにし日々、今ひとたびの幻 ボブ・ショウ 4000
57-C おれは誰だ? ボブ・ショウ 500
57-D 眩暈 ボブ・ショウ 2000
57-E 見知らぬ者たちの船 ボブ・ショウ 500
58-A スリランカから世界を眺めて アーサー・C・クラーク 500
59-A 夢幻会社 J・G・バラード 500
59-B ザ・ベスト・オブ・J・G・バラード1 800
60-A 2018年キング・コング・ブルース サム・J・ルンドヴァル 500
61-A はざまの世界 ノーマン・スピンラッド 1200
62-A フィメール・マン ジョアナ・ラス 2500
63-A 沈黙の声 トム・リーミイ 500
63-B サンディエゴ・ライトフット・スー トム・リーミイ 1500
64-A 異星の人 ガードナー・ゾア 500
65-A マイロン ゴア・ヴィダル 1000
66-A フレドリック・ブラウン傑作集 ロバート・ブロック編 1200
67-A アースウインド ロバート・ホールドストック 500
67-B リードワールド ロバート・ホールドストック 500
68-A 去勢 キングズリイ・エイミス 1500
69-A ジョン・コリア奇談集 500
70-A  ベストSF1 ハリスン&オールディス編 500
71-A マーシャン・インカ イアン・ワトスン 500
71-B ヨナ・キット イアン・ワトスン 800
72-A 夢の蛇 ヴォンダ・マッキタイア 300
72-B 脱出を待つ者 ヴォンダ・マッキンタイア 500
73-A ドロシアの虎 キット・リード 1200
74-A 人生ゲーム D・G・コンプトン 1000
75-A 着飾った捕食家たち ピエール・クリスタン 1000
76-A マイクロノーツ ゴードン・ウイリアムズ 300
77-A シンディック シリル・M・コーンブルース 500
78-A 最新版SFガイドマップ 入門・歴史編 300
78-B 最新版SFガイドマップ 作家名鑑編上 500
78-C  最新版SFガイドマップ 作家名鑑編下 800
79-A 奪われた惑星(バトルフィールド・アース1) ロン・ハバード 200
79-B 人類からの使者(バトルフィールド・アース2) 200
79-C テレポーテーション作戦(バトルフィールド・アース3) 200
79-D 侵略惑星サイクロの謎(バトルフィールド・アース4) 200
79-E 宇宙戦艦キャプチュア(バトルフィールド・アース5) 200
79-F 地球よ、銀河に甦れ(バトルフィールド・アース6) 200
80-A スラデック言語遊戯短編集 ジョン・スラデック 1000
81-A 老いたる霊長類の星への讃歌 ジェイムズ・ティプトリーJr. 300
82-A V(上) A・C・クリスピン 300
82-B V(下) A・C・クリスピン 300
83-A 悪魔は死んだ R・A・ラファティ 5000
83-B イースターワインに到着 R・A・ラファティ 4000
84-A ホースクラン登場(ホースクラン1) ロバート・アダムス 200
84-B ホースクランの剣(ホースクラン2) 200
84-C ホースクランの復讐(ホースクラン3)500
85-A パヴァーヌ キース・ロバーツ 500

総点数 200点

金額総計 189600

誕生日 意味があるとは 思わぬが

つい先日誕生日を迎えたのだが、まぁそれはいい。
なんでいいのかと言うと、私は誕生日のことを「生まれたことを周りの人間に感謝する日」と定義していて、誕生日だからという理由で他人様からお祝いしてもらうというのは、「自分で自分の稼ぎを作ることもできない子供が、誕生日をダシに何かを買ってもらうという悪しき習慣を引きづっているにすぎない」と断罪している立場だからだ。
しかし、私の理屈を突き詰めていくと、私は誕生日のたびにお世話になっている方々に感謝を述べたり、食事をおごったりしなくてはいけなくて面倒なので、黙っているというわけだ。もちろん心の中では大いに感謝している。なんだ、見えんのか、俺の心の内側が。エスパーか、さとりか、言いたいことなんて言うな。
それでも、中西さんからいただいたケーキはとても美味しかったし、南山さんからもらったゴーフルとおせんべいもとても美味しかったから、誕生日は別として、何かをもらうことは嬉しいことだと思う。いつもありがとうございます。

