2024年4月21日日曜日

怪老人日乗:4月21日(日)

そんなわけで昨日は終日お休み。といっても近所をバイクで走り回ってイオンとかブックオフに行くという「ザ・郊外マン」というキン肉マンの超人のような暮らしをしてしまった。これではイカンというわけで、午後は本を読んだり、原稿を書いたり。

結局原稿書いてるんやないけ、という気もするがこっちは書き下ろしの作業なので、仕事というより趣味に近い。こういう風に作業日を区切らないと、いつまで経っても書き下ろしが完成しないぞ……ヤバいぞ……という気がしている。が、X上で読者の方と編集さんが「いつ出るんでしょうか」「朝宮さんもお忙しいので期待せずに待ってください」みたいな優しいやり取りをしていて、うう、無能ぶりがバレている……という風になりましたので、奮起しました。がんばりたいと思います。

そんなわけで今日も3時に起きて書き下ろしやる。こういうことするとまた目眩が出そうだけど、まあ発売まではしょうがないでしょう。朝ご飯たべて今日はふつうに原稿仕事。4時間やっていたらお昼、時間ないので助六弁当的なものを買ってきて食べました。えどの人です。コーヒーで流し込みました。ブラジルの人です。

町内会の会議、おれだけ先に帰っていよということになり、一足先に退散したのだが、あれは何だったんだろう。町内会長が「この名簿には、すでにお亡くなりになった方もたくさん載っておられます」と言っていたが、あの意味するところはみんなすでに死んでいて、私だけが死者の国に迷い込んでいた……という名作映画『2000人の狂人』みたいな話なのだろうか。まあ1年間のことだし、よく分かんなくてもなんとかなるだろう、と思ってそそくさと帰ってきましたが。

でこれからさらに4時間働いて、趣味の残り時間は書き下ろしにあてます。せっかく出てきたので最近の仕事を紹介。『ダ・ヴィンチ』5月号に京極夏彦さんと澤村伊智さんのインタビュー記事。『ムー』5月号に音楽霊媒ローズマリー・ブラウンの紹介記事を執筆。ディスクユニオンから出たCD『実録!世界オカルト音楽大全』vol.1とvol.2にオカルト史的なライナーノーツを執筆。あとは何だろ。ウェブにも相変わらずいろいろ書いていますが、しかしウェブの記事ってさ、モノが残るわけじゃないし、サイトが閉鎖されたら消えるのであろうし、なんだかむなしいですねえ。ホラーワールド渉猟もどっかで本にしてくんないかな。




というわけでTレックス聴きながら日記をつけました。『銀河系よりの使者』は秋間経夫さんがおっしゃるようにややオーバーワーク気味で、Tレックスらしいタイトさがないのだが、しかし「オール・アローン」とか華やかさと寂しさを兼ね備えた佳曲もあるし、やっぱりTレックスはどのアルバムもいいな。若い頃は洋楽に詳しい人になりたいなあなどと夢のようなことを思ったりしましたが、結局Tレックスだけ聴けていればいいやという気もします。そのくらい好き。無意味で可愛らしくて意味不明で幼稚で異星的。

というわけで先日、エゲレスからTレックスのオフィシャルTシャツを通販してしまった。届いたらやけに生地が薄くて不安だが、これがボラン節だと思って着ることにします。あーあああー。みんなも聴いてください、Tレックス。私のワニの絵のルーツは杉浦茂とTレックスだと思います。




2024年4月20日土曜日

怪老人日乗:4月20日(土)

ドドドドーン。土曜日です。ベートーベンの名曲「土曜日」とともにお送りいたします。南無軍荼利明王。

さてしばらく、どころか1か月も日記をつけていなかったけれども、この間何があったのか、人類が誕生し、恐竜が繁栄し、宇宙戦争が発生し、火星人がスーパーで餃子を売っていた。そんなこともあったわねえ……。という風に脱線していてはキリがないです、霧がないというのは帝都ロンドンの名物ですよ、ロンドン名物「人肉倫敦塔」でさあ、へっへっへ。

