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No.1115の一覧
[0] マブラヴafter ALTERNATIVE+ (修正版)[レイン](2006/12/30 16:43)
[1] Re:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/04/04 14:22)
[2] Re:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 設定少しネタバレ[レイン](2006/04/17 03:06)
[3] マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/12 23:32)
[4] Re:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/13 19:31)
[5] Re[2]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/13 19:21)
[6] Re[3]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/17 17:38)
[7] Re[4]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/18 02:52)
[8] Re[5]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/17 20:32)
[9] Re[6]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/18 02:46)
[10] Re[7]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/20 19:25)
[11] Re[2]:簡単な人物紹介 暫定版[レイン](2006/04/12 15:23)
[12] Re[8]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/24 01:51)
[13] Re[9]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/27 16:34)
[14] Re[10]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/26 23:12)
[15] Re[11]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/28 17:45)
[16] Re[12]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/29 17:19)
[17] Re[13]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/29 17:24)
[18] Re[14]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/03/30 19:36)
[19] Re[15]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/04/02 09:23)
[20] Re[16]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/04/02 08:53)
[21] Re[17]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/04/03 18:35)
[22] Re[18]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第20話[レイン](2006/04/04 14:46)
[23] Re[19]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第21話[レイン](2006/04/05 08:12)
[24] Re[20]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第22話[レイン](2006/04/05 23:27)
[25] Re[21]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第23話[レイン](2006/04/06 08:02)
[26] Re[22]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第24話[レイン](2006/04/07 21:55)
[27] Re[23]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第25話とおまけ[レイン](2006/04/07 21:49)
[28] Re[24]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第26話[レイン](2006/04/10 00:09)
[29] Re[25]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第27話[レイン](2006/04/10 00:12)
[30] Re[26]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第28話[レイン](2006/04/10 01:51)
[31] Re[27]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第29話[レイン](2006/04/11 02:33)
[32] Re[28]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第30話[レイン](2006/04/11 18:08)
[33] Re[29]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第31話[レイン](2006/04/13 00:07)
[34] Re[30]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第32話[レイン](2006/04/13 04:34)
[35] Re:焔の開発日誌……補足説明[レイン](2006/04/13 04:43)
[36] Re[31]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第33話[レイン](2006/04/13 17:49)
[37] Re[2]:焔の開発日誌2……ギャグです[レイン](2006/04/14 00:06)
[38] Re[32]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第34話[レイン](2006/04/14 19:29)
[39] Re[33]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第35話[レイン](2006/04/16 10:09)
[40] Re[34]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第36話[レイン](2006/04/17 00:17)
[41] Re[35]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第37話[レイン](2006/04/17 23:15)
[42] Re[36]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第38話[レイン](2006/04/17 23:26)
[43] Re[36]:マブラヴafter ALTERNATIVE+[レイン](2006/04/18 20:50)
[44] Re[37]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第39話[レイン](2006/04/18 22:33)
[45] Re[3]:焔の開発日誌3……余り開発ではないけど[レイン](2006/04/19 10:14)
[46] Re[38]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第40話[レイン](2006/04/20 00:58)
[47] Re[39]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第41話[レイン](2006/04/20 17:34)
[48] Re[40]:マブラヴafter ALTERNATIVE+ 第42話[レイン](2006/04/21 17:33)
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[1115] マブラヴafter ALTERNATIVE+ (修正版)
Name: レイン◆b329da98 次を表示する
Date: 2006/12/30 16:43
序章
◇◇◇

「まだ、蒼穹に輝いている……」

 冥夜は、暗き深淵の中に星が瞬く空間を視界に収めながら、その中に浮かぶ、青い色彩で彩られた美しく輝く星を見詰めて呟いた。
 人気の無い展望室の中、その場の静寂が、自らの肉体に侵食したように、冥夜はじっと動かない。青く輝く星を見詰める彼女のその眼差しにも心の中にも、複雑な思いが雑多にとぐろを巻くが如くに、渦巻き果てる事は無かった。 思いを、希望を託され地球を離れて、既に5年以上が過ぎた。いつも心に思うのは地球に残った愛する人、そして自分が守らねばならないと思っていた人々の事。
 BETAに侵食されつつも、まだ十分に美しい惑星を見る度に『自分はこんな事でいいのであろうか? 己が出来る事は無いのか?』と、心に浮かぶそんな葛藤が、冥夜を苛んでいた。
 
