プレイヤーたちに聞く!デジタルサイネージ広告最前線〜LIVE BOARD編〜[インタビュー]
デジタルサイネージ広告市場はコロナ禍からの回復で市場規模は2019年を超え、特に都内の主要エリアでの大型ビジョンや、小売店でのデジタルサイネージの設置が進み市場が拡大している。3rd Party Cookieの規制が話題になる中で、注目を集めるデジタルサイネージメディア。タクシーサイネージメディア「GROWTH」やオフィス喫煙所サイネージメディア「BREAK」など複数のデジタルサイネージメディアを運営する株式会社ニューステクノロジー代表取締役 三浦 純揮が市場を取り巻くプレイヤーたちにインタビューを行い、今後の市場動向を読み解いていく。 ※対談・インタビューの参加者は次のとおり。 株式会社 LIVE BOARD 櫻井 順 代表取締役社長(カバー写真) 株式会社ニューステクノロジー 三浦 純揮 代表取締役 記事提供:株式会社ニューステクノロジー コロナ禍での逆境が事業成長へ 三浦:御社はDOOHを運営されていますが、LIVE BOARDさんが出てくるまで、DOOHという言葉自体が市場になかったような気がしていますがいかがでしょうか? 櫻井氏:まずDOOHとは、Digital Out of Homeの略で、交通広告、屋外広告、商業施設などに設置されたデジタルサイネージを活用した広告媒体を指しています。弊社は、設立の2019年から、このDOOHを活用した広告販売を推進しておりましたので、DOOHという言葉の認知に貢献できたのでしたら嬉しい限りです。 また、昨今ではプログラマティックOOHという言葉も広がりつつあり、我々が得意とするOOHのプログラマティック広告がより活用されることを期待しています。 三浦:業界的にデジタルサイネージといったり、LEDパネルといったり、様々な呼び方がありますよね。呼び方もそうですが、昨今のOOH市場はコロナ禍前後で変化があったと個人的に考えています。櫻井さんはどのように感じていらっしゃいますか? 櫻井氏:そうですね、特にコロナ禍の前後で、よりDOOHの存在感が強まったと感じています。人流が減ることでOOHの魅力の1つである不特定多数にリーチすることが難しくなったことから、OOHに関しても広告主や広告会社がより効果の可視化を求める傾向が強くなりました。そのような需要に対して、当社は独自のデータを提供できましたし、コロナ禍での環境変化により、さらなる“データ化”にむけて会社としても舵を切るきっかけになり、技術面・事業面で成長することができました。 デジタルOOH、アナログOOHの真価 三浦:広告主にとって、効果の可視化は広告出稿の決め手の1つですよね。一方で、効果の可視化が難しいアナログのOOHが今後どうなっていくのかが気になります。 櫻井氏:世界の傾向を見ても、日本国内のDOOH化は進んでいくと予測しています。 DOOH先進国といわれるオーストラリアでは、DOOHとアナログの割合が7:3なのに対して日本国内DOOHは20%〜30%台のイメージですので、まだまだ伸び代はあります。 一方で、同じ広告を出し続けるアナログのOOHの強みは、常にその場所にある、その場所に行けば100%出会える部分にあり、その点を魅力に感じる広告主もいます。ですので、完全にデジタル化してしまうというよりは、デジタルとアナログは共存していくことになると考えています。 三浦:たしかにそうですね。渋谷のハチ公で例えると、ハチ公が1時間毎に別の動物になっていたとしたら、今のような有名な待ち合わせ場所には成り得ないですよね。やはり、その空間やその場所に存在し続ける強みについては僕も同意見です。 反対に、デジタル広告は取引が自動的に処理されていくので、いつ・どこに・なにが流れているかわからないという側面がありますよね。 OOHの魅力の1つである、その広告を“見た感”は数値化できるものでしょうか? 櫻井氏:はい、LIVE BOARDでは「世の中ゴト効果」と呼んでいるのですが、こういったことを実現するために必要なインプレッション数については調査結果が出ています。 https://liveboard.co.jp/information/202201000081.html 理論上では出せるのですが、イコール実感値というレベルになるまでにはもう少し時間がかかりそうです。 最適なフリークエンシーについては実際に広告主からもよく質問されるテーマですので、引き続き、人の生活動線上での中長期的なコミュニケーション設計について研究を重ねていきたいと考えています。 モーメント×クリエイティブで屋外広告の価値を最大化 三浦:改めてになるのですが、DOOHの魅力と今後の目標や戦略についてお伺いできますか? 