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May 7, 2024

N響 ドラゴンクエスト・コンサート ~そして伝説へ…~

N響 ドラゴンクエスト・コンサート
●ゴールデンウィーク最終日の6日は、東京芸術劇場で下野竜也指揮による「N響 ドラゴンクエスト・コンサート ~そして伝説へ…~」。チケットはあっという間に完売だったそう。前半がすぎやまこういちの交響組曲「ドラゴンクエストV」天空の花嫁~「序曲のマーチ」、エルガーの組曲「子どもの魔法のつえ」第1番~「序曲」「メヌエット」「妖精と巨人」、交響組曲「ドラゴンクエストIV」導かれし者たち~「海図を広げて」「栄光への戦い」、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1919年版)~「カッチェイ王の魔の踊り」「こもり歌」「終曲」、後半が交響組曲「ドラゴンクエストIII」そして伝説へ…(1987年N響録音版)。ドラクエとクラシックを組合わせたプログラムなのだが、こうして聴いてみると、両者は地続きの関係にあると感じる。いわば「冒険」をテーマにした20世紀オーケストラ名曲集というか。ドラクエの音楽がすでにクラシック音楽化しつつあるともいえるし、逆にこの並びで聴くとエルガーやストラヴィンスキーがゲーム音楽的にも聞こえてくる。エルガーのメヌエットは魔物に襲われた後の廃墟となったお城の音楽、ストラヴィンスキーの魔王カッチェイは大ボス戦の音楽、みたいに。
●ドラクエ3と4といえば初代ファミコン時代。プレイ時にはむき出しの電子音で曲を聴いていたわけだけど、作曲者がイメージしていたのは壮大なオーケストラのサウンド。そのイマジネーションが現実化していたのがこの日の演奏で、ドラクエの音楽ってなんてカラフルで情感豊かな音楽なんだろうと実感。「王宮のロンド」とかラーミアのテーマを聴くと、ぐっと来る。
●客席の熱量が半端ではなかった。演奏中、だれも下を向かずに、みんな舞台を凝視している。なかなかこういう公演はない。アンコールに交響組曲「ドラゴンクエストV」の「結婚のワルツ」。楽員退出後も拍手が止まず、なんと、下野さんのソロ・カーテンコールに。
●この公演のプログラムノート原稿を執筆。さらに、有料ライブ配信(アーカイブあり)があったのだが、休憩時のトークコーナーでゲスト出演させていただいた。かつてドラクエにハマった者としては光栄な限り。はぐれメタル級の経験値を得られた気がする。

May 5, 2024

ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2024

ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2024 ホールA
●5月3日から5日にかけて、東京国際フォーラムを中心にラ・フォル・ジュルネTOKYO2024が開催。今年、地下のホールEが復活してお祭り感が戻った。やっぱりあの場所でなにかやってないとラ・フォル・ジュルネらしさがない。有料公演の会場はホールA、C、D7、G409。G409が復活(今回は行ってないけど)。
●いくつか聴いた公演のなかから特に印象に残ったものを。感心したのは5日のキッズのためのオーケストラ・コンサート(ホールC)。横山奏指揮群馬交響楽団で、司会と歌が塚本江里子。伊福部昭の交響ファンタジー「ゴジラvsキングギドラ」から「ゴジラ」、外山雄三の管弦楽のためのラプソディ、ホルストの日本組曲、文部省唱歌「こいのぼり」、普久原恒勇作曲・吉川安一作詞「芭蕉布」、伊福部昭「シンフォニア・タプカーラ」から第3楽章。日本を題材とした名曲集としてふつうに大人が楽しめて、なおかつ子どもをひきつけることができるプログラム。そして塚本江里子さんの司会がすばらしすぎる。「ポンキッキーズ」第11代目歌のおねえさんなのだとか。子どもたちに向けた語りが巧みで、飽きさせない工夫が感じられる。指揮の横山さんも子どもに対する接し方が上手。これは3歳以上入場可で、0歳児コンサートとはまた違った可能性を感じる(それでも泣いている子どもはいる、もちろん)。大型スクリーンの使い方なども含め、すべてにおいてキッズコンサートとして洗練されており、ノウハウの蓄積を感じる。
●ちなみに外山雄三のラプソディといえば八木節であり、八木節といえば群馬。群馬交響楽団によるオーセンティックな演奏の実現だ!
●3日のマリー=アンジュ・グッチのソロ(ホールC)はスクリャービンのピアノ・ソナタ第5番、ラフマニノフのショパンの主題による変奏曲、プロコフィエフのピアノ・ソナタ第6番「戦争ソナタ」という、LFJにしては重いプログラム(70分あったうえにアンコールまであった。ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲より)。ホールCはピアノ・ソロ向けとはいいがたいところもあるのだが、それでも充実。プロコフィエフの6番の躍動感と諧謔性が聴きもの。あとは5日のエル=バシャと若いエルミール弦楽四重奏団(ホールC)。最初に四重奏でウェーベルンの緩徐楽章を演奏して、それからシューマンのピアノ五重奏曲。白熱してスリリング。ぱっと盛り上がってすっと終わるのがLFJのいいところ。
●天候に恵まれたのもよかった。ネオ屋台村のMIKAバインミーがおいしくて、2回食べた。
●今回も当日配布プログラムの曲目紹介原稿をいくつか書いた(無署名原稿)。