 オルタネイティブ5により、移民船団が地球を離れて5年が過ぎた。バーナード星へ移民した人類は確実に勢力を増やし、安定した生活を手に入れるまでに至っていた。
 
 『お前達と俺の子供が生きていればそれが俺の生きた証になる』
 あの美しい惑星を見るたびにその言葉が心に浮かび涙を誘う、あの日の選択を、別れを後悔してはいない。後悔は何も生み出さないことを知っているからだ。しかし愛しい人に会いたいという気持ちは日々心に募ってくる。
 「武……」
 思考が愛しい人を思い出し、知らず名前を呟いてしまう。愛しく思うその者の姿は、未だに鮮明に思い出せる。腕に抱かれる時のその温もりも、耳に心地良く感じた声でさえ――。しかし、思いに沈んでいた冥夜はそこで、意識を現実へと浮上させた。背後より近づく気配に気付いたからだ。いや、気配は消しているのだがこちらも剣術を嗜んだ身、相手の気配遮断能力も中々のものだったが、よく知っている気配なので察知は容易であった。
 蒼く輝く惑星を見上げて見詰めながら、後ろに迫る人物に声を掛ける。
 「慧……、私がお主の気配を察知できんと思っておるのか?」
 「…………残念……」
 全然残念に思っていないような声に、相変わらずだなと口の端に皺を寄せながらも、その場で振り向いてその人物に目を向ける。
 「ん………」
 右手だけを上に挙げ、言葉少なに挨拶をするのは「彩峰 慧」。共に同じ男を愛し、同じ様に子供を授かり、その男に強引に説得され移民船団に乗せられた、盟友であり、ある意味ライバルでもある女性である。

 「久しぶり……白銀婦人」
 「何を言う、毎日のように戦術機の操縦訓練で会っているであろうに。それに白銀婦人はお主もであろう、慧」
 白々しく軽口を飛ばす慧に、此方も素っ気無い態度で反論する。
 此処では「白銀」と名乗っている冥夜。オルタネイティブ5発動の折、日本政府により双子の妹である冥夜は色々と問題ある人物とされ地球に残されることが決まっていたのだが、冥夜の姉悠陽はこれに反発していた。しかし逆に、自分の立場が足枷となって、決定が覆せなかったのだ。
 冥夜はそれを知っていた。武によって移民船に搭乗したのだが、そういうこともあって、自身の出自を隠すため御剣という名と帝家という身分を隠し、「白銀」を名乗っているのだ。
 慧が「白銀」を名乗っているのは冥夜に対する対抗意識と、やはり愛しい人を思っての事らしい。彩峰慧という人物は、見た目の割りに純情だ。
 2人は現在同じ立場であり、共に白銀を名乗っているので、友人としての親しみを込めて互いを名前で呼び合うようになってもいる。