という風に脱線していては終わりが見えないので進めますが(久しぶりに日記が書けて嬉しいらしい)ええとですね、この間、体調を崩していたりしましたよね。そうそう。ええと前に予定が詰まっていてヤバい、どうしよう、みたいなことを書きました(前回の日記参照)。それで一日中ずーっと仕事をしていてですね、取材があって、原稿締め切りがあって、打ち合わせがあって、校了があって、みたいな日々を送っていまして。そしたら4月2日(火)の朝、起き上がれないほどの目眩を経験し、うわああ、なんだこれはとなりました。

結局その日もヤバい解説の締め切りがあったのですが、どうにもならなくなりまして、一日寝ていたのですがよくならず。結局、その日の夕方病院に行ったのだったかな。かかりつけの耳鼻科があって、そこで検査してもらい、まあ耳からくる目眩ではないかと。私はもともと右耳が中耳炎なので、それで子供の時から目眩にはなりがちだったのです。しかし今回はそれを大きくうわまわる規模で(規模っていうのもおかしな言い方だが)、寝ていてもぐわんぐわん回るわけですよ。

病院に行くのも一苦労だったのだが、それでもなんとか這いずるように行きまして、目眩の薬を出してもらってその日は就眠。これという原因は分からなかったのだが、後々ネットなどで見てみると、疲れとかストレスとか加齢とかで目眩は出てしまうようで、まあすべて当てはまっているのでそういう感じだったのであろう(だから病院の先生も特に「これこれが原因」という話はしなかったのであろう)。

しかしカレンダーを見てみると翌日3日には午前からZoom取材、4日には対面取材で文春に出かけているので、本気で寝ていたのは2日だけだったのだね。しかしこれによって原稿の進行はだいぶ滞りまして、でも仕方ないよなあ、とも思いましたね。

社労士をしている友人が過労死ラインというのを教えてくれて、それを計算してみると余裕で到達しているどころかぽっくりいってもおかしくない危険域だったので、まあ寝てろという体のサインだったのでありましょう。その友人と相談しまして、1日の労働時間をタイムカードのようにきちんと管理し、休日も週一で入れるようにして今日までやっていますが(今日もそんなわけで休日)これがずいぶん案配がいい。

体も楽ですが、それより気持ちが楽ですね。これまで起きている間はずっと仕事しないと、仕事しないと間に合わないヨオ、という追いまくられる気持ちになったのですが、今では「今日はここまでで終わり!あとは知らん!本読む!」みたいな切り替えができるようになったので、すごくいいことだなと思っています。

自宅仕事のフリーランスは出勤があるわけではないので、ついだらだらと仕事してしまいがちですし、特に私は趣味と仕事の区別がほぼないようなものなので、これまで起きている時間がすべて仕事になっていましたが、これはよくなかったですね。社労士の友人(湯魔シャーマンJ)に感謝。ちなみに湯魔シャーマンJとは「子供の王国」というバンドをやっていて、私は「メガロQ」という芸名を名乗っておりました。

この間にあったことをもうちょっと書きますと、3月の末にはカメラマンの有村蓮さんに写真を撮っていただきました。これは有村さんのご厚意で、「ライターさんは著者近影がないと思うので」と撮影会をしてくださったんですね。有村さんのスタジオに行って、ストロボを焚いて、レフ板を立てて、撮ってもらってきました。まあ元が頓珍漢なので、伸びしろはたかが知れているのですが、それでも有村さんの素晴らしい腕、なんとなく知的に、いい感じに見えるような気がして、プロはすげえ、と思いました。







Xのアイコンもその日撮影していただいた稲川淳二ポーズの写真ですが、しかしあれを稲川淳二のポーズだと分かるのは怪談ファンだけのような気もし(当日撮影に同席していたアシスタントの女性も「???この人、いきなりテンション高く変な表情して何……?」という感じだった気がします)、大丈夫かなあ、コワいなあ、コワいなあと思っております。あれは稲川淳二のポーズです。






あとはですね、同じく3月末には両親が上京してきまして家族で久しぶりに集合しました。弟も東京に住んでいるんですが、あまり会う機会がなく。会ったら顔がそっくりになっていて、うわ、おれが向こうからくる、と思いました。

