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2024.4.15 Mon

戦争で溢れる世界
―― 抵抗の枢軸という新脅威

イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニが設計し、シリア紛争で具体的なつながりをもち、ガザ戦争で一気に連帯を深めた「抵抗の枢軸」とは、いかなる軍事ネットワークなのか。欧米は、イランが(ハマス、ヒズボラ、フーシ派などを含む)「抵抗の枢軸」の黒幕だとみているが、実際には、それぞれが自立した、より緩やかなネットワークだ。(バジョグリ、ナスル)

中東やその他の地域で起きている出来事は、紛争を管理できる期間が限られていることをわれわれに教えている。世界で戦闘が激化し、紛争の根本的な原因が解決されないままであるため、従来の平和構築や開発のツールはますます効果がなくなってきている。(ビールズ、ソールズベリー)

テヘランは、イスラエルとハマスの戦争を、レバノンやシリアでの代理(傀儡)勢力の攻撃によってイスラエルの能力を低下させるチャンス、あるいはイラクやシリアの米軍に対する武装勢力による攻撃の再開を促すチャンスとみなすかもしれない。(ケイ)

抵抗の枢軸という新脅威
―― ミサイルとSNSで戦う敵の目的は

2024年3月号 ナルゲス・バジョグリ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 アシスタント・プロフェサー(中東研究) バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 教授(中東研究)

イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニが設計し、シリア紛争で具体的なつながりをもち、ガザ戦争で一気に連帯を深めた「抵抗の枢軸」とは、いかなる軍事ネットワークなのか。欧米は、イランが(ハマス、ヒズボラ、フーシ派などを含む)「抵抗の枢軸」の黒幕だとみているが、実際には、それぞれが自立した、より緩やかなネットワークだ。それでも、メンバーたちは、イスラエル、そして間接的にはアメリカに対する同じ戦争を戦っていると信じている。それだけに、抵抗の枢軸を簡単に解体することも、それを生み出した思想を粉砕することもできない。ガザの銃声が静まり、住民への圧力が緩和され、パレスチナの主権と自決への確かな道筋が描かれない限り、アメリカは危険なエスカレーション・スパイラルから抜け出すことはできないだろう。

戦争で溢れる世界
―― なぜ紛争が多発しているのか

2023年12月号 エマ・ビールズ 欧州平和研究所 上級顧問 ピーター・ソールズベリー コロンビア大学 国際公共政策大学院 非常勤教授

世界は、「平和」のゴールポストを紛争解決から紛争管理へシフトさせてしまった。だが、中東やその他の地域で起きている出来事は、紛争を管理できる期間が限られていることをわれわれに教えている。世界で戦闘が激化し、紛争の根本的な原因が解決されないままであるため、従来の平和構築や開発のツールはますます効果がなくなってきている。停戦交渉を「和平プロセス」と表現し、和平が何年も何十年も先のことではなく、すぐそこにあるかのように説明されると、銃声が一時的に静まり返っただけで、和平は達成されたと錯覚することがあまりにも多い。紛争とその悪影響を解決し、管理するための新たなアプローチが早急に求められる。

イスラエル・イラン戦争のリスク
―― ガザ紛争が長期化すれば(10/19)

2023年12月号 ダリア・ダッサ・ケイ カリフォルニア大学ロサンジェルス校 バークル・センター シニアフェロー

これまで、イスラエルとイランは、制御不能なエスカレーションリスクを冒すことなく、定期的に相手を挑発できると考えてきた。だが、いまやガザにおける戦争が、そうした微妙な計算を狂わせつつある。テヘランは、イスラエルとハマスの戦争を、レバノンやシリアでの代理(傀儡)勢力の攻撃によってイスラエルの能力を低下させるチャンス、あるいはイラクやシリアの米軍に対する武装勢力による攻撃の再開を促すチャンスとみなすかもしれない。こうした作戦はすでに進行しているのかもしれない。紛争が長引けば、安定化へのインセンティブは低下し、イスラエルとイランの衝突リスクは高まっていく。戦争がまだこの地域に広がっていないとしても、世界の指導者たちは、戦争の拡大はあり得ないと錯覚してはならない。

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2024年4月号(2024年4月10日発売)

Contents

  • イスラエルの自滅を回避するには
    紛争管理からパレスチナとの共存へ

    アルフ・ベン

  • イスラエルはどこに向かうのか
    ネタニヤフとの決別を

    エフード・バラク

  • プーチンとロシアの未来
    浪費される資源と帝国の野望

    アンドレイ・コレスニコフ

  • ビジネスエリートの地政学
    企業と外交政策

    ジャミ・ミシック、ピーター・オルサグ、セオドア・バンゼル

  • 経済安全保障とラテンアメリカ
    中国に代わるサプライチェーンの確立を

    シャノン・K・オニール

  • 習近平思想と中国社会
    マルクス主義と儒教の出会い

    ラナ・ミッター

  • 文化と民主主義の未来
    何が人々の世界観を左右するのか

    スザンヌ・ノッセル

  • ドイツ経済の試練
    改革を阻む構造的要因

    スダ・デービッド=ウィルプ、ヤコブ・キルケガード

他全9本掲載

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