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No.5085の一覧
[0] バスケットマン、キョン (更に最新話+まえがき)[れろ](2009/02/05 13:50)
[1] その2[れろ](2008/12/01 02:33)
[2] その3[れろ](2008/12/02 03:32)
[3] その4[れろ](2008/12/02 03:34)
[4] その5[れろ](2008/12/03 18:15)
[5] その6[れろ](2008/12/03 20:43)
[6] その7[れろ](2008/12/05 19:36)
[7] その8[れろ](2008/12/05 19:39)
[8] その9[れろ](2008/12/05 19:44)
[9] その10 [れろ](2008/12/06 20:27)
[10] その11[れろ](2008/12/11 22:50)
[11] その12[れろ](2009/01/04 01:08)
[12] その13[れろ](2009/01/04 02:23)
[13] その14[れろ](2009/01/06 22:20)
[14] その15[れろ](2009/01/10 22:10)
[15] その16 前編[れろ](2009/01/15 06:03)
[16] その16 後編[れろ](2009/01/19 04:03)
[17] その17 前編[れろ](2009/01/22 22:12)
[18] その17 後編[れろ](2009/01/25 04:21)
[19] その18 前編[れろ](2009/01/28 08:03)
[20] その18 後編[れろ](2009/02/04 05:16)
[21] その19 前編[れろ](2009/02/04 05:22)
[22] その19 後編[れろ](2009/02/05 15:22)
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[5085] バスケットマン、キョン (更に最新話+まえがき)
Name: れろ◆b3b6db28 ID:6d8f0452 次を表示する
Date: 2009/02/05 13:50
「お茶が入りましたー。」

