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2024年 12月 31日

月曜社最新情報まとめ(ブログの最新エントリーは当記事の次からです)

◆公式ウェブサイト・オリジナルコンテンツ
◎2011年6月28日~:ルソー「化学教程」翻訳プロジェクト。

◆近刊
2024年3月21日取次搬入予定:『平岡正明著作集』上下巻、各3,200円。

◆最新刊(書籍の発売日は、取次への搬入日であり、書店店頭発売日ではありません)
2024年02月16日発売:シャルロット・デルボー『無益な知識――アウシュヴィッツとその後2』本体2,400円。
2024年02月06日発売:アルベール・カミュ『結婚』本体2,000円、叢書・エクリチュールの冒険第24回配本。
2024年01月18日発売:ジュディス・バトラー『新版 自分自身を説明すること』本体2,700円。
2024年01月09日発売:近藤和敬『人類史の哲学』本体3,800円。
2023年12月01日発売:アンジェロ・ポリツィアーノ『シルウァエ』本体5,400円、シリーズ・古典転生第29回配本(本巻28)。
2023年12月01日発売:石川義正『存在論的中絶』本体2,600円。
2023年11月17日発売:小田原のどか/山本浩貴編『この国(近代日本)の芸術――〈日本美術史〉を脱帝国主義化する』本体3,600円。
2023年11月09日発売:渡辺由利子『ふたりの世界の重なるところ――ジネヴラとジョルジョと友人たち』本体2,200円、シリーズ〈哲学への扉〉第10回配本。
2023年10月25日発売:茅辺かのう『茅辺かのう集成――階級を選びなおす』本体4,800円。
2023年10月02日発売:森山大道『写真よさようなら 普及版』本体4,500円。
2023年09月22日発売:ダヴィッド・ラプジャード『壊れゆく世界の哲学――フィリップ・K・ディック論』本体2,800円。
 三田格氏書評(「ele-king」2023年11月20日、Book Revies欄)
 藤田直哉氏書評「まだ絶望ではない――現在を生きるためのヒントを、フィリップ・K・ディックの著作の中に探る」(「図書新聞」2023年12月2日3617号8面)
2023年08月04日発売:『表象17:映像と時間――ホー・ツーニェンをめぐって』本体2,000円。
2023年08月01日発売:アレクサンドル・ヴヴェヂェンスキィ『ヴヴェヂェンスキィ全集』本体6,400円。
2023年07月28日発売:ジャン-リュック・ナンシー『否認された共同体』本体3,600円、叢書・エクリチュールの冒険第23回配本。
2023年07月28日発売:ステファヌ・マラルメ『散文詩篇』本体2,000円、叢書・エクリチュールの冒険第22回配本。
2023年06月12日発売:『多様体5:記憶/未来』本体3,000円。
2023年06月12日発売:ベンジャミン・ピケット『ヘンリー・カウ――世界とは問題である』本体6,000円。
2023年06月08日発売:フリードリヒ・シラー『シラー詩集』第1部:本体4000円、第2部:本体4,400円。
2023年05月24日発売:小泉義之『弔い・生殖・病いの哲学――小泉義之前期哲学集成』本体3,600円。
 渡名喜庸哲氏書評「生命の哲学を紡ぎ直す――多様な側面をもつ生の諸相について」(「週刊読書人」2023年8月25日号)
2023年04月26日発売:『巡礼――髙﨑紗弥香写真集』本体6,000円。
2023年04月04日発売:長崎浩『中江兆民と自由民権運動』本体2,800円。
2023年03月31日発売:大谷能生『歌というフィクション』本体3,800円。
2023年02月15日発売:鈴木創士編『アルトー横断――不可能な身体』本体3,200円。
2023年02月02日発売:ジョルジョ・アガンベン『バートルビー 新装版』本体2,600円。

◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎重版出来:
 2023年03月20日:星野太『崇高の修辞学』4刷(2017年初刷)
 2023年03月29日:ジョルジョ・アガンベン『創造とアナーキー』2刷(2022年5月初刷)

◆出版=書店業界情報:リンクまとめ
◎業界紙系:「新文化 ニュースフラッシュ」「文化通信
◎一般紙系:Yahoo!ニュース「出版業界」「電子書籍」「アマゾン
◎話題系:フレッシュアイニュース「出版不況」「電子書籍」「書店経営
◎新刊書店系:日書連 全国書店新聞
◎雑談&裏話:5ちゃんねる 一般書籍

