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2024.4.30 Tue

トランプと米欧関係の崩壊
―― 脅威の本質

大混乱をもたらす危険があるのは、トランプのビジョンよりも、気まぐれな性格だろう。道徳観念がひどく乏しく、世間の注目を集め、金儲けをし、あるいは権力と地位を高めるためなら何でもする。トランプは瞬く間に大西洋関係を破壊してしまうかもしれない。(フィックス、キマージ)

ヨーロッパの指導者たちは、バイデンなら、大西洋の絆を守り、混乱する大陸と近隣諸国にヨーロッパがより大きな責任を果たすための時間と支援を与えてくれると考えている。だが今後、そうした配慮は彼からも得られないかもしれない。(ラヤ他)

バイデンと彼の外交チームは厄介な状況に直面している。交渉相手国が、あらゆる問題をめぐって、1年後にはまったく異なる米政府を相手にしている可能性を考慮した上で、ワシントンの意向を判断し始めているからだ。(アリソン)

ヨーロッパが備える脅威の本質
―― ドナルド・トランプと米欧関係の崩壊

2024年5月号 リアナ・フィックス 米外交問題評議会 欧州担当フェロー マイケル・キマージ 米カトリック大学 歴史学教授

トランプは、北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を決断し、ウクライナを見捨て、プーチンとのパートナーシップを模索するかもしれない。だが、彼は決意に乏しく、無謀なアイデアを実行に移すことはめったにない。むしろ、大混乱をもたらす危険があるのは、トランプのビジョンよりも、気まぐれな性格だろう。道徳観念がひどく乏しく、世間の注目を集め、金儲けをし、あるいは権力と地位を高めるためなら何でもする。トランプは瞬く間に大西洋関係を破壊してしまうかもしれない。実際、アメリカのヨーロッパとの歴史的なつながりを破壊することを「勝利」として売り込めるのなら、トランプはそうするだろう。戦争をあまりにもよく知る大陸が、恒久的な平和でも、鉄のカーテンでもなく、再びカオスに包まれる未来は、決して幻想ではない。・・・

次期米大統領と欧州
―― なぜ欧州の自立が必要なのか

2024年3月号 アランチャ・ゴンサレス・ラヤ カミーユ・グランド カタジナ・ピサルスカ ナタリー・トッチ グントラム・ヴォルフ

ヨーロッパの指導者たちは、バイデンなら、大西洋の絆を守り、混乱する大陸と近隣諸国にヨーロッパがより大きな責任を果たすための時間と支援を与えてくれると考えている。だが今後、そうした配慮は彼からも得られないかもしれない。もちろん、トランプ大統領が誕生すれば、2期目には、ヨーロッパが直面する不安定な状況はさらに悪化するかもしれない。だが、安全保障と経済を守るために行動を起こし、具体的な措置を講じることは、ヨーロッパの手に委ねられている。誰がワシントンで政権を担おうと、一貫したパートナーとしてアメリカを頼ることはもはやできないかもしれない。ヨーロッパの指導者たちは自分たちが成長しなければならないこと、つまり、アメリカへの依存度を低下させるべきことを理解している。

トランプと地政学
―― 変化し始めた同盟国と敵対国の立場

2024年2月号 グレアム・アリソン ハーバード大学教授

バイデンと彼の外交チームは厄介な状況に直面している。交渉相手国が、あらゆる問題をめぐって、1年後にはまったく異なる米政府を相手にしている可能性を考慮した上で、ワシントンの意向を判断し始めているからだ。ロシアを含む敵対国は、いずれ、ワシントンとよりよい条件で交渉できるようになるという期待から、現状での判断を先送りしている。一方、ヨーロッパ諸国などは、トランプが大統領に返り咲けば、より劣悪な選択肢に直面する可能性が高いと考え、それに応じた対応を進めている。実際、ウクライナに送る戦車や砲弾の数をめぐっても、「トランプが当選すれば、自国の防衛のためにそれらが必要になるのではないか」と考え込むヨーロッパの指導者もいる。・・・

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2024年5月号(2024年5月10日発売)

Contents

  • イランの戦略目的は何か
    混乱と変動から利益を引き出せる理由

    スザンヌ・マロニー

  • 中国経済は成長を続ける
    悲観派を惑わす4つの誤解

    ニコラス・R・ラーディ

  • 中国は欧米との衝突コースへ
    実現しない内需主導型モデルへの転換

    ダニエル・H・ローゼン、ローガン・ライト

  • ナレンドラ・モディとインドの未来
    ヒンドゥー・ナショナリズムの長期的帰結

    ラーマチャンドラ・グハ

  • 地政学競争と道徳なき外交の時代
    理念と現実主義をいかに融和させるか

    ハル・ブランズ

  • ヨーロッパが備える脅威の本質
    ドナルド・トランプと米欧関係の崩壊

    リアナ・フィックス、マイケル・キマージ

  • 「グローバルサウス」の問題点
    欧米諸国の思い込みと誤解

    コンフォート・エロー

  • AIが主導する戦争の時代?
    自律型兵器の脅威にどう対処するか

    ポール・シャーリ

他全10本掲載

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