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No.33082の一覧
[0] 勲章にくちづけを ストライクウィッチーズ二次 SW⇔現実[hige](2012/05/10 01:13)
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[33082] 勲章にくちづけを ストライクウィッチーズ二次 SW⇔現実
Name: hige◆53801cc4 ID:507f5f5a
Date: 2012/05/10 01:13
勲章にくちづけを



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注意書き

不快にさせる表現、展開が出てくる 可能性 があります。

ほのぼの予定

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201(2+X)年、日本。



穴だ。壁に穴があいている。

うだつの上がらない大学生である彼は、歯ブラシを加えたまま口の端から泡立った歯磨き粉を垂らし、茫然としたまま。脳はその事柄に支配されていた。

朝、起床してみれば部屋の壁の隅に穴があいていたのだ。マグカップより少し大きいほどの、おそらく正円。いつからだろう? どうしよう。どうしようもなく後頭部をポリポリと掻く。

しばらくしてポタリと素足に垂れ落ちた歯磨き液が、ようやく思考停止を抜け出すきっかけとなる。
今日は図書館に本を返却しなくちゃ、帰りにTUTAYAによってDVDを返そう。そうしよう。そうだ、酒も切れてたな。

寝巻のジャージを脱ぎ捨て、シャツを着るのにやけに手間取り。その理由は朝食の食パンを食べようとした時に判明した。歯ブラシを咥えたままだ。なにやってんだか、苦笑してコーヒーを一口。口内の歯磨き粉と一緒に胃に流し込む。さわやかなハーブの香り、おれはマヌケだ。まずい。

まあいい、朝食はもういいから出掛けよう。食べかけの、いや口にできていないが、朝食を残したまま。
落ち着くんだ。きっと帰ってくる頃にはなんとかなってるはずだ。

いそいそと返却物を探し、なんてこった。昨日見たDVDは隣人にだだ漏れかもしれん。いや、そもそもこの部屋の上下両隣はもちろん、八方向全てに住人はいないはずだが。
ちらりと穴をうかがう、カーペットらしきものが床に敷かれているようだ。

くそう、いつから引っ越してきたんだ。ともかく、あまりいい印象は持たれていないだろう。恥ずかしすぎる。

「と、とにかくなにか……」

と、声に出して慌てて口をつぐむ。この独り言でさえ聞かれているかもしれないのだ。
ひとまずなにか塞ぐ物がないかと六畳一間をを見回し、ひとまずこれでいいかと目に着いた段ボール箱で隠した。
これで良し。Amazon ok! この時ばかりは無駄にでかい箱に感謝した。

彼は額の汗をぬぐうと、ストライクウィッチーズと題される円盤を、パンツじゃないから恥ずかしくないもん! そんな台詞が出てくるアニメDVDを、自慢のスピーカーから萌え萌えしたアニメ声が隣人に聞かれているかもしれないそれを、返却袋に入れて出かけた。つまり逃避したのだ、現実から。

そして扉が閉まると同時に、タイミングよく穴の向こう側からあどけない少女の声が、穴を塞ぐ段ボールのせいでくぐもって漏れてきた。

うぎゃ! 穴だ、壁に穴があいてる!

それはまったく、不思議な穴だった。



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第一話 壁にできた20.25πcmの超空間<穴>



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ええいくそ、なんでよりにもよってストパンなんて萌えアニメを見てしまったんだ、おれは。

原付にまたがり、彼は毒づいた。

しかもどういう訳か、隣の部屋のドアには表札がなかった。だとしたら穴から覗いたカーペットは誰のものだ? おかしい、圧倒的に不条理だ。じゃあさっきのは夢だったのかもしれない。なんだ、夢か、そうならいい。弁償するお金はない。

