“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2024.03
何故 日本は復活できるのか

「半導体は福祉政策ではない。産業政策であり、国家戦略であり、経済安全保障を担保するためにやっている」
 半導体戦略推進議員連盟会長の自民党の甘利議員は日本の半導体産業の復活について熱く語っています。実際、昨年から日本政府の半導体産業への取り組みは一変してきました。
 日本政府は湯水のように補助金を次々と出し、半導体受注生産で圧倒的な世界一である台湾のTSMC(台湾積体電路製造)を誘致、また半導体の新会社ラピダスの新事務所を北海道に開所し全面的に応援しています。

●日本における半導体産業の経緯
 株式市場では半導体ブームに沸き立っています。半導体は産業のコメと言われ、あらゆる機器に使われています。まさに日本は世界の半導体の供給基地になろうとする勢いです。この背景を追ってみます。
 かつて日本は半導体で世界を席巻していました。1980年代、日本の半導体の世界におけるシェアは90%に及んでいたのです。かつて石原慎太郎氏はその著書『NOと言える日本』(光文社)の中で「半導体分野での優位性を使えば、日本は米ソ両国に力を行使できる」と豪語していました。
 ところが1980年代後半から米国による日本への激しいパッシングが始まり、日本の半導体産業は一気に衰退していきました。1993年には半導体のシェアは米国に抜かれ、1998年には韓国にも抜かれました。いつの間にか日本の半導体産業はすたれ、世界におけるシェアは20%にまで落ちてしまったのです。

 半導体は軍事技術をはじめ、その最先端技術は極めて重要なものです。台湾がここにきて注目されていますが、それは世界一の半導体の受託生産会社であるTSMCが台湾にあるからです。
 仮に中国が台湾を海上封鎖してTSMCからの半導体が世界に届かなくなれば、世界の産業は機能不全に陥ってしまい、大不況と共に大混乱となるでしょう。それほど重要な技術の拠点を台湾という、中国に近い摩擦が絶えないところに依存しているのは非常に危険なことでもあるわけです。

 米国は世界戦略の一環として、この半導体の最先端技術が台湾に一極集中している現実を変えようと考え始めています。そこで日本が浮上してきたわけです。半導体のような重要な技術はやはり、世界の覇権国である米国の国家戦略の行方がポイントとなってきます。
 日本はかつて世界の90%のシェアを誇ったのに、それが著しく衰退に至ったのは、やはり1980年代後半に米国から不当な圧力を受け続けたことが原因でもあります。
 米国と日本の関係、米国の戦略的な方向が日本を大きく左右してくるのは、歴史をみると明らかでもあります。日本は大国ではありません。やはり世界の覇権国に従ってうまく立ち回れるとき、日本は大発展しますし、逆に覇権国と争うようなこととなれば衰退するのが、日本の国としての流れでもあるのです。

●明治時代からの日本の境遇
 日本が近代国家となった明治時代からの歴史を振り返ってみましょう。日本は徳川時代の長い鎖国から解放されて世界と交流するようになりました。その中で日本は1902年、当時の世界の覇権国であった英国と同盟を結びました。<日英同盟>です。当時日本はアジアの小国、一方の英国は世界の覇権国でした。

 なぜ、世界の覇権国である英国が日本のような極東の小国と同盟を結んだのでしょうか?
 それは英国が当時のロシアと厳しい対立関係にあり、ロシアの極東での進出を日本の力を使って抑えたいという思惑があったからなのです。いち早く産業革命で技術発展した英国は、日本に対して惜しみなく、当時の最先端の技術を供与しました。また日露戦争において英国は日本に対して資金的な援助もしました。さらに英国はロシアの艦隊の動きや様々な重要情報を日本に伝えたのです。
 日本人は優秀で勤勉、技術を素早く取得できたところもあるでしょうが、実際のところ、日本がロシアに戦争で勝ったのは英国の様々な助けがあったからです。やはり当時の世界の覇者である英国と密接な関係を築けたところが、日本の国家としての繁栄につながったものと思います。
 ところが日英同盟締結から20年後、1922年のワシントン会議で日本は米英と対立、日本は日英同盟を破棄するに至りました。
 ここから日本の国家としての凋落がはじまります。
 翌1923年には関東大震災、その後1929年の世界大恐慌を経て、日本は中国との泥沼の戦争に入っていきました。そして日本は中国での利権を巡って米英と激しく対立、1941年ついに米国との戦争となりました。
 日本は米国に徹底的に叩きのめされ、原爆も落とされ、1945年無条件降伏となりました。まさに一連の流れをみると英米と関係の良かった時期、日本は国家として繁栄しましたが、米英と対立を始めた瞬間から奈落の底に向かっていったというわけです。
 1945年、無条件降伏した日本は米国に占領されましたが、1950年、朝鮮戦争が始まると日本は戦争特需に沸いて一気に景気が良くなって国家として復活し始めたのです。
 かように1902年は英国がロシアと対立して日本を必要としたこと、1950年には共産主義の脅威から朝鮮で戦争が始まったことで米国が日本を戦争のための供給基地として使ったことで日本が浮かび上がってきたわけです。

 その後、日本は米国の軍事的庇護の下、経済発展だけに注力することができました。
 日本は奇跡の大発展を成し遂げました。ところが1989年11月9日、ベルリンの壁が崩壊して米ソの対立は終わりました。ここで当時のソ連は崩壊、東欧諸国など共産主義陣営は次々とドミノ倒しのように崩壊、民主主義陣営に鞍替えしていったのです。いわゆる冷戦の終了です。世界は平和になりました。
 ところがこれは米国にとって日本の重要性がなくなったということでもありました。
 世界の覇者である米国は、世界が平和になったことで、日本を必要としなくなったのです。結果、日本は米国から徹底的に貿易摩擦を受けるようになり、日本の半導体産業はその後、米国によって潰されていったわけです。
 ベルリンの壁が崩壊したわずか50日後、1989年12月29日、日経平均は38915円で大天井を付けたのです。この後、日本の失われた30年が始まったのです。これは偶然ではありません。世界の覇者である米国にとって、日本の存在が必要でなくなったので、起こってきた現象でもあるのです。

●今後、日本が復活できる理由
 翻って今、米中対立が激化してきました。米国は中国に対して半導体で徹底的に締め付けを行っています。ところが世界の半導体の命運を中国の目と鼻の先にある台湾が帰趨を決めているのです。これでは米国にとって危険すぎます。台湾の半導体技術を他の地域でも代替できるようにしておかなければ、いつ世界が大混乱に陥ってしまうかわからないのです。気が付くと米国にとって日本の重要性が極めて高くなってきました。米国は台湾に変わる半導体の代替基地として日本を指名しました。今後、米国は全面的なバックアップをして日本の半導体産業を支援することとなるでしょう。
 かように日本の歴史を振り返ると、世界において対立が深まった時、そして日本が覇権国側についているとき、いわば現在のような状況です。米中対立、そして米露との対立、このような時こそ日本は大発展していくわけです。この段階で日経平均が史上最高値を取ってきたのは決して偶然ではありません。覇権国である米国にとって日本の重要性が高まってきたからこそ、日本は発展できる素地が固まってきたということなのです。皮肉ではありますが、世界が対立を深めれば深めるほど、日本は国として発展するわけです。

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★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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