放課後の部室に控えめに響くエンジェルボイス。ああ、和むね。この人の声を聞くためにここに来ている気がするぜ。

朝比奈さんは不機嫌そうにパソコンをいじっているハルヒの机にお茶を出し、古泉はオレと人生ゲーム。

長門に至っては、いつものようにむやみやたらと分厚~い本にまっすぐ視線を落としている。

今日のハルヒはこっちに謎の視線をチラチラと向けてきたりしている気がしているのだが、こいつの謎の行動はいつものことだ。全く気にする必要はない。

いやむしろ今日は大人しい分楽なくらいだ。こいつもいつもこれくらい大人しければ鑑賞に使えるのだが。

「・・・なによ?」

「別に。」

そんないつも通りの部室。いつもの通りの日常を満喫するように、朝比奈さんの香りが漂っているはずの空気を吸い込み、部室を見回す。

「・・・・・・。」

長門はオレの行動を不思議に思ったのか。ふっと上げられた視線と絡み合う。

いやなんでもないぞ長門。古泉が、銀行から借金の束を手に入れてる最中の気まぐれだ。

意思が通じたのか、はては能力で読まれたのか。長門はこくりと僅かにうなずいた。

「・・・・・・。」

はて。まだ何か不自然な事があるのか。いつもならすぐ本の世界に戻るはずの長門がこちらを見続けている。

「おやおや。借金の札が足りないのですが、これはこれ以上借金は増えないでいいと言うことですね。」

ばかモン。そういう時はルーズリーフで自分の借金札を作るという、究極的屈辱作業をしなければいけないんだよ。

「て・・手厳しいですね・・・。」

古泉はひきつった笑顔を浮かべる。ふん。この作業はこいつもさすがに0円スマイルを崩すか。

古泉はカバンから今後も使えるようにとしているのか。定規まで使って架空の借金札束を作り始める。

「・・・・。」

なんとなく手持ち無沙汰になって、いまだにこっちを見ている長門と見詰め合ってしまう。

うむ。なんとなく気まずい感じがこういう時はするはずだが、なぜだが知らんが長門の場合は話しているよりこういう間の方が自然ではむしろ心地良い。

のだが。

・・・・長い。今までの最長記録を超えると思われるガン見っぷりに何か思惑を感じる。

もしかして・・・おれの心を興味本位で読んでいるんじゃないか。

最近の長門はオレにしか分からないようだが、感情の起伏に富んできている気がする。

長門の事情を知っているオレにとっては、どんどん人間らしく成長している長門を見るのは嬉しい。

なのだが、その超人的能力でむやみやたらと人の心を読むのはいけないな、やはり。

人には隠したい事情って言うものがあるのだし、男(特に谷口)の心の中に住み着く狼に不用意に触れるのは火傷どころか、情操教育に悪影響だ。

「・・・・・・。」

__長門、今日のお前は朝比奈さんよりずっと可愛いぞ____

口に出さずに心の中でそっと呟いてみる。

長門の肩が一瞬ビクッと震える。

・・・・・・やはりか長門。

むやみに人の心を読んじゃいけないぞ。もっと恥ずかしい事をオレが考えてたらどうするんだ。

オレはニュータイプの如く、顔で笑って心で叱るという大人な行動をとる。

「・・・・ごめんなさい。」

たっぷり間をあけてから消え入るようにつぶやく長門の頬は心持ち赤い気がする。いや無表情の中にほんとーに僅かであるが。

最近の長門観察眼は磨きが掛かったきたなオレ。この特殊能力だけは他の奴らに負ける気がしないぜ。

「はいどうぞ、キョン君」

「あっありがとうございます。」

そんなウブな反応を見せる長門に少々萌えながら、朝比奈さんのハートフルな香りが漂うお茶を手にとる。

ん?なんかハルヒがこっちをジーっと・・・・

「あっ!キョッ、キョンクンッ!」

「えっ?」

突然慌て出す朝比奈さんに視線の先を追ってみると、オレの手が朝比奈さんの手ごとお茶を握っていた。

「うわっ!すいませんっ!」

慌てて朝比奈さんの手を離す。なんてベタな事をしているんだオレは!あれか?なんかこのへんにガンマ線やら何やらがオレの頭を犯しているのか!?

「ふえ、ふええ・・・。」

真っ赤になってトテトテと歩き回る朝比奈さん。

いやそんなに驚かれるとちょっと凹みます。女神に見放されるのはちょっと・・・・って、ああ朝比奈さんそっちには何故か都合よく落ちている筆箱が____!

「え?キャ、キャアアア・・・・!」


___予想通り___!



・・ばふっ。


事前にさっと立ち上がり予測落下ポイントに回り込んだオレは朝比奈さんのかぐわしい髪の匂いと、不可抗力の柔らかさを腕に収める。

ここまでお約束な展開をなぞってくれる方はこの人しかいないな。全国のオタク諸君に申し訳ないが、実在した天然どじっ子キャラを最初に助けるのは、オレだったようだな。

「ふえええ・・あ、ありがとう、キョン君・・。」

いえいえこっちがお礼したいくらいですよ。これで向こう一週間はこの腕の柔らかさを思い出せるのですから。

「・・・・・鬼畜。」

ん?今なんか言ったか長門?

バンッ!!!!

なにか壁に叩きつけたような音。

突然鳴り響くその音の発信源はこの部室の主の机。先ほどまで健在だった和やかな部室の空気が凍る。

思い切り叩きつけた手を震わせながらゆっくりとハルヒは立ち上がる。

前髪で表情は見えないが、なんとなく、とてつもなくやばい空気であることを瞬時に悟る。

何だ、何だ?

古泉のいつもの0円スマイルも凍りつき、長門もかすかにあせっているように見える。

「・・・・なさい・・・」

「・・・は?」

「出て行きなさい!!」

「お、おいおい」

突然の大声。

ハルヒは切れていた。いや本当にこれ以上無いくらいに。

いやいきなりどうしたんだハルヒのやつは!出て行けってオレのことだよな!!

「はやくっ!!今すぐ!!団長命令よ!!あんたの顔なんか見たくない!!」

え・・・?

「もう・・・もう!二度と来るなっ!!!」

破裂するように叫び声を上げたハルヒははあはあと肩で呼吸している。

シン・・・と静まり返る部室。ピシッと凍った部室の空気が痛い。

今回は何だ?なにかオレが悪いことをしたか?

突然の事態に対応するための急遽脳内会議で、しばらく時がフリーズする。

確かにこいつはいつも理不尽な理由で怒ったり、オレから金を巻き上げたりしていきた。

待ち合わせに別に遅れてないのに払わされたり、にらまれたりと。

しかしそれは、加減が全然できていないだけで、いつもまあ譲歩さえすれば納得できる理由でオレに当たって来たはずだ。

しかし今回オレがした事は明らかに人助けだ。しかもSOS団員というかけがえのない存在のだ。

多少よこしまな気持ちがあったというのは、結果的にであって、椅子から飛び出した時のオレは本当に団員の危機を助けようとする気持ちしか無かった。

それはもちろん、言いたくは無いけど例え古泉に対してでさえ、オレは同じ行動を取っていたはずだ。

それくらい、今オレにとってのSOS団への思い入れは強くなっているんだよ。

___もし頭でも打ち付けてたらどうするつもりなんだ?

そんな事を考えると、オレの胸にふつふつと怒りがこみ上げてきた。

___お前のSOS団隊員の気持ちはそんなもんだったのか?

ぎりっ!奥歯をゆがむ位かみ締める。

ハルヒの表情は見えないがどうやら撤回する気は全く無いようだ。

いつもいつもオレに対する対応だけは違うと思っていたが___


「ああ・・・・わかったよ・・!!」

___ああ、団長がそんな言葉を言い出すなら___!

「もう二度と来ねえよ!!!」

バタンッ!!!