五分ほどでTUTAYAに到着。返却ポストに袋を突っ込み、そそくさとアニメコーナーへ。やはり次巻を手に取る。

そもそも彼は、あまりアニメを見るほうではなかった。なので、ストライクウィッチーズなんていかにもなアニメは見ないのだ。

しかし実は森蘭丸がウィッチで、嘘か真か彼女の活躍により織田信長は本能寺の変を生きのびたとの情報をネットで拾い。興味がわいたのだ。

そしていろいろグーグル先生に尋ねていると、なにやらカッコいい機関銃を二挺構えたキャラクターを目にした。
パンを好んで食すからといってイースト菌だとかに詳しいわけではないように、彼もまたミリタリーっぽいのが好きなだけで、なんだこのドラムマガジンっぽいのが特徴的なのは、と好奇心を加速させた。

その日がちょうどまったく偶然に火曜のレンタル半額デーで、となんとなく借りたのだが、これが意外にもおもしろかった。主人公が仲間達の悩みを解決したりと、彼の好む努力、友情、勝利があった。

「ッシュー間のごリョークスーで100エンなりまァす……ァざしたあぁああああー!」

店を出て、足早に駐車場へ向かう。

隣人がヤンキーだったらどうしよう。
あれぇ、なんでジーンズ穿いてるんすかぁ、おパンツは恥ずかしいんすかぁ。
と、すべて疑問形で言うように語尾を上げ調子でからかわれたら最悪死ぬかもしれん。

原付のアクセルを回す。

そうなったら引っ越しを考えよう。しかし先立つものが無い。というか壁に穴あけといてつつがなく去れるはずがない。いや待てよ、そもそもおれが穴をあけたわけではなく、気がついたらあいていたわけだ。こいつは隣人の仕業かもしれん。それよりも早く帰って続きが見たい。

ボロアパートの階段を軋ませ、二階の踊り場へ。自室の扉の前で、ふと右隣の扉を見やる。やはり表札はない。チャイムを鳴らしてみるべきか? だがもしも人が出来たらどうする? 用件がない。
しかたがないと、ドアノブを回して帰宅。すごい美女だったりとかだったらいいな、SFが好きだとなおよし。そんな都合のいい話があるはずはないだろうけど。

溜め息をつき、DVDをローテーブルに置くと、問題の穴を隠す段ボールの異変に気がついた。

あれ? ちょっとずれてないか?

歩み寄り、確認するとたしかにそのようだ。ぴったりと壁に隣接していたはずが数センチほど離れていた。このざまだ。

やっぱり隣に誰かいる。そっと壁に耳を近づけて気配を探るが、何も感じられない。

どうする。管理人に確認してみるべきか? シミュレートしてみる。

隣にだれか住んでいますか?――
いいや、空き部屋だが――
誰かいるみたいなんです――
確認しよう――

やや、なんだこれは。穴が発見される。誰もいないなら真実は一つ。犯人はお前だ。
銃型麻酔銃で眠らされた後、殺傷能力増強シューズでサッカーボール役を演じる羽目になるかも知れない。あの管理人ならやりかねない。

誰か居た場合は、どうなるんだろう。おれがやっていないのだから、消去法でそいつがやったことになる。

水掛け論にならなければいいが。

彼はしかしフムと段ボール箱を眺めて、あごに手をやる。たぶん向こう側からツンツンと指で押した感じかな。当たりをつける。

動かせばおれにバレるのは当然なのだから、つまり向こうもこの穴については関与していないという可能性が高い。なんだこれ、という感じだろう。
そうなれば、穴を隠そうとしたこっちが不利になるかもしれない。

あるいは何者かがおれの部屋に不法侵入して段ボールを動かし、そのような思考迷路に陥れるのが目的か。推理小説にありがちな、読者の盲点をつくやり方だ。

何のメリットがあるのか分からないが、How do itよりWho do itの方が小説では難易度が高いし、好みだ。最初に死んだ人間を疑え。

と、まったく関係ない嗜好から、高速な思弁を展開した。気分は名探偵。でも有名な建築家が建てた館は簡便な! と、付け加える。彼は一人の時は気持ち悪いほどテンションが上がるタイプだった。

つまり真犯人はマスターキーを持っている管理人だ。おれが寝ている間に向こうから穴をあけ、ブラフのカーペットを敷く。あとは白状するのを待つだけだ、意気揚々と損害賠償を求めるだろう。そんなことをする人間がいるだろうか? いや、あの管理人ならやりかねない。