そんなわけで、7月14日になってしまったが、抱負が実はある。
これからの二年は「どうやって負けていくのか」をきちんと生きて行きたいと思う。
ちょこちょこ書いているから覚えている方もいるかもしれないが、私は古本屋を営んでいる。そして、私がこの仕事を気に入っていることの一つに、この仕事が「いままさに滅びようとしている」点がある。今はもう一体誰が古本を読んでいるのだろう、と思う売上の日も増えて、こういう日は今後どんどん増えていくだろう。ただ、先の誕生日は当店始まって以来の最高の売上で(とはいえあなたの想像よりは低いと思う)、別に誕生日を宣伝しているわけではないので、こういうのは神様の皮肉というやつで、神様とかほんとむかつく。ホストの誕生会か。でもまぁ、売上はありがたい。
私は今まさに滅びようとしている世界で、「決して、滅びない!」とか「まだまだ大丈夫!」とか「俺は死んだ!」とか、つばを飛ばしながら叫んでいる人たちに、心の中で「フェイスガードしろよ」とか思いながら静かにマスクをして座っている古本村の住人なわけだが、アラフィフになった今、若い子(私よりは)に「こうやって負ければいいんだよ」ということを正しく教えてあげられたらいいな、と思っている。勝とうが負けようが、人は生きていかなければならない。そして一度きりの人生だから、それをどう台無しにしようとその人の勝手なんだけれど、私は勝とうが負けようが楽しくやっていかなければならないと考えている人間なので、まぁ負け面をキレイに力を尽くしていきたいと思っている。職業人として。

その第一歩としてまず思いついたのだが、何はともあれ、姿勢を良くしよう。おっさんの猫背は少しみっともないから。

言葉と内面

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/president.jp/articles/-/36855
上野千鶴子「人はなぜ不倫をしないのか。私には信じられない」 性的自由を手放すなんて恐ろしい | PRESIDENT Onlie)

いつもながら元記事のタイトルが、「とてもインターネットらしい」読まない人ホイホイで、内容とうまく接続していない点で「あいかわらず」なんだけれども、
それはまぁ別として。
この記事に対するコメントで「規範を内面化」しているという言葉を目にして、思わず関心した。うまいこと言うなぁ。
私の解釈では、ようするに「頭の固いお馬鹿さん」ということなのだが、この言い方ならば巷によくいる「頭の良い人たち」にも届きそうだ。苦い薬を胃袋まで届けるカプセルを彷彿とさせる。ググってみると、心理学の用語らしいのだが、さすがアカデミズムは洗練された言葉を使うもんだ。(英単語ではinternalizationとのこと)

「~が内面化している」という言葉の使い方は、「密接している」という意味で時々使っていたのだが、
例えば「言葉が内面化している」という場合は、その人の内面としゃべっていることに齟齬が極端に少なそう、という感じで、
このたび、少しだけ調べて用語として私の中にも内面化した気がする。

「言葉が内面化している例」として一つあげたい動画。
https://www.youtube.com/watch?v=ZOZah217K1M
(豪の部屋 ゲスト:頓知気さきな 2020年6月2日)
有村架純さんと長澤まさみさんを足して二で割ったようなすごい可愛いらしい女性なのだが、そのことよりも「言葉が内面化しすぎてることがちょっと怖い」と思ってしまった。思考と発声している言葉がものすごくダイレクトな感じが。技術とか訓練とか、そういうものではないなにかを感じる。伝わらなかったらごめん。

最後に、一応礼儀として元の記事についての感想を述べておくと、
上野千鶴子さんのご説ごもっとも以外のことは思いつかない。
まぁ読めば大概な人はそうだと思う。上野さんは、おそらく読者のほとんど多くの人間よりも頭を使う能力に長け、その上このような問題に長く時間を費やしてきている。自分よりも能力に長けた人間が、自分より多くの時間を費やしてきたことに対して、そこに何か付け加えることができると思うほど、私は自分のことを信用していない。
そして一応、この記事がSB新書から出ている『人はなぜ不倫をするのか』からの再編集であることを付け加えておくよ。

