Foto by KKK / Shutterstock.com

2024.4.17 Wed

中国と東アジア
―― 中国の覇権と日本の安全保障政策

現在のトレンドが続けば、そう遠くない将来に、中国はアメリカに代わって、東アジアの経済・軍事・政治を支配する覇権国になるだろう。そして、地域覇権国は近隣諸国の内政にかなり干渉することを歴史は教えている。(リンド)

オーストラリアにおける「中国の影響力とソフトパワーに対するとらえどころのない不安」は、「中国共産党による水面下での政治介入に対する明確な懸念」へとすでに変化している。中国とつながっている政治資金提供者が政治へのアクセスと影響力を強め、大学は中国の「プロパガンダのツール」として取り込まれている。(ガーナー)

民主主義が世界的に後退しているのは事実としても、そのトレンドのなかで北京が果たしている役割は過大評価されている。中国の行動は、内外で自分たちの地位を確固たるものにしたい北京の指導者たちの意向を映し出しているが、「チャイナ・モデル」の輸出はその目的ではない。(ワイス)

中国が支配するアジアを受け入れるのか
―― 中国の覇権と日本の安全保障政策

2018年3月号 ジェニファー・リンド ダートマス大学准教授(政治学)

現在のトレンドが続けば、そう遠くない将来に、中国はアメリカに代わって、東アジアの経済・軍事・政治を支配する覇権国になるだろう。そして、地域覇権国は近隣諸国の内政にかなり干渉することを歴史は教えている。中国に対抗できるポテンシャルをもつ唯一の国・日本は、特に重要な選択に直面している。日本人は軍備増強には懐疑的で、むしろ、経済の停滞と高齢社会のコストを懸念しており、引き続き、銃よりもパンを優先する決断を下すかもしれない。だが実際にそうした選択をする前に、中国が支配するアジアにおける自分たちの生活がどのようなものになるかについて日本人はよく考えるべきだろう。北京は尖閣諸島の支配権を握り、日米関係を弱体化させ、中国の利益を促進するために、さらに軍事的・経済的強制力をとり、日本の政治に干渉してくるかもしれない。

中国の政治介入に揺れるオーストラリア
―― 民主的対抗策の原則を探る

2018年5月号 ジョン・ガーナー 元豪首相上級アドバイザー

オーストラリアにおける「中国の影響力とソフトパワーに対するとらえどころのない不安」は、「中国共産党による水面下での政治介入に対する明確な懸念」へとすでに変化している。中国とつながっている政治資金提供者が政治へのアクセスと影響力を強め、大学は中国の「プロパガンダのツール」として取り込まれている。一方、キャンベラは、明確な現状分析によって、リスクを管理し、ダメージを特定する一方で、全般的な中国とのエンゲージメントを維持するという問題と恩恵を区別する対応をみせている。リスクとダメージを管理する一方で、相手にエンゲージし続けるためのバランスをとるのは容易ではない。いずれ、同じような環境に遭遇する民主国家の指導者たちは、オーストラリアの経験と対策を注意深く見守る必要がある。

対中封じ込めは解決策にならない
―― 民主主義の後退と「中国モデル」の拡大?

2019年8月号 ジェシカ・チェン・ワイス コーネル大学准教授(政治学)

中国の対外的な行動と構想がリベラルな価値と秩序を脅かし、しかも、習近平は世界に中国的ソリューションをオファーできると明言している。しかし、民主主義が世界的に後退しているのは事実としても、そのトレンドのなかで北京が果たしている役割は過大評価されている。中国の行動は、内外で自分たちの地位を確固たるものにしたい北京の指導者たちの意向を映し出しているが、「チャイナ・モデル」の輸出はその目的ではない。当然、中国封じ込めは解決策にはならない。アメリカと同盟国が北京の行動に効果的に対処するには、もっと厳密に北京の行動を把握する必要がある。結局のところ、中国に対処していく最善の方法は、民主主義をよりよく機能させることだ。

Current Issues

Focal Points アーカイブ

Focal Points

過去のトップページ特集

Focal Points アーカイブ

最新のSubscribers' Only公開論文

論文データベース

本誌最新号紹介

2024年4月号(2024年4月10日発売)

Contents

  • イスラエルの自滅を回避するには
    紛争管理からパレスチナとの共存へ

    アルフ・ベン

  • イスラエルはどこに向かうのか
    ネタニヤフとの決別を

    エフード・バラク

  • プーチンとロシアの未来
    浪費される資源と帝国の野望

    アンドレイ・コレスニコフ

  • ビジネスエリートの地政学
    企業と外交政策

    ジャミ・ミシック、ピーター・オルサグ、セオドア・バンゼル

  • 経済安全保障とラテンアメリカ
    中国に代わるサプライチェーンの確立を

    シャノン・K・オニール

  • 習近平思想と中国社会
    マルクス主義と儒教の出会い

    ラナ・ミッター

  • 文化と民主主義の未来
    何が人々の世界観を左右するのか

    スザンヌ・ノッセル

  • ドイツ経済の試練
    改革を阻む構造的要因

    スダ・デービッド=ウィルプ、ヤコブ・キルケガード

他全9本掲載

Page Top