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No.2316の一覧
[0] とある来訪者のとある冒険譚 ― 或いは、ハーレムへの軌跡 ―[Dice Dragon](2007/08/05 06:29)
[1] 本編 第一話[Dice Dragon](2007/08/14 07:34)
[2] 本編 第二話[Dice Dragon](2007/08/24 05:05)
[3] 本編 第三話[Dice Dragon](2007/12/17 07:30)
[4] 外伝 第一話(本編三話余話)  ※ ワーム排出シーン有[Dice Dragon](2008/03/06 05:02)
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[2316] とある来訪者のとある冒険譚 ― 或いは、ハーレムへの軌跡 ―
Name: Dice Dragon◆bd9298a3 次を表示する
Date: 2007/08/05 06:29
「遅い、遅い、遅すぎるぜぇ!」

 薄暗い松明の灯りだけが頼りのダンジョンに、ユージンの愉しげな声が鋭い剣戟の音と共に響き渡る。
 およそ三メートルほどの道幅を備えた通路であるが故、大型の人型は虫類モンスターであるリザードマンは、その大柄な体躯と長大なトゥハンドソード手にしているが故に、ユージンを完全に取り囲むことができていない。
 それでも、高さだけは十二分に確保されているために、その強力な一撃を、リザードマン達は二体同時に振り下ろすことができる。
 脆弱な魔法使いであれば余波だけで吹き飛ばされ、たとえ戦士であろうと真正面から受ければ挽肉となりかねない一撃。
 だが、ユージンは僅かに半歩右前方へと移動すると、軽装戦士特有のスピードと巧みな剣技、精妙な動体視力と体捌きを以って、リザードマン渾身の一撃を地面へと誘い落とす。
 硬い石造りの通路であるがため、しっかりと地面に食い込んだ剣先はリザードマンの膂力を用いてすら容易に抜けることはない。
 一瞬の停滞が、リザードマンの動きを支配した瞬間、固定されたトゥハンドソードの上を涼やかとさいえる音を立てて、ユージンのバスタードソードが行き過ぎる。

「グギャァァァー!」

 爬虫類特有の生命力の強さなのだろう。綺麗に切り飛ばされた首から真っ赤な血飛沫を上げながら、リザードマンは絶命の叫びを上げていた。
 あまりに凄絶な仲間の叫びに、左で同じく剣を振るっていたリザードマンが一歩後退る。
 しかし、それは致命的な失策だ。
 ユージンは左の脇へと装備していたダートを引き抜き、なまくらであれば剣ですら弾き返す鱗に覆われていない両の目へと投げつける。

「グガァァ――ギャァァ!」

 リザードマン自ら作り出した時間を無駄にはせず、ユージンは腰だめにバスタードソードを構えたまま身体を一回転させ、速さを上乗せした一撃をその首へと見舞った。
 再び、先程同様の凄絶な叫びが上がり、赤い噴水が薄蒼い石造りの通路を染め上げる。
 絶命した仲間の死に脅え、後方に陣取っていた二体のリザードマンは、縦に裂けた瞳に恐怖の色を浮かべると、無防備なまでに背を晒しながら逃げ去っていく。
 そこには、死体となった仲間が、ユージンの行く手を遮る一時の障害になるであろうという考えがあったのであろう。

「誰が逃がすと言ったぁ!
 炎よ、切裂けぇ!」

 柄尻に埋め込まれた大粒のルビーの中に紅い渦が煌めき、振り抜かれた刃から、三日月を思わせる炎が飛び出した。

「クギャァァァー!」

 紅い刃は二体のリザードマンへと背後から襲いかかり、その胴へと何の抵抗も感じさせないほど滑らかに潜り込み、その頑丈な身体を呆気なく分割してしまう。

「よし、完勝!
 これだけ首を揃えれば、完璧に納得するだろう。
 人を見下していたあの態度がどう変わるのか、今から楽しみだ」

 手練の冒険者で構成されたパーティでさえも油断のできないリザードマンを一人で四体も葬り去るなど聖騎士ですら難しいに違いない。
 事実、破滅の迷宮と呼ばれる世界最大級のダンジョンのあるクレリアシティーにおいてすら、そのような事のできる冒険者は、名うての者達だけだろう。
 そんな小さな偉業を危なげもなく成し遂げたユージン=トゥーノは、しかし、未だギルドに登録したばかりの新人冒険者のはず……だった。
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 とある来訪者のとある冒険譚
  ― 或いは、ハーレムへの軌跡 ―  