「今の若い者」は、「照れ隠し」が分からないというテキストを読む。

ネットですれ違っただけのダボラなのだけれど、

私は「照れ隠しが分からない」というのは最高に若者だし、最高に「今の若い者」だと思うから、この意見が好きだ。

私の周りには若者はいないから、遠慮なく好きになれるし、悠々と支持することができる。もちろん、若者のことを。

最近は、「チリ交列伝」(伊藤昭久 ちくま文庫)、「古本屋おやじ」(中山信如 ちくま文庫)と読み進めていた。理由は単純で、ちくま文庫の「山」を買ってその中に入っていたもので読もうと思ったものを適当につまんだからだ。
(「山」とは古本屋用語で、とにかくたくさんの「本口」が集まった品物だと考えていただければ。「本口」は、20冊から30冊の本を紐で縛ったものを「一本」と呼び、それを積み上げたもの。5本あれば5本口と呼ぶ)
二冊とも古本屋本なのだが、「チリ交列伝」がなぜ古本屋本となるかは説明がいるかもしれない。「チリ交」は「チリ紙交換」の略で、チリ紙交換と古本屋は縁が深い。理由はぼんやりと想像がつくことと思うが、まぁ新聞やダンボールも紙なら、本や雑誌も紙というわけだ。そう言われても分からないようなら、周りの物知りな人に聞いてみよう。
著者の伊藤さんはかつてチリ紙交換の元締めをやっていて、後に出版もやったりしたようだが、最後には古本屋専業となった方だ。背の高いいかり肩で、「かわいい」と「おっかない」のどちらかと言えば、どう見ても「おっかない」寄りの人だった。なぜそんなことを知っているのかと言えば、一緒に五反田や渋谷で即売会をやっていたことがあるからだ。「チリ交出身」という出自もあって、武勇伝のたぐいも聞く人ではあったが、私は特に怖い思いをしたこともなかった。私と顔を合わせるたびに「明日さん、明日さんには明日はあるのかい」と嬉しそうに話しかけてくるのが、なんだかかわいかったという記憶がある。伊藤さんが亡くなってから大分たつ。店の品物の片付けを手伝った記憶があるのだが、あれは何年前のことだったか。

「自分のお金を出して買った本を、自分で読むことが出来るのは古本屋の役得なのだが」と書き出したのだが、そんなの当たり前なことに気が付いた。頭にきた。
おまけに、古本屋が古本屋の本を読むのは、あまりにばかばかしいのではないかといういことに思いいたって、発狂しそうだ。面白くなくはない。いや、面白いのだろう。文庫になるくらいだし。ただ得るものはない。なかった。
とりあえず、後見返に鉛筆で「100」と書いて店頭のワゴンに出した。これは復讐ではない、適価だ。伊藤さん中山さんごめん。売れなかったら、そのなんだ。もっとごめん。

二冊は片付いたので、続いて「出版業界最底辺日記」(塩山芳明 ちくま文庫)を読み始める。副題は「エロ漫画編集者『嫌われ者の記』」。編集者のまえがきに、これを書いた人は「エロ漫画下請け編集者」であるとあって、エロ漫画雑誌にも下請けというのがあることを始めて知る。
読み始めると、漫画とは随分と長い付き合いなはずなのだが、出てくる作家さんの名前が全くわからない。「あだちケン」「真弓大介」「くらむぼん」「阿宮美亜」…… いやぁ、すいません不勉強です。時代は「宮崎勤事件」後。いわゆる「エロ漫画」が、「有害図書指定」によって本屋の隅に追いやられ、コンビニから追放され、という時期。そんなタイミングの「エロ漫画下請編集者」の日記という体裁なのだが、なんともまぁ大変に面白い。登場人物は全く分からないのだが、文章の全てが生き生きとしていて、間違いなく書かれた時代を照らしている感じがする。こういうのが読みたかったんだよなぁと思う。いつだって、こういうのが読みたいのだ。先が楽しみだ。

田中小実昌の『コミマサ・シネマ・ツアー』を読んでいて、本質的にこの人の方が、色川武大より上だなと直感。

という一文が出てきて、思わず「ほう」と声が出る。

1990年11月×日
コラムを連載予定の現役女子高生、菜摘ひかる女史が下描きを持って来社。

菜摘ひかる! 女子高生! 「自らの人生を赤裸々に語る女流」というジャンルがあるかどうかはともかく、そういう感じのものにあまり興味が持てないでいたのだが、なぜか菜摘ひかる卯月妙子が好きだったことを思い出した。

何とあの恐怖の都条例が~にきちまったのだと。単行本が指定されたのは前代未聞。しかも、3か月も前に出た物だ。雑誌同様の基準だとすれば、単行本も“18歳未満の方々には販売出来ません”という、腰巻きを付けねばならなくなるが……。

これを読むと、エロ漫画には「都の条例」による規制があったこと、雑誌には「18歳未満販売禁止」の腰巻が巻いてあったこと、になる。テキストは1991年のもの。およそ30年前のことなのだが、高校生の自分。全く記憶にない。

渋谷駅、山手線を降りたところに「5Gってドラえもん?」というソフトバンクのポスターが張ってあった。「違うんじゃないかな」と思う。

令和の古本屋(ほ)ほめろやほめろ

月曜日、下北沢のお店は定休日なのだが、もちろん市場はお休みではない。月曜日は「中央市」という名前の市場があって、主に一般書を扱う会である。一般的に「本」と言ってイメージされるものは、大体ある感じだ。当店の月曜日定休は、この中央市に合わせて決まったもので、「月曜日は市場に行く日」ということに決めて、なるべくなら品物を買いに行くことにしている。

