マックス・シェーラーはカントの人間学を批判し,現代人間学の基礎となる新たな人間学を確立した。人間科学の諸成果を導入し,理性だけに偏らない心情や情緒,間-主観的な「愛」の領域と人格,道徳など,生ける真理の探究者として人間を総合的に考察する。
カント『純粋理性批判』はルソーから強い影響を受けつつ完成された。カント哲学の前批判期から『純粋理性批判』の成立,その論理構成の全体像にまで踏み込んで,人間理性の限界と対抗性について,著者自身による思想を率直に表明した,他に類書のない意欲作。
カントの政治哲学に関わる論争的な言説を追究し,18世紀ドイツにおける公共圏の形成についてカント哲学の貢献を検討する。自由の権利の正当化,平等の扱い,国家の権威に関わる彼の法哲学と政治哲学の解明を通して近代哲学創始の瞬間をも明らかにする。
聖書をはじめ,ギリシア神話やホメロス,タキトゥスなどを典拠とし,古代から同時代に至る106人の波乱に富んだ女性たちのエピソードを生き生きと描き出す。ラテン語原文を全文収録し,ルネサンス研究の基礎を築く。〈イタリア・ルネサンス古典シリーズ1〉
江戸時代初期,多くの明人が王朝交代の混乱を避け,来日した。本書は,尾張藩に仕えた渡来明人,陳元贇に焦点を当て,主著『老子経通考』の分析を通し,近世日本思想史でも未開拓な老子思想の受容を解明する。日中文化交流史にも一石を投じる画期的業績である。