4月になってからはゆるゆると、というわけでもないけど粛々と原稿を進め、文春砲を食らったりもしながら(週刊文春の取材を受けた)今日まで生きてきましたが、そうこうしてたら書き下ろしのデッドラインも迫っており、休日の土曜日こそ書き下ろしやんないとなあ、と思っております。でも映画なんかも観たいし、キングの『ビリー・サマーズ』も読みたいしね。

ああ、近況といえば長年文藝春秋のキング番であったNさんと新担当のTさんとお食事をしまして、お肉などを食べながらhorrorの話をしてきました。ジェームズ・ハーバートの鼠ホラーとかショーン・ハトスンのなめくじホラーとか。そういう話です。楽しうございました。

2024年3月21日木曜日

怪老人日乗:3月21日(木)

いやあ、皆さんいかがお過ごしですか。こちらはもうギリギリの状態ですよ。いつも何かに追われている状況ですが、いまは年に数回あるピンチの月であります。取材、締め切り、取材、締め切り、取材、締め切り……のくり返し。「美味しんぼ」にラーメンライスの回があって、汁飯麺汁、とかそういう食べる順番にこだわる謎のサラリーマンが出てきましたが(それを恋人のお嬢様に教えるという、なんだかよく分からない話)そういう感じでですね、締め切り取材取材締め切り締め切り、とかそういう感じすねえ。ラーメンライスならお腹が膨れるんだけど、仕事はげっそりしますよねえ。

こういう時は注意力散漫となり、ものを落としたり、壊したり、怪我をしたりしがちなので、気をつけて暮らしたいと思っておりますがさて、メールもツイッターも見ていないので(仕事中はサイトブロックしています)こちらに逃げてきているのですが、結局ブログを書いて逃避するなら意味ないジャーンと横浜生まれのシンバルのようなことを言いますが、まあブログはね、頭がよくなるからいいんじゃないですか。多分。魚を食べると頭がよくなる。本を読めば頭がよくなる。ゲームをすれば頭がよくなる。泥棒をすれば……。

なんだかよく分からない方向に話がねじ曲がってきたので、話を近況に戻します。で仕事がどんだけあるんじゃいと思って整理してみました。以下、いつものモンスター一覧を張りつけておきます。(詳しい内容は伏せ字)



あれ?今週はだいぶ忙しいんじゃない?大丈夫なんだろうか。うち2つは来週でもいいはずだが、それ以外はおおむね今週内の話で、しかも週明けにはまた別件でインタビューがあったりするんだよなあ。どうしたらいいんじゃろ。もうね、念仏です。念仏しかないです。火山の噴火口の中から念仏を唱えるんです。すると念仏が煙となって空を覆い、南無阿弥陀仏の雨が降ります。その雨水を飲んだパンダはですね、白と黒が反対になるんですって。こんな怪談、知ってました?

ところで、このブログにせよX上で毎日描いているワニの絵といい、面白がってくれる人はいないだろうと思っていた。学生時代の体感から、自分の言ってることを面白がってくれる人は40人クラスで大体0~1人、というのがよく分かっていたからだ。しかし分母が大きくなればカルトな味わいを好む人の数も増えるのか、インターネット上ではワニ絵がいいとか言ってくださる方もちらほらいて、意外にIT革命の恩恵にあずかっている私なのだった。このまま分母が増えれば、私のようなカルトな芸風でもなんとかなるかもしれないが、しかし外国人にワニ絵が受けるとも思えない。どっかこういうのを熱烈に好む国はないだろうか。南極の地底あたりに……。

昨日はイベント取材で潰れてしまったが、今日明日は家で原稿仕事。明後日は遠方より旧友きたるで外出。日曜も原稿仕事で月曜は取材、火曜は近影撮影、水曜は某月刊誌校了日で木曜が取材。ラーメンライスな日々は続く。



2024年3月8日金曜日

怪老人日乗:3月8日(金)

ほよよ~、3月8日であります。3月8日といえば皆さん、あの日ですよ。美輪明宏の日ですよ。っていうのは今思いついたのですが、まあ何かの記念日なんでしょう。今日が誕生日という人もいるでしょう。おめでとうござい益荒男。