乱暴にカバンを引っつかみ、叩き付けるように思いっきりドアを閉めてやる。

あいつの口からあんな言葉は聞きたくなかった。

足早に廊下を通り過ぎる。

静まり返った放課後の暗い廊下に音は無い。

朝比奈さんの焦る声も、古泉がハルヒをなだめる声も、長門の本を閉じる音も。

一切の音は返ってこない。

今回の事は今までの軽い話とわけが違う。それをみんなも感じ取っているのだろうか。

「くそっ」

そうだ。今回は訳が違う。ハルヒが拒絶し、オレも拒絶した。

団長命令に従ったつもりではない。それは今回は明らかな決別な証拠だ。だから、もう今までのような関係に戻ることはあるまい。

正直、あいつのなんだかんだ言っても、結局うまくまとめちまう行動に敬意を覚えてたもんだ。

根は本当に気持ち良いやつっていう認識を覆るどころか、固まるばかりだった。

だからこそ、あいつの口からあんな言葉を聞きたくなんかなかった・・・・。

シャーー、と坂を下る自転車の快音とは裏腹にどろどろとしたオレの気持ちはさらに濁ったものへとなっていった。





「あーキョン君おかえりー!」

「ああ。ただいま。」

「・・・どーしたの、傘、さしてこなかったの?」

「ああ。うまく傘が開かなくてな。」

前髪からしたたる雨粒が妹の顔にポツリと当たる。

「うー、キョン君大丈夫?風邪ひかない?」

こんなとき、気兼ねなく話し掛けてくれる妹。心配してくれる声も空気の読めなさも、嬉しかった。

オレは何日にも感じる一時間を超えて、ようやく笑顔を浮かべることができた。

「そうだな・・。シャワー浴びてくるよ・・。」

妹の頭をクシュクシュと撫で、ベタベタな靴下のまま洗面所へと向かった。

シュル。という制服の絹すれの音。洗濯機に入れこんでやろうかと思った気持ちを抑えて、窓のそばにかけてやった。

制服を洗ってしまって休む理由を作る。そんなせこい真似を一瞬考えた自分に自虐的な笑みが浮かんでしまう。

キュ・・キュッ・・・シャアアアア・・・・

・・・・オレはクビで・・・この生活は終わったんだよな・・・。

そう誰に言うでもなく、自分に言い聞かせる。

もう、古泉に閉鎖空間がどうのって言われても、オレは動く気はない。

今回はハルヒが悪い。頭の冷えた後考えると、いつもは自分の悪いところも浮かんでくるものだが今回はまったく見えて来ない。

例えハルヒに何か言い分があったとしても、あれは行き過ぎだ。

オレは例え同じシチュエーションに出会っても、愚直に同じ事をする気だ。

だから謝る理由はなくて、必要はない。いや、むしろ謝れない。中身のない謝罪は時に侮辱に値する。

そんな真似はできない。

そして、なにより。先ほどの事で「自分の言動に間違いは無い」とケリをつけてハルヒがこれから生きていくというのは、オレの望む事ではないからだ。

自分にもミスをする事があるって自覚しないと、いつかまたあいつは一人ぼっちになってしまうんじゃないだろうか。

SOS団を設立してからは、不思議なこと以外にもそれなりにも興味を示しだして、普通の人間とも少しずつ付き合えるように変わってきた。

このままなら友達も増えて、いつか親友とも呼べる奴があいつにできるだろう。

でもな。やっぱり人間なんだから、どっかでぶつかりが生じることもある。

そんな時に素直に謝れないと、あいつが愛していると言ったSOS団員の今のオレとあいつみたいに決別してしまう。

だってそうだろ?神になってしまったハルヒの機嫌を損なう人間は「絶対悪」なのだから。

閉鎖空間を作り出す要因になるそれは、これからも機関が巧く消去「していってしまう」。

ハルヒの意思とは別に周りの人間が減っていってしまう可能性があるんだ。謝ることすらできずにな。

だから。

そんな取り返しのつかない事が起こる前に、誰かがあいつに思いやりについて考えさせるキッカケにならないといけないと思うんだ。

まあオレのクビくらいじゃあいつは微塵も気にしないかもしれないが、経験値の足しにはなるだろう。

キュ。

なんとか自分の気持ちに一区切りがついたところでシャワーを止め、体をふく。

「キョン君ーー。アイスーー。」

妹がトテトテと冷蔵庫から走ってくる。

「サンキュ。」