      * プロローグ *

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『ふむ。そなたが我の封印を解いてくれたのか。
 感謝するぞ、小さき存在よ』
「は、はい……」

 どれだけ集中的に受講講義をまとめたとしても、週に三日は大学へと赴かなければならない。
 元々、興味本位で始めた短期的な投機に成功し、一生を掛けても使い果たすことのできなさそうな利益を上げた遠野悠二(とおのゆうじ)にとって、大学とは体系的な知識の集積と見聞を広めるために通う場所に過ぎない。
 そのため、残った週に四日の時間は、ある意味で深い知識を持つ者達の揃っている漫画研究会に顔を出すことに費やしている。
 もっとも、そこに揃う者達から得られる知識のほとんどは、実生活において、そのまま使うことのできない情報であることが多い。
 ただ、考えようによっては、自己顕示欲を満たすために競い合うかのような忙しない会話の中で出てくる豆知識はディープなモノが多く、元々の趣味である小説やゲームのシナリオを自ら書こうかと考えていた悠二にとっては、有用なネタになることも多いのだ。
 だからこそ、悠二は今日もまたクラブ棟の閉館時間まで居残り、持ち込んだノートパソコンでネットゲームを楽しみながら、他愛のないはずの会話に興じた後で家路に着いた。
 その帰り道、彼は粗大ゴミの中に紛れた古ぼけた壷を見つけることとなる。

『こうして妾の身を自由にしてくれた其方には、礼を尽くさねばならんな。
 さて、何がよいか……』

 何も知らない者が見れば只の古ぼけた壷に過ぎないソレ。その壷を悠二が手に取り、あまつさえ蓋まで開けてみせたのは、単なる好奇心からではない。
 ディープな仲間が教えてくれた【ジンニヤーの壷】という文字が壷の表面に躍っていたからこそ、彼は封印の要となっているに違いない栓に張り付けられた風化しかかった古紙を、固唾を飲み込みながら引き千切ったのである。
 そして、悠二の期待通りに現れたのが、目の前の妖艶な美女だった。
 ただ、彼女は想像していた姿とは少しばかり違う容姿を伴っている。
 創造された部分も数限りないのであろうが、アラブ圏における精霊や魔人の総称であるからには、オリエンタルな雰囲気と肌、外国ドラマや映画で描かれるような衣装を身に付けているに違いないという刷り込みが、悠二にはあった。
 しかし、実際の彼女は、緩やかなウェーブの掛かった豪奢な金髪と彫の深いギリシア系の顔立ちを持ち、ギリシア系の神話の挿絵で描かれるゆったりとした白い衣服を身に纏っている。
 普通に考えれば、彼女がジンニヤーと思えず、そのために悠二は畏怖すら感じる美貌に気圧されたことと相まって、彼女に対する返事をおざなりなものとしてしまっていた。
 だが、美女は悠二のそんな態度を気にした風もない。
 楽しそうに笑みを浮かべながら、宙を見つめながら自身の思考に没頭していた。

『ふむ……これで良かろう。
 妾が用意しようとしていた存在が叶えるべきだった三つの願い。これの恩恵を受ける権利が其方にはある。
 何でもよい。其方の願いを叶えてしんぜよう』
「す、少し質問してもいいですか?
 その……願いとは別のことなんですが……」

 数分の後に投げかけられた美女の言葉が、凍りつきかけていた悠二の思考の潤滑油となったらしい。
 悠二は、恐る恐る美女へと声を返した。

『何じゃ?
 遠慮なく申してよいぞ』
「その……何と言えばいいか……」

 笑みを浮かべたままの美女の顔色を窺いながら、悠二は精一杯の丁寧さを心掛ける。
 その手本は、行政書士を生業とする従兄の悠一の品行方正な物腰であり、思いのほか、悠二の今の態度は彼に似合うものとなっていた。

