2024.4.26 Fri
<5月号プレビュー>
イラン、中国、インドを考える
攻撃によってアメリカを刺激し、テヘランとその同盟国が有利になるようなミスを犯させたいとテヘランは考えている。だが、イランを含む関係勢力のいずれかが誤算を犯せば、中東全域でより激しい紛争が発生し、中東の安定とグローバル経済に大きなダメージが生じる恐れがある。(マロニー)
中国は今後も世界の経済成長の約3分の1に貢献し、特にアジアでの経済的影響力を高めていくはずだ。ワシントンがこの流れを過小評価すれば、アジアのパートナーとの経済・安全保障関係の深化を維持していくアメリカの能力を過大評価することになるだろう。(ラーディ)
モディ政権は宗教や地域間の対立を和らげるどころか、むしろ激化させ、インド社会の混乱をさらに深めることになるだろう。選挙は実施されるが、民主制度の空洞化によってインドは名ばかりの民主国家となり、専制国家に近づきつつある。(グハ)
イランの戦略目的は何か
―― 混乱と変動から利益を引き出せる理由
2024年5月号 スザンヌ・マロニー ブルッキングス研究所 ディレクター(外交政策プログラム担当)
テヘランは混乱のなかにチャンスをみいだしている。イランの指導者たちは、ガザ戦争を利用し、エスカレートさせることで、イスラエルを弱体化させてその正統性を失墜させ、アメリカの利益を損ない、地域秩序を自国に有利なものへ変化させようとしている。混沌とした状況から自国の利益を導き出すイランの能力を侮るべきではない。攻撃によってアメリカを刺激し、テヘランとその同盟国が有利になるようなミスを犯させたいとテヘランは考えている。だが、イランを含む関係勢力のいずれかが誤算を犯せば、中東全域でより激しい紛争が発生し、中東の安定とグローバル経済に大きなダメージが生じる恐れがある。
中国経済は成長を続ける
―― 悲観派を惑わす4つの誤解
2024年5月号 ニコラス・R・ラーディ ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー
アメリカを追い越すどころか、中国は長い不況に突入する可能性が高く、「失われた10年」を経験するのかもしれない。中国経済の今後をこう捉える悲観派の見方は状況を誤認している。中国は今後も世界の経済成長の約3分の1に貢献し、特にアジアでの経済的影響力を高めていくはずだ。ワシントンがこの流れを過小評価すれば、アジアのパートナーとの経済・安全保障関係の深化を維持していくアメリカの能力を過大評価することになるだろう。中国経済の先行きを懸念する人が指摘する、家計支出の低迷、民間投資の減少、デフレの定着などはすべて状況を誤認している。
ナレンドラ・モディとインドの未来
―― ヒンドゥー・ナショナリズムの長期的帰結
2024年5月号 ラーマチャンドラ・グハ クレアカレッジ 特別教授
宗教的・言語的少数派の権利を尊重し、個人と国家、中央と地方の権利のバランスをとろうとする繊細な試みによって、インドは統一と民主政治を維持し、貧困と差別という歴史的重荷を着実に克服してきた。だが、ナレンドラ・モディが具現するヒンドゥー・ナショナリズムはそうではない。ヒンドゥー教徒に恐怖心を抱かせることで、一丸となって行動させ、最終的には非ヒンドゥーのインド市民を支配することを目的としている。モディ政権は宗教や地域間の対立を和らげるどころか、むしろ激化させ、インド社会の混乱をさらに深めることになるだろう。選挙は実施されるが、民主制度の空洞化によってインドは名ばかりの民主国家となり、専制国家に近づきつつある。・・・