櫻井氏: DOOHの魅力は、 ①ディスプレイの技術(解像度や3D等)向上で質の高い広告を届けることができる ②多様なクリエイティブや表現に対応 ③ターゲットに応じた柔軟な配信ができる この3点ですね。今掲げている目標は、TVやラジオなどマスコミ四媒体やインターネット広告などを含めて、全体の広告予算のうちのOOH予算である6%を伸ばしていくことです。そのためには、家の外(Out of Home)の接点をしっかり抑えるという意味で様々なロケーションや面との連携を進め、広告主のニーズに合わせて最適なプランニングができる環境を作ることが必要です。 三浦:アナログなOOHにも通ずることですが、②のクリエイティブ要素はとても重要ですよね。何を出すかよりも、どう出すか、どう表現するのかがOOH施策成功の肝ですよね。 櫻井氏:おっしゃる通りです。ただ屋外広告を掲示するだけでは、世の中ゴトとして“大きなうねり”を作り出すことはできません。クリエイティブ視点でDOOHを活用した成功事例としていつもご紹介しているプロジェクトがあり、ご紹介させてください。 マクドナルド プロモーション企画「ランダムマック」 これは、プログラマティック配信をフルに活用し、天気や時間、シチュエーションに応じて変化するQRコードを掲示した事例です。 QRコードを読み取ると、マクドナルドのメニューがランダムに表示され、スマホからそのままオーダーする仕組みで、2022/4/11(月)〜4/24(日)の実施期間中、2,074,334人の方にご参加いただきました。シチュエーションに合わせた広告配信を行うことで、認知だけでなくアクションにまで繋げることができた好事例ですね。 天気や時間の他にも様々なシチュエーションに合わせて配信することを「モーメント配信」と呼んでいるのですが、広告主の関連ニュースの直後に広告を放映したり、QRコードを読み込み、スマートフォン画面で作成したメッセージをリアルタイムで屋外ビジョンに表示するリアルタイムでの連携も可能です。 OOHの価値を可視化し、OOH全体予算を底上げ 三浦:OOHはリアルの場や空間で人との接点を作るので、リアルタイムでの連携であったり、ライブ感を提供できることで、より人々の記憶に残る施策ができますね。 こういった視点でプランニングされる事例が増えていくと、DOOHのシェアがさらに広がってきそうですね。なにか課題などは感じていらっしゃいますか? 櫻井氏:OOH業界全体で言うと今、追い風がきていると感じています。2021年のコロナ禍ではステイホームの状況下でテレビの広告出稿がやや回復しましたが、それ以降は依然として若年層を中心に視聴者は減少し続けています。また、デジタル広告でCookie規制が進む今、OOHの公共性の高さや、いつもその場所にある安心感や信頼感の価値を訴求していけたら、OOHがその受け皿に成り得るのではないでしょうか。 一方で課題としては、OOH媒体の一括管理ができない状況にあることだと考えます。元々、屋外広告の持ち主がビルのオーナーであったり、オーナーが点在しているんですよね。ですから、我々のようなプラットフォームが様々な場所・面との連携を強めていき、業界全体の横串を通す役割を担っていき、OOH業界の底上げを図っていく必要性を感じています。 OOH業界の底上げを図っていくためにも、LIVE BOARDとしてはテレビやデジタルでは担えない役割を可視化・データを蓄積しながら、テレビ・デジタル・DOOHのトリプルメディアでネットワークを拡げていきたいと考えています。
CPAを抑えた新規獲得にはAdvantage+ショッピングキャンペーン―AI時代にこそ求められる広告代理店の知見[インタビュー]
(左から、信山氏、竹村氏、久保氏) 機械学習を用いてパフォーマンスの改善を図るMetaのAdvantage+ショッピングキャンペーン(ASC)。登場から1年半、常にベストプラクティスを生み出し続けているのがセプテーニである。 Meta主催の「Meta Agency First Awards 2023」で「Best solution ASC部門」最高位のGoldを受賞していることからも、その実績が伺える。 セプテーニではどのように本プロダクトと向き合ってきたのか。ASCの強みや同社の運用体制について、Septeni Japan株式会社の担当者3人にお話を伺った。 (聞き手:ExchangeWireJAPAN 渡辺 龍) (Sponsored by Septeni Japan) ■Septeni Japan株式会社 ディスプレイグロース本部 第一ディスプレイコンサルティング部 課長代理 信山 祐馬氏 同 シニアコンサルタント 久保 隆世氏 統合マーケティング本部 メディア戦略推進部 エキスパート 竹村 優里氏 自動運用により、予想していなかった新規層を獲得 ―まずASCとはどのようなプロダクトなのでしょうか 信山氏:「Advantage+ショッピングキャンペーン」の略で、機械学習を用いたMetaのプロダクトの1つです。