マイクロストラテジーの印藤氏、BI専業モデルに手応え元BO社長の新展開

ビジネスインテリジェンスを提供する米MicroStrategyは5月20日、日本法人のプレジデントに就任した印藤公洋氏が、独立系ベンダーとしてBIに特化する自社の優位性をアピールした。

» 2009年05月21日 16時52分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 ビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェアを提供する米MicroStrategyは5月20日、都内で記者発表会を開催し、日本法人のプレジデントに就任した印藤公洋氏が、独立系ベンダーとしてBIに特化する自社の優位性をアピールした。この日は「この10年で最も大規模」という「MicroStrategy 9」の提供を明らかにしている。

マイクロストラテジー・ジャパンの印藤公洋氏

 「MicroStrategyは製品ラインの拡大を目指さない」

 印藤氏は話す。さまざまな情報源からデータを抽出するETLや、データウェアハウスに関して、同社は製品ラインとして追加することなく、BIのみに注力して開発する。新製品の開発も、顧客から受けた機能改善要求の実装も米ワシントンにいる同じ技術者が手がけるため、必然的に製品の質を高められるという。

 もともと、MicroStrategyは大容量のデータの分析ではGartnerなどさまざまな調査会社から高い評価を受けていた。「ユーザーである米eBayのシステムでは、分析対象データ量が3ペタバイトに上る」(印藤氏)。

 数多くの技術者がBIのみを考える開発体制により、64ビットのメモリ空間を使い切る技術の開発、SQLの処理スピードを上げるための日々の改善などが可能になっているという。

 他社のBIは、分析内容をあらかじめ設定した“キューブ”を作成し、そのキューブに対して検索をする。過去の設定であるため、最新の分析結果が得られない可能性があるとする。一方で、MicroStrategyの場合、あらかじめ設定したキューブ上の分析処理をする前に、システムがいったん最新の生データを参照しにいく。結果として最新情報を反映した分析が可能になるという。

 BI最大手の一角で、SAP傘下に入った日本ビジネスオブジェクツで社長を務めた印藤氏は、他社について「BIだけでなく、ETL、マスターデータ管理など製品ポートフォリオの拡充に走るため、製品自体がうまく統合できない。結果的にユーザーに利点を提供できていない」と指摘する。「買収した他社製品を統合するのに5年はかかる」という同氏は、買収戦略を取らずにBI製品だけを開発してきた自社について「(伸びるという意味で)かなりおもしろい会社」と表現している。

 印藤氏は「売上高を3年で3倍にする」と述べている。

インメモリOLAPが新製品の要

 この日同社は、BIの新製品としてMicroStrategy 9を発表した。MicroStrategy 9の特徴は、インメモリROLAPと呼ぶキャッシュ技術をベースとした分析手法だ。分析において、極力ディスクへのアクセスをせず、キャッシュ上で処理できるようにすることで、複数のデータベースにまたがり数百テラバイトに上るような負荷の高い処理も高速で実施できるようになる。

 この機能の狙いは、企業の中で、部門ごとに個別に持つことの多いBIを、全社統一のBIに変えることにある。

来日したポール・ゾルファガーリ氏。既に10年にわたって要職を務めており、印藤氏は「米国系のソフトウェア企業では異例」と話している

 具体的には、多くのユーザーが何度も実行するようなレポート、複数のレポート間で内容が重複するもの、複数のデータベースにまたがるようなクエリーの処理を、ディスクではなくインメモリROLAP上のキューブで実施する。ディスクアクセスが減るため、結果として、クエリーの処理にかかる時間を短縮し、データベースへの負荷を軽減できる仕組みだ。

 発表会には、米国から来日した上級副社長のポール・ゾルファガーリ氏も出席した。「64ビットのメモリ空間を生かしきって大容量のデータに対しても高速処理できるのが強み。Intelからもプロセッサの能力を生かすアプリケーションとして評価されている」と話している。

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