※このブログの最新記事は当エントリーより下段をご覧ください。 
※月曜社について一般的につぶやかれている様子はYahoo!リアルタイム検索からもご覧になれます。月曜社が公式に発信しているものではありませんので、未確定・未確認情報が含まれていることにご注意下さい。ちなみに月曜社はtwitterのアカウントを取得する予定はありませんが、当ブログ関連のアカウントはあります。


# by urag | 2024-12-31 23:59 | ご挨拶 | Comments(21)
2024年 03月 25日

月曜社5月新刊:アンヌ・ソヴァニャルグ『ドゥルーズと芸術』

2024年5月7日取次搬入予定
分野:人文・思想

ドゥルーズと芸術
アンヌ・ソヴァニャルグ(著)
小倉拓也・黒木秀房・福尾匠(訳)
月曜社 本体3,600円 ISBN978-4-86503-188-1 C0010
46判並製(縦188mm×横125mm×束幅23mm:重量360g)392頁

芸術はドゥルーズにとってみずからの哲学を応用するための二次的な対象などではなく哲学そのものの構築に不可欠なものだった。彼の哲学の生成を芸術論の展開からたどる、世界で最も影響力のあるドゥルーズ研究者の初の単著日本語訳。[原著Deleuze et l'art, PUF, 2005]

目次:
第一章 芸術の地図作成――文学からイメージへ
 文学への嗜好
 文学的なものから記号論へ
 フェリックス・ガタリとの出会い
 解釈の政治的批判
 イメージ、アフェクト、ペルセプト
第二章 批評と臨床
 周縁の実験と臨床の機能
 ザッヘル゠マゾッホと「マゾヒズム効果」
 サド゠マゾヒズム症候群に抗して
 徴候学から力の把捉へ
 力としての記号――スピノザとエソロジー
第三章 力のアフェクト
 記号論とエチカ
 ニーチェと徴候学
 これ性と芸術 力の把捉
 イメージ、経度、緯度
 映画のイメージとアフェクト
 記号の類型学と力能のエソロジー
第四章 器官なき身体
 アルトーと有機体批判
 「一九四七年一一月二八日︱いかにして器官なき身体を獲得するのか」
 潜在的なものと現働的なもの
 アントナン・アルトーとルイス・キャロル
 ルイス・ウルフソン
 シモンドンと力および物質の変調
 類似に抗する生成変化
第五章 解釈批判と機械
 解釈批判
 ガタリと精神分析批判
 解釈から横断性へ
 横断的機械から文学機械へ
 欲望する機械
 エディプスに抗するスキゾ
 シニフィアンに抗する機械
第六章 マイナー芸術
 マイナー言語と逃走線
 マイナー言語学
 言語学と記号論
 マイナーとメジャー
 創造的な吃り
 言表行為の集団的アレンジメントと権力批判
 臨床と連続的変異
第七章 リゾームと線
 分裂症と強度
 モル的と分子的
 アルトー・ザ・スキゾ
 リゾームの原理
 機械的で記号論的なコード化
 切断と多様体
 モル的な線、分子的な線、逃走線
第八章 感覚の暴力
 知覚不可能なもの、識別不可能なもの、非人称的なもの
 ミショー、力とアフェクトの把捉者
 感覚を描くこと
 フランシス・ベーコンの〈フィギュール〉
 〈フィギュール〉の運動
 振動と器官なき身体
 具象化を乗り越え、感覚を描く
第九章 芸術と内在
 類似に抗する生成変化
 内在平面、超越平面、構造主義批判
 諸芸術のあいだの差異について
 二元論の解決と芸術の問題の変容
 イメージの情動
 結晶イメージ
 クリシェとヴィジョン
第一〇章 結論
 記号論の四原則
 概念の地図作成と方法の検討
 芸術の診断
 芸術の生成変化と歴史
訳者解説
訳者あとがき
事項索引
人名索引

アンヌ・ソヴァニャルグ(Anne Sauvagnargues, 1961-)フランスの哲学者。パリ西大学 (ナンテール大学)哲学科教授。世界で最も影響力のあるドゥルーズ研究者のひとり。

