朝のドラめもん

2024/04/23

お題「植田総裁の円安云々発言はやっぱりヘッドラインバイアスはありそうだが/市場メモ/野口審議委員佐賀金懇その2」

さあもりあがってまいりました!!!!!!!
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-22/SCCRAIT0G1KW00
円が対ドルで下落、一時154円80銭台−約34年ぶり安値更新
Robert Fullem、Vassilis Karamanis
2024年4月23日 1:37 JST 更新日時 2024年4月23日 1:56 JST

『22日のニューヨーク外国為替市場で、円相場は一時1ドル=154円80銭台に下落。34年ぶりの円安・ドル高を再び更新した。』(上記URL先より、以下同様)

はいいんですけど、

『市場では、日本銀行が25−26日に開催する金融政策決定会合に向けて政策への関心が高まっている。終了後には経済・物価情勢の展望(展望リポート)が公表され、植田和男総裁が記者会見する。』

とのことですがさて・・・・・・・・・・・・


〇例の円安云々の会見録が出ていたのでクリップクリップ

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240422a.pdf
植田総裁記者会見(4月18日)
――G20終了後の鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田総裁 共同記者会見における総裁発言

―― 於・ワシントンDC
2024年4月18日(木)
午後2時31分から約21分間(現地時間)

・例の円安云々発言

『【問】
植田総裁には、最近の為替の円安なんですが、輸入コストの上昇を通じて物価に上昇圧力を加えた場合に、既に高まりつつある「第二の力」、いわば賃金と物価の好循環、これと合わさると物価の上振れのリスクが高まる可能性があると思うんですが、この足元の円安の動きがそうした輸入コストの上昇を通じて物価にどう影響を及ぼし得るのか、またそうした動きが次の金利の調整のタイミングにどう影響するのかについて教えてください。』

なるほど引っ掛けでも何でもなくてちゃんと直球質問ですね。でもって回答。


『【答】
私からは、為替の円安方向の動きが輸入財の国内価格の上昇を通じて、おっしゃったように場合によっては「第二の力」とわれわれが呼ぶインフレーションの部分、あるいは基調的物価上昇率に影響を与えるという可能性は、それはあり得ると思います。』

ほうほう。

『そこについて無視できない大きさの影響が発生した場合は、場合によっては金融政策の変更もあり得るということだと思いますが、』

まあここですね反応したのは。でもこの部分ってこの後もありまして、

『現状その辺りをどのように評価しているか、例えば 1 月以降の円安の動きについて、来週になりますか、決定会合があって展望レポート、新しいものを発表しますので、その中で取り上げて数値的にもお示しするということになるかと思います。』

という回答をしていて、ええええええ足元の円安の影響加味するって名指しで言っちゃうのおおおおって感じですが、ここも何ちゅうかまあ微妙な表現だなと思うの。

というのはですね、展望レポートでは(当たり前なんですが)前提となる為替相場(だけじゃないですけど)には「前提条件が別に共有されていないので各委員の判断に任せる」という建付けになっていまして、その建付けをベースにした場合「展望レポートの中で取り上げてお示しする」ってえのは中々大胆不敵な説明になっているんですよね。植田さんどうもこういう時の説明が一々微妙でして、この説明だって「現状その辺りを〜」以下の説明全部不要で、あくまでも「データディペンデント」を前面に出して「今後出て来る経済物価金融情勢のデータを点検しながら判断していくことになります」とかフワッとした原則論だけ言ってりゃいいんですよ。なんでこう一々余計なサービスフレーズつけるのかねと言いたいんですけど、1年経過しても全然この傾向が治らないどころか最近更に悪化しているように見えるので、たぶんこれ本人は「上手に市場とコミュニケーションが取れている」っていう自信満々モードという大いなる勘違いをしているんジャマイカとしかもうしあげようがない。

でまあ現状の評価であれば別に円安だけじゃなくて、というかもっと大事な評価軸は賃金と物価の好循環とやらの筈なんで、こうやって円安と質問されてそのまま円安で返すのではなく、「為替市場だけではなく経済物価情勢を1月からのデータを点検して現状の評価を行いたい」とでも言えばいいのに、なんでわざわざヘッドラインになるような言い方をするんだか、って感じです。