謎は解けた。Q.E.D。やっぱり犯行時には黒タイツ着たんですかぁ? と語尾を上がり調子に台詞を決め、いざ管理人に電話をかける前に、彼はふと隣室がどうなっているのか気になった。

覗きこんだ場合に家具の一切が無ければ怪しむ。であるからして、どの程度人の生活を再現しているのか。

おもむろに段ボール放り、床に頬をつけて、どれどれと覗きこむ。

ひどく、ちらかっている。空き瓶やら、衣服やら、お菓子の包みなんかが。あれ、冷蔵庫とかがない? それとも視界に入っていないだけか。

顔を上げて、もう一度覗きこむ。
アンティークな家具、大きなノッポの古時計。

「いや、それよりもおかしいのは部屋の大きさだ」

広い。六畳一間のこの部屋の一回りも二回りも。この部屋の間取りを考えれば異常だ、物理学的にありえない。自然法則を無視している。それとも小さな穴から観測するとそう見えるのか。錯覚というやつだ。

次に穴の断面を観察してみる。幅は三センチほどと目測。艶のない黒色だ。そっと触ってみるとなんらかの金属のようだが、木材の気もする。

おかしい。彼は立ち上がり深呼吸。いくら格安のぼろアパートとはいえ、この壁の厚さは異常だ。レオさんの宮殿でもこれほどなわけがない。

腕組をして、頭を悩ませる。ひょっとして幽霊物件だったりするのだろうか。はたまたSFの読みすぎで頭がいかれたか。気味が悪い。
赤い部屋とかいう怪談が脳裏をよぎる。部屋に穴が開いており、覗きこむと向こう側の部屋は真っ赤で。後日管理人に尋ねると病気で目が真っ赤の住人がいるという事実を聞かされる話だ。

窓の外を見やると、おあつらえ向きにどんよりと曇っており、今にも雨が降って来そうな空だった。

彼はなんだか気乗りがせず、楽しみにしていたストライクウィッチーズの三巻の視聴を取りやめた。

雨粒がアスファルトを打つ音が聞こえる。今日の講義は休みのようだと布団にもぐりこみ、小説を読むことにした。



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「んあっふん。今何時だ」

どうやら彼はいつの間にやら眠ってしまったらしく。手の届く範囲にある置時計を確認。1700時。
のそりと起きあがり、寝汗を流すべくシャワーを浴び、パンツ一丁で部屋をうろついていると穴の向こうから遠い話声が聞こえた。遠い、決して部屋の中の会話ではない。

つまり隣人は今踊り場に居る訳だ、それ急げ! と彼は足音を殺してベランダへと向かい、腰をかがめてカーテンの隙間から穴を窺う。

なぜそんなことするのかは彼自身でもうまく説明できないが、段ボールを動かしたという事はこちら側を探りたいと欲求があったからで、それが取り除かれている今。はたして隣人はどのような行動を取るのだろう。

なんだかすごく犯罪っぽい事をしている気がするが、黙殺。自分の部屋を観察しているにすぎないと小さく肯定した。彼は小心者である。
まったく。引っ越しのあいさつもせず、壁に穴なんてあけやがって。と、ダメ押し。

ガチャリ。扉の開閉音。衣擦れの音。そして。

「あっれー? 穴の向こうに電気が点いてる」

意外にも幼い少女の声に、彼は驚いた。

「なんなんだろう、この穴」

あれ? と彼はいぶかしむ。自分が穴をあけていないのだから、てっきり相手があけたものだと思っていたが。

続いてゴツリと頭をぶつける音。そして――

「いてっ」

ひょっこりと藍色の瞳が覗いた。カラーコンタクトでなければ外国人、あるいはハーフか。
しかし言語は日本語だ。いや、というかこの声はどこかで聞いたことが。彼は必至で記憶を探り、そしてある重要な事柄を思い出した。

まさか、と背筋が凍りつく。

おれ今パン一じゃん。あれこれヤバくない?