配信にあたっての初期設定が少ないながらも、見込みの高いオーディエンスにリーチしやすくなっているので、売上拡大を目指しているお客様に対して効果を発揮します。 ―活用メリットはどういった点になりますか 信山氏:シンプルに獲得効率が高いです。当社ではASCを導入しただけでアカウントの6~7割はCPAの改善が図れているので、ここは大きなメリットです。 また、新規ユーザーの開拓にも優れています。例えば、レディース服のプロモーションの場合、通常のキャンペーンであれば女性に絞って配信するのがオーソドックスな手法です。一方で、ASCはデモグラの指定ができません。そのためASCでは全体のユーザーからAIが最適なターゲットを選定し配信します。結果として、ASCを活用することで予想外にレディース服のプロモーションで男性の新規層が獲得できたというケースがありました。 ―レディース服が男性に売れるという結果は人間には予想しづらい点ですね 信山氏:今まで想定していなかった新規の層が獲得できたのは、機械学習の力によるところが大きいですね。EC系だけでなく業種を問わず効果が出やすいので、Meta広告を運用するうえでは主要な手法になっています。 ―通常キャンペーンとの違いはありますか 久保氏:ASCは手動の調整レバーが少なく、ターゲティングや配信面の指定は基本的にはできません。また、通常キャンペーンではクリエイティブを4~6本ぐらいを並走させますが、ASCでは最大150本と、多く用意することが推奨されています。こういった特徴から、クリエイティブの重要度が高くなっているとともに、より早く勝ちクリエイティブの発掘ができます。 ―細かいターゲティングを求めている広告主には不向きなのでしょうか 久保氏:確かにお客様によってはターゲットを絞りたいという声もありますが、そこは入稿するクリエイティブのデザインや訴求である程度コントロールできています。 例えば人材系の広告では、アルバイトに応募したい人と、正社員に応募したい人でインサイトが違うので、この2通りでクリエイティブを分けました。また、男性の応募率が高いという実績があれば、よりその層を獲得しやすいデザイン、例えば男性の人物画像を入れることで、ターゲティングをコントロールしている事例はありますね。 信山氏:そもそもASC単体でキャンペーンを回すことはほとんどありません。ASCではオーディエンスコントロールができないため、メディアの最適化に準拠した広い層にリーチし獲得を狙う目的で配信します。一方で、ASCの最適化だけではリーチできない層を通常のキャンペーンで配信ターゲティングを人為的に設定し、特定のユーザー層を狙い撃ちするという、2本柱で走らせることが理想です。 各部署の連携でベストプラクティスを探り当てる ―2023年にはMeta Agency First AwardsでASC部門を受賞されました 竹村氏:この賞はMetaが推奨する主要なビジネス領域で優れた実績を上げたパートナー企業を表彰するためのもので、今回セプテーニはASC部門で最もランクの高いGold賞をいただきました。2023年の通期でASCの導入率、アカウント数、売上などをもとに、ASCの普及に貢献したことが受賞に繋がったと思います。 ―受賞の背景には、セプテーニ流のASCへの向き合いかたがあったのでしょうか 竹村氏:それぞれの部署が自分の役割に沿って動いた結果だと思います。 私は社内でも少し特殊な役割を持っていて、まず媒体からの情報をすべて集約して、子会社も含めたセプテーニグループ全体に共有していきます。 情報が社内に散らばっていて、現場ではアップデートを知らなかった、ということがないように、当社では、しっかりと媒体ごとに情報の集約と共有を機能させることで、グループ全体の知識を一定以上に押し上げています。 ―媒体とは密接にコミュニケーションを取っているのでしょうか 竹村氏:普段から近い距離でお話しさせてもらっています。セプテーニでは新しいプロダクトを積極的に導入していることを媒体側も知っているので、リリース後いちはやく当社に共有してもらうことも珍しくありません。導入が早いぶん検証も早く進められるので、媒体の悩みに対して、その要因をフィードバックしながら二人三脚でプロダクトの形を固めていくこともあります。 信山氏:「これを検証してみたらどうですか」「これを試してみたけど駄目だった」という会話を重ねながらお互いに知見を広げていくことで媒体と関係を築いていくことは重要であると考えています。そこも意識しながら、新しいプロダクトにはまずは触れるようにしています。 