朝のドラめもん

2024/04/27

お題「決定会合があって為替も飛んだので簡単に(続きは連休中に)」

はいどうもどうも、本当は早起きしたかったんだけどヘロヘロで無理でしたわ。

でもって為替様
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-26/SCHLQRT0G1KW00
円が158円台、指標発表後に下げ加速−介入警戒ライン割る
船曳三郎、楽山麻理子、鈴木克依、森 茂生、大塚美佳
2024年4月26日 23:37 JST 更新日時 2024年4月27日 5:45 JST

→ニューヨーク時間帯の終盤に円安がさらに加速
→日銀はハト派すら驚くサプライズ、サクソ・キャピタルのチャナナ氏

『26日の外国為替市場で円相場は対ドルで約34年ぶりの1ドル=158円台に下落した。日本銀行が金融政策の現状維持を決定したことを受けて円安が進行。植田和男総裁の定例会見にも目新しい内容はなかった上、米経済指標の発表を受けて円売りが一段と強まっている。市場では政府・日銀による円買い介入への警戒感が高まっている。

ニューヨーク時間終盤に、円は対ドルで一時1.8%安の158円44銭まで下落。神田真人財務官の過去の発言から介入が意識される水準も割り込んだ。植田総裁の会見後に円は急速に買い戻され、154円99銭を付ける場面もあったが、一時的な反発で終わった。』(上記URL先より)


〇展望レポートの全体感自体は結構強気になっているのですが・・・・・・・・

本日はショパンの事情でそんなに時間がないのでまずは政策ポイントじゃねえかと思われる部分を。

・「先行きの金融政策」に今後の政策調整を明記しているんだが相変わらず例の文言は残るの巻

今回の声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240426a.pdf
当 面 の 金 融 政 策 運 営 に つ い て
2024年4月26日
日 本 銀 行

『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。』

『無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す。

なお、長期国債およびCP等・社債等の買入れについては、2024 年3月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施する。』

なお書き付きのシンプルバージョン。、これを見て昔を思い出すのは円債老人会会員となりますw

例えばこんな感じですね
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2011/k110428a.pdf(2011年4月声明文)

もっと昔だとこんなのとか
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2007/k071113.pdf(2007年11月声明文)

2011年4月って展望レポート会合で、展望レポートがある時は情勢判断について展望レポートで記載しているから声明文自体は「次回会合までのディレクティブ(金融市場調節方針)」になります。では2007年11月ってなんですねんと言いますと、このころは「金融経済月報」が公表されていて、情勢判断に関しては金融経済月報で出すから声明文には別に書かんでええじゃろという話だった訳ですな。

ということですので、次回会合の声明文の場合はディレクティブ+情勢判断の文言、が掲載されることにはなるのですが、さてここで微妙なのが「金融政策運営に関して」の部分です。

1月決定会合(まだQQE+YCC+マイナス金利やってた時)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240123a.pdf

3月決定会合(YCCとマイナス金利が解除、QQE自体はどっちなんだかよくわからんモード)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240319a.pdf

でもって今回(URL再掲)と来たわけですが
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240426a.pdf

声明文には今後の金融政策運営の話がないわ、と思ったらよくよく見たら展望レポートの方に記載があって、最後のところに記載がありますよね。

・・・・・ということで今朝は取り急ぎその比較でもアップしようかと思いまして。


・先行き金融政策運営に関する文言の変化を見てみましょう

まずは前の枠組みだった1月を比較しやすくなるので出してみる。

『日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。

「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』(1月声明文)

後半がいわゆるフォーワードガイダンスと緩和バイアス文言(躊躇なく云々ね)。前半は「粘り強く金融緩和を継続していく」という説明をしていますよね。そらまあQQE+YCC+マイナス金利政策の枠組みだったからこうなるんですけど。


でもって3月の枠組み変更でこれがどうなったかというと、声明文項番1の後半になります。

『日本銀行は、引き続き2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、短期金利の操作を主たる政策手段として、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する1。現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』(3月声明文)

脚注1はオーバーシュートががコミットメントの廃止についてです。

金融政策の先行き運営に関しては「経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する1。」となっているのですが、そこに「現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」とあります。

何回かアタクシこの駄文で書いたこの「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」というそもそも主語が何だかわかりにくい(英文だと「日銀は予想する」になっている)のがあって、じゃあこの文言は枠組み変更前のように「2%物価目標達成のために積極的に金融緩和を推進する」という意味になるのか、というとここだけ取り、かつ「日銀は予想する」の英文見るとそうじゃないよね、となるのですが・・・・・・・