 「それで、一体なんの用なのだ。戦術機の訓練なら、今日は午後からの約束であったであろう?」
 『戦術機の訓練』……冥夜と慧は、何時か必ず地球に帰ると誓っている、その時の為に訓練は欠かしていない。自分達は、徒でさえ実戦を離れてしまうのだ。それに、地球に残る人たちが今も戦っているのだろう事を思うと、否応ない尚早にかわれて、何時も限界以上に過酷な訓練を行なってしまう事も多かった。
 訓練以外でも、大抵はお決まりのパターンなので、今回も心の底では気楽に思っていたのだが、今回は冥夜の斜め上を行く回答が、慧の口から飛び出て来た。
 「違う……、香月博士から迎えが来た。御剣と一緒に来いって……」
 「香月博士が!?」
 容易には信じられない人名を己が耳が聞き取った事に、冥夜は思わず聞き返してしまう。香月博士が移民船に搭乗していること自体は、他の情報を密かに探った時に確認していたが、その彼女がいきなり自分を呼び出す訳が解らなかった。彼女が自分を呼び出す事は、双方にとって少なからないリスクが伴う事を、博士は知っているだろうに。この呼び出しが、唯の昔語りであるものか――冥夜は直ぐ様に、彼女が自分を呼び出す可能性を推測し始めた。
 「そう、とにかく大至急と……」
 しかし、一瞬考え込んでみたが、自らが辿り着ける可能性は少なく、そのどれもに信憑性が欠けていた。今の自分には、隠した身分の他は何も無く、政治に関わる可能性も少ない。
 ならば後は、香月博士自身が個人的に呼び出しているということだろう。
 香月博士とは7年間会っていない。オルタネイティブ5が発動した後「MX3」搭載の不知火が彼女名義で207小隊に届けられた事を最後に全く音沙汰がなくなっていた。今は移民船団で、博士として働く役職にあることを知っていたが、これまで双方に何も接触は無かったのだ。
 その彼女が今になって自分達を呼び出すのだ、これは恐らく何か重要な用件があるのは確実。博士は無駄なことは極力しない主義、やはり歓談であるとは思えない。
 「分かった、同行しよう」
 一瞬子供のことが頭をよぎったが、このまま訓練に移ろうと予定していたので、現在は託児所に預けているのを思い出す。長時間でなければ余り心配はないだろう。慧の子供も同様に。
 結論付けた後は、唯行動するのみ。迷いや不安はかなぐり捨て、きっぱりと言い切った冥夜に、慧は笑みを浮かべて頷いた。
 「じゃ……行こう……。外に迎えが待っている」
 極力音を立てる事も無く、猫のようにしなやかに歩く慧に付いて歩きながら冥夜は心中で『何かが動き出していく』そんな確固たる予感を感じていた。
 待っていた車に乗り込む、運転席には冥夜達よりは幾分年上の女性が座っていた。そのまま展望室から離れ車が走る。ハイウェイで中央行政区に移動した後は、どこかの道をひたすらに走り続けた。

 車が走る中で冥夜は、中央行政府の国ごとに纏まって建てられた各国の建物を見て「こんなところに来てまで領土争いを行なうのか」とも思ったが、逆にそれは仕方のないことかもしれないとも思ってしまった。確固たる寄る辺がないと人は生きてはいけない、冥夜自身も自分の生まれた「日本」という国を人を愛しているのだから……。

 やがて、行政区の外れの外れに到着し、そこから地下に潜って行く。下車の後に、幾分か歩きエレベーターに乗った。そして降りた先の扉の向こうに居たのは、間違いなく香月博士その人であった。
 その人は、冥夜が入ってくると彼女に目を向けて、極なんでもないように言葉を掛けて来た。
 「久しぶりね。御剣……それに彩峰……」
 7年振りだと言うのに相変わらずな態度、本当に7年振りかと、こちらが疑ってしまう程に普通だ。しかし冥夜は、香月博士のその態度に、彼女の変わりなさを確信し安堵して、昔の通りに敬礼した。横に並んだ慧もそれに続く。
 「お久しぶりです、香月博士」
 「お久しぶりです……」
 「そうね……あれからもう、7年が経っている。あなた達も成長したじゃないの、昔から見れば見違えたわよ」
 「実を言うと、私自身がその変化に戸惑っていた位です。ですが、昔の私を知る博士がそうおっしゃって下さるのなら、私は確かに変われているのでしょう」
 「私は逆に年を取って黄昏てるっていうのに、若いって良いわねぇ」
 彼女は既に、上官ではない。しかし、冥夜も慧も、彼女に対する尊敬の態度だけは崩さなかった。しかしその中でも、過去共に戦ったという連帯感に近いものが繋がっていた。思想や手段に違いはあっても、彼女達が目指したものは同室であり、そういう意味では皆が戦友だったのだ。
 「大丈夫大丈夫……博士も十分若いまま。それに私達も、四捨五入すれば30歳」
 「まあ……気休めに受け取っておくわ」
 皆、変わった所も、成長した所も、そして変わっていない所も存在する。彩峰慧の場合、武が言う「彩峰節」は今だ変わらず健在である。もっとも、子供を持ったことで一匹狼的な性格は随分と也を潜めていたが。近所に住んでいて戦術機の訓練でも一緒である、お互いの子供も仲が良い。
 
