Hobo Nikkan Itoi Shinbun 社長に学べ! おとなの勉強は終わらない。vol.6  株式会社パソナ社長 南部靖之×糸井重里

株式会社パソナ代表取締役グループ代表であり 社長の南部靖之さんは、 みんなが知らなかった 「人材派遣」という言葉を 一般に通じる言葉にした人です。 「一代で大きなビジネスを成した巨人」 「巻き物のような手紙を筆でしたためるらしい」 「都心一等地の地下に農場を作ったらしい」 伝説のような噂をいくつも持つ南部靖之さんと 糸井重里の元気が出る対談、おたのしみください。 人を活かす仕事 (題字 南部靖之)
南部靖之さんプロフィール




最終回 好きなことで生活していける!

  さきほど、南部さんは
農学者が10人いようが20人いようが
できなかったことが、
農家の方が1人いたことで実現できた、と
おっしゃっていました。
でも、試験問題をやったら
学者たちは満点に近い点数を取るでしょう。
理論だと負けかもしれないけど、
実際にやってみるタイプの人が
へっちゃらで、何かをやっていくのが
これからはいいんじゃないかなと思うんです。
 
そういう人、いっぱいいますね。
フリーター協会でもいいから支援組織を作って、
彼らが世の中を動かすようなしくみを
国家権力とは別に作るべきだと思うんです。
  何をやるにもすくまないで、
身のほどを知らない人たちが
どんどんやればいい。
そして、進んじゃってぶつかったら、
ごまかすか逃げるか戦うか
決めればいいと思うんです。
 
僕もそう思う。
  農業なんか、もう典型的ですけど、
きれいなことを言う人よりも、
具体的に「潰れないやり方」を取る人のほうが
僕は大事だと思う。

僕はよく言うんですけど、
飛行機の上から見たときに
日本ほど緑の国はないんです。
どこもかしこも木が生えてる。
砂漠のような場所は少ない。
ここで、ある種の農業と
自分たちの関係を作っていったら、
これは、第4次産業だと思うんです。
1と3を足した、農業なのに情報産業。
 
わかります。
インターネットがそれを可能にさせますよ。
うまく利用できれば「兼業」が実現できる。
みんなが一つの会社で朝から晩まで働いて、
それ以外は働いちゃダメだという
就業規則があるからできないんだけどね。

就業規則をまず企業が解放して、
みんなが東京にいなくても情報交換できる、
ということになればいいと思う。
そして、例えば金融関係の仕事をしながら、
スポーツをやりながら、絵を描きながら、
音楽をやりながら農業をやる。
  道路網の整備も
昔に比べれば進んできています。
だから、遠かった場所が、今は遠くない。
共同で菜園を持って、
そこにボート屋の親父みたいな人がいて、
畑を管理するんです。
「どのくらいあんた世話しに来るの?
 あ、全然来られないのね。
 だったらこうしようね」
というような契約をして、例えば
幼稚園が持つ畑、学校が持つ畑、
老人ホームが持つ畑、病院が持つ畑、というように
いろんな人や団体が
畑を持つことができるようになるといいなあ、
と思います。
今は、ほんとうに休耕地だらけですから。
 
たしかにね。
  国が休耕地をちゃんと解放したら、
廃材置き場にならずに、
そんなタイプの畑が
いくらでもできるんじゃないかな。
でも、そうなりますよね、いずれ。
 
うん、でしょうね。
販売代行みたいに
農業代行やってくれる人がいてね。
  そうなんです、そうなんです。  
そこで道路が安ければ、みんな行けるし。
今、JRも高いからJRも安くしてくれれば(笑)。
  そうですね。
その地域の町おこしになるかもしれない。
南部さんのお嬢さんみたいな
音楽やってる人たちの村ですよ、とか、
そういうのも作れるようにもなる。
 
できるかもしれないねえ!
  一流のミュージシャンはこの劇場、
二流の人はここ、
三流の人はいつか出たいなと思いながら、
みんな農業やってる。
それを観光客が見に行く。
 
おもしろいねえ。
  南部さんみたいな人が、
人の入れかえをどんどんやってってほしいな。
 
僕はとにかく流動することによって人を
活かしていきたいんです。

「南部さんのお仕事は、どういう仕事ですか」
と人に訊かれた場合には、
「人を活かす仕事」と答えているんです。

人を活かすために
農業もその分野の中に入れているんです。
音楽やりながら食べていける、
絵を描きながら食べていける、
スポーツやりながら
心配なく将来生活ができるような、
そういう流動雇用のインフラを
僕は作りたい。
  ええ、ええ。  
ずっと一企業の正社員でいて、
終身雇用というような、
もうそんな時代じゃない。
いろんな組み合わせをしながら
化学反応を起こしながら、
そして、だれもが自分の夢が実現できる社会を
作れればいいなと思うんです。
  南部さん、たくさんお話を
ありがとうございました。
予定の時間を超過してしまいました。
 
いやいや、おもしろかった。
いろんな話をして。
  すいません、1時間だけだったはずなのに(笑)。
ほんとうにありがとうございました。
 
(これで、南部靖之さんの「社長に学べ!」は
 おわりです。感想のメールを
 postman@1101.comまでどうぞ!)
2006-09-19-TUE
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