十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)


戯れAI(24.04.26・金)

端っこから
辿り着いた
老いの慰み

四月ならば
エリオットの
残酷な仮面

啄木に詠む
老いて病み
いと悲しき

老いぼれて
馬車を引く
高村光太郎

返答などが
出来ないと
言う場合も

間違っても
気づくなら
凄いことに

空っぽ(24.04.23・火)

田舎住まい
軒端あたり
で見忘れた

祖父の庭の
陰性と陽性
手入れされ

躑躅や松の
飛び石伝い
無いと在る

カラダから
身体までの
行き帰りに

杖を携えて
立つ祖父を
白黒写真に

縁側を背に
足裏に響く
根刮ぎ體型

夏日の春(24.04.19・金)

庭の雑草が
賑やかなり
まるで初夏

咲き急げば
木瓜と桜が
隣り合わせ

どちら側の
所為でなく
自他ともに

生きのびる
虫と植物の
絡み合いに

道無き道を
辿り尽くす
視覚と聴覚

型から入り
抜け道探す
鶯の初鳴き

在るが儘(24.04.16・火)

過ぎて観る
今年の冬の
寒暖乱脈に

出来損なう
約束すれば
何れ反故に

真空地帯を
見間違えば
逆立しそう

持ち越せば
違えるだけ
乱れる徒花

手はじめに
日々の物事
弾むごとく

陽射し伸び
消されゆく
自在な選択

破れかぶれ(24.04.12・金)

止むを得ず
はじまった
一人暮らし

くつがえす
不意打ちの
地震の揺れ

部屋の隅や
納戸などに
使い切った

石や管球の
アンプほか
エッジ破れ

スピーカー
卓上PCに
ノートPC

処分すれば
身軽な春を
買えるかな

還り道で(24.04.09・火)

通院と薬局
終えた後の
春の息吹に

菜の花揺れ
水仙が聴く
蝶の囁きに

染っている
路傍沿いで
眺めている

白木蓮から
辛夷までの
違いのなさ

花弁や萼の
違いなどが
秘められて

生きること
裏がえして
生きている

愚か者に(24.04.05・金)

死に別れが
縁の切れ目
Sバークが

唄うドント
ギブアップ
オン・ミー

履き替えた
明るい色が
桜に似合う

散髪の手が
なつかしい
はさみの音

空気を入れ
今は居ない
乗り手の脚

髪を切るか
いっそ花見
か踏み迷う

花便り(24.04.02・火)

黄色が白へ
当たり前が
ほんとうは

当たり前だ
と思わずに
いられるか

自分に何が
起こるのか
ではなくて

起こったら
どうするか
対処が肝心

当たり前を
当たり前と
見過ごさず

手つかずの
日々の配慮
を忘れずに

手合わせ(24.03.29・金)

日々新たに
手を合わせ
花を供えて

普段着など
畳まれ方に
居た堪れず

そのままに
眺めるだけ
着替えても

起き抜けに
確かめ合う
手の温もり

できるかな
今日1日が
保てるかな

口癖だった
遠ざかる日
あざやかに

春待つ箸(24.03.26・火)

寒暖乱れて
庭の芽吹き
立ち迷って

ランダムな
壁紙写真に
懐かしい姿

手放せない
古いPCにも
隠れていて

何もかもが
一緒だった
ようなのに

料理だけは
違っていて
今更ながら

気づいても
三度三度の
食の手習い

生き残って(24.03.22・金)

物忘れなど
ぶりかえす
紅梅の寒さ

ガラクタの
PC機器など
梱包済ませ

配送業者に
渡した後で
入れ忘れた

申込書類が
4枚ともに
机に残って

やり残して
跡形無くす
片付け忘れ

経緯などを
詫状にして
メール送り

飲み友だち(24.03.19・火)

それとなく
庭木揺らす
日溜まりに

一番仕事で
庭の雪吊り
外されて春

文庫本なら
装い新たな
詩人の一冊

結婚を前に
飲み屋でも
本屋までも

ツケを全て
払い回った
懐かしい女

くぐもった
声と肌触り
瞳も濡れて

旬なども(24.03.15・金)

近親者から
懸案などが
順調との話

微かながら
背中を押す
出がけの風

暖かすぎる
バス車内に
乗客少なく

図書館でも
人はまばら
地震の余波

葉書一枚を
出し忘れた
間抜けでも

春キャベツ
ホタルイカ
買い忘れず

手振り足踏み(24.03.12・火)

鬱気味な冬
空き地には
黄色い花が

手先や足の
色目などが
定まらない

身体の縺れ
抜け出せば
春になるか

旬の物など
白木の一枚
板の寿司盤

北風の便り
舞い降りた
渡り鳥から

温かくなる
風に乗って
帰る頃には

伸展水(24.03.08・金)

自分自身も
よく分らず
まして相手

だってそう
だと思えば
暗中模索が

お互い様で
気が楽だが
思いがけず

分り合えた
なんて事に
遭遇したら

自分の中の
他者が驚く
奇遇なのか

口中に含む
水まで綻び
伸びやかに

そこはかと(24.03.05・火)

季節感なら
足踏みして
梅の花持ち

日がな一日
誰かと話す
事などなく

買い物など
の前後には
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朝は味噌汁
昼と夕べは
グラス酒に

好みワイン
更新し直す
老来の再来

読み書きに
聴くことも
リフレッシュ

閏の散歩(24.03.01・金)

湾曲気味の
道に気づく
よろめき感

出逢うまで
わからない
あうべき人

立ち止まり
橋上からの
地震の名残

手渡された
赤ん坊から
ほとばしり

言葉もなく
抱き留める
命のリズム

咲いて見て
から分かる
雑草の花に

縁の円周(24.02.27・火)