「自分ではジンニヤーの壷を開封したつもりだったんですよ。それも半分くらいは、偽物だろうって思いながら……。
 でも、出てきた貴女は、ジンニヤーとはとても思えないですし、さっきの言葉を考えても、実際に違うみたいです。
 その……失礼だとは思うんですが、貴女はどういった存在なんでしょうか?」
『ふむ、妾がどのような存在か、か……』
「あの……何かお気に障るようなことを尋ねたのでしたら、申し訳ありません。む、無理にお答えいただこうとは思っていませんから――」

 美女の思案する様子に、機嫌を損ねたかと慌てた悠二が謝罪を口にする。

『いや、別にそのようなことはない』
「そ、そうですか……」

 ほっと一息をついた悠二を見やりながら、笑みを浮かべ直した美女の目に悪戯な光が宿っていた。

『妾はな、この世界を創造した者との交流を持つ別世界の創造神での。
 名をウルトネレイヤという。』
「えっ?」

 これまで畏怖を感じ続けていたとはしても、そこまで常識から外れた存在であるとは思っておらず、悠二は尋ね返してしまう。
 だが、ウルトネレイヤと名乗った美女は、自らの言葉を証明してみせるとばかりに、ニヤリとばかりに唇を歪めながら抑えていた神秘性を解放し、太陽光すら触れることを畏れているかのような薄暗い光景を現出せしめいてた。

『其方からすれば、ジーンニヤとは比べモノにできぬはずの至高存在じゃといえるじゃろうの』
「――――ッ!?」

 あまりにも圧倒的な存在を前にして髪の毛すらも硬直させ、今にも倒れそうな悠二の様子をひとしきり鑑賞すると、ウルトネレイヤはチェシャ猫のような笑いを漸く収め、その神秘性を抑える。

『うむうむ。其方は、実に良い反応を示してくれるの。
 さすがはこの世界の小さき者よ。
 想像の翼をはためかせ、異世界の物語を紡ぎ続けるだけのことはあるわ。
 知識としての理解が早く、ほんに助かる』
「あ……あ……」
『言っておくが、別に素方に何か思うところがあるわけではないぞ。ただ、興が乗っただけじゃ。許せ』

 ウルトネレイヤが振るった指先から虹色の煌めきが噴出し、悠二の硬直が解けていく。
 同時に、あれほどまでに圧倒されていた格の差を、不思議と感じなくなっていた。

「え、ええ……これは……その、ありがとうございます。
 でも、それにしても……」

 身体に起こった変化を確かめるように、悠二は自らの手や足の動きを確かめる。

『ふふ、大盤振る舞いじゃ。しかし、ほんに愛い奴よの。
 我が何をしたのか、もう悟ったとみえる。頭の回転と精神の柔軟性も悪くはないの。
 いや、それでこそ、妾を封印から解放するに能うモノというべきか……』

 ウルトネレイヤは目を細め、悠二の瞳を覗きこむ。

『ほんに其方には感謝しておる。
 さあ、願いを言うとよい。
 戯れに作った壷に誤って入り込んだ妾を解き放った其方の望みは幾らでも叶えてしんぜようぞ』
「な、なら……俺は異世界を旅してみたい。
 この世界を捨てる気はないけど、雲のように流れて、どこまでも遠くまで旅をしてみたい」
『よかろう。
 じゃが、その望みには元となる物があるようじゃの。
 まずは妾に、それを見せてみるがよい。
 それともう一つ、妾に無理な言葉を遣う必要はない。其方の言葉で話してみせい。其方の妾への畏れは十分に分かっておるからの?』
「わ、わかり――わ、分かったよ。これで、いいんだろ?」