May 2, 2024

ラヴェル「マ・メール・ロワ」の「パゴダの女王レドロネット」について

●ラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」といえば、「眠りの森の美女」や「美女と野獣」「親指小僧」といった童話を題材にした名曲としておなじみ。が、この組曲で唯一、第3曲「パゴダの女王レドロネット」はどういう話か、日本ではほとんど知られていないのではないだろうか。なにせ元ネタのドーノワ夫人の「緑の蛇」の日本語訳が入手困難なので、レドロネットとは何者なのか、そしてどういうストーリーなのか、簡単にはわからない。あちこちの解説を読んでも、記述が混乱気味だったりする。そこで! この「緑の蛇」とはどういう話なのかをONTOMOの拙連載、おとぎの国のクラシック第10話でご紹介した。実は「緑の蛇」はそこそこ長い話なのだ。正直なところ、少々冗長で、読んでいて「ああ、このへんは刈り込んでリライトしたいなあ……」という気分になる。新訳が出ないのも納得。
●で、どうやって「緑の蛇」を読んだかといえば、昭和5年刊行の「仏蘭西家庭童話集 第2巻」(ドルノア夫人著/長松英一訳/改造社)を国会図書館デジタルコレクションを利用して読んだ。このサービスは強力。著作権の切れた書籍が大量にデジタル化されており、容易に閲覧できる。ただ、昭和5年刊行とあって、一部、日本語がわかりづらいところがあったので(現代ならそんな訳にはしないよなあ、みたいなところ)、そういう場所はネットで見つけた英訳を参照した(これもDeepLなどの力を借りて)。
●ONTOMOにも書いたけど、予想外だったのは「緑の蛇」の「蛇」とは、実際にはドラゴンを指しているということ。翼を持つと記述されているので、ワタシの感覚ではそれは蛇ではなくドラゴン(竜)だ。蛇は気味が悪いけど、ドラゴンだとカッコよくない? だいぶイメージが違う。英題は The Green Serpent。serpentって蛇だよな、って思うじゃないすか。楽器のセルパンと同じ言葉だし。でも待てよ、英語で蛇と言ったらsnakeじゃない? さて、snakeとserpentはどう違うのか。そんなのは英語力のある人には常識かもしれないが、ワタシは知らなかった。学研のKiminiブログによれば、snakeは一般的な蛇、serpentは大蛇、とくに神話などで出てくるような大蛇を指す。さらに小学館プログレッシブ英和中辞典の記述では、serpentに「ヘビ;竜,(神話上のヘビに似た)爬虫類」と、明確に竜を含めている。そうだったのかー。
●大蛇と言えば、モーツァルトの「魔笛」冒頭場面や、ワーグナー「ニーベルングの指環」にも出てくるけど、もしかしてあいつらもドラゴンなの?
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●明日より連休。ラ・フォル・ジュルネがはじまる。