えーと、そんなわけで20日くらいぶりに日記を付けている。もうこうなると日記とはいえず、月記である。そのうち年記になって、世紀記にならないように気をつけたいと思い益荒男。なんなんじゃこれは。誰が流行らせたんだ。そもそも流行っておるのか。おれには分からねえ。何も分からねえ……。

というわけで久しぶりに日記を付けたのは他でもない、仕事があれこれありまして、何から始めるかなあ、まいっちったなあ、と虚空を見たり、YouTubeで音楽を再生したり(しかもこういう時に限って中学生の頃に聴いていたようなやつを延々聴いたりする)で午前が終わり、このままじゃ今日は一日終わってしまうじゃないのよ、というわけで、久しぶりに有意義に日記を付け、文章を書くカンのようなものを取り戻しておきたい、と思ったわけである。

そう、わたしはインフルエンザになっていたのでした。経緯を書くとだね、あれはまだ2月の寒い頃のことじゃった……村でインフルエンザが猛威を振るってのう、子供が熱を出し、奥さまが熱を出したのじゃ。おそろしいことよのう、カカシサマの祟りでのう、わしだけはなんとか逃げ切ろう逃げ切ろうと、側転などしてのう、カカシサマに祈っておっていたのじゃが、忘れもせんわ、2月23日の夜じゃ、みんなが熱を出しているので、わしだけ別の部屋で寝ておったのだが、なんだか妙にゾクゾクと背筋が寒くてのう、「今日は寒いのう、まるで小泉八雲の怪談の『兄さん、寒かろ……』としゃべる布団のごときじゃ」と思っていたのだが、そのうちどうにもアカンくなりまして、この部屋が寒いんだな、と結論づけて結局、いつも寝ている部屋にもどったわけですよ。でもそれは部屋のせいではなく、気温のせいでもなく、疫病流行記の第三章だったのですねえ。

24日(土)の朝からやたら寒気がしまして、頭もぼわーっとしてきて、あ、これは熱が出たな、と思ったのですがその日は出かける用事があって、バイクで市内の某小学校まで。子供の絵が選ばれて掲示されているというので、それを見に行ったのだが、運転しながらもふらふらよろよろだし、これはまずいぜえと近くに見えたスーパーのような村の祠のようなところで食料品をいくつか買いまして、巣ごもりに対応できるようにしたのです。で帰宅して熱を測ったら、やっぱ38℃くらいあり、そっからはもうずっと寝てたですよ。

日曜には発熱外来にいき、調べてもらったら案の定インフルエンザのB型。日月火水と寝てたのかなあ。水曜はZoom取材があったけど、いまひとつ本調子でなく。木曜は飲み会の予定があったけどキャンセルで、しかし締め切りがあったので一日中ベッドで原稿書きをしていたのだった。金曜あたりでやっと熱が下がりまして、インフルなので熱が下がるともう元気……と思って3月2日(土)の日中、少年野球の試合の応援になどいったら、そこが日陰で寒かったのか、それともまだ風邪ぶり返しみたいになったのか、分かりませんがまた具合が悪くなりまして、水曜くらいまで寝ていましたね。結局熱っぽさとだるさが消えたのは、3月6日ですからね、都合10日くらいは寝ていたのではないですかねえ。

6日(水)は市ヶ谷の方で取材、御茶ノ水方面で古本など見てきたかったけれども、帰りが遅くなるのもイヤだったので早めに帰ってきて、隣駅のミスドで本読み。コーヒー飲んだりドーナツ食べたりするという欲も、元気でないとまったく湧いてこないので、体調というのはいろいろ趣味まで変えるなあとあらためて思った次第。7日(木)は昨日ですけども、朝からZoom取材でこちらも順調に終わり、あとは原稿書くばかり。という感じで今日なのでありました。

しかしねえ、このところずっと休みなく原稿書きをしており、朝起きてから夜寝るまで、ずっと仕事をし続けていて、それでなんとか回してきたのですが、強制的にそのサイクルから離れることになって、ほっとしたところはあったですね。ほっとしただけで仕事が回ればいいのだけど、そんなわけにもいかないので、馬車馬のように走らないといけないんですが、5つも6つもの仕事を常にジャグリングのように回しながら生きているというのは、脳にだいぶん負荷がかかるはずで、気づかないうちに疲れていたんだなあ、とインフルになってみて気づいたのでした。

