<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

Muv-LuvSS投稿掲示板


[広告]


No.4024の一覧
[0] Muv Luv ~behind the propaganda~ (完結)[grenadier](2008/09/23 22:00)
[1] Muv Luv ~behind the propaganda~ No.2[grenadier](2008/09/23 22:02)
[2] Muv Luv ~behind the propaganda~ No.3[grenadier](2008/09/07 23:20)
[3] Muv Luv ~behind the propaganda~ No.4[grenadier](2008/09/23 22:08)
[4] Muv Luv ~behind the propaganda~ No.5[grenadier](2008/09/23 22:13)
[5] Muv Luv ~behind the propaganda~ No.6[grenadier](2008/09/23 22:15)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[4024] Muv Luv ~behind the propaganda~ (完結)
Name: grenadier◆18a4288f ID:55d4f8b5 次を表示する
Date: 2008/09/23 22:00
Muv Luv ~behind the propaganda~ No.1

人類は、1958年、初めて地球の外に生命がいることを、火星にて発見した。

そして、人類が「オルタネイティヴ1」計画の名の下に、交流を模索。言語解析が進められた。

しかしわずか9年後、その夢は粉砕される。国際月面基地において地球外生命と人類の間で後にサクロボスコ事件と呼ばれる戦闘が生起。

地球外生命は"人類に敵対的な地球外起源生命"の頭文字をとったBETAと呼称されることとなり、全面戦争に突入した。

1973年にBETAはウイグル自治区カシュガルに降り立ち、2001年までにヨーロッパ・ユーラシア大陸全土を支配下に置いた。

人類は人型兵器「戦術機」に一縷の望みを託して、全球にわたり必死の抵抗戦争を繰り広げていた――





-11月9日1625時-

コックピット越しに外の喧騒が聞こえてくる。下を見れば、11月の寒空の下、100や200ではきかない人たちが集まって意気を揚げていた。
「BETAが先か、餓死が先か」「生きてゆける配給を」「难民想要食品!」
プラカードには中国語や韓国語、はてはアラビア文字まであった。ズームすれば、切実な表情で窮状を訴える難民の顔が映し出される。
地球の平均気温は下がる一方の中、みな粗末な服しかまとっていない。ここの老人や子供はこの冬が越せないかもしれない。

「直ちに解散しなさい。――直ちに解散しなさい。届け出のない集会行動は戦時公安法に基づき罰せられます。直ちに解散しなさい」

抑揚のない声の解散命令が響くが、難民達はまったく無視している。口で言って解散するくらいの意気込みで、場合によっては逮捕されるデモには訴えない。
鉄道駅と帝国陸軍の兵站基地とを一体とした敷地を難民の大群が取り囲んでから、1時間が経過しようとしていた。
基地東門前には、陽炎2機が仁王立ちして群衆を威圧している。
――こんな事のために、衛士を志願したんじゃないんですが
明らかに不満の色を浮かべた青年衛士の顔が通信ウィンドウに表示される。瀧田征一郎は良くも悪くも純粋な人物だ。
「黙りなさい、レーク2。治安維持も防衛軍の任務よ」
――……それならさっさと追い散らせばいいじゃないですか
レーク2、瀧田中尉の言い分は理解できることだった。人類を最前線で守っているという自負のある衛士が、
その人類から敵意の視線を受け続けて気持ちいいはずがない。
たしなめる私も知らず知らずのうちに手のひらが額にいっており、気づけばため息もついていた。
――威嚇射撃用――意
基地司令からの通信が入る。まったく気乗りはしないが、命令は命令だ。36mmライフルの照準を虚空に向ける。
――威嚇射撃、開始!
単射で3発、ライフルの発射音。それまで銘々の主張をしていた群衆が一気に静まりかえった。さらに3発。
――前進、強制解散させろ!
私は、復唱もせずに操縦桿を僅かに倒した――