小倉拓也(おぐら・たくや, 1985-)秋田大学教育文化学部准教授。著書:『カオスに抗する闘い――ドゥルーズ・精神分析・現象学』(人文書院)。
黒木秀房(くろき・ひでふさ, 1984-)立教大学外国語教育研究センター教育講師。著書:『ジル・ドゥルーズの哲学と芸術――ノヴァ・フィグラ』(水声社)。
福尾匠(ふくお・たくみ, 1992-)日本学術振興会特別研究員PD(立教大学)。著書:『眼がスクリーンになるとき――ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』(フィルムアート社)、『日記〈私家版〉』、『非美学――ジル・ドゥルーズの言葉と物』(河出書房新社近刊)。

アマゾン・ジャパンHMV&BOOKSonline、にて予約受付中。

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# by urag | 2024-03-25 16:23 | 近刊情報 | Comments(0)
2024年 03月 24日

注目新刊:杉田俊介『糖尿病の哲学』作品社、ほか

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★最近出会いのあった新刊を列記します。

実存主義者のカフェにて』サラ・ベイクウェル(著)、向井和美(訳)、紀伊國屋書店、2024年3月、本体3,800円、46判上製592頁、ISBN978-4-314-01204-1
糖尿病の哲学――弱さを生きる人のための〈心身の薬〉』杉田俊介(著)、作品社、2024年3月、本体2,400円、四六判並製240頁、ISBN978-4-86793-024-3
40歳から凡人として生きるための文学入門』森川慎也(著)、幻戯書房、2024年3月、本体2,400円、四六判並製192頁、ISBN978-4-86488-295-8
『ねこかしら』おかざき乾じろ(著)、オライビパアフ、2024年2月、非売品、A5横変型判上製36頁、ISBNなし
翻訳とパラテクスト――ユングマン、アイスネル、クンデラ』阿部賢一(著)、人文書院、2024年3月、本体4,500円、4-6判上製346頁、SBN978-4-409-16101-2
ゾンビの美学――植民地主義・ジェンダー・ポストヒューマン』福田安佐子(著)、2024年3月、本体4,500円、4-6判上製274頁、ISBN978-4-409-03131-5
はじまりのテレビ――戦後マスメディアの創造と知』松山秀明(著)、人文書院、2024年3月、本体5,000円、4-6判並製556頁、ISBN978-4-409-24159-2

★『実存主義者のカフェにて』はまもなく発売。英国の作家ベイクウェル(Sarah Bakewell, 1963-)のベストセラーノンフィクション『At the Existentialist Cafe: Freedom, Being, and Apricot Cocktails』 (Chatto & Windus, 2016)の訳書。「実存主義を脇へ追いやった華やかな思想たちも、すでにそれ自体がひどく古び、衰退してしまった。21世紀の関心事は、もはや20世紀後半の関心事と同じではない。もしかしたら、現代のわたしたちは新しい哲学を探しているのかもしれない。/それならば、試しに実存主義者たちを再訪してみてはどうだろう。大胆で力強いその主張から、きっと新鮮な視点を得られるに違いない」(第1章、44頁)。

★「彼らは奇抜な専門用語をもてあそんだりはしなかった。同時代を生きる多くの他者とともに投げ入れられた世界で、人間性あふれた本来的な人生を生きるということはどういうことか、そうした大きな問題を問いかけていた。また、核戦争や環境問題、暴力、一触即発の時代に国と国との関係をどう保つかという問題とも格闘してきた。彼らの多くは世界を変えたいと熱望し、そのためにわたしたちがどんな犠牲を払うことになるのか、あるいはならないのかを考えた」(同、44頁)。

★「無神論の実存主義者は、どうすれば神なしでも意味のある人生を生きられるかを問うた。実存主義者たちはだれもが、選択の重大さに圧倒される存在者としての経験や不安について記した。このような不安感は、21世紀の比較的裕福な国々において、これまでになく強いものになっている。いっぽうで、現実世界での選択さえ許されない人たちもいる。実存主義者たちは、災害や不平等や搾取について悩み、それらの悪に対して打つ手があるかどうかを考えた。そして、このような問題に対して、個人になにができるか、自分たち自身はなにを進言すべきかを問うたのである」(同、44~45頁)。