 間近から迫り来る無言の圧力に、容易に屈した悠二は、恐々と本来の口調に戻してみせる。

『ん、上出来じゃ。さて、其方の住いへと参ろうかの』

 そして悠二は、満面の笑みを浮かべたウルトネレイヤに腕を取られ、引きずられるようにして一人暮らしをしているマンションへの家路に着いたのだった。
 *  *  *
『ふむ、この世界に行きたいのかの?』
「あ、ああ……」

 ウルトネレイヤほどの美女に自らの恥部とも云えるアダルトゲームのパッケージを掲げられるのは辛いものがある。
 家に帰りつくまでの間に、悠二はウルトネレイヤが随分とイイ性格であることに否応もなく気付かされてしまった今、遠慮などという感情は完全に目減りしており、悠二は憮然とした声音で彼女の質問に返していた。

『よいよい。其方とて、男なのじゃから恥じることではない。
 別段、女だけが目的というわけでもないのじゃろ?』
「それは勿論。操作の自由度が無意味なほど高いところとか、嫌味なほど戦闘が難しいところとかが気に入ってるよ。
 そりゃ……確かに女の子との、そういうシーンが嫌いなわけじゃないけどさ……」
『じゃから、拗ねるなというに。
 男の事情とて分からぬわけではないのでな。
 ふむ、しかし、この内容からすると……其方、美女を侍らせたいという願いが強いようじゃの。
 それと……少しばかり荒々しいのが好みのようじゃな。鬼畜じゃのう?』
「う、うるせぇ!」

 頬どころか、顔全体を真っ赤に染める悠二を、言葉と態度で小突き回すウルトネレイヤの顔にはニヤリとした笑みが浮かんでいる。
 既に、パッケージのみでゲームの内容と攻略経緯を読み取っていることの不思議への感慨を生む余地はそこにない。

『そう照れよるな。事実じゃろうて。
 さて、そのことは横に置いておいてじゃ。
 この世界じゃが、妾の生み出した神の一人が管理する世界じゃでな。其方、一人を送り込むことなど造作もない。
 とはいえ、ここに来る道すがら話した通り、其方の今の力は強すぎるからの。
 このゲームでの其方が操っていたキャラと同じ強さで行ってもらうこととしよう。よいな?』
「それでも十分に反則なんだろうけどな」
『じゃろうな』

 悠二が最近はまり込んでいるクレセントクリムゾンという名のゲームには、二度目以降にパラメータを持ち越すことができるという設定があり、そこからシナリオが更に広がっていく形式を取っている。
 周回を重ねる毎にレベルの上昇は鈍くなるものの、そのレベルは単身でドラゴンの群れを相手取ることができるようにまでなっているのだ。
 それほどの強さを持たなければ隠しシナリオに辿り着けないとはいえ、実際の世界に当てはめて考えれるとなれば、反則以外の何物でもなかった。

『まあ、もし、それでも危機に陥るようなことでもあれば、其方本来の力も目覚めるようになる。じゃから、安心して行ってくるがよい。
 一度跳べば、世界の渡り方も分かるであろうしの。その他の知識も、跳んだ後には分かるようにしてあるからの』
「ああ、サンキューな」
『何、気にするな。
 新たな朋(とも)への贈り物でもある。
 まずは、この世界で十分に経験を積んでくるがよい。
 アチラの経験も……のう?』
「好きに言ってろ!」

 最後まで付随するニヤリ笑いに、悠二は苦笑しながら肩を竦めた。

『まあ、気長に待っておるからな。ようよう、妾のところにまで這い上がってくるがよい』
「ああ、そのうちにな」
『では、行ってくるがよい』
「なっ!? どこで覚えた。んな余計なことぉーーー!?」

 いつの間に現れたのか。天井から垂れ下がる随分と豪奢な紐をウルトネレイヤが引いた途端、悠二の立つ場所に暗闇の穴が広がり、反響を伴う悲鳴とともに悠二の身体が落ちていく。

『ふむ、思ったよりも楽しいの、これは。
 真上から撮った映像も楽しみじゃの。あやつの活躍も見物じゃろうしの』

 そして、カラカラと笑うウルトネレイヤの姿は透き通り、光の残滓だけを残して消え去った。


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