 3人は集まった一時に気分が高揚していた。しかしその中にあっても、夕呼は感情に流される事が無い。そしてそれは、この雰囲気を感じ取り、また予測していた2人も同様であった。
 「香月博士それで――」「冥夜……」
 再開の挨拶も終わり、それでは本題は何かと聞きかけた冥夜の声に被さるように、突然横合いから声を掛けられる。その声を聞き、その人物を連想し、そしてその姿を認め、今度こそ冥夜は驚愕した。信じられない声が聞こえ、幻かと思える姿がそこに存在したのだ。思わず目を瞬かせその人物を凝視する。
 「あ……姉う……、殿下なぜ!?」
 思わず自分の心のままに声を上げそうになったが、慌てて言い直す。それを見て殿下――「煌武院 悠陽」は寂しげな顔をしたが、それを取り繕うように隠し、静かに声を発した。
 「ここの研究所を支援していますのが、私と他数人の人物なのです。今回は、香月博士より内密の通達を受け、忍び参りました。」
 その言葉に続き、不適な笑みを浮かべながら香月博士が説明する。
 「ここの研究所は、各国の有志が集まって出来た場所なのよ。地球脱出以来、常に地球の心配をしている者、人類の未来を憂いている者、愛する国や人々を助けたいという者。そんな様々な人々が、国や思想を超えて一致団結して地球救済を目指す為の組織。殿下はここの創設者の1人でもあり、最大の出資者でもあるのよ。」
 香月博士の説明に冥夜と彩峰は思わず涙を浮かべかけた、残してきた者たちのため戦う決意をした者達がいることが純粋に嬉しかった。そんな2人を見て、夕呼は肩を竦める。
 「地球救済を掲げる影の組織なんて、三文芝居のネタにもならないわ。しかも私自身がそこの総責任者っていうんだから、笑い話にもならないわね」
 「香月博士、私は貴女を信用して――」
 「ああいえ、違います殿下。私自身、この役目を与えて下さった事は、大いに感謝しています」
 「私の心が捻くれ過ぎてるだけなのです。今一度、がむしゃらに事を成し遂げようとする熱い自分の気持ちを、冷静な私自身が恥ずかしがっているだけです」
 否定しながらも、彼女はやはりその態度を崩さない。しかしそれでも、彼女は礼に頭を下げた。それだけに、この機会を与えてくれた悠陽に
感謝しているということだ。
 「殿下……。ありがとうございます」
 そしてそれを見た2人も、諸共に悠陽に頭を下げた。
 それを受けて、悠陽はそれを押し止め「私達のために戦っている人々を助けたい」と言い切る。頭を上げることはしなかったが、それは2人も同じ思いであった。
 地球脱出以来愛しい人や残してきた人々のことを思わない日は無かったから。