★版元紹介文に曰く「1933年、パリ・モンパルナスのカフェで3人の若者、 ジャン=ポール・サルトル、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、レイモン・アロンが、 あんずのカクテルを前に、現象学について語り合っていた。 ここから生まれた新しい思想は、 やがて世界中に広がり、第二次世界大戦後の学生運動、公民権運動へとつながっていく――ハイデッガー、フッサール、ヤスパース、アーレント、メルロ=ポンティ、レヴィナス、カミュ、ジュネ……哲学と伝記を織り合わせたストーリー・テリングによって多くの読者を魅了した傑作ノンフィクション」。目次を以下に転記します。

第1章 ねえあなた、実存主義ってなんておぞましいのかしら!
第2章 事象そのものへ
第3章 メスキルヒの魔法使い
第4章 世人、良心の呼び声
第5章 ニワザクラを噛み砕く
第6章 自分の原稿を食べるなんてまっぴらだ
第7章 占領と解放
第8章 荒廃
第9章 人生の研究
第10章 ダンスをする哲学者
第11章 かくも深き対立
第12章 もっとも恵まれない者の目で
第13章 あのすばらしき現象学
第14章 いわく言いがたい輝き
登場人物紹介
謝辞
訳者あとがき
原註
おもな参考文献
図版クレジット
索引

★『糖尿病の哲学』はまもなく発売。批評家の杉田俊介(すぎた・しゅんすけ, 1975-)さんが糖尿病患者の当事者として「日々の気持ちや感情の変化を記録したもの」(はじめに、5頁)。「病んだり、疲れたり、老い衰えたりしている自分の身体と生活をまずはそこそこに肯定し、それなりに尊重しながら、それでも何事かを考え続けていくこと」(同、14頁)。「糖尿病患者のプラグマティズム、病者の肉体をよりよく生きるための実践哲学」(同、15頁)。

★「「死」が具体的なもの、身近なものとして体感されてしまう。漠然として詩の恐怖ではなく、コントロールのきかない体の、「モノ」のような詩の具体的な手触り。自分はあと何年生きられるのだろうか」(「糖尿病者の日記」3日目、32頁)。「わずかずつ積み重ねてきた自分の日々の努力を認めよう。〔…〕明日には明日にふさわしい労苦がある。死ぬまでは生きられる。それでよし、否、それがよし、としよう」(146日目、224頁)。

★「これからも生活の調子を見ながら、糖尿病、鬱病、アトピー性皮膚炎、等々……身体と精神の様々な不具合や老い衰えについて、病者の哲学、あるいはパンセ(考え、思考)を折にふれて書きつづっていくことができたなら」(はじめに、11頁)。等身大の記述が胸に沁みます。

★『40歳から凡人として生きるための文学入門』は発売済。北海学園大学人文学部教授で英文学者の森川慎也(もりかわ・しんや, 1976-)さんが「40代以上の読者を想定して」書いた「凡人による凡人のための本」。「40歳を過ぎたら多くの人は自らが凡人であることを自覚するようになる。しかしそれでは物足りない。自覚の一歩先に、凡人として生きる覚悟がほしい。覚悟を持つには文学を読むのが一番である。だが、文学を読むには時間がかかる」(まえがき、5頁)。

★「本書は、凡人として生きるための知恵を文学から学び、読者のみなさんに健やかに軽やかに生活してもらうことを願って書いたものである。凡人として生きる術を身につけるためには、文学を読むのが一番いい。私は自分の経験に基づいてそう言っている」(同、4頁)。「凡人の私が、作者と読者の間に勝手に介入して、凡人としての読み方をお示ししよう」(同、5頁)。「文学を手がかりに凡人の人生にどのような意味を付与できるのか考えよう、というのが本書のねらいである」(同、6頁)。

★「今も昔も人間は意味を作り続ける存在である。だから文学にも意味は存在する。作者自身が書きながら意味を作り、読者はその作品世界から作者の意味を読み取ろうとする。作者が提示する意味は、その作者にとって真実であり、読者もまたそれを真実として受け取る。そのとき文学を介した作者と読者のコミュニケーションが生じるのである」(第V章、140頁)。

★「文学とは何か、文学を読むことにどのような意味があるのか、といった問いは、私にとって、人生とは何か、人生に意味はあるのか、といった問いと本質的に同じである」(同、141頁)。「凡人の生き方の極意は、一言で表せば、開き直りである。自分は凡人なのだと覚悟を決めたら、開き直ってやりたいことを健やかに軽やかにやればよいのである」(第VI章、185頁)。肩ひじ張らずに生きるための伴侶となる一冊です。