その結果、Meta主催のData AI Summitというイベントにも招待していただき、実際に私も登壇もさせていただきました。 ―実際にASCではどのようにPDCAを回していったのでしょうか 信山氏:社内にはTSPJ(Transformational Strategy Project)という組織があり、ここで新しいプロダクトについての先進事例の創出などを進めています。ASCもローンチからこのプロジェクトが動き始め、年明けにはベストプラクティスが生まれていました。 ―ベストプラクティスの発見といっても、一筋縄ではいかなかったのではないでしょうか 信山氏:まずは媒体が推奨するお手本通りの150本のクリエイティブを用意することから始めました。その結果をもとに、動画と静止画でのCTRの違いなど、日々の運用の中で見つけたファインディングスを更に発展させていきました。 ただお手本通りに進めるだけではなく、一定の疑いは必ずかけるようにしています。もっと良い手法があるのではないか、では次はこっちをやってみようということの繰り返しですね。 久保氏:TSPJで全量データの蓄積ができていたので、どういったクリエイティブを止めるべきなのか、クリエイティブを何本用意すべきなのかといったロジック作りも早かったです。また、Metaにはフォーマットによってリーチするユーザーが異なるという特徴があるので、フォーマットごとにキャンペーンを分けるなど、早くから応用的な使い方も見つけられたのはTSPJがあったからこそでした。 ―クリエイティブの制作やオペレーションには、どのような体制で臨んでいるのでしょうか 久保氏:社内にクリエイティブ制作専門の組織があるだけでなく、制作に特化しているグループ会社もあるので、連携して良質なクリエイティブを量産することができます。Odd-AIという当社のAIツールを活用してクリエイティブの分析もしているので、質を担保しながらブラッシュアップのPDCAを効率的に回すことができています。 竹村氏:そのPDCAを支えるために、裏側のオペレーションのサポートもしていました。というのも、ASCは2023年の秋頃までバルク入稿ができなかったので、全て手動での作業でした。そこでグループ会社のFLINTERS(https://www.flinters.co.jp/)と独自のツールを開発して、広告入稿の工数を減らしました。 広告入稿チームからは、ツールによって入稿の煩雑さが体感として6割ほど減ったと聞いています。プロダクトのパフォーマンスを発揮するためには十分な広告量は必須で、それを支えるための基盤作りに貢献できたかと思います。 AI時代に問われる代理店の存在意義 ―セプテーニでは今後どのような展開を見据えていますか 信山氏:これまではダイレクトプロモーションのお手伝いが中心でしたが、最近ではアッパーファネルのお客様にも領域を広げています。電通との協業も含めて、お客様の体感価値をさらに上げていきたいです。 また、広告運用においてAIの活用が主流になっていくことは間違いないです。代理店としてはいかに早くトレンドを掴み、ナレッジを蓄積できるかどうかが問われてくると思っています。 ―AIが高度化していくなかで、どの辺りが広告代理店の腕の見せ所になるのでしょうか 信山氏:「言語化」と「クリエイティブ」が鍵になります。確かにAIに配信を任せ、ある程度の実績を出すことは誰にでもできます。そのあとの部分、実績をもとに「なにが起きているのか」や「次はどの層を狙うのか」といった原因と戦略を言葉で伝えられるかが大きな付加価値になります。 また、最終的にユーザーとの接点になるクリエイティブについて、どのようにユーザーに訴求して獲得に結び付けるかをいかに深掘りできるかは大事なところです。 ―AI任せにしているだけでは新たな価値は提供できないということですね 信山氏:AIを活用していれば必ずいい結果がでるというわけではありません。例えば機械学習が進むことでリーチが収斂していき、ユーザーを取り切ってしまうケースも起こります。そのときには思い切って違う訴求のクリエイティブに変更したり、学習をあえてリセットしたりするなど改善を図ることが必要です。 AI時代だからこそ、まだまだ人間の存在は不可欠です。AIに乗っかるのではなく、AIを駆使することで新たな価値を創出していきたいですね。 ・セプテーニへのお問い合わせ https://ln.septeni.jp/XenG7B5 ・今後のウェビナー予定 https://www.septeni.co.jp/seminarevent/ ・セプテーニメルマガ登録フォーム https://bit.ly/3JC32I0 ※有益な情報発信を心がけておりますので、是非ご登録下さい!