1998年のBETAによる日本本土上陸という危機は、「明星」作戦を辛くも成功させることで最悪の事態は免れた。
しかし、死者3600万、避難民2500万という、日本史上最大の犠牲者を出したこの戦いは、日本経済を破綻させ
国内を未曾有の大混乱に陥れた。避難民と現地市民との軋轢、モラルの退廃、インフレーション、食糧難、あげればきりがない。

3年たった現在も、その爪痕は日本全土に深く刻まれていた。私、新田栞の派遣された新潟県六日町も同様であった。
フェイズ4のハイヴ、甲21号を抱えた佐渡島を正面に控える、帝国防衛の第一線たる新潟。
防衛師団が展開するすぐ後方にすらも、5000人を超える難民が必死に堪え忍ぶ、六日町キャンプが存在した。
BETAの侵攻によって、大陸からのがれてきた難民の日本国への帰化には、極めて高い壁がある。
豪州や米国への移民も行われているが、両国も無制限に受け入れているわけではない。

入隊資格の緩和された帝国軍に志願する道はあるにはある。だが、それも出来ない老人や子供は申し訳程度の配給がある僻地のキャンプに身を寄せた。
ときおり発生する遭遇戦の音を遠くに聞きながら眠れない夜を幾夜も過ごした。自国民へもままならない食糧供給はキャンプでは絶望的であった。
これらのストレスがデモとなって爆発したのは自然の流れというほかにない。
同じ人間に銃を向ける任務を誰もが嫌がり、押しつけあったが結局、その管区で再編成中の戦術機甲連隊があたることとなった。


-11月9日 2141時-

「少佐、お加減は?」
「……入っていいわよ」
兵站基地の士官用に宛われたプレハブ小屋にもだんだん慣れてきた。どれだけ掃除しても残る埃の臭いも
これはこれで風情があるように思えてきたあたり、疲れが溜まっているのかもしれない。
入ってきた瀧田は私と違ってすこぶる元気そうな男だ。上官がこんな体たらくではいけないのだが。
「本当に、退院して大丈夫だったんですか?」
「こんな任務に、ただでさえ人手が足りない12師団から出すわけにはいかないでしょ……」
テーブルに突っ伏したままそう答えても説得力がないだろう。


この覇気の無い隊長には、瀧田もため息つくほかない。ほんの三週間前まで新田栞少佐は活力に溢れる、この人の
指揮下ならばハイヴに突入しても良いと思えるような人物だった。しかし10月初旬の佐渡島ハイヴ漸減作戦、
いわゆる"間引き"時に前線で作戦行動中、光線級の狙撃を受けて頭を負傷し、
つねに痛みに悩まされるようになってからは、元気がないでは表せない衰えのようなものがあった。


「こんな任務、新兵にだって出来るでしょう。数少ない上級将校がする仕事じゃないですよ」
「その新兵が来ていないのよ。……軍医の所言ってくる。先、寝ていいわよ」
「付き添いましょうか?」
瀧田がドアを開ける。かなり心配しているようだ。
「いいからいいから……疲れたでしょう。寝てなさい」
そういって私はプレハブ小屋を後にした。


11月の中頃にもなると最低気温は10度を下回る。フライトジャケットを羽織っても身を刺すような寒さだ。
しかし、頭痛を持つ身にとっては心地よかった。
兵站基地の医務室は、寝泊まりすることになったあばら屋から随分離れたところに置かれている。
基地は割合明るく照らし出されているが、六日町全体は暗闇に沈んでいる。東を仰ぎ見ると、八海山のシルエットが重苦しい。
「ん?」
兵舎から、倉庫区画へかけて行く姿があった。ときおり来た道を振り返っている。
まぁ、わからないでもないが……。少し迷ったが、無線を手に取る。

「憲兵詰め所、応答せよ」
――こちら憲兵詰め所。どうぞ。
「兵営より、西の倉庫ブロックに人影が移動したのを見たわ。何人かよこせるかしら」
――了解です、すぐ、兵を出します。



