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No.26535の一覧
[0] 『習作』 IS―インフィニット・ストラトス―アナザーストーリー[陰陽師](2011/03/16 17:46)
[1] エピソード1[陰陽師](2011/03/16 17:48)
[2] エピソード2[陰陽師](2011/03/21 23:39)
[3] エピソード3[陰陽師](2011/03/23 12:48)
[4] エピソード4[陰陽師](2011/03/31 23:17)
[5] エピソード5[陰陽師](2011/08/10 13:57)
[6] エピソード6[陰陽師](2011/08/14 23:17)
[7] エピソード7[陰陽師](2011/12/04 16:01)
[8] エピソード8[陰陽師](2011/12/04 15:54)
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[26535] 『習作』 IS―インフィニット・ストラトス―アナザーストーリー
Name: 陰陽師◆0af20113 ID:9d53e911 次を表示する
Date: 2011/03/16 17:46
薄暗い何も無い部屋。
少年は手を縛られ動けなかった。端的に言えば少年は誘拐されたのだ。
どこの誰とも知らない相手。目隠しはされていなかったから、周囲の状況を知る事ができた。

一人ポツリと放置された少年は、孤独と恐怖に支配された。
元々姉と二人暮らしで、寂しいのには慣れていたはずだった。
違う。それでも彼には友人がいた。だから寂しいという思いを心の奥底に沈めこんでいた。たった一人の姉に心配を、迷惑をかけないために、彼はいい子であろうとした。手のかからない子であろうと頑張った。
そのおかげで、彼は年に似合わず手のかからない、大体の事は一人で出来る子供になった。

けど突然の誘拐劇。
自分がどうなるかわからない状況で、少年は恐怖に体を震わせる。
名前を呼ぶ友人の、近しい人の。

(箒・・・・・鈴・・・・・弾・・・・・束さん、千冬姉・・・・・・)
泣きそうになるのを必死で我慢しながらも、心の中で大切な人達の名前を呼ぶ。助けてと、彼は思った。

「何を泣いているんだ、一夏」

不意にそんな声が聞こえたような気がした。

「えっ・・・・・・・」

若干、目元に涙を浮かべながら少年は声がした方を見る。そこには無機質な壁があるだけだった。
聞こえるはずが無い。いるはずが無い人の声。でも彼にははっきりと聞こえた。

直後、目の前の壁が何かに切り裂かれたかのように崩れ去った。
薄暗い部屋の中に光が指した。
まぶしさに目を背けそうになったが、その光の中に人の影を見た。
彼の瞳に、脳裏に、その光景が焼きつく。

光の中、機械の鎧に身をまとった一人の女性がいた。手には光り輝く剣を持った女性。
彼はその人物を誰よりも良く知っている。

「千冬姉・・・・・・・千冬姉ぇっ・・・・・・・・」

思わず涙がこぼれる。少年はこの時、大粒の涙を流した。

「泣くな。さあ帰るぞ」

差し出された手とその時彼女が見せた笑顔を、彼―――織斑一夏は決して忘れる事はなかった。



あの日、あの時、あの瞬間、少年は憧れを抱いた。
彼女の姿を見た時、心を奪われたといっても良い。
まるでテレビに出てくる正義の味方。幼い少年だった一夏を魅了するには十分だった。



あの日、一夏は自分の不甲斐なさと弱さを思い知った。
姉に迷惑をかけ、心配させてしまった。
後になって聞いたが、千冬が一夏を助けに来た時、彼女は大切な大会の決勝だった。

ISによる世界大会『モンド・グロッソ』。大会二連覇をかけた運命の日だった。
姉である織斑千冬は公式大会では無敗を誇っていた。それが大会二連覇をかけた決勝ではまさかの棄権による不戦敗。あまりにも不名誉な結果を残した。
千冬はそれ以降、現役を引退してしまった。

一夏は思う。自分のせいだと。自分が誘拐されなければ、千冬はきっと優勝し、大会二連覇と言う偉業を成し遂げていただろう。
不名誉な結果を残す事もなく、今もきっと現役を続け大会三連覇と言う記録すら残していたかもしれない。

自分が弱かったから。自分が不甲斐なかったから。
悲しかった。悔しかった。辛かった。
自分が誘拐されたと知った時、姉はどんな気持ちだったのだろう。自分を助けるために、大会二連覇と言う偉業を成す事を放棄した事を、姉はどう思っているのだろう。