★『ねこかしら』は、造形作家の岡﨑乾二郎(おかざき・けんじろう, 1955-)さんによる絵本の私家版。尾道市立美術館の展覧会図録『絵本原画ニャー! 猫が歩く絵本の世界』(青幻舎、2019年)の特別付録として発行された、手のひらサイズの絵本を、サイズを拡大した私家版として再刊したもの。付録版と私家版の大きな違いは、付録版の最終2頁が私家版では6頁に分割され、テクストの改訂はありませんが、ねこの絵が新しく2点加わっているところかと思います。細かく見ると、テクストの改行やねこの絵のレイアウトなどが変わっている箇所もあります。岡﨑さんの愛猫が自身のことを淡々と語る(と私は理解しました)、味わい深い一冊。様々な色彩で描かれた筆絵の猫の自由な線が心地良いです。

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★なお現在、岡崎さんの25年ぶりとなる彫刻作品新作展「くにつかみのくとにおす」が、2024年3月10日(日)から5月12日(日)まで都内某所で開催されています。詳しくは催事名のリンク先をご覧ください。また2023年の新作絵画《雲のかたちに合意をみる。空気を動かすのは水の分子、やりとりされる熱量の活発、それが水の分子をまた動かす。雲と雲の間で何か合図が交わされていても、そのかたちはソフトクリームのようにかき回され練られた、計画が実行されているのです。雪のように白く金色に燃え立つ、その外見ほど新しく自由で敏感な表面もないけれど、そんな荘厳な集合体もときが来ればたちどころに走り出し崩れ去る。遠くの山上に浮かぶへんてこなもの、泡立てクリーム塩あじビスケット、コケモモ、サクランボ入りのお菓子。イギリスのからし。ドイツのからし。特別ヒリッとして、尖った歯でもあるように舌をさす、勝利のしるし。ぼくは忘れないし恐れない。一瞬ごとに自然が笑いながら意志を伝えてくるんだもの。》が、BankART Stationにて6月9日まで展示されているとのことです。

★人文書院さんの最新刊3点。『翻訳とパラテクスト』は、帯文によれば「19世紀初頭の民族再生運動のなかで、チェコ語の復興をめざし、芸術言語たらしめようとした近代チェコ語の祖ユングマン。ナチスが政権を掌握しようとした時代、多民族と多言語のはざまで共生を目指したユダヤ系翻訳家アイスネル。冷戦下の社会主義時代における亡命作家クンデラ。ボヘミアにおける文芸翻訳の様相を翻訳研究の観点から明らかにする」。著者の阿部賢一(あべ・けんいち, 1972-)さんは、東京大学大学院人文社会系研究科准教授。チャペックやハヴェルなどの翻訳を手掛けていらっしゃいます。

★『ゾンビの美学』は、福田安佐子(ふくだ・あさこ, 1988-)さんが京都大学に2021年に提出した博士論文「ゾンビの美学――植民地主義・「人に似たもの」・ポストヒューマニズム」に加筆修正したもの。帯文に曰く「ゾンビの歴史を通覧し、おもに植民地主義、ジェンダー、ポストヒューマニズムの視点から重要作に映るものを子細に分析する。アガンベンの生権力論を援用し、ゾンビに原題および近未来の人間像をみる力作」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。福田さんの共訳書には、マキシム・クロンブ『ゾンビの小哲学』(人文書院、2019年)があります。

★『はじまりのテレビ』は、「番組、産業、制度、放送学などあらゆる側面から、初期テレビが生んだ創造と知を、膨大な資料をもとに検証する」(帯文より)もの。「現在のインターネットや動画配信の行く末を考えるためにも、まずは初期テレビの歴史をきちんと読みとく必要があるだろう。メディアの歴史は一定の反復性があるがゆえに、テレビ史からみえるインターネットや動画配信の未来もあるはずだ。テレビ離れとマスコミ批判の時代だからこそ、テレビの歴史を記述しなければならない」(序論、15頁)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。著者の松山秀明(まつやま・ひであき, 1986-)さんは関西大学社会学部准教授。本書は単独著としては『テレビ越しの東京史――戦後首都の遠視法』(青土社、2019年)に続く2冊目です。