・金利上昇を止めようとして為替をぶっ飛ばした訳ですねわかります

この質疑応答(ともう一つ)も味がありまして、

『【問】
今回マイナス金利を解除して初めての国際会議になるかと思うんですが、変更後の政策を説明されたのであれば、どのように説明されたのか、解除後の会見で普通の政策というふうにおっしゃっていましたが、その辺り伺えますでしょうか。また各国からどういう受け止めがあったかというのも伺えればと思います。』

ふむふむ。

『【答】
過去 2 日間ですかね、様々な機会をとらえて、場合によってはバイの面談というかたちでいろいろな首脳の方とお会いしました。その中で私どもの 3 月の政策変更についてもかなり関心をお持ちの方はいらっしゃったので、特別どこかに絞ってというわけではないですが、3 月の記者会見でご説明したような内容の話を私から何回か説明する機会がありました。基本的には皆さん、市場等に大きな混乱なく政策変更が消化されつつあるということにある種の満足感といいますか、安堵感を示されていたというのが私の受け取った感じです。』

「市場等に大きな混乱なく政策変更が消化されつつあるということにある種の満足感」ってのがまあキーワードというか何というかで、こんなの植田さんのイタコ芸であって、相手なんぞは別に何とかショックが起きなきゃどうでもよいという程度の認識だと思うのですが、とにかくこの「市場に混乱」というのを植田さん物凄い気にしてたので、何とかショックにならなくて良かったね、というのを受けてまあこういう話になるんでしょ、という所です。

でまあそうやって金利上昇警戒した結果が為替に出てしまう、という国際金融市場のトリレンマ状態に思いっきりなっておるわけなのですが、この期に及んで短期金利の0が0.5とかになって何の問題がありますねんというお話に対して、為替市場が植田さんのいる間に20円以上円安に飛んでいる訳でして、要は通貨を対ドルで2割近く減価させている、という方がどっからどう見ても問題になりませんかねえ、というお話なんですが、そこの物事の軽重についてどのようにお考えなのかというのは訳分らんですけど、まあ訳分らんと言っても植田さんそういう道を歩んでいるんですが覚悟のほどは大丈夫なのかよとはおもってしまいます。、


こちらの質疑のフォロー質問があって一個飛んだところからになりますが、

『【問】
植田総裁に伺いたいんですけれども、先ほど 3 月の政策変更について、他の国の方からの反応で、大きな混乱がなく政策変更がされたということで安堵感を示されていたというご説明があったと思うんですけれども、今後の金融政策の運営について何か期待感だったりですとか、意見だったりですとか、そういったのを聞かれる機会というのはありましたでしょうか。』

と来てからの、

『【答】
そうですね、例えば中銀総裁同士で、おまえの国はこうした方がいいんじゃないかということは普通おっしゃらないですので、今回もそういうのはなかったです。ただ、今後、仮に利上げをするとしたらどういうタイミングで、どういうデータをみてなのかとか、そういう種類の質問はいくつかあったと記憶しています。』

という回答なのですが、「仮に利上げをするとしたら」みたいな話をわざわざ言い出しているのは、まあこれは植田さんが利上げする気が満々というよりは、単に二人羽織の後ろの人(すなわち日銀大本営あるいは新館7階)が為替をけん制して下さいとお願いしているのか、まあそうじゃなくても円安を助長する情報発信をしないでくれとお願いしているのか、というようなものを勝手に感じ取ってしまいました。わざわざこんな「利上げするなら」とか言うの植田さんの今までのハトハトチキンジジイと整合性が取れないんですけど、まあ植田さん突然変なところで変な勇気がモリモリになってハトハトチキンじゃない「植田先生」に戻る時があるので二人羽織効果なのか急に勇気が出てきたのかは判断付かん。


まあ何ですな、上記の円安云々もまあ別にそりゃそうよという話ではある(基調物価が上がるならそれは2%達成の確度とやらが上がるという事になるでしょうから)ので、為替牽制で余計なハトハト発言をしないように気を付けている節はあるけど、ベンダーヘッドラインバイアスがちょっと掛かっている気もしますのでまあ真意は謎って感じですがどうせ金曜に答え合わせがありますんで。



〇東京レポレートが昨日も上がっていますね

うむ
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

2024/4/12 0.065 0.079 0.053 0.051 0.051 0.049
2024/4/15 0.065 0.062 0.053 0.051 0.050 0.045
2024/4/16 0.044 0.041 0.046 0.047 0.045 0.039
2024/4/17 0.036 0.019 0.032 0.035 0.037 0.032
2024/4/18 0.026 0.015 0.028 0.031 0.029 0.026
2024/4/19 0.033 0.043 0.031 0.031 0.031 0.030
2024/4/22 0.054 0.068 0.042 0.038 0.036 0.034

