「はじめてのおつかい」は日本の伝統文化だった
○○ちゃん、いったいどっちに行ったらいいのかな……と、視聴者もハラハラドキドキするのが、醍醐味です(写真はイメージ)。『はじめてのおつかい! 小さな勇気の大冒険!』は1月8日(月)午後9時00分〜午後10時48分、日テレ系で放送。
日テレ系の人気番組『はじめてのおつかい』。
今年で17年目を迎えて、新春に第43作目を放送するのだが、最近、ちょっと気になるのは「過去のVTRが増えているのではないか」ということだ。


こんな物騒な世の中で、「はじめてのおつかい」をさせるのって、現実問題として、親にとってはすごく不安があるもの。それでもなお番組を存続させていく苦労はどんなことなのか。プロデューサーの岩間玄さんに聞いてみた。
「子どもをめぐる犯罪が増え、まちのあり方や子どもを取り囲む環境なども変わってきてますので、何百倍も気を遣う部分はありますよ」
かつてはシンプルに「おつかいにだしてみよう」というドキュメントだったが、今はまち、交通環境、家庭によってなど、多種多様な状況を考える必要性があると言う。

ところで、この番組の出演者たち、驚くのは、「募集を一切していない」ということ!
「いろいろな市町村を通して、幼稚園や保育園にアンケートを年間2万〜3万件ほど配布します。そのうち、回収できるのが5000〜6000件で、きちんと書いてくださった方にはスタッフが全部電話させていただき、さらに取材するのは500件ほど。
さらに、お母さんと話をして、実際にロケハンするのは300件ぐらいで、商店街、お母さんと子どもとの接し方、『おつかいを通してどうなって欲しいのか』という思いなどを聞いたうえで、実際にロケをするのが100件。最終的に放送になるのが7〜8件です」と、驚くべき手間をかけているのだそうだ。
「実は僕自身、この番組を担当する前は、応募するもんだと思っていたぐらいで、『こんなに大変なんだ!』ってビックリしましたよ(笑)」

ちなみに、一度連絡をとった家庭には、スタッフが「家族」感覚になるため、恒常的につきあいをすることも多いとか。また、視聴者からの「あの子、どうしてるかな」という問い合わせも多く、「過去VTR→現在の姿」という構成も一つの定番になっているのだという。
「僕ら自身、親戚のような感覚になるんですよね(笑)。それに、その子の『いま』だけでなく、まちのその後、この国のその後を記録していくという意味もあるんです」

実は、この「おつかい」というのは、日本独特の伝統文化なのだとか。

「アメリカなどでは、『お金を持たせて店に行かせるなんて信じられない!』というそうです。親の手伝いは、『労働』であって、『おつかい=いつかさせなきゃいけない教育の一環』というのは、日本ならではの考えらしいですよ」

今のヘビーな世の中で、はじめてのおつかいをムリと思う親が多いのも、「当然だと思う」と岩間さんは言う。
「そのうえで、『このまちなら、この人付き合いの中でなら大丈夫』というところもまだまだ日本にはたくさんある。『まだ日本も捨てたもんじゃない』と思える部分を伝えていく記録番組でありたいと思っています」

「はじめてのおつかい」で成長するのは子どもだけじゃない。むしろ、腹をくくって決断する親のほうこそ、大きな成長となるのかも。
(田幸和歌子)