じゃあひとつの仕事に集中できたりするのか、といえばそれはまあ、原稿料の単価が100倍くらいにならない限り、無理でありましょう。どんな物書き業者も、いやフリーランスなら誰しも、ひとつの仕事に集中したいと思いつつ、複数の仕事を同時並行で走らせているのが現実なので、そういうものとしてやっていくしかないのですが。

しかしだね、わたしは若干脳の質(たち)にちぐはぐなところがあって、複数のことを同時にこなすのが難しく、昔からいわゆる三角食べができなようなタイプの人間なのですが、そしてそういうマルチタスクの苦手さゆえに普通の就職を諦め、ひとりでできるライター業に就いたわけなのですが、なったらなったでめちゃくちゃマルチタスクが必要とされ、こうしてブログに逃避しているのですから、うまくいかないものだなあと思っております。

2024年2月18日日曜日

怪老人日乗:2月18日(日)

ソフトクリームを食べながらお風呂に入っている人がいたと思ったら、それはひげそりクリームを手のひらに出し舐めている人だったということだ。そのようなことを村の人から聞いた(超遠野物語)

というわけでなんとなく日記を書き始めてしまったが、今日はあまり仕事が捗っていない。やるべきことを裏紙に書き並べ、あみだくじをつくって優先順位をつけてこなしているが、ブログ書きが2番目になったので、こうして日記を付けている次第なのです。

疲れている原因は分かっていて、昨日は神保町の三省堂書店でトークイベントだったのである。ホラー作家梨さんのお相手で新刊『自由慄』について30人ほどのお客さんの前でお話しし、楽しい時間だったのであるが、締め切り明けだったのと解散時間が23時だったこともあって少々くたびれたようだ。『自由慄』は自由慄俳句・短歌からなる連作ホラーで、その裏にあるストーリーや言葉へのこだわりについていろいろうかがった。個人的にも楽しい会でした。それにしても梨さんの人気は圧倒的ですね。ファンの皆さんの熱心なことよ。

Q&Aも含めて無事終了し、22時からサイン会。整理番号順にサインをするのだが、梨さんはついたての向こうでサインをして、書店員さんがそれを手渡すというシステム。面会のようで面白い。私も『影牢』『七つのカップ』や『家が呼ぶ』などに10冊ほど署名しました。お買い上げいただき感謝。よく知る編集さんやXのフォロワーさんも参加されていた。

そんなわけで今日は少しくぐったり。また温泉にでも行きたいところだが、原稿あるのでぐっと我慢の子で、部屋で原稿をやっているのであります。

縄飛びをしている人がいて、その人がどんどん地面に沈み込んでいき、ついには見えなくなったという。そのころ地球の裏側のアルゼンチンでは人間の形に土がもりあがり、みんなびっくりしてその前に店を建て、商店街として発展したということである。これはボルヘスもびっくりして、シェーのポーズを決めたということだ。ということを昔、古老から聞いた(超遠野物語Z)



2024年2月13日火曜日

怪老人日乗:2月13日(火)

なんだかねえ、と唸っているうちに2月も半ば。おっそろしいことである。世間では皆さん確定申告の準備を始めているようだが、私は3月半ばになるまで着手しない。ぎりぎりでもいいならぎりぎりでいいじゃないか。

3連休は原稿ひとつあげたのみ、もうちょっとあれこれ進めたかったが、まあ現実はこんなものか。天気のいい連休で、バイクでどこか遠乗りでもしたいところではあった。しかし時間がないのでぐっと我慢である。奥さまは調子よく豚を見に行ったり(いなかったらしい)文明堂の直売所に行ったりしていて、今はすっかり私よりバイク暮らしを満喫している。

