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No.21628の一覧
[0] 鉄音同盟(仮) 【士郎×氷室 傾向:シリアス】[せる](2010/11/10 08:47)
[1] 壱幕之一 ―ラーメンは憂鬱な味[せる](2010/11/10 08:44)
[2] 壱幕之二 ―自殺志願者の切実な事情[せる](2010/11/10 08:44)
[3] 壱幕之三 ―かくして彼女は遭遇せり[せる](2010/11/10 08:43)
[4] 壱幕之四 ―鬼ごっこ終了[せる](2011/04/04 07:03)
[5] 壱幕之五 ―翼、生えず。[せる](2010/11/10 08:44)
[6] 壱幕之六 ―解らない人たち[せる](2010/11/10 08:45)
[7] 壱幕之七 ―その背はまだ少し遠く[せる](2010/11/10 08:45)
[8] 幕間之一 ―気まぐれ、打算、或いは善意以外の何か[せる](2010/11/10 08:46)
[10] 弐幕之一 ―既知に足る信頼、履行すべき勝利の契約[せる](2010/11/10 08:45)
[11] 弐幕之二 ―正義の味方がいたとしても[せる](2011/01/05 22:11)
[12] 弐幕之三 ―Vs姉、序章[せる](2011/01/20 12:17)
[13] 弐幕之四 ―姉曰く「嫁なら生きろ豚はしね」[せる](2011/03/02 10:52)
[14] 弐幕之五 ―侍女曰く「つける薬がありません」[せる](2011/03/31 08:59)
[15] 弐幕之六 ―ポーカーの行方[せる](2011/04/16 11:45)
[16] 弐幕之七 ―聖女曰く「彼の者達に憐れみを」[せる](2011/04/23 09:19)
[18] 弐幕之八 ―怨嗟、記憶、贖いの火[せる](2011/08/29 20:13)
[21] 弐幕之九 ―彼女の設問(初級)[せる](2011/11/20 02:59)
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[21628] 鉄音同盟(仮) 【士郎×氷室 傾向:シリアス】
Name: せる◆accf7c71 ID:4cf09cd3 次を表示する
Date: 2010/11/10 08:47
はじめましての方ははじめまして、せると申します。

注:今作は氷室SSです。
士郎×氷室を不快に思う方、回れ右でお戻り下さい。
ここから先は危険です、地獄です。
若干のオリキャラを含みますので、そちらにアレルギーのある方もご注意ください。
また、以前投稿した「氷室恋愛劇場」とは何の関係もございませんのであしからず。
それでは皆様方、どうぞ、宜しくお願いします。





『鉄音同盟(仮)』




 鉄を打つ音にも種類がある。
 ただ武器を打ち鳴らす音にも理はある。

 剣戟は何の為に。
 歯車が回る意味は何故に。
 機械が織る夢は何処に。

 自明だ。
 無為なる赤鉄には一片の意義を。

 剣戟は守る為に。
 未来の為に、歯車は回れば良い。

 美しい鐘の音が鳴る。
 そんな明日を、織れば良い。


  *                 *                 *


 ―序幕―


 さて少し唐突だが、此処である偉人に曰く。

『世の中は、君の理解する以上に栄光に満ちている』らしい。

 また、こう言った者もいた。

『森の分かれ道では人の通らぬ道を選ぼう。すべてが変わる』そうだ。




 古来より、知らぬもの、未踏の領域に価値を見出すのは人間の性である。
 開拓という言葉と共に、西へ西へと謳いながら馬を駆けた映画などがあるように。
 多くの冒険者が停滞した既知を忌み、多くの賢人が隠された未知を求めた。
 その試作と思索の果て、世界の法則は徐々にではあるが解かれつつあるのだ。

 ――そう、解かれつつあると思っていた。

「はは……」

 女史、などという呼び名が笑わせる。何のことはない。私も所詮平和ボケした日本人で、情報でしかモノを知らない一衆生の一人だったのだ。
 この国には既知しかないと、狭い常識だけで狭い世界を規定し、忌むどころか疑いさえしなかったのは紛れもなく己の落ち度。
 物理学者たちの名の下に、世界が理路整然とした神の箱庭であることを妄信していたのだ。
 何が才媛だ。本当にそういわれるほどの頭脳を、否、精神を持ち合わせていたらなら、私はきっと、あの狭く優しい世界に還ることさえできただろうに。

(嗚呼、井の中の蛙、頭でっかちの夢想家――氷室鐘の大バカ者め)

 目の前の現実に、私は半ば現実逃避のようにそんな事を考えていた。
 何せ他にやることがない。
 足は震えて動かないし、目は地面に転がったリアル志向のマネキン人形に釘付けだし、おまけに――ああ、これが致命的なんだが――もう既に、頭の上で化け物が腕を振り上げていたので。

 現状から結論を出すのは簡単だ。どうやら数秒後、私はこの薄汚い路地裏で死ぬらしい。
 阿呆らしい、馬鹿らしい。
 化け物に襲われて死ぬ? なんだその犠牲者Aのテンプレートは。
 如何様な罵倒と嘲笑を以ってしても飾るには足らぬ、惨めで愚かな滑稽劇(スケルツォ)
 それほど意義深い人生ではなかったが、まさかこんな三文芝居で幕を下ろすとも思わなかった。


 どうしてこんなことになったのか。
 私はこの今際の際で、そんな使い古された問いを脳裏に浮かべたのだった。


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