「えへへ。機嫌なおった?」

「ん?ああ・・・・・・まあな。ナイスだ妹よ。」

また、妹の頭を撫でてやる。

うん。だいぶ、いつものオレに戻ってきたの感じがするぞ。

「お礼に今度遊園地にでも連れてってやるよ。」

「お兄ちゃん・・・やっぱりいつもと違う・・。だって優しすぎるもん。」

むっ。どうやらいつもオレを通り越してしまっていたらしい。てか、妹よ。いつものオレは優しくないと思っていたのか?

「・・・・・えへへ。」

「・・・・・ふ。」

なんとなくニヤリと笑いあってしまう。どうやらウチの家系は意地悪い笑い方が似てきてしまうらしい。

「じゃあ、ゲームセンターに連れてってやる。」

「別に遊園地がイヤな訳じゃないもーんっ!」

ペタペタペタっと居間の方へ駆け抜けて行ってしまう妹。よく聞くと6時のアニメの主題歌が聞こえてくる。

なんか微笑ましい年頃だよな・・・。

そんな事を思いながら、階段を上がって自室のドアを開けた。

ばふっ・・・。

なんとなくベッドにダイブ。柔らかさから来る安心感で思わず深呼吸をする。

「・・・・・・明日からどうするか・・・・。」

そう。それである。

まあ、なんだかんだでこれからは本当にごく普通の生活が待っているわけだ。

別に不思議を探したり、誰かに刺されたり、海の孤島に行ったりしない生活が待ってるわけだ。

つまりは以前のオレ。中学時代のオレに逆戻りって訳だ。

「・・・・・・。」

ドクン。

心臓が、高鳴った気がする。

何だ?

ふと。本当に思いつきで、ベッドの下をあさってみる。別に如何わしいものが入っている訳ではないのだが、何か大切なものをこの中に入れた気がするのだ。

チョン。

何かが手に触れる。やっぱり何かあるようだ。

ドクン。

何だったっけ___?

ドクン。

「んっ」

なんでこんなに汗が出てくるんだよ?

声を出して思いっきりそれを引っ張り出してみると___

ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・。

そんな音を出したのはボロッボロな球体。


「あ・・・。」


その瞬間___なにかがオレの中で弾けた。

「あーー・・・・・」

そうだ。中学三年のオレは柄にも無く。部活を熱心に_____。

キョンッ!走れっ!

打つシュート。歓声と悲鳴。

ディフェンスウウ!!

柄にも無い大声。

来てみろよ___。

トラッシュトーク。

ハイタッチ。最後の試合。決勝戦____

柄にも無い、オレの人生に回ってくるはずもない__ドラマチックな場面____

アイ・コンタクト。神が宿る__なんてジョーダンに言われた___オレの____


「ああ・・・・あ・・・うああああああああ・・・・・・。」


なんで___なんで今ごろ____

いつのまにか、泣いていた。なんでかなんてわからない。

ただそうしないと、何かが壊れそうで___

やっぱり柄にもなく声を出して。雨の音が掻き消えるくらい泣いてしまう。

忘れるはずのない記憶のフラッシュバック。それはまるで、溶けるようで、まるで取り戻すようだった。

SOS団に入った。そのことで何を忘れていた__

___いいのか___このままオレの言ってた普通に戻っても___

そんな声が、どこからか聞こえた気がした。

耳の奥。体のどこか深い所から、目覚めるように疑問が生まれる。

____一生、この記憶を引きずって、後悔して生きていくのか___

その言葉ば今のオレには重すぎて__

「うあ・・・・うああああああああ・・・・・」

止まらない。涙が枯れるまでは止まらない。



・・嗚咽が止まない。

のどは腫れて、呼吸の音がおかしくなってきた。


「あああああああ・・・・」

それでも、それしかしらないように、オレの意思と無関係なところで声が出てくる。



____いいのか____

声が再び聞こえてきた。


「いう・・・あああああああ」

____よくない?____

枕を押し付け声を殺す。

布団にくるまり目を閉じる。


でも僅かに残ったボールのツブツブの感触だけは手放せなかった。


いいのか?このままで、今何か決めないでいいのか?

