2001 May NO.107

LIVE REPORT

客電が落ちた。よくもまあここまで、というくらいびっちりと埋め尽くされた会場からオイコール。意外なまでに低くて太い歓声。緑の照明に照らされてメンバー登場、そのまま幻想的な雰囲気の中、『ラフメイカー』でライブは始まった。
はっきり言って、今までまともに彼らのライブを見たことがなかった。それこそ対バンで古いELLに出てた時も、いきなり即完だった昨年12月のイベントライブも。だから、恐ろしいスピードで膨張する周囲の情報、チケットを手にいれることの出来なかったファンの残念そうな声、そしてこの幻想的なライブの始まりに、たった今まで出会ったことない怪物のようなイメージを持っていた。

M2の『ノーヒットノーラン』でいきなり泣き出したくなった。きっと単純にメロディのせいだ。勝手に膨らんだイメージで素直に聴こえないはずなのに、その複雑な気持ちをよけて、Vo.G藤原の声が自分に飛び込んでくる。オーディエンスの頭、頭、頭が揺れて、まるでメンバーは雲の上にいるようだ。UPテンポの『グロリアスレボリューション』でみんなの拳があがる。手があがるんじゃない。拳だ。雲海がいきなり草原になる。でもGtを低く構えたままマイクに噛み付く藤原の正体はまだみえない。キミはやはり怪物?

ここでMC。藤原「女の子!」「男の子!」と呼びかける。「オー!」という男の子のレスポンスにガッツポーズで答える。嬉しそうだ。

「優しい声してるんだ」、ミディアムの曲でそう思わせておいて、『アルエ』のリズムでフロアは激しく波立つ海になる。『とっておきの唄』、やばい、本当に泣きそうだ。悲しいことなんて何にもないはずなのに、MCをはさんで『ベストピクチャー』のBa直井のコーラスが気持ち良くてまた悲しくなる。背の高いGt増川の落ち着いたプレイスタイルと対象的に、ストラップをいっぱいまで下げたパンクスタイルでみんなを煽り続ける直井の前にもたくさんの拳が向けられる。
「新潟からずっとツアーでまわってきた。短い期間でいっぱいライブをやるのはこれまであまり好きじゃなかった・・・ためてためてやるのがライブだと思ってたから。でも今回はいろんなところで、ホントにいっぱい人っているんだなって思って。その人達全てに自分の唄が伝わったかどうか、いや、伝わったり伝わらなかったりなんだけど、そんなことはどうだってよくて、でもなんとか伝えたいと思ってがんばってって、それが生きてくってことだと思うし・・・」意外なまでに正直な発言。一瞬怪物が一人の人間の姿に変わった。歌を伝えたい、って思いは、どれだけたくさんの人の前に立っていても変わらないものなんだろうか?

そんなMCに続いて最新シングルの『天体観測』。オーディエンスのボルテージは最高に達し、無数の拳がまっすぐ藤原に向けられる。“見えないモノを見ようとして 望遠鏡を覗き込んだ”彼は、彼の声で人の心を覗こうとしているんだ。みえようがみえまいが、そんなことはどうでもいい。声を振り絞って覗こうとしているんだ。そんな訴えに答えるように大きな口をあけて一緒に歌う男の子、だめだまた泣きそうだ。見た目のイメージなんて消え去って、優しくて、悲しくて、いい歌だな。そんな思いに浸るヒマもなく次の『リトルブレイバー』、みんな飛ぶ飛ぶ。

フロアから「サイコ―」って声が飛ぶ。「最高か?ホントか?」「これより上がないっていうのを最高って言うんだぜ、分かってるか?」誰にたいしても媚びない、それでいてやさしくまるで諭すように話す藤原。そうえば曲と曲のあいだでも、甲高い歓声が飛ぶ事がほとんどない。けっこう静か。でも静まり返るというよりは、何かを待っている期待感で会場の空気が満ちている。彼の言葉をみんな待ってるんだ。

その後はもうアップテンポナンバーが続く。グリーンのカノーパスのDrキットがクールな升もアクションが激しくなる。そして一気に疾走してしまった。いったんハケるメンバー。さっそくコールがかかる。やっぱり男の子の声が目立つ。あれっ?客電がつき、BGMが流れる。でもアンコールは鳴り止まない。いきなり客電が落ちてメンバーが再び登場。ステージ上でふざけあうメンバー、やっと彼らの年齢相応の無邪気な表情。でも演奏が始まるとやっぱり独特のムードに持っていってしまった。ホントに不思議だ。アンコールは一曲で終わってしまったが。Tシャツを湿らせたまま帰ってくお客さんの満足そうな顔、顔、顔・・・。

とにかくオープニングからオーディエンスのテンションが高かった。バンプのライブアクトへの期待、欲求、それがライブが終わるまで途絶えることがなかった。むしろそのテンションがメンバーを怪物にみせるのだろうか。バンドの実体をみたいという意地悪な思いは、そのあまりのテンションにさえぎられ、圧倒されてしまった。怪物の実体って・・・?。






 

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BUMP OF CHICKEN 遂に2DAYS決定!!
8月6日・7日
お問い合わせはジェイルハウス 052-936-6041まで!

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