May 1, 2024

パリ五輪出場権を獲得! U23アジアカップ準決勝 U23ニッポン対U23イラク

●五輪最終予選を兼ねたU23アジアカップ準決勝は、U23ニッポン対U23イラク。準々決勝のカタール戦は「負ければ五輪出場権を失う」という厳しい状況だったが(選手たちは尋常ではない緊張を感じたとか)、この準決勝は勝てば出場決定、負けてもプレイオフがある。そんな余裕を反映してか、選手たちはのびのびとプレイ。相手にも同じことがいえるわけで、見ておもしろい好ゲームになった。結果は2対0で完勝、オリンピック出場を決めた。決勝の相手はサウジアラビアを下したウズベキスタン。
●大岩監督率いるU23ニッポンは4-3-3の布陣。対するU23イラクは本来の4バックではなく、ニッポン対策で5バックを敷いた。有名クラブ所属の選手が多いフル代表ならともかく、U23相手でもニッポンに対して守りを厚くしてくるのは少々意外。ただし、ディフェンスラインは深くなく、「引いて守る」という戦い方ではない。結果的にこれがニッポンに幸いした面はあって、中盤で比較的自由を得た藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)が無双状態。ラインの裏のスペースをたびたび脅かす展開に。藤田はマリノス時代から足元の技術の確かさと視野の広さがすばらしいと思っていたが、順調に成長を遂げている模様。近い将来、フル代表に定着するのでは。あとは左ウイング平河悠(町田)の突破力も印象的。ゴールは細谷真大と荒木遼太郎。イラクでは7番のアリ・ジャシムの突破に迫力あり。
●イラク相手となるとフィジカルではかなわないかと思いきや、このU23は高さと強さで負けていない。大きいのだ。特に序盤は当たりを強くしようと申し合わせていたのでは。技術も高く、スピードもあり、本当にたくましい好チーム。
●でも、このチームから本番のパリ五輪に選ばれる選手は何人いるんだろう。代表ウィークではないので、このチーム自体がベストメンバーではなく、本番となればほかに何人もの有力候補がいる。しかも久保建英みたいなフル代表の選手も入ってくるかもしれない。そして、オーバーエイジ枠3人が加わる。しかも五輪の登録枠はわずか18人。出場権を獲得したこのチームとオリンピックのチームの顔ぶれが大幅に異なることは必至。この大会が五輪予選を兼ねない、純粋なU23アジアカップだったらいいのにな……と思わずにはいられなかった。世の中で「オリンピック」という存在があまりに大きいため、こんな歪んだ仕組みができてしまっているが、本来ならオーバーエイジ枠などあってほしくない。オリンピックがU23の大会ではなく、O35のマスターズ的な大会になってくれればいいのに……といつも思う。

April 30, 2024

セバスティアン・ヴァイグレ指揮読響のブラームス、コルンゴルト、ベートーヴェン

●26日はサントリーホールでセバスティアン・ヴァイグレ指揮読響。プログラムはブラームスの大学祝典序曲、コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲(ロザンネ・フィリッペンス)、ベートーヴェンの交響曲第4番。先日の「エレクトラ」で壮絶な演奏を聴かせてくれたヴァイグレと読響だが、今回はそれに比べればぐっと軽やかなプログラム。とはいえ、大学祝典序曲にはその勢いが少し残っていたかも。学生歌由来の曲だが、通俗的というよりは格調高い。この曲、一昔前に比べると聴かれなくなっている気がするが、やっぱり楽しい曲だなと思う。コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲では、ロザンネ・フィリッペンスが明るくすっきりした音色で、終楽章は痛快。オランダ人らしくかなり長身。アンコールにエネスコの「ルーマニアの様式による歌」。ベートーヴェンの交響曲第4番は小ぶりの編成で、スタンダードな正攻法。第2楽章の頂点の築き方がおもしろかった。重すぎず、軽すぎずのバランスで端正だが、キレよりはまろやかさが勝った感。
●2階中央最前列に高円宮妃久子さま臨席。読響名誉顧問なので。サッカー・ファンにとっては日本サッカー協会名誉総裁としておなじみ。スタジアムでお見かけしたことはなんどかあるはずだが、コンサートホールでは初めてかも。
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●radikoで村上春樹の「村上RADIO 特別編~小澤征爾さんの遺した音楽を追って」をオンデマンドで聴いた。本日21:03まで聴取可能みたい。いちばん印象に残ったのは、村上春樹が小澤征爾に「なぜ征爾さんがオペラを指揮すると歌詞が聞きとりやすいのか」と尋ねたら、こんな答えが返ってきたという話。「あれね、簡単なの。歌手が歌い出すときに子音と母音の間に少し隙間があるでしょう。そこに音をすっと入れていけばいいんだよ。それだけ」。えー。