 「それで香月博士、私達を呼んだ訳とは?」
 事が終わると、冥夜は改めて香月博士に向き直り、話を振った。夕呼は、それじゃ本題に入りましょ……と、前置きも何もかもを省き、結論から話し始める。
 「実は以前、地球からの微弱な情報通信の断片を受信したのよ。そしてそれを正確に受け取り確認するために、私達は無人の観測機兼星間宇宙船実験機を製作して地球に向けて放った。その観測船がつい先日帰還して、地球の情報を持ち帰ったの」
 ふてぶてしい態度を取りながらも、何処か嬉しさを隠しきれない微笑を浮かべて話す香月博士の言葉に、冥夜は心が逸った。地球の情報――武は、人類は今だに抵抗を続けているのであろうか? 横目で見ると彩峰も落ち着きが無くなっている。悠陽は流石に、表面上は落ち着いて続きを促したが。
 「まずはこの映像を見てみなさい、場所は日本、皇居近郊よ」
 その言葉と共に映し出された映像は、2機の戦術機。漆黒と真紅の、背中合わせで75式近接戦闘長刀に類似した刀を構える、優美さと頑強な雄々しさを備えた機体であった。
 「「「武……御雷?」」」
 3人の声が籠る。その機体は、細部は武御雷の様相を残しながらも、全くの別の形の機体であったからだ。
 武御雷と同じようなフォルムながら、本体自体は全体的に纏まっている印象を受ける。装甲の形状なども異なっていて、主腕の手甲が無くなり、その場所にはパイロンらしきものが付いていた。左主腕の其処には、盾のような物が装着されている。
 頭部後方の角のようなアンテナも4本になっているし、腰部・肩部の装甲も形状が違っている。更に、背面パイロンが3本あり、跳躍装置の形状も違っていた。長刀に始まり、保持している武器も既存のものとは形状が違う。
 「第4世代戦術機、武雷神(ぶらいしん)と言うそうよ」
 「武雷神……ですか」
 「そう、不知火系列の機体で、実質的な武御雷の後継機。因みに名称の『武雷神』は、そのまま「タケミカヅチ」と読めるわ、先代旧事本紀で言うタケミカヅチの表記の1つから取ったんでしょうね」
 香月博士の注釈が入る。そこで悠陽は疑問をぶつけた。
 「この映像……、これらのデータはどうやって発信されていたのでしょうか?」
 「これらデータを寄越したのは私の悪友、悠陽様もご存知の帝国斯衛軍第一技術開発室長の『鳳 焔(おおとり ほむら)です」
 香月博士が坦々と説明する。
 「焔博士が?」疑問の声を上げながらも悠陽は安堵していた、彼女は自分にとっても得がたい友人でありもう一人の人物と共に3人身分は違えどお互いを友人だと思っていた。2人とも移民船に乗る権利を捨てて地球に残ったので、とても心配していたのである。
 「衛星からこちらの座標に向けて、あらゆる通信波を使用して情報を送信するようにしてあった。機械工学に関しては私以上の頭脳――流石としか言えないわね」
 笑って答える。冥夜と彩峰は、心の中で天才の香月博士に凄いと言わせるのはどんな頭脳の持ち主だろうか? と思わず逞しい想像をしてしまった。
 「そして、その情報を回収した観測船が持ち帰った中に入っていた、地球上のリアルタイム映像の1つが今の映像よ。御剣、彩峰、殿下、この2機に乗っているのは、3人が良く知る人物だったわ」
 その言葉と共に理解した、そして涙が溢れてきた。漆黒の武御雷に似た戦術機を見た時からこれが武ではないかと、訳も確信も無く何故か思っていたのだが、香月博士に聞くに聞けなくて逡巡していたのだ。しかし、その言葉で確信した。『生きていた』生きていてくれた。冥夜は最早言葉もなく涙を流していた、隣にいた彩峰も同じように嗚咽を堪えて泣いていた。
 彼の言葉や数々の思い出が蘇える。唐突に心に浮かぶ願望、この惑星に来て極力考えないようにしていた思い。『会いたい』ただその思いだけが心を占めていった。
 悠陽はそんな二人を優しい目で見ながら、もう1つの赤い戦術機に眼を向けた。
 「2機ということは、あの真紅の戦術機に乗っているのは月詠ですか」
 香月博士に目を向ける。彼女の個人的な知り合いで真紅の戦術機に乗っているのは月詠真那しかいない。月詠は焔と並んで悠陽が友人と言える人物で、3人は随分古い知り合いである。その声には、友人の無事を喜ぶ響きがあった。
 「そう――月詠真那、そして白銀武の2人。現在、人類の中でもトップレベルの腕を持ち、色々と活躍しているらしいわ。そして、2人が所属する部隊は、人類史上初めてフェイズ3規模のハイブ破壊を成し遂げたそうよ。反応炉を直接破壊したのがあの2人」
 「な…、ハイヴの破壊ですか」
 珍しくも冥夜が勢い声を上げる。人類史上G弾使用以外でのハイブの攻略は成功例がなかった。それを、あの2人が成し遂げたというのかと。歓喜と驚愕が、溢れる様に湧き上がって来る。
 「その後も、さっきの第4世代戦術機の性能もあり、数個のハイヴを攻略したそうよ。武雷神とは、2人の戦いぶりを表す噂話から取ったと言うけど、『武に猛る雷の神』の意味を持つなんて、正に丁度良い名前ね」