# by urag | 2024-03-24 23:14 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)
2024年 03月 17日

注目新刊および既刊:水声社2023年8月~2024年2月

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★まず、最近出会いのあった新刊と既刊を列記します。

哲学ってなんだろう?――哲学の基本がわかる図鑑』DK社(編)、山本貴光(訳)、東京書籍、2024年2月、本体2,200円、A4変形判上製128頁、ISBN978-4-487-81663-7
パレスチナ解放闘争史』重信房子(著)、作品社、2024年3月、本体3,600円、四六判並製484頁、ISBN978-4-86793-018-2
孤独と神秘――アリー・シャリーアティーの「沙漠論」にみる現代イランのイスラム思想』村山木乃実(著)、作品社、2024年1月、本体3,800円、ISBN978-4-86793-016-8

★『哲学ってなんだろう?』は『What's the Point of Philosophy?』(DK Children, 2022)の訳書。「古代哲学から21世紀の現代思想までをイラストで解説、10歳から大人まで楽しめる哲学の入門書」(帯文より)。「「存在」ってなんだろう」「「知識」ってなんだろう」「「正しい」とか「間違っている」ってなんだろう」「「平等」ってなんだろう」「「考える」ってなんだろう」の四部構成。巻末には「哲学の歴史」と「用語集」、索引が添えられています。訳者の山本さん曰く「分からないことを楽しみながら、何度も読むのがコツですよ」とのこと。

★東京書籍では本書のほか、原著「DK What's the Point of?」シリーズから『算数・数学で何ができるの?――算数と数学の基本がわかる図鑑』(松野陽一郎監訳、上原昌子訳、2021年1月)と『科学って何のためにあるの?――科学の基本的な5つの分野がわかる図鑑』(左巻健男監訳、上原昌子訳、2022年8月)の2点が刊行されています。

★『パレスチナ解放闘争史』は、帯文に曰く「獄中で綴られた、圧政と抵抗のパレスチナ現代史」。第一部「アラブの目覚め――パレスチナ解放闘争へ(1916年~1994年)」、第二部「オスロ合意――ジェノサイドに抗して(1994年~2024年)」の二部構成。巻末には「パレスチナ民族憲章(1964年5月31日、第1回パレスチナ民族評議会で採択)」「パレスチナ民族憲章(1968年7月17日)」が併録され、年表が付されています。

★『孤独と神秘』は、村山木乃実(むらやま・このみ, 1991-)さんの博士論文「アリー・シャリーアティーの神秘主義思想にかんする宗教学的研究――西洋と出会いから生まれたイラン的イスラム」(2022年)に加筆修正されたもの。帯文に曰く「本書は、現代イラン知識人を代表する、アリー・シャリーアティー(1933~1977)を本邦で初めて本格的に紹介。主要な文学作品群『沙漠論』の読解を通じて、近現代イランの思想を読み解く上で巨大な座標軸となる思想家、シャリーアティーの精神の内奥に迫る」。

★シャリーアティー自身の著書の翻訳にはこれまでに『革命的自己形成』(松本耿郎訳、アジア経済研究所、1981年)、『イスラーム再構築の思想――新たな社会へのまなざし』(櫻井秀子訳、大村書店、1997年)の2点がありますが、いずれも絶版。原典ではペルシャ語全集(全36巻)があります。サルトルやファノンとの交友やフーコーによる評価が日本にも伝えられているものの、一般読者はほどんど知らないかもしれません。村山さんの著書によって再評価への機運が高まることを期待したいです。

★続いて、水声社さんの注目既刊書を列記します。

震える物質――物の政治的エコロジー』ジェーン・ベネット(著)、林道郎(訳)、水声社、2024年2月、本体3,500円、四六判上製321頁、ISBN978-4-8010-0728-4
関係性の美学ニコラ・ブリオー(著)、辻憲行(訳)、水声社、2023年12月、本体3,200円、四六判上製256頁、ISBN978-4-8010-0782-6 
聖なる自己――カリスマ派の癒しの文化現象学』トーマス・J・チョルダッシュ(著)、飯田淳子/島薗洋介/川田牧人(監訳)、津村文彦/野波侑里/堀口佐知子/村津蘭(訳)、《人類学の転回》:水声社、2023年12月、本体6,000円、四六判上製457頁、ISBN978-4-8010-0770-3
摩擦――グローバル・コネクションの民族誌』アナ・ツィン(著)、石橋弘之/岩原紘伊/寺内大左/難波美芸/箕曲在弘(訳)、《人類学の転回》:水声社、2023年12月、本体5,200円、四六判上製474頁、ISBN978-4-8010-0787-1
ブランショとともに』郷原佳以/安原伸一朗/石井洋二郎/髙山花子/伊藤亮太/門間広明/森元庸介/千葉文夫/石川学(著)、水声社、2024年11月、本体1,000円、四六判アンカット無製本80頁、ISBN978-4-8010-0768-0
底意地の悪い〈他者〉――迫害の現象学』ジャック=アラン・ミレール(監修)、森綾子/伊藤啓輔(訳)、《言語の政治》:水声社、2023年10月、本体4,000円、A5判上製252頁、ISBN978-4-8010-0750-5 
蜂起――詩と金融における』フランコ・“ビフォ”・ベラルディ(著)、杉田敦(訳)、《批評の小径》:水声社、2023年8月、本体2,500円、四六判上製216頁、ISBN978-4-8010-0744-4

