本田孝義監督 インタビュー


本田さんは、1968年、岡山県生まれで、大学在学中より、映画製作を始められました。卒業後「小川紳介と小川プロダクション」全作品上映に関わり、テレビの仕事を経験した後、再びビデオによる自主製作を始め、「デフ・ディレクター あるろうあ者の記録」「コマンドオクトパス」などの作品があります。また、1995年「岡山ドキュメンタリー映画祭」ではスタッフとして殆どの映画の上映を担当され、それ以降映画祭の度によきアドバイザーとして駆け付けて下さいます。今回の「科学者として」は初の劇場公開作品であり、「岡山映画祭」として本田さんの作品が上映できたことを喜ばしく思います。


Q 実は今日改めて拝見して、最初の印象と違うなぁと思った箇所があったんですが、一回目見た時に最初の20分程がずっと違和感があったんですよ。「ただおじさんが延々と喋っている。何だこれは?」という。もちろん途中からがぜん面白くなるのでそんなに気にはならないんですけれど。

A それはよく言われます。本人も自覚してはいるんですが。

Q ところが、今日見たらそんな感じはないし。どうしたのかなと考えたら、実はそれが狙いなんだということに気がついて、つまりはテレビなんかでよく流れている「告発モノ」のパターンを完全にやめていて、とりあえず一人のおじさんの周りの空気までも丹念に撮っていこう・・その上でこの問題が浮かび上がってくるだろうというちょっと変わったアプローチですよね。

A もちろん最初から二項対立というか、対立した立場双方を描くというのは考えてなかったですね。僕がひねくれものということもあるのかもしれないけど、そう言う常套手段ではこの問題はうまく伝わらないという気はしてました。

Q その意味で新井さんの存在は大きいですよね。

A 僕自身も最初分からなかったんです。何故この人はこんなしんどい思いをしているんだろう・・・それでとにかく新井さんの話をいっぱい聞こうと。で、聞いているうちになんとなくいけそうな気がしてきて、ぼんやりとなんですが・・・だからとにかく最初の内は映画の形なんか分からないままインタビューばっかりしてたんですけどね。

Q 一回目の時は見ている方も分からなかったです。「どうしてこの人は組織にいたままで、その組織への反対運動に加わっているのか」というのが。でも実は最初の方にその答えがさらっと描かれていて、最後の方に謎解きがされる構図ですが、例えば、あの信仰の話を最初の方に持ってくるという考えはなかったですか?

A これもいろいろと言われたんですが、落ち着く場所というかな、結果的に最後の方で見てくれた人が「ああそうか」と思ってくれる感じがいいかなと・・・。勿論、見ている人を宙吊りの状態にしておきたいという意図的な面も大きいですし、さり気なく色んな場所で信仰のことを出してますから、気付く人が見たら気付くだろうという・・・やっぱりひねくれてますか?

Q さりげなくという点では、新井さんの行動の基本となっている「原罪意識」とでもいいますか「水俣」の話もあっさりとしてますよね。

A だから、これも同じなんです。あの話を詳しくやっちゃうとなんだか、いかにもテレビ的な薄っぺらな感じがしそうで、新井さんのスタンスと違うかなという気がしたんですよ。

Q 反対運動へのスタンスといえば、シュプレヒコールのシーンも印象的でした。普通ならその行動を正面から撮るんでしょうけど、声だけで画面はゆっくりと街の中を動いていくだけという・・

A 単純な反対運動の話ならもっと早くできたかもしれませんね。でもそれもしたくなかったんです。具体的な抗議行動は結構撮ってはいるんですけど、今回の映画の、特に新井さんのスタンスとはちょっと違ってましたし。

Q 拳を突き上げるイメージじゃないですよね。

A だから撮っている間中はずっと不安だったんですよ。色んな人に「新井さんは面白いんだけど・・・」とか言われちゃうし、どうやったら映画としてまとまるんだろうと真剣に悩んでました。

Q これはいけると感じたのはどのあたりなんですか?

A 新井さんの実験している姿を撮った時です。あれは、実際の職場ではないんですが、それまでずっとインタビューばかりしてたのが、あのシーンを撮ったことでやっぱり新井さんを中心にした映画にしようという決心がついた感じです。国際査察なんかの劇的なところも幾つか撮ったわけですが、それは中心にはならないというか、それを中心にした映画はやっぱり作りたくなかったんですよ。

Q あのシーンの新井さんの言葉は印象的ですよね。「論文っていうのは、物語をつくるということで、そのためにいろんな実験をしてるんですよ」という。

A あの言葉は、ドキュメンタリーにもあてはまると思うんです。ずっと撮影をしていくことで、いつしかひとつの物語を作っていくというのはね。

Q 「物語」といえば、新作は「ニュータウン物語」ということですが、これについて少し・・。

A まだ、具体的には何もないんですが、とにかく、僕の生まれた「ニュータウン」と呼ばれる場所を通して、描けるものはきっとある筈だと。「ニュータウン論」というのは色々とあるんですが、ちょっと違うなという感じですし。

Q 映画にはなりにくい題材ではないんですか?

