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ひきこもりからIT社長に “paperboy”の軌跡ITは、いま(3/4 ページ)

» 2006年03月20日 10時21分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 2人をつないだのは、近所のネットユーザーを探す「ご近所さんを探せ!」だった。「『女子高生』で検索して、やたらとメールを送ってた。今考えると、最悪な大人ですよね」

 当時高校3年生の明子さんは、4つも年下なのに話が合った。メール交換し、電話し、チャットソフト「ICQ」で会話した。メッセージが届いたことを知らせる「カッコー!」の音にわくわくした。

 出会って半年ほどたった頃。博多駅近くの喫茶店で、初めてリアルで会った。家入さんはスーツ、明子さんは制服。よく知ってるのに初対面で、奇妙な感じだった。

 やがて2人は付き合いだし、明子さんの高校卒業と同時に同棲を始める。福岡市内のワンルームマンション。PC好きな2人は、隣にいるのにチャットで会話したりした。

 家入さんが22歳、明子さんが18歳のころに結婚。明子さんはほどなく、男の子を身ごもる。

「家族と過ごしたくて」起業

 会社勤めが嫌になり始めていた。妻と子どもを養えるくらいの収入が在宅仕事で得られれば、家族と一緒にゆっくり過ごせる――起業を思い立った。

 温めていたネタがあった。女性向けのポップで安価なホスティングサービスだ。「若い女性がどんどんホームぺージを作る時代になりそうと思った。うちの嫁もホームページを持っていたし」。それまでのホスティングサービスは、地味なものばかりだった。

 資本金30万円で合資会社「マダメ企画」を立ち上げ、レンタルサーバ事業「ロリポップ」を始めた。月額250円の安さとサイトデザインのキュートさが受け、事業は滑り出しから順調。1カ月目から黒字が出た。

photo 「ロリポップ」申し込みサイトのトップページ。家入さんが作るサービスのコンセプトは“可愛いけど気持ち悪い”だ。「かわいいだけじゃ許せない。『女の子=妖精、ひまわり』みたいな発想が好きじゃない」

 サイトプログラムからデザイン、サーバ管理などを1人でこなしていたが、ユーザーは増えて手が回らなくなる。パートを雇い、知り合いに声をかけて社員を増やし、新サービスを投入し、会社はふくらんでいった。

 事務所も何度か移転し、2003年に有限会社化。社名を「paperboy&co.」に変えた。新聞配達少年=paperboyだった初心を忘れない、という意味を込めつつ、おしゃれっぽいローマ字表記にし、ティファニーみたいに“&co.”を付けてみた。

 自宅で1人、細々とやるつもりだったのに、会社はどんどん大きくなる――矛盾に悩み、迷うこともあった。

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