左回りから
右回りまで
違う速さで

心神喪失が
一回転して
心身一如に

賽の河原で
踏み迷った
我執の彼岸

頚椎降って
腰椎までの
並列痼りに

陸奥山道を
踏み替えた
バランス板

出会うまで
わからない
会いたい人

取り説なし(24.02.23・金)

手折り届く
枝梅が散り
急ぐ卓上で

浦島状態の
PCが環境に
取り残され

新規購入の
NBの画面が
老眼に合う

設定なども
老来に迫る
手習い始め

寒暖めぐる
回転木馬が
止めどなく

ピントなど
合うはずも
無い季節感

日和メニュー(24.02.20・火)

一人暮らしに
ようやく慣れ
ひとり外食も

図書館を後に
夫婦で訪れた
店に足が向い

躊躇いがちに
頼んでしまう
定番メニュー

なぜか麺類に
合わせ頂いた
日本酒の銘柄

フロア担当に
知り覚えられ
言わずもがな

なのに困るは
一本か二本か
定まらぬ独居

寒稽古(24.02.16・金)

面々の計らい
なんてことを
身体で受止め

二月の寒暖が
乱高下すれば
体調も戸惑い

庭の日陰から
とり残されて
溶け忘れても

除雪時の体で
後ろ下半身の
二面の三角形

スコップ握る
両腕が連動す
る三角形の面

膕がみちびく
左右の三角の
面を重ね歩き

繋ぐ緒(24.02.13・火)

きつい寒さ
折り畳んで
夕べの食卓

温もってる
グラスから
溢れる泡に

優しすぎる
執着転じて
我儘にまで

煩わしさに
挟み込まれ
遠ざけがち

感性を奪う
現実認識が
変わる経験

内側からも
外側からも
手放す幻想

老来探検(24.02.09・金)

登り降りや
滑走などが
遥か彼方に

縁が切れる
身を探れば
老来の自覚

覚束なくて
體の隅々が
物言いたげ

拾いあげて
言葉にする
ひとり問答

思い返せば
家族ひとり
それぞれに

稽古が試す
点と線から
面通しまで

冬ごもり(24.02.06・火)

屋内と戸外
そして個別
暖房の部屋

寒暖の差が
ありすぎて
戸惑う立春

読み書きと
聴くことに
収斂しがち

崩壊寸前で
立ち返った
揺れと擦れ

埋め合わせ
ができない
隙間風まで

吹き曝しの
庭木を繋ぐ
雪吊りの縄

おのずから(24.02.02・金)

切り花でも
真冬ならば
持ちのよさ

生涯を終え
浮き沈みを
飾る虚と隙

蚯蚓なのか
もしかして
ボウフラか

蠕虫表現を
読み損なう
見間違いか

登り下りを
分かち合う
真逆の狭間

遣り繰りも
何も無くて
それっきり

ふたり身(24.01.30・火)

五体の端で
乗り掛かり
重なり合う

三角翼から
左右別々に
地面を離れ

在る私から
思う私まで
分身と別人

同じ肉体に
分け隔てず
助け合って

身体と心が
上下隔てず
重なり合う

身体捌きで
在り続ける
楽し身の術

除・融雪作業(24.01.26・金)

一点集中に
なりがちな
感情の流れ

あっちから
こっちへと
線のように

行き来する
窮屈さから
逃れ歩けば

気にしない
日常歩きを
雪道に刻み

目移りする
散らばった
足跡を消す

技も基本も
体力もない
身体の性能

揺り戻し(24.01.23・火)

遊び疲れて
引きこもる
体内感触を

呼び覚ます
畑仕事など
忘却の彼方

LPとCDを
聴き比べた
余暇の変遷

日常を穿ち
漉き込んだ
共稼ぎ家庭

木々を斬り
背戸の空地
そのままに

散乱した本
元に戻さず
積み上げて

老い手習い(24.01.19・金)

安全装置を
目安に新調
ガスレンジ

料理始めに
欠かせない
道具なのに

食材買わず
調理済みで
お茶を濁す

出来ること
から始める
だけなのに

意力と当為
間遠くなり
戸惑ってる

老い身体に
探し求める
出来ること

無形力(24.01.16・火)

親指が上で
掌の平野を
囲む山々が

北陸線から
津幡駅にて
七尾線へと

乗り換えて
幼少の折の
温泉湯治旅

翳す左手が
地震により
崩されたか

倒壊家屋の
下敷きから
漏れ聞こえ

潰されない
無形流れる
富山湾の底

旧譜再来(24.01.12・金)

二か月余り
療養暮らし
から抜けて

底をついた
食欲なども
戻ったかな

宅配お菜や
ワインなど
より美味く

年明け薄い
裏日本的な
一人暮らし

影絵の様な
当て所なさ
余震の揺れ

レコードの
再生音楽が
やたら新鮮

命運吐息(24.01.09・火)

融雪歩道を
踏み誤って
滑りそうに

見えにくい
現実を生き
ようとして

はからずも
言葉だけに
左右される

間違いから
水含む口で
脱け出せる

違和の時に
急かされた
したいこと

すべきこと
強度を質す
粘着を呼吸

そのままに(24.01.05・金)

侘び住居に
落ち込まず
飛躍もない

年の始めを
揺るがして
この大地震

吹きつける
一寸先が闇
だからこそ

普通でいる
ことの凄さ
は何処から

乱れようが
荒れようが
負けないで

いまここの
ここからを
身体が決め

低空俯瞰(24.01.02・火)

幼少の頃に
祖父の後を
追いかけた

里山歩きが
長じる頃は
低山歩きに

踏みしめた
田畑を抜け
山岳までの

気づかない
地殻の響き
計り知れず

身体を覆う
無意識的な
リセットが

更新させる
風景観から
身体観まで


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