更新履歴と周辺雑記

更新履歴を兼ねて、日記付け。完結していない作品については、ここに書いていきます。

2024年2月1日(木)
近況

すっかり隔月刊と化している当サイト。
今年もひっそりと続けていきます。

○『シムーン』と『星の王子さま』
毎週楽しく観ているBS世界のドキュメンタリーで、サン・テグジュペリが『星の王子さま』を生み出すいきさつを放送していた。
テグジュペリは1935年、パリからサイゴンを目指す飛行を試み、途中リビアの砂漠に不時着して生死の境をさまよった。このときの経験が後年『星の王子さま』の発想の元になったという。
で、これがそのときの写真。大破した機体の傍らに佇むテグジュペリだが、垂直尾翼に注目。

 

「simoun」とある。

シムーンですか !?

興奮してしまったのだが、調べたらこれは機のパーソナルネームではなくて、コードロン・シムーンという飛行機の名前だった。

郵便機として広く使用され、戦争中はフランス軍の連絡機として活躍した。
シムーンはもともと砂漠の風のことだから、飛行機の名前についていてもおかしくない。

『シムーン』は2006年の作品だからもう18年も前になる。
『シムーン』と『星の王子さま』。少女が大人になる一瞬と、永遠の少年。なんだか不思議なつながりを発見してしまった気分。


○『ゴールデンカムイ』
実写化記念に、当初からの疑問を二つばかり。
主人公杉元は、不死身の男として第七師団の杉元を名乗るのだが、これが疑問。普通、兵隊の帰属意識は連隊に向くものだからだ。連隊は日本各地に置かれており、徴兵された兵隊は最寄りの連隊に入隊し、その兵営で生活し、訓練し、仲間と出征して生き死にを共にする。特に日本陸軍では、中隊長が家長・父親で中隊は家族というしつけがなされていた。3コ中隊で1コ大隊、3コ大隊で1コ連隊。
師団というのは平時は司令部しかなく、戦時に編成される。時代によって違うが、日露戦争当時は2コ連隊で1コ旅団、2コ旅団で1コ師団となる。正確に言うと歩兵連隊4、砲兵連隊と騎兵連隊各1、工兵大隊1が標準の編制。連隊は1000人くらいだが、師団は2万人近くになる。自分がどの師団に所属するか、もちろん知識として知ってはいるだろうが巨大すぎて、一兵卒には到底実感できないんじゃないだろうか。

もうひとつ。みんなすでに忘れていると思うが、もともと杉元がアイヌの金塊を探しているのは、戦死した親友の妻が難病で、その治療費を得るためである。つまり以下のような思考をたどっている。

病気には原因がある→医療で原因を取り除けば治療できる→高度な医療は日本では受けられない→先進国には高度な医療がある→大金があれば治療できる

実現可能性以前に、これって、すごく科学的・論理的、有り体に言えば「近代的」な思考、自分の未来を自力で変えられるという信念に基づいた思考である。都市住民ならまだしも、明治30年代の田舎の百姓が、こんな思考をできるものだろうか。

まあどちらも、私が知らんだけで実例があるのかもしれない。作品の面白さとはあまり関係のない話でした。


○『86』Ep.13 ディア・ハンター
『86』最新刊。ギアーデ連邦に舞台を移してからというもの、わりと楽観的と言うか未来に希望を持てる展開だったのが、よもやこんな展開になるとは。この地上のどこにも楽園はなく、平和は遠く、一番恐ろしいものは常に同じ。
あとがきで作者が述べているように、本シリーズの真の敵はレギオンでも実体ある組織でも国家でもいわんや誰か特定の個人でもなく、弱くて愚かで哀しい人の悪意そのもの。物語はついに最終編に入るという。つかみどころのない巨大な敵に、レーナは、シンはいかに立ち向かうのか。
またひとつ、生きる楽しみが増えた。


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