先週は短国発行日スタートになる12日のトモネのレートが上がった後月曜火曜と順調に下がったと思ったら水曜木曜は盛大に下がったのですが、今週は19日に引き続きでレートが上昇しておりますな、まあこのあたりはその瞬間瞬間の需給を反映している話なので細かく確認することに意味があるのかというと長期債とかの話しからしたら余程とんでもないことが起きていない限りにおいてそこまで深い意味はない筈なんですが、しかし先週とパターン違いますな、とか思った次第です。ま、先々週の金曜は7.9bpが発射台で先週の金曜は4.3bpが発射台なので発射台の差なのかもしれませんけどね。

ただの局地的需給だとは思うのですが、一定のパターンが出来ている訳でもなさそうですし、短期の諸々に関しては今の超大量超過準備の存在、というのと、その裏にある日銀が国債を買い過ぎている問題、というのがあって、それに加えて参加者のルールが変更になっている(金融機関の流動性規制とかIOSCOのMMF規制とか)ので新しいムーブというのがどうなのかアタクシまだ全然つかめていなくて正直ムツカシネーしか毎日言っておりません誠に申し訳ございません。


〇そうは言いましても野口審議委員の佐賀金懇ネタで

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240418a.htm
挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
佐賀県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 野口 旭
2024年4月18日


・まあしかし置物一派がこれを言い出すのはさすがにヘソが茶を沸かす

目先の金融政策のところだけネタにするのも何ですのでその先を少々、ということで次の小見出しになりますが、この小見出しだけで笑えるわけでして曰く、

『4.賃金上昇を伴う「物価安定の目標」実現への展望』

『(1)「物価安定の目標」実現の必要条件としての賃金上昇』

・・・・・・・・・いやー必要条件ですってよ。ここで皆様にはかつての浜田宏一大先生の主張を確認して頂きたい、と思うのですが、ダイヤモンドオンラインがアーカイブ化してしまってこのページは有料会員じゃないと読めなくなってしまったんですけど(URL見れば分かるように6ページ目になるのですけれども1ページ目でしたら読めます)。

https://diamond.jp/articles/amp/30804?page=6
2013.1.20
浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー
「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換
インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」

この6ページの小見出しに『名目賃金は上がらないほうがよい その理由はあまり理解されていない』とあった(こんな貴重な証拠物件なんだから公開しろよと思うけどダイヤモンドオンラインがアーカイブにしてて会員じゃないと読めないという極めて遺憾な状態ですしつこく言いますが)んですけれども、すっかりこういう話をしていたのはなかったことになって「賃金上昇が物価目標実現の「必要条件」」とまで言い出すようになっているのがもうお前ら何言ってるのという話で、もともとお前らは(そういや「リフレ派バナー」って見なくなったなあ)物価目標を達成すれば世の中が好転して賃金だって上がるようになる、って主張だっただろいい加減にしろとしか言いようがないので、ちょっと次の金懇の時に誰か聞いてくれませんですかねえと思うのですけど。



でまあこの内容とか次の小見出し『(2)賃金と物価の上昇を阻んできたゼロノルム』の内容とか別になんか読むべき話をしている訳ではないので正直どうでもよいのでパスしますが、その次の小見出しに参りますと、

『(3)「賃金と物価の好循環」確認のための二つの注目点』というのがありますので何に注目しているのやらと思って読みますと、

『現時点の日本経済で最も重要なのは、いうまでもなく、物価・賃金のゼロノルムを払拭し、「賃金と物価の好循環」を可能な限り早く実現することです。そのためには、少なくとも以下の二点の確認が必要です。第一は、サービス価格が着実に上昇し続ける状態が復活することです。第二は、製造業でもとりわけ中小企業において、賃上げの販売価格への転嫁がスムーズに進展していくことです。』

マネタリーベースとかそういうのは見なくて良いんですねわかります。でまあ以下説明があるのですけれども、だいたい内田副総裁とかの金懇での説明と大差ない説明になっていまして、リフレ派とかいう異端の経済学やってるんだから何かもっと面白い事言え(某ジンバブエ先生みたいな方向で面白い事を言われてもそれはそれで困る説はありますが)と思うんですが、上記のようにまあつまらん話しかございませんで、言ってること基本同じなのに何で3月反対したんだよという話ですわな。