 焔の口から紡ぎ出される事実に、冥夜達は声も出ない程に驚愕の顔を崩せなかった。信じられない事の連続だ、持つか持たないかと考えていたのに、まさか逆にハイヴを破壊しているとは――。
 「焔の専門は機械工学と戦術機、それに関しては私より天才よ。そして彼女の考案した新技術と第4世代の戦術機、進化した新しいXM3、対レーザー装甲や新兵器の数々。白銀と月詠が焔と合流したのはまさに行幸と言うしか無いわね」
 博士が話す地球の様相に、3人は心が震え希望の光を見出す「人類はまだ敗北してはいない」と。
 しかし其処で、夕呼は若干繭を潜めた。
 「この様に、つい最近まで、人類は少なくとも対等以上にBETAと戦っていたそうよ。けれども、少し前にBETAが対応を変えてきて、現在人類は徐々に追い込まれ始めている。現在、焔が対策を練っているけど、いずれ目処が付いたら、オリジナルハイヴ攻略に踏み切ると記してあったわ」
 夕呼はそのまま顔を動かし、悠陽と目線を正面から合わせる。
 「殿下、私は様々な要因から、地球を奪還するにはこのオリジナルハイヴ攻略作戦が、最後の機会になると結論付けました。この作戦が失敗に終われば、地球の戦力は極端に削られ、例え我々が介入しても勝利は難しくなります。それに――使えるかどうかは行って確かめて見なければ判りませんが、私の持つ一手が、戦局を幾らか有利に持っていけるかもしれません。オリジナルハイヴ攻略作戦に間に合うかは賭けですが、私の意地を賭けても最速で、地球まで到達させてみます」
 既存の航法では、地球まで2年は掛かる。しかし、彼女が珍しくも『意地』に賭けて誓ったのだ。そして悠陽自身も、地球の者達を手助けしたかった。
 「……解りました、地球で戦っている人々のため、なんとしても計画を可決させましょう」
 悠陽は、決意を込めた眼差しで答えた。
 そしてそれを受けて、夕呼は晴れやかに笑ったのだ。彼女にしても、籠もる想いが存在したのだろう。
 「御剣、彩峰、勿論あなた達も地球に向かってもらうわよ。来るなといっても無理やり付いてこようとするでしょうから最初からポストは開けといたわ、2人とも中佐待遇で」
 その言葉に2人は目を見張る。
 「中佐……ですか? 最終任官は少尉ですからそれに比べたら地位が高すぎるのでは?」
 冥夜が思わず口にすると……。
 「いいのよ、あなた達2人の戦術機特性は最高値、毎日毎日2人で戦術機の操縦訓練やってるのはシュミレーターのデータも含めて調査済みよ。それに白銀と月詠の現在の階級は大佐、ただ権限的にはもっと高いけど――向こうでのごたごたがあった時の為にも、階級は高い方がいいわよ」 
 その言葉に、2人は少し考えたがその任官を受け入れた。やはりなんといっても軍隊だ、権限が高いに越したことはない。
 「第4世代戦術機――特にこの「武雷神」はスペック的にはバケモノよ。しかもこの2人の武雷神は、焔が手ずから作り出した、ワンオフの超高性能機――白銀達の操縦に機体が反応できなくなる度に改良されてきた、常に技術の最先端を籠められた機体。普通の衛士が乗ったら、それこそ手に負えない性能を誇っているわ」
 香月博士の説明に言葉を失う。まさかそんなに凄い機体とは……。
 「量産型でも、武雷神自体は初期段階で他の第4世代戦術機と一線を化すエース仕様、乗りこなせるのはそれなり以上の腕前がないとダメよ。御剣……彩峰……、あんたたち2人には最終的に、白銀搭乗クラスの性能を持つ「武雷神」を乗りこなしてもらうわ」
 冥夜と慧は、武と月詠の機体写真に目を向ける。地球で戦っている仲間が乗りこなしている機体、この戦術機は武達の戦いの軌跡が作り上げたもの。自分達が乗りこなせずして、共に肩を並べて戦う資格があろうとは到底思えない。彼等は今も地球で戦い続け、腕を上げているのだろうから。2人は『なんとしても乗りこなしてみせよう』と心に誓った。
 「これから準備に掛けるのは約1年。現在まりもが地球行きを志願した衛士の指導をおこなっているから、あなた達もそれに参加して準備を入念に整えなさい。第4世代戦術機のシミュレーターも直ぐに回すわ。地球への航程は私が何とかする、あなた達はとにかく、ひたすらに力を付けなさい」
 「神宮司教官も参加するのですか?」
 珍しく彩峰が疑問を口にする、彼女もこの計画に興奮を隠せないのであろう。
 「ええ、それに社もオペレーターということで参加するわ、まあ役職的にはあなた達2人の子供の子守ね」
 香月博士は苦笑しながら答える、『社霞』彼女の名前を聞くのも久しい、元気でいるのであろうかと思いを馳せるがすぐ会えるだろうと思考を打ち切る。
 最愛の人に会うため自分達の戦いが始まる。
 冥夜は慧を見た、彼女も冥夜を見詰めた。2人の視線が交差する。どちらも思いは同じ――2人の思考は、地球で戦っている愛しい男との別れの時に思いを馳せていた。