インターネット広告の計測と評価の闇、そしてあるべき姿―ATS Tokyo 2023イベントレポート(13)
デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2023」が2023年12月8日、都内にて開催された。 「インターネット広告の計測と評価の闇、そしてあるべき姿」をテーマとしたセッションには、UNICORN株式会社 取締役 井上 孝仁氏が登壇。 CPA、CPI、ROASなどの広告費用対効果の計測ができることはインターネット広告に期待されている大きな要素の1つだが、様々な要因で広告効果の計測精度が低下している状況となっている。この問題点についてスマートフォンアプリ事業者が広告を出稿するケースを事例として、その背景や今後の展望について、プレゼンテーションがなされた。 井上氏 UNICORNは全自動マーケティングプラットフォームを運営し、機械学習を用いたハイパフォーマンスな広告配信を実現している。井上氏は「今のデジタル広告業界は理想的な状態とは程遠いのではないかと思い、あるべき姿の実現に向けてサービスを提供している」と話し、インターネット広告計測全般に関わる問題点、評価の闇について取り上げた。 インターネット広告の大きな特徴としては、広告の費用対効果を計測できることが挙げられ、これが市場成長の一因にもなってきた。しかし、この費用対効果の計測について井上氏は「実際は正しく計測が出来ていない、もしくはしづらくなって来ているのではないか」と提起した。 この問題が起きている理由について、井上氏はラストタッチ計測に①成果判定の優先順位が広告識別子マッチングに寄っている②広告媒体毎に「タッチ」ポイントの基準がバラバラ③媒体間でラストタッチの奪い合いになっている④プライバシー配慮がないビジネス構造とそれら広告ID等の規制、など複数の課題点があると話す。 これらの課題に対応するため、井上氏は一部のアプリデベロッパーの間ではラストタッチ計測に代わり、「インクリメンタル(Incremental)計測」が注目されていることを紹介した。 インクリメンタル計測とは、広告施策を実施しないと発⽣しなかったであろう成果のことを指し、「(広告に接触したが)広告に非接触でも発生する予定だったコンバージョンへの投資を減らし、広告起因のコンバージョン=純増のコンバージョンをしっかりと計測・評価し、ここに最大限の投資をしていきたいと多くの人は考えるのではないか」と井上氏は呼びかけた。 UNICORNでも「インクリメンタティテスト配信機能」を提供しており、ビュースルーコンバージョンを対象として、トラフィックの一部にダミー広告を配信することにより、ダミー広告経由でどの程度のビュースルーコンバージョンが発生したかを計測・分析、評価をしている。ユーザーにダミー広告を配信しているにも関わらず多くのビュースルーコンバージョンが発生した場合は、その広告枠においてはオーガニックのコンバージョンを吸い上げている状況が想定されるので、広告配信の抑制や停止につなげることができる。 ここで井上氏は「インクリメンタル計測は専門性と根気が必要で難易度が高い」としながら、アプリ広告においてはインクリメンタル計測に特化したプラットフォーム『POLARIS』があることを紹介。日本ではまだまだ認知度が低い一方で、⽶国‧欧州の⼤⼿アプリデベロッパーを中⼼に導⼊が進んでいることを取り上げ、「UNICORNもPOLARISの導入支援をしているので、気になる方は声をかけていただきたい」と話した。 ExchangeWireJAPAN編集部とのトークセッションでは、編集部からインクリメンタル計測の具体的な使用イメージについて質問が投げかけられた。 そこで井上氏は「インクリメンタル計測はリアルタイムに計測ができる手段ではないので、従来のラストタッチ計測との併用や工夫が求められる」と踏まえ、「例えば、誤タップを誘発する広告枠や視認性が低いにも関わらずコンバージョンにカウントされている広告枠をレポートで確認し、除外していく作業も大事である。そのうえで改めて、インクリメンタル計測をして広告を再評価していくことをオススメしたい」と回答した。 本セッションの説明で使われたスライドやプレゼンテーションの詳細内容については、UNICORNのブログ(note)にて解説をしている。 【外部リンク・UNICORN Narrative. URL】
