企業間がオンライン情報共有で取引を効率化するためにITが変革する小売の姿(1/2 ページ)

流通において、取引企業間がインターネットを基盤として効率的な取引を実施し、情報を共有する「E-コラボレーション」は日本ではまだまだ進展していない。着々と準備が進む諸外国の動きを見ると、日本の小売業界がここでも危機に立たされていることが分かる。

» 2004年11月01日 10時52分 公開
[舟本秀男,舟本流通研究室]

 取引企業間がインターネットを基盤として、効率的な取引を実施し、情報を共有する「E-コラボレーション」は、1990年代後半からの大きなテーマであった。

 1999年にはUCCnet(注)が開始され、2000年にはGNX、WWRE、TRANSORAS、CPGマーケットをはじめとした巨大B2Bエクスチェンジ次々と登場している。しかしながら、当初UCCnetへの参加企業は少なく、B2Bエクスチェンジは開始以来3年間で10億ドルという巨額な資金を投入したにもかかわらず、「E-コラボレーション」を実現するには程遠い状況であった。

 現実の利用状況ははかばかしくなく、実績も低いレベルに止まり「E-コラボレーション」を支持する者と懐疑的な者とのギャップが拡大していった。大多数の一般企業はその方向性には賛同するものの、なんら前向きな活動に手をつけるようなことはしなかった。

(注)UCCnet:米国内で商品データを一元的に登録し同期を取った取引情報を提供しようとするデータ・シンクロナイゼーション・ネットワーク。

流通業トップの取り組み

 次世代の企業間/業界間関係を構築しようとする「E-コラボレーション」のコンセプトが危機に陥ろうとした時点で、あるプロジェクトが立ち上がった。それは米国スーパーマーケット業界の団体であるFMIと消費財メーカーの団体であるGMAが編成した「トレーディング・パートナー・アライアンス」プロジェクトである。

 2002年1月に活動が開始された同プロジェクトは、コンサルタント会社のATカーニーと共に精力的に調査分析を開始した。調査分析の結果は2002年6月に開催されたGMA/FMI「CEO/プレジデントフォーラム」で発表され、参加者に本格的取り組みに向けた方向性が合意された。

 トップマネジメントに対するアンケート調査では、83%が「E-コラボレーション」が企業経営に必要不可欠と認識し、93%がその第一ステップとしてデータ・シンクロナイゼーションを採用すべきであると回答し答えている。

 しかし、データ・シンクロナイゼーションを含む「E-コラボレーション」を全面的に実施している企業はまれであり、企業の内部および外部に横たわっている障壁を打ち崩さなければならないと指摘している。

 内部要因では、企業が伝統的に踏襲していた既存の業務手順への固執、リソースの再編成や、内部のデータおよびシステムの正規化の問題があった。一方、外部要因には、標準化に係わる問題や、実施に踏み切るためのROI計算、的確な実施ガイドラインの不備などが挙げられていた。

 このような問題点を内在しているものの、今こそFMI/GMAのメンバー企業は「E-コラボレーション」の実現に向け一致して取り組まなければならないとの合意に至った。それは、現行のビジネスプロセスではサプライチェーンに多大なロスをもたらしているという調査結果によるものである。

e-コラボレーティブ・コマースへの7段階

 ATカーニーは「e-コラボレーティブ・コマース」を完成させるために7つのステップを順次実現すべきであるとした。基盤になるのは、第1ステップ「共通の標準データの採用」、第2ステップ「商品アイテムデータの一元的登録」、第3ステップ「商品アイテムデータのシンクロナイゼーション」の3つ。各企業が早期に参加すべきであると提唱した。

 ATカーニーは、GMA/FMI「CEO/プレジデントフォーラム」での調査結果の発表に際して、“今こそ全員が一致してステップ1からステップ3までの基盤サービスを採用すべきである”というメッセージで締めくくった。

 この提案を受け、2002年6月に開催された「CEO/プレジデントフォーラム」では、GMA加盟の消費財メーカーは個別商品データをUCCnetに積極的に登録し、小売業はその一元化されたデータを取引の同期化に活用する方向性が打出された。

UCCnetからGDSNへの拡張

 FMI、GMAの参加企業は積極的にUCCnetに参加し、また初期のUCCnet参加企業である世界最大の小売業Wal-Martは、取引先に対しUCCnetへの参加を強く要請した。同社はRetailLink(関連記事)を通じてUCCnetと接続し、最新かつ一元化された商品情報を用いることにより、コラボレーション取引を推進しようと考えている。

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