連休初日、あまりに体がボキボキだったので日帰り温泉施設に行く。原稿を書いてはお湯につかり、出てはまた本を読んで、というミニ湯治生活である。これを毎日続けると確かに健康にいいかもしらん。本を読んでいると血行不良になるし、目の使い方がうまくないのか、頭が痛くなってくる。その都度お風呂に入れるから、文章書きの生活と湯治の相性はとてもいいような気がした。下手にファミレスなんざ行くより安いから、またちょいちょい仕事しに来よう。

この3日間本は買わず。古本も届かずで平和だったが、しかしもう文庫の棚がいっぱいだ。なんとか増えた分を減らす努力をせねばと思う。昨日のおやつは文明堂のカステラ。直売所でしか売っていない、焼きたてのカステラというのがあるんだそうで、それをいただきました。あと近況としては一旦やめたアマゾンのオーディブルに再加入した。ちょっとした移動の時や家事の間に本を読める(聞ける)のはとても便利だ。すすんで手に取らない作品を聞けるのもいい。

2024年2月9日金曜日

怪老人日乗:2月8日(木)

もう木曜日ではないですか。なんか今週は前半バタバタで妙に早かった気が……。というわけでふり返ってみますが、月曜日は大雪。2月の降雪は東京では数年に一度ありますが(226事件を思いだそう)去年が降らなかったので、ずいぶん久しぶりに雪景色を見たような感じ。昼頃から降り始めて、夕方には結構積もっていたが、そんな日に限って外出の用を入れていたのだった。

浅草橋のワインバル的なところにて作家の緑川聖司さん、黒川裕子さんとご飯会。緑川さんが打ち合わせのため上京されたので、食事しましょうと黒川さんが誘ってくださったのである。お二人はいうまでもなく『てのひら怪談』の参加作家で、そのお礼も直接お伝えしたかったので大喜びで出かけたわけです。

同じ出版業界で生きているといっても、児童書の世界のことはまったくといっていいほど知らず、いろいろと興味深いお話が聞けた。あとはホラーの話。黒川さんが異様なほどホラーが好きで、Netflixとアマゾンプライムのホラーはほとんど全部見てしまった、という猛者で、そういう話をする。たのしくお話しして、ヤドンのぬいぐるみも見せていただいて外を見ると、おお積もっている。21時頃散会。

総武線は幸いまだ動いていたが、西武池袋線がやはり遅れている。電車に乗って待つことしばし、のろのろ運転で動き始めた。と思ったらゴン!とそれなりに大きい音と衝撃があって、電車が止まった。「倒木~倒木~」というアナウンス。そうか、倒木駅に着いたのか、と思ったが違うようだ。雪で倒れてきた木(そんなことがあるのだな)に乗り上げたようで、それを撤去する作業で15分ほど停車。しかし脱線などしなくてよかった。帰宅して22時すぎ。

さて、そのまま風呂に入って寝たいがそうもいかないのが人間社会。原稿書きを深夜までやる。好書好日のインタビュー。火曜日も早朝からその続きをやって午後まで。昼過ぎに家を出て、浜松町のあたりでお仕事。慣れない場で少しく疲れたが、まあ珍しい経験であったよ。帰宅してそのまま原稿書き。

で水曜日、じりじり書き進んでいた原稿完成。先方に送ってすぐに護国寺方面へ。長めの取材×2つ。詳細は追ってということにいたしますが、責任重大なお仕事でした。その後の食事会にも参加し、いろいろ食べて、ぱくぱく食べて、ワニの話をして、おみやげまでもらって帰宅したら23時前。こっから某誌の原稿書きと今日が期日の入稿作業……をする元気はさすがになくて寝ましたね。

木曜の早朝にやろうと思ったけど、起きたら7時。うーん、少し入稿が遅れる旨連絡してせっせとやって終わったら昼。ほっと一息入れて、昨日の取材現場でもらったサンドイッチでお昼。録画していた午後のロードショーの『アナコンダ対殺人クロコダイル』を見る。ああ楽しかった。どっちが勝つんだ、と思いながら見てのいたら、最後に蛇が爆発した。ヒーッヒッヒッヒと片目片腕片足の丹下左膳海外版みたいな男が、大笑いしているシーンの間が不気味でなんかよかった。午後は疲れて寝る。あまり仕事はせず。この日記もアップする前に寝てしまったのだった。




