遠野物語は生きている ―白幡ミヨシの語り― 吉川祐子編 (民俗文化研究所代表/ 日本昔話学会・日本民俗学会会員) 1997年4月刊 A5判・188頁・並製本 ISBN4-87294-80-X 1500円 |
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2003年12月2刷出来 | |
前著、吉川祐子編『白幡ミヨシの遠野がたり』に続き、ミヨシ媼の昔話71話を収録。 |
【すいせん】 |
金 両 基 |
「むかす、あったずもな。むかす、遠野の山の彼方に鬼女(きじょ)がおったすな。鬼女は姓を吉川、名を祐子と変えているのを、両基(ヤンキ)と言う男が見抜いたそうな」。鬼女の誘導に、白幡ミヨシ媼の口から惜しみなく昔話が奏でられ、ここに鬼女の名に恥じない怪書(快書)《ミヨシ遠野物語》の続編が誕生。鬼女に金棒とはこのことか。鬼女は、瞬く間に民俗畑を耕して見事な民俗商品に仕立てる無類の仕事師であり、妥協を一切許さない研究姿勢から「鬼女」の愛称贈呈したが、快活な、希にみるお人好しでもある。 |
(静岡県立大学教授) |
福田アジオ |
民俗学の原点は語りにあった。語りそのものに人々の意識や感情が盛り込まれ、それをすくい取ることで人々の深層の歴史も明らかになってくることを柳田國男が『遠野物語』で示してくれた。しかし、民俗学はいつのころからか外形に現れた事象ばかりを扱う学問になった。また『遠野物語』は固定化されて遠野の人々を規制する存在になってしまった。吉川祐子さんは、現代の遠野で伝承され発展する語りの世界を生き生きと描き出して、語りが過去の存在でないことを教えてくれた。そこに民俗学再生の可能性が秘められている。 |
(新潟大学教授) |
吉沢 和夫 |
『遠野物語』の根っ子の深さと広がりは、菊池照雄氏の著書で教えられたが、「語り」の世界で今日も生きつづけていることを見事に示してくれたのは、吉川祐子さんだった。白幡ミヨシ媼の「昔語り」の魅力を余すところなく生々と再現できたのは、吉川さんの記録の方法の確かさによる。正編『白幡ミヨシの遠野語り』を私は一気に読んで、興味の尽きることを知らなかったが、その続編が出されるとあっては、こんなに嬉しいことはない。 |
(日本民話の会) |