私は今は関わってはいないのだが、この市会の「経営員」だったことがあり、いわば、というか実際にOBだ。緊急事態宣言後、初めての市会ということもあるのか、昨日は出品量がとても多かった。中央市は、本部会館の3フロア―を使って開催されることが多いのだが、今回は地下のフロアーも解放してまるまる1フロアー増えていた。
理由は端折るが、市場の荷物の片づけは量が1.5倍になると、その手間は2倍どころでは済まなくなる。そこで起こるであろう苦労があまりにも容易く想像できたので、昨日はお手伝いをさせてもらうことにした。
古本屋の仕事は力仕事だ。本は一冊ずつ市場に並ぶわけではなく、おおよそ20~25冊程度で縛って、これを「1本」と呼ぶ。つまり、100冊なら4本か5本に縛って積み上げて並べ、これを「1点」と呼び、1点単位で買った売ったを行う。
買われた荷物は、最終的には「名寄せ」される。複数「点」品物を買った人がいれば、その人の荷物をまとめるという作業だ。これが意外と大変な作業で、例えば5本口の荷物を名寄せするために移動しようとすれば、一本はおおよそ12~15㎏くらいあるから、延べ60㎏の荷物を移動することになる。
移動は台車で行うとしても、荷物の上げ下げだけでも結構な運動となる。ようするに、疲れる。

普段は19時頃には終わっている作業が、昨日は20時半くらいまでかかった。朝は10時から始まっているはずだから、経営員の人たちは10時間以上働いていることになる。なんとも気の毒だが、その分ビールはおいしかろう。。
私個人としては、休みあがりの割にはなんとなく動けていたし、キャリアが生きていた感じがして鼻高々だった。誰もほめてくれないけど。翌日に筋肉痛が出ることもなく、1カ月半かけて体を整備したことが生きたのかもしれない。もしくは、40を過ぎると筋肉痛が出るのは明日なのかもしれない。
そういえば、昨日色々な本屋をリサーチしたのだが、一カ月以上の間自粛と称して何もしていなかった人は誰もいないらしい、ということが判明した。古本屋のくせに、みんなマジメなんだなあと関心する一方、自分はなんだか色々と向いてないなぁと思った。

令和の古本屋(に)日曜日のるらら

金、土、日と、店を再開して三日目。やはり、20時に店を閉めて家に帰ると疲労を感じてバタリと寝てしまう。まぁ、まるまる一か月半家にいて何もしていなかったわけだから、仕事量ゼロと比べれば当然の話で、なにが「やはり」なのかと思わないでもない。しかし、つくづく思うのだが、仕事って体に悪くないか。やらないにこしたことは無いような気がするのだが。

そんな店主の気持ちはもちろん知らないだろうけれど、金曜日と土曜日はほどほどに。そして、今日日曜日はたくさんのお客さんに来店いただけた。多いと言っても、もちろん「うちの店にとっては」という但し書きは付くわけだが、それでも「まぁ誰も来ないんだろうなぁ」という心配は、とりあえずは杞憂に終わったわけだ。本当に感謝しかない。
いつもいらっしゃっていただける方は、この三日間で大体お見掛けしたような気がする。何人かまだ言葉を交わしていない方がいて、それは少し心配ではあるものの、平日になれば人混みを避けてひょっこりと顔を出していただけるものと思う。
そして、もちろんいつもと違う顔ぶれの方もたくさんいらっしゃった。また機会があれば、立ち寄ってもらえれば幸いだ。

そんな風にご来店いただいて、とても申し訳ない気持ちになったことがあって。
うちの店は、入り口前のたたきにワゴンを出して、そこに均一の本を出しているのだが、そこの本が緊急事態宣言の時のままだった。均一というのは、私の考えるところでは、古本屋の足腰といってもよい部分で、とにかくよく使わなければ、結局のところ全体が衰えていくものと考えている。もちろんこれは私の思い込みなのだが、まぁ店の一番最初に目に入る顔でもあるし、ここに好みのものがあればお客さんは嬉しいに決まっているし、お客さんが嬉しければ私も嬉しいのだから、ここはちゃんと準備をするべきなのだ。が、まぁ市場も開催されていなかったし、仕入もできなかったという言い訳はあるし、申し訳程度には本を入れたのだが、荒れた棚を見て残念な思いをさせてしまったとすれば、謝るほかない。ごめんね。
それでもなんとか本を見つけて買っていただいたお客さんもいて、そういう時にはなんというか、頭が下がる思いだ。本を好きでいてくれて、ありがとうと、腹の底から思う。
仕事は体に悪いと思うのだが、こういうことがあると、明日からもがんばろうかな、という気になって、これを書いている。起きたら忘れているかもしれないけれど、嬉しい気持ちは残っているだろうから、今日はよく眠れるんじゃないだろうか。