・そもそも「金融緩和を継続しないと物価安定が達成しない」というのが理屈として矛盾しているんですけどね

という疑問にお答えしているのが上記の次の小見出しになりまして、

『(4)今後も重要な緩和的金融政策の継続』

ときましたが、

『日本ではこれまで、デフレ期以降に定着した「物価も賃金も上がらない」というゼロノルムが企業や家計に根強く残っていたこともあって、大規模金融緩和を通じた労働需給の大幅な改善にもかかわらず名目賃金は十分に上昇せず、そのため物価上昇率が2%近傍で安定することもありませんでした。しかしながら、昨年の春季労使交渉を契機として、足もとではかつてない賃上げの波が生じ始めています。それは、半ば岩盤化していた物価と賃金のゼロノルムがようやく崩れ去りつつあることを示唆しています。』

これが置物理論の大勝利だ、と言ったらその面の皮の厚さに敬意を表するところですが惜しくも野口先生そこまで図々しくなくて(置物とか若田部とかジンバブエなら堂々と置物理論大勝利というと思うけど)、

『このゼロノルム払拭の契機となったのは明らかに、「第一の力」すなわちコロナ禍後の世界的インフレという外的ショックでした。』

っていうのはちょっとだけ謙虚で好感しようと思ったのですが・・・・・・・・

『しかし、それが「第二の力」すなわち広範な賃上げの波として引き継がれてきた背後には、これまでの粘り強い大規模金融緩和を通じた労働需給の改善という「下地」があったということを忘れてはなりません。』

>大規模金融緩和を通じた労働需給の改善
>大規模金融緩和を通じた労働需給の改善
>大規模金融緩和を通じた労働需給の改善

・・・・・・・・??????????????????????????????

やはりこう来たかという所ですが、ということは何ですか人口動態の変化による労働需給の構造変化も大規模金融緩和の効果なんでしたら大規模金融緩和止めると少子高齢化が解決に向かうって事ですかとか無茶苦茶な言いがかりをこっちも付けたくなるわという所ですなキャハハ。

『それは、各種調査において、賃上げの理由として多くの企業が第一に掲げるのが「人材の確保」であるという点からも明らかです。』

それは「労働需給のタイト化が賃金上昇圧欲になった」ことの背景説明にはなっていますが、大規模金融緩和が労働需給改善の主因であったことの説明にはつながらないので「明らか」ではないですが何か???

でですね、最後が特にひどくて、

『その意味では、日本銀行が今後も緩和的な金融政策を継続することを通じて労働需給の適切なバランスを保ち続けることこそが、2%の「物価安定の目標」の達成のための必須の要件であると考えます。』

と言ってるんだが、そもそも論として「物価安定の達成」というのは「景気が通常のサイクルで1サイクル回っている感に物価が目標値(2%)付近で平均的に推移し、その間経済主体の行動は物価目標(2%)近辺での物価変動を前提にした行動を行っている(=インフレ期待がアンカーされている」)」という状況なのですから、「金融緩和が継続していないと物価安定目標が達成できない」というのがそもそも定義として間違っているお話でして、金融緩和による人為的支えが無くても物価が安定推移しているのが物価目標の達成なんですから、「達成の必須の条件」というのはおかしい。

ということでして、これなんか大本営でもうっかりこういう言い方に近い事言うケースがあるんですが、物価目標達成という状態になっている時には本来は金融緩和は必要が無くて、ただまあ経済サイクルのなかで足元では緩和状態が必要、というのであればそれはまあ金融緩和政策を実施することはあっても、それは目標達成云々とは別次元の問題、ということになる訳です。

もちろんピンポイントで「今まさに達成されました」というのがリアタイで分かる訳がないので、前からの流れから見て緩和政策が目標達成したと思われる時点でも継続している、というのが現実にあるとは思いますけど、それは目標をオーバーシュートするリスクを抱えている状態な訳で、そう安易に「目標達成までバシバシ緩和しておく」みたいな情報発信をするのはアカンヤロというかそもそもバイデフェニションでおかしかろう、と思うのですがどうしてこうなるんですかねえ、学者先生だというのに(まあリフレ派という時点で学者いや何でもありません)


でまあ結局会見はクソどうでもいいのでパスします。



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