ここで話をさらに曖昧にするのはこの前段のところに「日本銀行は、引き続き2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する1」というのがあることでして、ここの文章をどう読むか、というのが面倒でして、字面通りに解釈すれば「情勢に応じて適切に」なのでコンディショナルな文言でデータディペンデントっぽくも見えるのですよ。

ですから実際の情報発信において、この「データディペンデント」を中心に説明すれば、3月以前の「緩和バイアスの掛かった政策運営ではない」ということになるのですが、その後の植田さんの説明を聞いていますと、「2%達成のために緩和政策を継続する」という説明になっていました。

例えば3/19記者会見ですと最初は声明文文言通りの説明だったのですが、途中で
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240321a.pdf

3ページ中段の質疑応答でこのような説明を植田総裁は行いました。

『従って、物価・経済見通しに従って適切な政策金利水準を選んでいくということになると思います。ただし、その際に、現状、2%の物価の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至ったと申し上げましたけれども、例えば予想物価上昇率というような観点からみてみますと、まだ 2%には多少距離があるということですので、そのギャップに着目しますと、先ほどの普通の金融政策を行ううえでも、緩和的な環境を維持するということが大事だという点は留意しつつ、普通の金融政策を行っていくということになるかと思います。』(この部分のみ直上URL先2024/03/19植田総裁会見より)

ここにあるように「緩和的な環境を維持することが大事」という話になりますと、これは3月声明文の表現からは緩和バイアスに踏み込んだ説明になるわけです。

そうなりますと受け止める方としては、ああつまり枠組みは変わったし、植田さん「普通の金融政策」とか言ってたけどまだまだ異次元金融緩和の延長戦なのね、という解釈になりやすそうな話だし、挙句に4月に輪番も減らない(むしろ市中発行減額に対応しなかったので事実上の増額措置を行った)という状況ですから、日銀のアクションそのものも緩和バイアスがあるんだな、とまあ思う訳ですよ、実際に日銀はその部分を明確化していないで曖昧にしたまま4月会合に突入したんですけど。

(野口さんもそうだけど野口さんはもともと緩和積極派なのでそこは個人の見解で整理可能)


でもって今回は金融政策運営に関しては展望レポート基本的見解の最後の部分に記載があります。『4.金融政策運営 』の最終パラグラフ、本文8ページ目(PDFも8枚目)

『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。

以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(4月展望)

3月声明文と同じなのは「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」というのと、その次の「2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。」という部分ですね。

コンディショナル文言、と字面通りに読めば読める3番目の文(日本銀行は〜以下)の前に来ているのが、今回は前回と違って「見通し通りに推移すれば金融緩和の強度を下げていきます」っていうのがありまして、ここを明確化しまず方向性としてそっちだ、というのをより明確化したわけですな、前回声明文はそこがどっちなのか微妙でしたけれどもここを明確化。

しかしここで相変わらず中途半端なのが「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」でして、見通し通りに推移していったらいずれ物価安定目標は達成されるし、その時は当然ながら政策も中立的に近いものになっている筈(そもそも緩和がないと物価安定していない、というのは物価安定の達成ではないのだから)だけど、今はその遷移過程にあるのですよ、という話なのかが分かりにくいままなんですよね。

まあ野口審議委員の言い方を借りれば「緩和継続が必要条件」ということなのか、単純に政策の調整過程においてしばらくは緩和的ですわ、という話なのかがまあ今回も微妙ですけど、ただまあ前回の場合はその後の情報発信によってどちらかというと前者寄りっぽいものに見えてしまった訳ですが、じゃあ今回はどうなのかというと謎ですよね。

そこでこの文章の最初の部分が新しく入っていますが、「先行きの経済・物価・金融情勢次第であり」とデータディペンデントというのをこっちでも入れているんですよね。

すなわち、最初の部分と最後の部分で「データディペンデントでコンディショナルですよ」というのを入れているのですから、字面通りに解釈すれば「前回会合よりも緩和バイアスが下がっている」ということになる。というのが本来の解釈になるはずなんですよね。


・・・・・とはいえ、この後の情報発信と、長期国債買入は別に減らしませんという情報発信を見てしまうと、やっぱり緩和バイアスじゃねえか、というのもありまして、結局おまいらどっちですねんという話だし、まあ野口審議委員の「緩和は必要条件」みたいな話も飛び出すのを見ていると、この辺りって実は政策委員会のコンセンサスがちゃんと取れてないからこういう鵺みたいな文章を出して、その文言をちまちまいじりながら正常化バイアスを強めていこうとしてるんじゃないのかな、って思ったりもしました。

という個人の邪推をしたところで本日はショパンの事情でこの点だけで勘弁してつかあさい。







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