「ゲーム上でしか出会えない消費者が確実に存在する」―ネスレとGumGumが切り拓くゲーム内広告のブランディング活用[インタビュー]
ゲーム会社が出稿する獲得型のリワード広告が席巻するゲーム内広告市場に、ブランド広告という名の新風が吹き始めている。ブランド広告主はなぜゲーム内広告に注目し始めたのか。そしてゲーム内広告はブランディング施策においていかに機能するのか。先進的な取り組みを行うネスレ日本社とGumGum社に話を聞いた。 (Sponsored by GumGum Japan) ゲーム広告を選択肢としなければ機会ロスに ―自己紹介をお願いします。 小堺氏:ネスレ日本株式会社にて媒体統轄室マネジャーを務める小堺吉樹と申します。広告会社様と連携しながら最適なメディアプランを設計することが主な業務です。 テレビCMを通じた若年層へのリーチが難しくなってきたことに伴い、デジタルチャンネルを活用する機会が増えているのですが、広告プラットフォームによってユーザー体験は全く異なります。ユーザーの皆さまに広告をいかに受容していただけるかという観点を重視しつつ、それぞれのブランドが持つ課題やコミュニケーションの目的に応じて、メディアプランニングを行っていくことが求められています。 土居氏:コンテクスチュアル広告プラットフォームのGumGum Japanでセールスディレクターを務める土居博通です。ネスレ様には長らくお世話になっており、私を含むチーム体制を構築して対応させていただいています。 Junsoo氏:同じくGumGum Japanで広告オペレーション部署のマネージャーを務めるイ・ジュンスと申します。当社は自社プラットフォームを通じたフルマネージド広告運用業務とDSPを介したプログラマティック配信の双方を行っていますが、ネスレ様のゲーム内広告については後者の対応を行っています。 Yewon氏:GumGum Japanにてアカウントマネージャーを務めるチャン・イェウォンです。キャンペーンのスケジュール管理やクリエイティブ制作管理及びレポート作成などに従事するとともに、ゲーム内広告のプロジェクトマネージャーを兼任しています。 ―ネスレ日本様がゲーム内広告を出稿するに至った経緯についてお聞かせください。 小堺氏:可処分時間の中でゲームは一定の割合を占めていることは認識しており、そこに対してどのようにアプローチするのが効果的なのかは社内で常に議論をしていました。ゲーム上でしか出会うことができない消費者は確実に存在します。 ゲームを通じたコミュニケーションを選択肢として外すことは機会ロスに繋がると考え、当社では、eスポーツへの協賛やゲームコンテンツとのタイアップなどにも取り組んできました。ゲーム配信者によるライブ配信中に当社製品をご紹介いただくという取組みでは、想定を超える数の視聴とコメントが寄せられ、、ユーザーの皆さまのエンゲージメントの高さを目の当たりにしました。 2023年秋に刷新した「ネスカフェ」の新コンセプト「Make your world」では、若年層に「ネスカフェ」を”自分のブランド”だと思ってもらうという点に重きを置いており、GumGumのゲーム内広告を活用できるのではないかと考えました。 従来のゲーム内広告とは一線を画す非侵入型 ―GumGumが提供するゲーム内広告の概要をお聞かせください。 Junsoo氏: 2023年から開始したばかりのまだ比較的新しい広告プロダクトです。インタースティシャルやオーバーレイといった従来のゲーム内広告とは大きく異なり、ユーザー体験を妨げることなく、ゲーム画面の背景などにシームレスに溶け込む非侵入型の広告フォーマットを採用しています。クリック後のページ遷移は行わず、リアル空間の看板広告のような位置付けと捉えてもらってよいかと思います。 ゲーム内広告フォーマット例 資料提供:GumGum Japan ゲーム内の広告枠が何秒スクリーンに映ったか、スクリーンの何%を占めたか、などの厳格な条件を満たしたViewable Impressionに対してのみ課金する点も特徴的です。 