ほどなく現れた、戦闘服の兵士達。みな、左腕には白地に赤抜きで"憲兵 gendarme"と書かれた腕章をしている。
それぞれ敬礼をかわした後、人影の消えた方に向かう。
「よし、陳と原口は回り込め。劉は俺に付いてこい。逃がすなよ」
憲兵伍長の呼んだ名前に中国人の名があり、すこし違和感を感じた。
「劉…上等兵、出身は?」
「ハッ、遼寧省の朝陽であります」
遼寧、中国東北部だ。
「外人兵は最早珍しくないですからな。憲兵はみな憲兵学校を出た邦人中心ですが、補助憲兵は外人も多いですがね。
 それで、少佐、このあたりですか、人影が消えたのは」
ちょうどこの辺りと答えると、憲兵二人は、拳銃のレールにフラッシュライトを装着して、慎重に接近する。
私も訓練兵時代にやらされた記憶がおぼろげながらにあったが、今ではさっぱりだ。邪魔にならないように二人についてゆく。

2つ目の倉庫をこえた所で、無線をもう一斑に入れた。どうやら発見したみたいだ。タイミングをあわせて、憲兵二人が一気に踏み込んだ。ライトが光る。
「動くな、憲兵隊だッ!ここで何をしている!」
下手人は走り出そうとしたが、向こう側も同様に押さえられていることを知るや、観念したようだ。
ほどなくして5人の兵士くずれが手錠をかけられて連行されてゆく。
「この中国人憲兵め!イヌ並の臭いで嗅ぎつけやがったか!」
捕まった一人が、そうわめいていた。
少しして伍長が倉庫裏から戻ってくる。手にはなにか持っていた。
「ご協力感謝します。流石、エリートの衛士はカンが違いますな」
「本当に偶然よ。それで、彼らはここで何を?」
そう聞くと、伍長の顔が曇る。ヘルメットのつばを押し上げ、間をおいてから袋を見せた。
これは、
「そうです。多分、コカインです、な。まったく……」

伍長の話では、軍内で随分前から麻薬は水面下で問題となっているそうだ。
戦術機という鋼の鎧ををもたず、たかだか3~4キロのライフルのみを抱えて戦場に向かう歩兵。モニタ越し見るだけでも
おぞましいBETAと直接戦う兵科。そのストレスは兵士を蝕んであまりある。
衛士の間でも、負傷以前に心を病んでしまって後方に送られる者も少なくない。
「まぁ、麻薬の他にも――報道規制がひかれとりますが、暴行事件なども、ちょくちょくありましてね……」

そう二人が話していると、劉と呼ばれた兵士が5名を収監したと報告した。
「よし、ご苦労」
それから、プレハブ小屋に送ってもらうまでの間、伍長は様々な話を聞かせてくれた。
終末論を唱え、BETAへの無抵抗をとなえる新興宗教。驚くほどの浸透力あるのだという。
「取り締まっても取り締まっても、やれ、日蓮の生まれ変わりだ、やれイエスの言葉を聞いたってのが現れてくるんですよ。
 まだ、本土上陸から3年。なのに動員も底が見え始めている。敗北主義者共じゃありませんが、この先不安ですな」
「取り締まりも簡単ではない、と?」
苦笑いしながら快活な憲兵は答える。
「殿下が、お優しい方ですからね。色々とあるのですよ。BETAなんてのがいない世ならいいんですがね。まぁ、難しいところです」

たしかに現殿下は、戦時にあって優しすぎるということを私も聞いている。
しかし、それこそが今の日本国民を支えていることも事実であり、警察任務にあたる憲兵としても心苦しいところであるのだろう。
「では、不寝番には劉上等兵をつけますのでごゆっくりお休み下さい」
「ええ、そうさせてもらうわ、じゃあ、劉……」
「劉国豊であります、少佐殿、クニがユタカと書きます」
「豊かな、国か。いい名前ね。一緒に中原をBETA共から取り返しましょう。おやすみ」
生真面目なのだろう。劉は不動の姿勢のままの敬礼をするだけであった。

軍医の所に行くことをすっかり忘れていたのに気が付いたのは、自室に戻ってからでだった。


次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.044220924377441