April 26, 2024

ともに前半で退場者が出た五輪最終予選のU23カタール対ニッポン、ACL準決勝のマリノス対蔚山現代

●今週はミッドウィークにサッカーの国際試合が続いた。どちらもライブ配信では観れなかったのだが、奇しくも前半40分頃に退場者が出て延長戦に入るという展開がまったく同じ。



●ひとつはパリ・オリンピックの最終予選を兼ねたU23アジアカップ準々決勝、U23カタール対U23ニッポン。開催地がカタールなので完全アウェイ。これに勝たないとニッポンは五輪に出場できないのだが、近年、カタールはもはやアウェイで勝てる気がしない相手。久々に五輪出場権を逃すかも、と思っていた。が、1対1で迎えた41分にカタールのゴールキーパーがラフプレイで退場。これで楽になったと思いきや、ひとり少ないカタールが2点目を奪ってリード。その後、ニッポンは2対2に追いつくが90分で決着がつかず延長戦へ。さすがにひとり少ないカタールに余力はなく、延長戦でニッポンが2ゴールを奪って勝利。オリンピック出場に王手をかけた。でも、前半にひとり減ってもカタールはこれだけ戦えるのだから、本当に強い。



●もう一試合はアジア・チャンピオンズリーグの準決勝第2戦、マリノス対蔚山現代。先週のアウェイゲームでは韓国の蔚山が1対0でリード。よく1失点で済んだなという内容だったが、ホームでのマリノスは別のチームのように躍動した。前半30分までに植中朝日、アンデルソン・ロペス、植中朝日と立て続けに3ゴールを奪った。が、ここからがカオス。蔚山に1点奪われた後、前半40分にセンターバックの上島にレッドカードが出されて、PKまで与えてしまう。これを決めて蔚山が2点目。2試合の合計得点が3対3になり、あとはひとすらマリノスが耐え続けた。延長に入っても耐えきって、PK戦に。なんとこの試合、蔚山は43本のシュートを打った。しかも枠内シュートが26本! シュート練習かというくらいに打たれまくったが、マリノスのキーパー、ポープ・ウィリアムはPKを除けば1失点しかしていないわけで、鬼神の働き。J1での実績が乏しい選手だったが、マリノスに来て大ブレイクした感がある。
●PK戦もすごかった。マリノスも蔚山も4人目まで全員が成功して、蔚山の5人目をポープがスーパーセーブ。マリノスは5人目でエドゥアルドが決めて決勝進出。現在のリーグ戦の勢いを考えれば、マリノスのACL決勝進出は驚きだろう。決勝の相手はUAEのアル・アイン。アル・アインは西地区の準決勝で、ネイマールらスターを擁するサウジのアル・ヒラルを破った。