というわけで金曜日なのでした。メール返信あれこれしていたら昼じゃないの。メール返信とか事務作業のところをまるっと抜かして、純粋に原稿書く時間が10時間くらい毎日ほしいよなあ。だから忙しい作家さんはマネージャーを入れたりするんでしょうね。


2024年2月2日金曜日

怪老人日乗:2月2日(金)

そういや最近ブログを書いてなかったなあ、と思い立って戻ってきました。みなさん好きな食べ物はなんですか。といきなりキリストかモーゼみたいなでかい発言をしてしまいましたが、わたしの好きな食べ物はですね、ざっとあげてみますと、落花生、あずき、くるみ、コーヒー、南部せんべい(ピーナッツ入り)、大福(粒あん)、おはぎ(粒あん)などでありまして、結局私は「豆」が好きなんだなあ、ということに思い至りまして、モーゼもびっくりでございますね。というわけで明日は節分ですよ、節分の豆も結構好きです。

じゃあそれ以外に好きなものはないのか、といえば普通にご飯とかも好きですが、豆は食べるのが面白いというのもありますね。なんか形が面白い。口に運ぶという動作も面白い。すべてが面白い。アハハハハハハハ。

というわけで、日記を付けてみるのだが、ええとだな、この1月後半はいつになくのんびりしていたような気がする。というのも普段なら締め切りがギュッと詰まってきたり、取材がグワッと入ってきたりするのだが、あまりそういうこともなくてですね、書き下ろしの作業に少し時間を使うことができたからだ。合間合間で細かい対応があり、いろんなメールを返信したりしていたが、おおむね落ち着いて作業ができた気がする。

昨日、一昨日は取材2連続で、あとは7日に取材が立て続けに2件。そのあたりの原稿をざざざとやりながら、合間に企画Aと企画Bを差し挟んでいくというのが2月序盤のスケジュールということになろう。

その他ですね、何か面白い話題はなかったかな。朝ドラの『ブギウギ』を毎日楽しく見ております。主演の趣理さんの演技がいいのよ。これまで朝ドラはそれこそ『おしん』くらいしか見てないというか、何なら『おしん』も見ていないんですが、説明過多でない脚本、俳優の演技に大事なところを預けているような演出が好ましく、もともと好きな芸事の世界の話ということもあって、とても面白いですね。女性は基本、小倉優子にしか興味がないのですが、趣理さんはそれとは違った意味でとてもよいですね。


2024年1月22日月曜日

怪老人日乗:1月22日(月)

今日は朝から都心仕事へ。さすがの西武線も混んでおり、地球にはこんなに人がいるのかと怯える。南無阿弥陀仏。飯田橋に着いて編集作業すこし。そのまま出先で書き下ろし(企画A)。集中してやった割にはあまり量は書けず。しかし着実に進んでいるので気持ちがいい。前書きを書くまでに3年かかるってどういうことだ、と思うが思考が近視で乱視の私としては、ピントが合うまでにそれだけかかるということなのだろう。

池袋ジュンク堂に寄って恒例の新刊チェック。『アーサー・マッケン自伝』など気になるもの、必要なもの3冊買ったらそれだけで1万。他にもいくつか欲しいものあるが、まだ小遣いをもらったばかりである。いきなり金欠になるものイヤだったので先延ばし。これはいよいよnoteを始めるしかないかと思う。それと今年は動画もやっぱりやろかなあ、と思う。

復活した『映画秘宝』を読んでいたらネットにおける「映画語り」の時代にどう向き合うか、という小特集があって、その中で切通理作氏が、雑誌のレビューはしばらく経つと参照されなくなるが、ネットの記事はいつまでも現在形として残り続ける、ということを書いていて深くうなずいてしまった。

私は世代的に紙媒体とネット媒体のちょうど過渡期を生きてきたライターで、仕事量も紙が半分、ウェブが半分というバランスであるが、ここに指摘されているようなことは痛感していて、同じレビューでも紙にしか載らないものは(いかに数十万部売れているという週刊誌であっても)「点」や「面」ではあっても「線」ではないというのか、時間の経過を超えてまで読まれることは難しい。もちろん図書館などに行けば読めるのだが、そういう話ではなくて気楽に参照されうるかどうか、という話だ。

