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「ゼロの使い魔」と「ArmoredCoreシリーズ」のプレイヤーである(オリジナル)レイヴンとのクロスものです。
オリ設定なんかも入ってます。
注意:アンチルイズ色が高いです。
ルイズ好きの方は今すぐ'戻る'のクリックを。
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―――空は無数の兵器で覆われていた。
人類が史上の栄華を誇っていた旧文明。その旧文明の遺産であるロストテクノロジー。その高度な技術力による兵器の群れ。
飛行型特攻自爆兵器。
時代を超えた悪夢が世界の空を覆っていた。
旧文明の終わりに起こった"大破壊"。
災厄とも語られるそれは人類の史上最高の英知と知識を集めた、人類同士の最悪の戦争による地上破壊全般のことを示す。
人類は大破壊によって自ら穢した地上に別れを告げ、逃げるようにして暗く小さく狭い地下へと移ることとなった。
大破壊が壊したのは地上だけではなく、人類は彼らが築き上げた無数の知識と技術をほぼ失った。
幸いにしてマグマ発電によりエネルギ枯渇の心配は無く、人はなんとか生きる場所を手にすることができた。
だが地上の世界を自ら起こした争いで失っていながら、尚、人は地下でも争いを止められなかった。
人々は地下世界で有限な資源を手に入れるため、金のため、力のため、争いの道具たる兵器の開発を始めた。
人の形を模した巨大機械、マッスルトレーサー。通称MT。
そのMTを基に、各パーツのアタッチメント化を進め、MTとは比較にならないほどの戦闘能力を持つ兵器、アーマードコア。通称AC。
そのACを駆り、巨額の報酬と引き換えに如何なる任務をも請け負い、何者にも縛られることの無い自由の傭兵、レイヴン。
人が地下に移り住んだのがいつだったのかも忘れ始めた頃。
地下世界での企業同士の対立が激化して泥沼となり、その世界の全てをコントロールしていた"管理者"が暴走し始めた。
地上を失い、地下へと追い詰められ、そして人類は終焉を迎えようとしていた。
しかし、たった一人のレイヴンが暴走した管理者を破壊することに成功し、人類は滅亡を免れた。
………人が地下で、地上を忘れているうちに地上はゆっくりと回復していた。
管理者が残した地上への道。
人々が忘れ去っていた遥かな空。
管理者はこのために人々を地下へと縛り付けていたのだった。
人類は再び地上の覇者へと返り咲き、瞬く間に地上に勢力を広げていった。
地上各地で見つかるロストテクノロジーは、当初、さほど気にもされていなかった。
―――人口知能兵器、軌道レーザー砲、巨大機動兵器。
だがロストテクノロジーは人が地下に潜っていた間も稼動を続けており、地上にノコノコと現れた人類に牙をむいた。
旧文明の危険な遺産を封じるため、一つの企業が歴戦のレイヴンに依頼した。
「我々の研究部隊は企業本部の意向に逆らい、遺跡の奥の"何か"を稼動させようとしている」
「一刻の猶予も無い。大至急、研究部隊の暴走を止めてくれ」
彼らの予想に違わず、遺跡の奥に眠っていた施設は地上の施設を全て破壊しつくすための特攻自爆兵器の生産施設だった。
研究部隊に制御可能なはずも無く、自爆兵器の群れは無差別に襲い掛かり、人種・性別・所属に無関係に公平に破滅を齎した。
地上で人が作った主要な施設は次々と破壊された。
最期の砦となった軍事基地の屋上で、一騎のACが戦っていた。
誰がどう見ても絶望的な戦況。
―――空は無数の兵器で覆われていた。
機体は既に限界を超えていた。
空を埋め尽くす特攻兵器の群れを既に三桁以上を撃破しているにもかかわらず、減少する気配はない。
むしろ更に数を増して襲い掛かってくる。
ジェネレーターのリミッターは、当の昔にカットしている。
10分もすればジェネレータが負荷に耐え切れずに停止するだろう。
それすら焼け石に水で、コアは小破、ヘッドは中破、レッグも片足が折れそうなほどダメージを受けている。ライトアームはメタリックな内部フレームを曝け出し、少しも動かすことは出来ない。唯一まともなレフトアームにはたった一本のブレードしかない。
ブースターはあまりの酷使に焼きつき始め、コアに積んであるEOのうち片方はもう無く、残ったほうもレッドランプが点いて使用不可。
アラートは鳴り止まず、戦闘は終わらず、サブカメラすらまともに見えず、戦いの果ても見えない。
肩に背負ったパーツは使い果たし、パージ済みだ。
死へのカウントダウンは、もう間もなくゼロになる。
男に焦りは無い。悲しみも無い。怒りも無い。
普通の人生を止め、脳と肉体を弄くられ、人間には到底真似できないチカラを持つようになった。
身体の各パーツは生体部品と交換され、脳にチップを埋め込まれ、薬漬けの手術とリハビリと訓練を受け、レイヴンとなり、自由を得た。
そして、ただただ戦い続け、壊し続け、殺し続けてきたのだ。
自分が殺されることも重々承知していた。
だが、だからこそ戦い続ける。
そして、生き続ける。
死線を幾度と無く潜ってきた者として意思が告げている。
―――空は無数の兵器で覆われていた。
―――それが何だというのか?
だから何なのか?人生に意味など必要ない。
傭兵として暮らし、レイヴンとして過ごし、イレギュラーとして戦った。
ただそれだけ。
果てに在るものも知らず、圧倒的なまでの力を揮い、血に塗れて自由を謳歌する。
それだけ。
それだけだったのだ。
機体に溜まりに溜まったダメージが限界を迎えた。
自爆兵器の一つが直撃し、ACの全機能が停止した。
悲鳴はあげなかった。恨み言は残さなかった。辞世の句など詠まなかった。
死の淵にありながら、その目には漆黒の意思が宿っていた。
ついにジェネレーターが爆発し、後には何も残らなかった。
そして、男は異界の光に包まれて―――消えた。