長らく探してはいたものの、なかなか市場に出てこなかったオールドレンズをやっと入手することができた。Yashica Auto Yashinon-DX 35mm F2.8である。

Yashinonの50mmレンズはかなり球数が多いらしく、Yashinon-DX、Yashinon-DS、Yashinon DS-Mの主要3種はどれでもちょっと探せばすぐに見つかるし、状態の悪くないものでも比較的安価で入手可能だ。私もAuto Yashinon-DX 50mm F1.7を持っていて、これも気に入っている。

けれど、Yashinonの35mmはなかなか出回らないので、見つけたら多少コンディションが悪くても入手するつもりで探していたのだが、運が良すぎることにeBayでMINTコンディションのものに遭遇し、更には相場よりも安く落札することができた。

落札後すぐにギリシャから発送され、14日後に手元に到着したレンズは間違いなく新品同様のコンディションで光学系も動作も完璧な状態だった。このレンズの製造年の正確なところは不明だが1970年前後のはずなので、実に半世紀も全く使われないでどこかに保管されていたのだろう。可哀想に‥‥。しかし、これからは私がどんどん使っていきたいと思う。

私は35mmという画角のレンズがどうも苦手である。NikkorもM42マウントも35mmレンズは数本所有してはいるものの、持ち出すのはいつも広角域の28mmと標準域の50mmが多くなってしまい、その中間の画角の35mmはいつも留守番をする役回りになっていた。使わなければ上達もしない、当然のことである。

その状況を打破するために最近は意識して35mmレンズを使うようにしている。
その流れで入手したのがYashinon 35mmなのだが、実際に使ってみるとこのレンズは想像していた以上にとてもよい描写をしてくれる。

まず驚いたのは、絞り開放でもピント面がかなり細くてシャープな点。Yashinonレンズはどれも開放の柔らかさがとても心地よいのだが、開放だと流石にシャープネスが落ちるので半段でも絞って使うことが多いのだが、このYashinon 35mmは開放でも問題無く使えて驚きである。

そして、開放だと周辺減光も若干強めに現れるので、それもまたオールドレンズらしい趣きの演出効果となって気に入っている。周辺減光は、LightroomでRaw現像する際に処置することも簡単にできるが、このレンズの場合にはあえて修正せずに使っていくような気がしている。それくらいに雰囲気の良い空気感になる。

最短撮影距離は0.4mなので、Jena Flektogon 35mmのように寄った撮影はできないが、愛用しているKenkoのクローズアップレンズ《AC CLOSE-UP No.○》との相性も良いので、寄りたい時にはこれを利用することで問題なく対応できる。

慣れない画角だと、撮影の度に構図が素早く決められずに、試行錯誤をしながらちょっと時間をかけて撮影することになる。しかし、それがカメラを始めた頃のことを思い出させてくれてとても新鮮に感じる。

そんな事を考えながら、いつものアリンコベーカリーでお気に入りのパンを齧り、温かいピスタチオラテを飲んだ晴天の午後。