Yewon氏:広告配信面となるゲーム媒体については、残虐なシーンやストーリーなどブランド毀損につながるような内容を含むゲームは当然のことながらネットワークから排除することでブランドセーフティを担保しています。 またGoogle Playの評価の平均が4.3以上であり、日本のApple Storeのランキングでも上位100位以内に位置するプレミアム媒体ばかりです。スポーツ、アクション、シミュレーション、レーシングなどのジャンルから約50媒体を網羅しております。 ―本キャンペーンにおけるゲーム内広告の効果についてお聞かせください。 小堺氏:本キャンペーンは、若年層の方々に「ネスカフェ」というブランドを知ってもらう、親しみを持ってもらうことを目的としていましたが、ブランドリフト調査を通じて該当する態度変容があったことを確認できました。 異なるターゲティング設定を行っている他のデジタル広告媒体との比較は難しいのですが、ゲーム内広告という新たなチャンネルを開拓できた点はポジティブに捉えています。 ―素朴な疑問として、ゲームに熱中しているユーザーは、ゲームの背景に映し出された広告に関心を向けるのでしょうか。 小堺氏:今回のキャンペーンでは、十分なブランドリフト効果を確認できました。一方で、どのような広告がどのように機能するかをより詳細に把握するためには、他の広告と同様に、継続的にブランドリフト調査を行うなどして検証していくべきでしょう。 Yewon氏:本プロダクトにおいては、ユーザーが広告を目にしていることを示唆するいくつかの厳格な指標を満たした際のみ発生するビューアブルインプレッション課金を行っています。当社としては、この枠組みを通じて、広告効果を証明していきたいと考えています。 土居氏:過去にはリアルなプロ野球の球場内に設置された看板とゲーム内のデジタル看板でどちらが消費者の印象に残ったかを比較する調査が実施されており、プロ野球中継の看板が表示される回数や時間がより多かったものの、ゲーム内広告の方が記憶には残ったとする結果が出ています。ゲーム内広告のアテンション計測の実証実験も実施されており、近い将来にアテンション指標に基づく最適化も実現したいと考えています。 より高度なPDCAの実現に注力 ―ゲーム内広告を通じたブランディングキャンペーンは日本市場ではかなり先進的な取り組みではないでしょうか。 小堺氏:ゲームはもはや特定の趣味ではなく、他のメディアと同じく日常生活に溶け込んでいると思います。事例に乏しいからといってチャレンジしないのではなく、むしろ積極的に消費者との新たな接点を模索することが企業やブランドにとって必要なのではないでしょうか。 Yewon氏:当社のネットワークだけでも数千万単位の広告在庫を保有しており、ユーザーの男女比は5:5です。ゲームユーザーはもはやニッチな存在ではありません。 Junsoo氏:ただし、ゲーム内広告に限らず、日本市場はややCPC・CPA至上主義であり、ブランディング施策全般に対する意識が低い傾向にあります。当社のゲーム内広告はそもそもクリック不可の仕様となっているので、CPC・CPA至上主義とはやや相容れない面はあるかもしれません。 広告代理店の皆様も日本市場の商慣習に則りながら日々の業務に忙殺され、新規のユニークな媒体や広告フォーマットにまでなかなか手が回らないという事情もあるかと思います。これらの課題も踏まえた上で、より良い広告配信環境を整備していきたいです。 ―ゲーム内広告は今後いかに発展していくのでしょうか。 小堺氏:ゲーム市場は今後も拡大していくと考えているので、ゲーム内広告を掲載する際の選択肢の幅も、今後さらに広がることを期待しています。ネットワークが広がれば、自社のブランドと相性が良い配信面やユーザーが広告を受容しやすいモーメントを選別するなどして、より細かい粒度での広告最適化が実現できると考えています。 土居氏:媒体の選別は少しずつできるようになってきました。小堺様が仰るように、広告運用のPDCAを回せるように機能を強化するというのが次のステップです。こうした環境を用意できれば、日本市場においてもゲーム内広告を通じたブランディング施策が盛り上がっていくはずです。
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