★『震える物質』は、米国の政治理論家でジョンズ・ホプキンズ大学教授のジェーン・ベネット(Jane Bennett, 1957-)による『Vibrant Matter: A Political Ecology of Things』(Duke University Press, 2010)の全訳。「不活発で受動的だとされてきた物質のもつ媒介作用を豊富な例から析出し、人間と人間以外のものが連鎖・協働する世界=アセンブリッジを思い描く。物=生命の新たなポリティカル・エコロジー」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★「これまでも政治理論は、物質性を重要なものと認めてはきた。だがそこでいう物質性とは、ほとんどの場合、人間社会の諸構造であり、そういった諸構造やその他の諸対象に「体現」された人間的な意味のことを指していた。政治そのものが、往々にして、人間だけにかかわる領域だと考えられていたために、問題になるのは、あくまでもそこに加えられる一連の物質的制約であり、人間の行為の脈絡だったのだ。そういう人間中心主義への頑固なまでの抵抗こそが、私が求めている生命的物質主義と、今触れたような歴史的唯物論との、たぶん最も重要な違いなのだ。私は、そのようにナルシスティックに自動反応する人間の言語と思考への対抗の試みとして、人間以外のものの諸力(それらは自然、人間の身体、人間がつくった物の中で働いている)が様々なことを引き起こす力の重要性を強調、いや、強調以上に力説したい。むしろ私たちは、そのように世界の番人を自称する人間のナルシシズムに対抗するために、〔人間中心主義ではない〕擬人的な見方――人間の媒介作用が非人間的な自然の中にも反響しているとする考え――を多少なりとも養わなければならないのだ」(序、29~30頁)。

★『関係性の美学』は、フランスのキュレーターで批評家のブリオー(Nicolas Bourriaud, 1965-)の主著『Esthétique relationnelle』(Les Presses du réel, 1998)の全訳。「芸術理論の空白のただなかで、全面的な商品〔コモディティ〕化へ向かいつつある現在のアートを読み解くための必携書」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。ブリオーの既訳書には『ラディカント――グローバリゼーションの美学に向けて』(原著2010年;武田宙也訳、フィルムアート社、2022年)がありますが、『関係性の美学』はそれ以前から長らく翻訳が待ち望まれていました。

★ブリオーはこう書きます。「今や市場価値を持たないものは消え去る運命にある。やがて、商業空間の外部では人間同士の関係は成り立たなくなってしまうだろう。〔…〕全面的な商品化の傾向は、現在の人間関係の空間に強烈な打撃を加えている。〔…〕社会的紐帯は、標準化された人工物に形を変えられたのだ。分業化と超専門化、機械化と収益性が支配する世界では、人間関係を管理可能かつ反復可能な、単純な原理に従属させるように誘導することこそが、支配権力の最優先事項となる。〔…〕現代の芸術的実践は、社会的実験をはぐくむ肥沃な土壌と、行動の画一化から部分的に保護された空間を提供している。本書が考察の対象とする作品は、すべて手の届くユートピアの設計図なのである」(序、16~17頁)。地域の文化拠点を標榜する複合型書店にとっても本書の視点は示唆的となるのではないでしょうか。