じゃあどうするのがいいのか。幸いわたしはウェブの連載をやっているので、そのあたりは恵まれている環境にあると思うが、媒体任せというのもなあという気がしないでもないので、自力でウェブに出せるものは出す。プロモーションの意味合いもあるが、やはりホラー小説の新刊情報や基本的な事柄が、カジュアルな場(検索してすぐ出てくるところ)に置かれていることの意味は大きいように思うのだ。

私がSNSを始めたのは、前にも何度か書いているが某ビジネス書の作家に取材した際に、「ツイッターやフェイスブックにいない人は、自分にとって存在しないも同じだ」と言われたからで、そんな阿呆なことがあってたまるかと内心思ったけれども、それまで避けてきたSNSを始める踏ん切りがついたのはその言葉のおかげなので、まあ感謝はしているのだ。

でツイッターを始めて5年、この間にネットをめぐる環境も変わったし、レビュー的な事柄のメインが少しずつ文字から動画の時代に移ってきているような気もするので、そっちにも少しずつ慣れていかねばいかん。もちろん合う合わないはあるのだろうが、まあやってみないことには分からない。というわけで色々新しいことを始めたい気分の1月なのだった。

帰宅したら古本届いている。今月だけで何冊本が増えたやら、考えたくもない。夜はさらに企画Aの続きと、なんとなく時評原稿の準備。お夕飯は鯖の焼いたので、角上魚類のお魚なので新鮮で旨い。多摩地区の人間はみんな大好き、角上魚類。

2024年1月20日土曜日

怪老人日乗:1月20日(土)

土曜である。ドードー鳥である。昨日は2時くらいまで起きていたので、今日はなんだか眠いのさ。このところやたら早起きすることはあっても(4時起きとか)、夜更かしすることはほとんどなかった。若い頃は朝まで起きているのが普通だったから、まあ体質って変わってくるのですね。そのうち早朝の暴れん坊将軍を楽しみにするようになるのだろう。

さて今日も変わらず仕事である。書き下ろしの作業がある限り、仕事のない日というのはしばらくなさそうだ。企画Cもいよいよ動き出し、こちらはこちらで書く分量がそれなりにあって、それと併行して企画A、企画Bを進めないといけない。そんなわけで昨晩は依頼をひとつ断ってしまった。やりたかったが、まあ、仕方あるめえ。

さてさて、昨晩はお仕事関連のツイート。『実録!世界オカルト音楽大全』1&2の発売について正式リリースがあったので、それに関連していくつか投稿した。このアルバムはベルギーのレーベルから出ているアナログ盤のCD化で(CDは日本盤のみ)、交霊会だのポルターガイストだの悪魔憑きだの悪魔主義者の儀式だのコンタクティの歌と演奏だの、そういったオカルト的な録音をずらりと並べたアンソロジー。私は解説を執筆している。ディスクユニオンのプログレ隊長にしてオカルト部長のNさんとのお仕事。CDのライナーノーツを書くなんて、ロッキングオンの編集者みたいやんけー、と思いながらせっせとオカルト情報を盛りこんだ。





今日は午前中、下水道の掃除と床下点検の業者さんがやってくる。台所の点検口から床下にもぐっていき、すごいなあ、あんな狭いところに潜るんだなあと感心していると、やがてウッとかアッとか苦しそうな声が聞こえてきた。苦しいんだ……。挟まって大事故にならなければいいが、と心配していたが無事生還。プロはすごいものだ。床下に湿気がありますよ、と言われたがリフォーム工事の類は詐欺も多いと聞くので、さいでっか、サイデンステッカー、と曖昧な返事をしてお茶を濁す。

午後仕事。たまっていたメールの返信やっと終わり、さて書き下ろしの作業に戻る。今日は寒いのでおやつはお汁粉に。なんか普通の日記ですね。もっと竹藪が歩いたり、人形の脳天から血が噴き出したりしないのかしら。しないんですねえ。日常というのはつまらないものなんです。あなたの後ろに建礼門院の霊が……。