A そこはひねくれ者ですから・・・。とりあえずは地元の作家たちとの共同作業を進めていくところから始めようとは思ってます。

Q 本田さんはいままでずっと御自分で撮影もなさってますが、共同作業と言うことはカメラも他の人に任せようかということですか?

A 自分で撮るのは色々と限界があったり、人に任せてみたいという欲求もあるんですけど、今回はやはり自分が撮ります。これは僕の物語という面もあるわけですから。

Q 来春からの撮影予定と言うことで、映画祭の方もまた協力できることがあると思いますので、その時はぜひ・・・。どうもありがとうございました。

12/29 「科学者として」上映会場にて


国立感染症研究所細菌部主任研究官 新井秀雄氏の処分撤回を求める抗議行動

■ 言論弾圧事件
2001年1月4日、国立感染症研究所長 竹田美文名で、国立感染症研究所細菌部主任研
究官 新井秀雄氏に対して、「厳重注意書」が手渡されました。この「厳重注意書」
で問題にされたのは、「週刊文春」(2000年11月2日号、10月25日発売)での新井氏
のインタビュー記事、及び新井氏の著作「科学者として」(幻冬舎刊、11月10日発
行)でした。

■ 新井秀雄氏
新井秀雄氏は、日本最大の病原体実験施設・国立感染症研究所(当時、国立予防衛生
研究所)が、1992年に東京都新宿区戸山という住居専用地域に建設されたことから、
周辺に細菌やウィルスが漏れ出し、感染事故がおきる危険性を懸念され、一貫して所
内から警告を発してこられました。また、同研究所の実験指し止めを求める予研=感
染研裁判(詳しくはhttp://village.infoweb.ne.jp/~yoken/ をご覧下さい。)にお
いても、原告側(住民側)証人としても、証言をされています。
今回問題とされた「週刊文春」の記事や、著作「科学者として」は、2000年7月25日
に裁判が結審(2001年3月頃判決予定)したことを受け、ご自身が見聞きしてきたこ
とを述べられたものです。国立感染症研究所(感染研)の安全対策においては、立地
条件についても真剣に考慮すべきで、国家公務員として国民に迷惑はかけたくない、
という信念に基づき行動してこられました。

■ 「厳重注意書」の内容
今回の「厳重注意書」には、新井氏の言動は、「当研究所(注;感染研)の研究内容
や運営実態を歪曲し、幹部職員を事実に反して誹謗中傷する内容を発表したことは、
当研究所の信用を著しく傷つけ、公務の円滑な遂行に支障を来たすものであり、誠に
遺憾である。」と述べられています。
何が「歪曲」「誹謗中傷」にあたるのか、極めて抽象的であり、一方的に決め付けを
行っています。

■ 不誠実な歴代幹部達
同時に、1997年に裁判の一環として行われた国際査察において、倉田毅氏(当時感染
病理部長、現副所長)が、アメリカ人2名の査察者の署名を偽造し、国民をあざむい
たことに代表されるような歴代幹部達の数々の不誠実な態度に対する反省のかけらも
見えないことは重大です。

■ 処分の実害
新井氏に対する「厳重注意書」の発令と、昨年11月24日に出されている、厚生省大臣
官房人事課長通達によって、新井氏の2001年6月の勤勉手当がカットされるという実
害もおきています。

■ 問題は新井氏個人に留まらない
このようなことがまかりとおれば、新井氏個人のことに留まらず、次のようなことが
懸念されます。
1) 国のやり方に批判的な人間が発言できなくなってしまう。
2)研究者の自由な言論活動を奪ってしまう。
3) 取材者の取材の自由を奪ってしまう。
4) 公務員に対する「能力査定」によって、厳罰主義がはびこることになる。
などです。

◆抗議行動の要請
私達は今回の処分を認めることはできず、次のような要請を国立感染症研究所長 竹
田美文氏、厚生労働大臣 坂口力氏に対して行います。上記の事柄を踏まえ、以下の
ような内容を含んだ文面を各位作成くださり、E―mail、FAX等で竹田美文氏、坂口力
氏に対してお送りいただければ幸いです。また、お送りいただいたものを、下記、本
田までお送りくだされば幸いです。

☆要請文☆
国立感染症研究所細菌部主任研究官 
新井秀雄氏に対する「厳重注意書」を直ちに撤回してください。

◆アピールの送付先:
宛先: 国立感染症研究所長 竹田美文
Fax: 03−5285−1193
E-mail:yoshit@nih.go.jp
郵送:〒162―8640東京都新宿区戸山1−23−1
要請文の書き出し: 国立感染症研究所長 竹田美文 様

宛先: 厚生労働大臣 坂口力
Fax: 03−3595−2020
E-mail :www-admin@mhlw.go.jp
郵送:〒100−8916東京都千代田区霞ヶ関1−2−2
要請文の書き出し:厚生労働大臣 坂口力 様

連絡先;〒164−003東京都中野区東中野5−11−8メゾン小滝台B1
    TEL&FAX 03−5338−9490  
    E−mail  toyama@amail.plala.or.jp
    新井秀雄さんを支える会 事務局 本田孝義
URL http://member.nifty.ne.jp/atsukoba/arai/


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