★『聖なる自己』と『摩擦』は、ともにシリーズ「人類学の転回」より。米国の人類学者でカリフォルニア大学サンディエゴ校特別栄誉教授のチョルダッシュ(Thomas J. Csordas, 1952-)による『The Sacred Self: A Cultural Phenomenology of Charismatic Healing』(University of California Press, 1994)の全訳。『摩擦』は、米国の人類学者でカリフォルニア大学サンタ・クルーズ校文化人類学科教授のツィン(Anna Lownhaupt Tsing, 1952-)による『Friction: An Ethnography of Global Connection』(Princeton University Press, 2004)の全訳。チョルダッシュの訳書は初めてのものですが、ツィンの既訳書には『マツタケ――不確定な時代を生きる術』(原著2015年;赤嶺淳訳、みすず書房、2019年;訳書での著者名表記は「アナ・チン」)があります。

★『ブランショとともに』は、水声社の会員制メールマガジン「コメット通信」に掲載されてきた論考15篇をまとめたもの。製本されていない状態で透明袋に入れて販売されているため、一般書店では購入しにくいかもしれません。目次は以下の通りです。

「力の過剰」としてのエクリチュール|郷原佳以
モーリス・ブランショの変貌|安原伸一朗
燃えさかる空虚――ロートレアモンを読むブランショ|石井洋二郎
夢のような物語|髙山花子
文学と彷徨の真理|伊藤亮太
ブランショと読者|門間広明
ある造語から|森元庸介
ブランショあるいはレシの体験|千葉文夫
第二次世界大戦期のフランスで執筆するということ|安原伸一朗
批評家になること、あるいは、消滅の始まり|郷原佳以
沈黙から沈黙へ|門間広明
はじまりのブランショ|石川学
ブランショと歴史―― 一九四三年のいくつかの時評について|伊藤亮太
一九四二年のブランショ――第一次世界大戦の痕跡に向かって|髙山花子
常套句の振動と消滅――ポーランとブランショ|郷原佳以
ブランショ書誌抄

★『底意地の悪い〈他者〉』は「叢書 言語の政治」の第27弾。世界精神分析協会(AMP: Association de mondiale Psychanalyse)の主催で2009年2月にパリで開催された症例検討会の記録『L'Autre méchant : Six cas cliniques commentés』(Navarin, 2010) の全訳です。クリスティアンヌ・アルベルティによる「序文」に始まり、第一部「臨床ケースのテクスト」では、ジャン゠ダニエル・マテ、ミケル・バッソル、キャロル・ドゥヴァンブルシ゠ラ・サーニャ、アントニオ・ディ・チャッチャ、フィリップ・ドゥ・ジョルジュ、マリオ・ゼルゲムらの症例報告を収め、第二部「会話」では上記7名にミレールらを加えた討論の様子が活字化されています。

★『蜂起』は、イタリアの思想家で活動家のフランコ・“ビフォ”・ベラルディ(Franco “Bifo” Berardi, 1949-)による『The Uprising: On Poetry and Finance』(Semiotext(e), 2012)の全訳。「言語の過剰としての詩によって感覚的身体と社会的連帯を再活性化し、金融資本主義の支配に対する蜂起を呼びかける、来るべき闘いの書」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

★「お金と言語には共通する何かがある。それは、何もないにもかかわらず、何でも動かしてしまうことだ。それらは象徴、慣習、〔…〕にすぎないが、人間を説得して行動させ、働かせ、物理的なものを変えさせる力を持っているのだ」(155頁)。「しかし、経済と言語のアナロジーに惑わされてはならない。貨幣と言語には共通するものがあるが、言語が経済的な交換を超えるものである以上、それらの運命が一致することはないのだ。詩は非交換制の言語であり、無限の解釈学の再来であり、言語の感覚的身体の復活なのだ。/わたしがここで述べている詩は、言語の過剰であり、あるパラダイムから別のパラダムに移行することを可能にするような隠れた資源のことなのだ」(160~161頁)。


# by urag | 2024-03-17 21:26 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)
2024年 03月 15日

「週刊読書人」に近藤和敬『人類史の哲学』の書評掲載

「週刊読書人」2024年3月15日号の3面に、月曜社1月刊、近藤和敬『人類史の哲学』の書評「新たな「価値の配置」を提示――多岐に及ぶ学知を参照する」が掲載されました。評者は就実大学教授の松本潤一郎さんです。「本書は、私たちの思考を支配する「価値の配置」を問いなおし、新たな価値を探究して、その価値の下に、自然諸科学と人間諸科学の新たな関係に基づく文節を図り、新たな「価値の配置」の提示を試みる」とご紹介いただきました。

# by urag | 2024-03-15 09:49 | 雑談 | Comments(0)