【「これアニメ化しないんだ?」とは商業上の理由で30代から50代に向け、80年代や90年代の作品がアニメ化され続けるもどかしさに対する、ささやかな抵抗のシリーズです】
いつから現実にコントのようなものが侵食し、みんな受け入れてしまっているのでしょうか?
たとえば先日の参院選選挙がそうです。選挙の争点として前首相の暗殺など様々なイシューがありましたが、憂鬱になったのはシンプルに新興の政党やその候補者たちです。NHK党は言うまでもなく、スマイル党や核融合党といった政党が並ぶ姿は壮観であり、「誰が存在を許したのか」という虚しさばかりが漂っていました。
コメディなら笑わせる意図があるのでしょうが(僕は笑いませんが)、残念ながら現実です。誰も排斥せず見ないようにしているうちに存在を許されたらしい(僕は許していませんが)。
そのあいだに異様な現実が構築されていく。Youtubeでの芸能界の内幕語りで知名度を広めた東谷義和氏がNHK党から出馬し、当選を果たし、例のカタカナの芸名で国会の活動を認められたことを、私たちは現実として捉えなければならないのです。現与党が統一教会との関連が明らかにもかかわらず、メディアにて「知らないと強弁していればそのうちにこの問題は沈下するであろう」という姿をさらすのを現実として直視しなくてはならないのです。
そんないま『第三世界の長井』を読み返すと、初読のときよりスッと内容が入る。「この漫画は異常な事態を検証もせず、放置した末の現実感がなにかを描いていたんじゃないか」そう思いました。しかも作品が題材としたものまで含めると、あまりに予見的でゾッとします。
ギャグマンガ家・ながいけんによる本作は、笑いを描いているようでまったく笑えないリアリズムを描いている。2009年に連載が開始されてから長期に渡る執筆のなかで、現実が異様なかたちで侵食されてゆく様を自覚的に描いていると思います。
現在は打ち切りにより中断されているのですが、いまこそ再開すべき作品でしょう。おそらく本作をよく知る方も、いま読んだほうが理解できる作品でしょう。
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