April 25, 2024

クリストフ・エッシェンバッハ指揮NHK交響楽団のシューマン

クリストフ・エッシェンバッハ NHK交響楽団
●24日はサントリーホールでクリストフ・エッシェンバッハ指揮N響。オール・シューマン・プログラムで「ゲノヴェーヴァ」序曲、チェロ協奏曲(キアン・ソルターニ)、交響曲第2番。ときにはかなりアクの強い表現を聴かせるエッシェンバッハだが、今回は作品とぴたりと共鳴して圧倒的なシューマンに。オーケストラからすごい音が出てきた。深くて重厚なのだが、しばしば輝かしい。造形も独特。軋みながら進むといった趣で、どんどん白熱する巨大な音楽。そしてほの暗い。協奏曲のソリスト、キアン・ソルターニは豊かな音色。アンコールに自作を弾くといって、激しいビートに乗せて次々と変化に富んだパッセージを繰り出す。荒っぽい曲だったが、曲名は「ペルシアの火の踊り」と後で知って納得。自身のルーツにちなんだ曲のよう。やはり白眉は交響曲第2番で、胸のすくような爆速スケルツォから、深く没入するような第3楽章へのコントラストが見事。
●で、第3楽章が終わったところで、ホールの天井のほうからゴゴゴゴゴという轟音が聞こえた。あ、地震か、と思ったのだがほとんど揺れを感じない。エッシェンバッハは意に介さない様子で第4楽章に入った。どこか遠くで大きな地震があったのか(また能登じゃないといいけど……)、それとも突風とか竜巻みたいなものが上を通ったのか、いろいろ気になってしまった。でもその場でできることはないので、緊張したまま音楽を聴き続ける。終演後、携帯の電源を入れて、やはり地震だったのだと知るが、茨城県北部震源で大きなものではなかった。東京は震度2だったけど、それであんな音が鳴るとは。
●コンサートマスターを前半は郷古廉、後半は川崎洋介(ゲスト・コンサートマスター)が務めた。前後半で席を入れ替わる珍しい形。後半、しばしば腰を浮かせて全身でリードする川崎氏の姿が熱かった。

April 24, 2024

阪田知樹(ピアノ) B→C バッハからコンテンポラリーへ

阪田知樹 B→C
●23日は東京オペラシティのリサイタルホールでB→C(ビートゥーシー)阪田知樹(ピアノ)。全席完売。このシリーズにふさわしい意欲的なプログラムで、バッハとコンテンポラリーという軸に加えてイタリアがテーマになっている。前半がマルチェッロにもとづくバッハの協奏曲ニ短調BWV974からアダージョ、バッハのイタリア協奏曲、ブゾーニ「エレジー集」から「イタリアへ!」、リストのBACHの主題による幻想曲とフーガ、後半がブゾーニの「偉大なるヨハン・ゼバスティアンによる小ソナチネ」、マイケル・フィニッシーの「我ら悩みの極みにありて」(1992)、ビューロー~リスト編のダンテのソネット「いと優しく、いと誠実な」、ポウル・ルーザスのピアノ・ソナタ第1番「ダンテ・ソナタ」(1970)、ジェラール・ペソンの「判じ絵、ローマ」から「ペンナを読んで」(1991〜95)、アイヴズの「スリー・ページ・ソナタ」。多彩。洗練された技巧と音色表現の妙ですべてが聴きものというべき充実度。
●前半、「イタリア協奏曲」が明快でみずみずしい。後半はモダンな作品が並んだが、もっとも印象的だったのはポウル・ルーザスの「ダンテ・ソナタ」。この日のプログラムのなかでは唯一、長めの作品で、2楽章構成。晦渋な作品ではあって正直長さも感じるのだが、なにしろ「地獄篇」なので。第1楽章では強靭な打撃の連続から硬質なリリシズムが立ち昇り、第2楽章では陰鬱さがやがて宗教的恍惚へと昇華される。力量ある奏者あってこその聴きごたえ。続くジェラール・ペソンの「判じ絵、ローマ」から「ペンナを読んで」は音数の少ない抑制的な表現が微細なニュアンスを作り出す。アイヴズ「スリー・ページ・ソナタ」はあらかじめ本編に組み込まれたアンコールかなとも思ったけど、本物のアンコールがあって、レジス・カンポの「星月夜 〜 マルチェロ・バッハによる」。この日の冒頭に演奏されたマルチェッロ~バッハの協奏曲のアダージョの枠組みにゴッホの「星月夜」のイメージを重ね合わせた抒情的な作品で、円環を閉じるようにきれいに終わった。
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●ベルリン・フィルの2024/25シーズン・プログラムが発表された。25年6月に山田和樹がデビュー!レスピーギ「ローマの噴水」、武満徹「ウォーター・ドリーミング」、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」というプログラム。大成功しますように。ほかに日本人では25年3月のメータ指揮の公演で、ソリストとして2011年生まれのHIMARIが登場、ヴィエニャフスキのヴァイオリン協奏曲第1番で独奏を務める。

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飯尾洋一(Yoichi Iio)

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