 そして物語は2003年、移民船団出発の一ヶ月前に遡る。





 
 投稿ははじめましてのレインです。この話はオルタプレイ後大量の設定ノートの中から引っ張り出してきたマブラヴプレイ後に書いた設定にオルタの設定を導入して書き上げたものです。今更アンリミアフターかよとも言われそうですが、この作品はオルタが発売したら新設定を導入して完璧にしようと思っていました。

 私はTRPGのゲームマスターをしていて小説の設定は大好きでしたが小説自体をかいたことがなかったのでとても大変でこれだけで3時間半は掛かりました。

 初めてですので色々と突っ込みどころ満載かも知れませんがよろしくお願いします。また恐ろしく時間が無いので投稿も飛び飛びになってしまうかも知れませんが少しずつ投下していきます。


補足説明

ルート的にはアンリミテッド後の月詠ルートです。ですが設定が色々違います。話的にはループ世界の一つとして捉えてくれたほうがよいかもしれません。まずアンリミヒロインが冥夜と彩峰の二人です(男が少ないのでこういうのも有りかと、また設定上の都合と作者の趣味)そして移民船団出発前に二人の妊娠が発覚します。

 移民船団脱出の折G弾の投下はハイヴと敵密集地帯に限定されました。後の地球奪還時のための配慮で悠陽以下地球擁護・帰還希望派が地球の人類が全滅したらG弾の全面投下を許可することで可決しました。これによりBETAの勢力が弱まり地球での戦線が持った。

 この世界の武はアンリミテッドの状態だがある要因で前のループの記憶が肉体に宿っていて、体力・知識などはアンリミ時より上(冥夜達にかろうじてついていくことができる位だった)またフラッシュバックなどの後遺症は無い。MX3は開発された、それらの要因によりオルタネイティブ5の発動が遅れたためクーデター事件が起こっている。
 月詠のこの世界での設定は帝國斯衛軍皇主守護隊第一大隊隊長(実質的に征夷大将軍の直属護衛)で少佐。悠陽の命で冥夜の守護をしていた時や、クーデター事件の時は大隊は副官が率いていた。

 また物語に深く関わるオリジナルキャラが何人か存在します。その一人が「鳳 焔」です彼女の設定は他で、オリジナル設定や戦術機なども出ますし、アンリミテッドにオルタの設定を導入するため色々と混ぜたり切り捨てたり解釈を変えたりとかなり変わるところがあります。

 ゆっくりとですがよろしくお願いします。


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