おそるおそる背後を振り返る。落下防止の鉄柵があるだけで、少し離れたところでは井戸端会議中の主婦の方々が新たな議題に目を丸くしていた。トランクスにプリントされた某夢の国のネズミさんとこんにちは。ハハッ、ぼくミッ♯♯。

社会的に考えればすぐさま部屋に駆け込むべきなのだが。ちらり、穴の向こうからは可愛らしい瞳がキョロキョロとこちらの部屋を窺っている。今更ベランダからパンツマンが出てきては、ストパンを見ている事を知られているかもしれない時点で手遅れかもしれないが、良き隣人関係は築けない。

いや、ストパン的に言えばズボンマンか。くそうと彼はこぶしを握りしめる。隣人がストパンの登場人物ならなんら問題はないかもしれないのに。
ストパンの世界でも男がパン一はマズイのだろうか?

しばらく観察を続けていると変化のなさに飽きたのか、変な部屋ーと吐き捨てて消灯。スプリングの音からして、ベッドに倒れ込んだ。就寝したのだろう。
変な部屋とは失礼な。彼は心中で呟くと、そろりと部屋に戻り、見回す。
新聞紙の片面ほどの大きさのモニターと、両隣りにはトールボーイ型のスピーカー。その周りを囲むような造りの本棚。

何だか疲れたと、布団を敷き、頭からかぶる。明日は早い、寝よう。
彼はまぶたの裏に、穴から覗く少女を映しだした。白い肌、淡いブルーの瞳にかかる金髪。よくよく考えればラッキーじゃないか。ヤンキーじゃなくてよかった。しかしどっかで見たことがある気がするんだがなあと、理性は遠のき、眠りが近付く。

穴は、どうしよう。でも明日は一限から授業だから、とりあえずまた今度話に伺おう。今日はもう眠い。



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翌日の夕方、彼がまだ大学から帰路についているころ、部屋には二人の女性の話し声がこぼれ出ていた。穴の向こうでは――



「風呂の時間だ。起きているか、ハルトマン」

無骨なノックの音が響く。

「開けるぞ……なんだ、珍しく部屋が片付いているな」

そう言って顔を出したのはブラウンの髪をシンプルに二つ結びでまとめた少女。

「そ、そうかなー」 この部屋の主、エーリカ・ハルトマンは、言いよどみをごまかす乾いた笑い。

「まあ、あくまで以前と比べるとマシとというだけだが。しかしそうか、ようやくハルトマンにもカールスラント軍人としての自覚が芽生えたか」と、感無量といった声色。

「うーん、まあ……それよりトゥルーデ、早く行こうよ」

「ウム、良い事だ。今でこそ私が呼びに来なければいつまでも寝ているが、しかし。それも改善するかもしれん」
トゥルーデと呼ばれた彼女は、腕を組み、感慨に浸った。そう考えると何かもの寂しい気もする。巣立ちを見守るような母鳥の心情とは、このような気持ちなのかもしれない、と。

ハルトマンはそのまま機嫌良く笑う同僚と共に室を出た。扉を閉める際に、適当に衣服で隠した穴を一瞥。

「ま、いっか」

だからちょうど入れ替わるように帰宅した彼が愕然としたのは頷ける。

穴からは、むりやり押し込まれたのだろう。空き瓶やらお菓子の包み紙や何やらが、流れ出る水流のように散乱していたのだから。

今から文句を言いに行くべきか。いやしかし小さな穴からでも可愛らしいのは見てとれた。言いにくいぞ。いやいや、だからといって……

あれこれと悩んでいるうちに、バイトの時間。家を出る。
数時間後にくたくたになって帰宅し、押し込まれたゴミのことはまた明日にでも考えることにした。問題の先送りは得意とするところである。

こんな気分でストライクウィッチーズを見れるかと、その日も結局三巻は再生されなかったのだった。

やっぱおれがゴミ捨てなきゃダメかなあと、眠りにつく。
明日にでも訪ねてみようと。



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あとがき

日常系をラノベっぽい感じで書く技術とか向上したい、という野望。


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