なし崩し的にSOS団に入ったのはそういえば___

ならハルヒか、長門か___オレに記憶を戻したのは___

いや、どっちでもいい__今は理由も意味もそんなことはどうでも____

SOS団の記憶は___バスケ部の記憶____

オレは____「経験」じゃなくて、ただの「思い出」にしちまうのか___


____しちまうのか?____


「・・・・い・・・・や・・・・・だ・・・・あ・ああ・・・・・・・」

___しちまうのか?_____

___しないのか?_____


「あ・・・ああ・・・・グスッ・・・グスッ・・・・・」

情けない声だ。

情けない顔だ。

情けない気持ちだ。

おれは_____そんなことを許容する甘さが___普通か___それとも断固拒否するのが普通だったか____

ザアアアア・・・・・・。

響く雨の音。だんだん強くなってきた。

「はー・・・・はー・・・・・。」

そうだ。明日から。いや今日から___

オレは___SOS団員じゃない___

何をする・・・?何を見る・・・・?何を・・・・・?


_____後悔する______?


ピシと乾いた音がなった気がする。

「・・・ふっざけんな・・・・。」

考える間は無く、ノータイムで自然と口から出た自分の声が耳に入ってくる。

それが、その自分の声のはずなのに。誰かをを勇気付ける声に聞こえた。

後悔だと?

ふざけるなよ。オレは普通なんだ。

そんなドラマチックなもの背負うなんて似合わないし、キャラが違うんだよ。

一般高校生。ありきたりな青春にありきたりな思い出と経験。

そんな「普通」なものがオレにとって大切なんだよ。

心の中で言葉をつむいでいく。そうだ。こんな事前の前から分かっていた事。

いつか前に決心していた事じゃないのか?

今までのような、奇想天外、夢と現実のハザマにいるような生活は待っていない。

未練はたらたら。今だって尾を引いてる。

でも。それでも。

そう__SOS団を辞めて取り戻したのは、オレの普通___

そんな誰のものでもないオレの日常に今日から入っていくんだ__

いまだ。ここで何かを決めろ。たまにはこういう切羽詰った決断てのもオレの普通じゃアリだろ?


「グスっ・・・・ッス・・・・・・・・すうーーー・・・・・・ふうーーーー・・・・。」



息を深く、深く吸って吐き出す__。

体の中身を入れ替えるように深く。もぐらせるように酸素を体にめぐらして吐き出す。

頭に力が戻ってくる。筋肉が盛り上がっていくのを感じる。

頭を上げろ。体を起こせ。

今ここで精一杯の強がりをオレに吐いて見せるんだよキョン。

「・・・・オレは・・・・」

言葉に詰まる。でも確かに言葉が出てきそうだ。

「オレはこれから・・・・・」


「キョン君ーーー!ごっはんっだよーーー!!」


バタン、と勢いよくドアをあけて妹が飛び込んできた。

そしてすかさず、フライングボディアタック。

再びオレは負け犬のリングにバフリと押し戻される。

・・・相変わらず空気の読めない奴だ。

なんか、なにか熱く決断する瞬間であったはずなのに・・・。

「なにー?キョン君?ていうか泣いてる・・・?」

妹の声は兄の威厳のためにスルーする。

「・・・まあ、熱血ってのはオレのキャラじゃないよな・・・」

「え?うん。キョン君の場合普通モードの時は、ぼーっとしてた方がいいなー。」

「普通モード?」

なんだそりゃ?

「キョン君は、エマージェンシーモードと普通モードがあるんだー。」

「エマージェンシーモードって・・・オレどんな時になっているんだ・・・?」

「うーんキョン君が大舞台とか立っている時とかかなーー。試合とか、文化祭とか・・・。」

試合・・・・文化祭・・・?

「ん?」

「どうしたの?キョン君。」

脳裏に先日のHRの時の映像が浮かび上がった。

あれ?確か明日____!

「なあ妹よ。」

「なに?」

「雨の日はグラウンドつかえないよな?」

「あたりまえじゃん。」

オレの脳裏に鮮明に黒板のチーム分けの表がある・・・。

そこには

「体育大会」

「サッカーチームは雨天の場合、バスケになります。」


の文字があった。






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