一夏はある時姉に聞いた。

『どちらが大切か、か。そんなもの、決まっているだろ、馬鹿者が』

笑いながら答えてくれた千冬の顔と言葉を、一夏は忘れない。

『そんなもの、お前に決まっている』

臆面もなく、当たり前のように語った姉がまぶしくて、とても綺麗で、とても凄いと思ってしまった。
あの時抱いた憧れが、一夏の中でどんどんと大きくなっていった。
自分も千冬のように、誰かを守れるようになりたい。こんな風に大切な人を守って、それが当たり前だと言えるくらいになりたい。

一夏はそれ以来、強くなることを誓った。
もう二度と姉の手を煩わせないように。自分の身は自分で守れるように。そして、今度は自分が誰かを守るために・・・・・・・。
強く、強くなりたかった。

また強くなりたいと願ったのはそれだけではない。
一夏は少年であり、男だった。
ISが開発されて以降、女尊男卑の風潮が広まってきた。男の価値が下がり、男の意義が失われてきた。

女しか扱えないIS。現存するどんな兵器よりも強く、一機で一軍にも匹敵する。世界中のIS以外の兵器全てを凌駕するほどの存在を乗りこなせると言うことで、それだけで女性の価値は高めた。
尤も、これは些か偏った考えではある。

確かにISは女性しか扱えないが、すべての女性がISを持つわけではない。ISは数が限られている。世界人口の半数を占める女性全てに与えられているわけではない。
動かせるという理由だけで、男を見下していいとは一夏は思わない。
しかし動かせるという事実は、一夏にある種の嫉妬を抱かせもした。
無論、それを表に出す事も女性に対してきつく当たるということも一切しなかったのだが。

男と言うのは強さに憧れる。女にしか扱えないISを扱いたいと言う願望を抱く男がどれだけいることだろう。
かつての一夏は、そこまでの願望を抱いてはいなかった。所詮は儚い夢でしかないと、彼は思っていた。

だがあの日、自分を助けに来てくれた千冬の姿を見た時、彼女とISと言う存在に強い憧れを抱いた。心を奪われたと言っていい。
自分もISの操縦者になりたいと。子供心に、姉と姉の操るISにテレビのヒーローの姿を重ねてしまった。

でもそれは叶わぬ夢。決して届かない領域。
一夏は男でISは女にしか扱えない。どれだけ手を伸ばしても、どれだけ望んでも、絶対に手に入れることが出来ない力。
どうあっても、自分では千冬のような力を手に入れることは出来ない。

強くなりたいと願い、以前から続けていた剣道にも力を入れた。学校でも剣道部に所属し、強さを追い求めた。
部活に真剣に取り組み、貪欲に強さを欲し、勝利を得てきた。自分よりも年の高い相手にも、一夏は負けなかった。いや、負けた経験もあったが、一夏は敗北を糧に強くなった。

一夏が強くなったのは、才能と言ったものだけではない。
彼を強くしたのは、執念にも似た心のあり方だった。強くなりたいと願う少年の心が、一夏を後押しした。努力を重ね、彼の心のあり方が彼を強くした。
同世代の少年達は、一夏のように強さに渇望していたわけではない。それが周囲の人と一夏を分けた。

中学時代、二年、三年と、大会二連覇を果たすほどに強くなった。一年の時は生憎と優勝を逃したが、それでも二連覇と言う記録を残した。
ただそれが一夏の心に強く影を落とした。

「千冬姉の二連覇をだめにして、俺が大会二連覇とか無いよな・・・・・・・」

ズンと肩に重石が乗ったような気がした。
でも姉は褒めてくれた。さすがは私の弟だと。それがうれしくもあり、悔しくもあったので、かなり複雑な心境だった。
でもどれだけ強くなっても、ISを扱えるわけではない。どれだけ強くなっても、世界の根底を変えることなど、一夏には出来なかった。

ISを作り出し、世界の根底を覆した知り合いである篠ノ之束のような頭脳を一夏は持ってなどいない。彼がどう足掻こうが、世界の理を破る事も書き換えることも出来ない。

「っても、こればかりはどうしようもないよな」

一夏はぼやきながら、受験の会場を目指す。
出来ない事を愚痴愚痴言っていても仕方が無い。願っても、祈っても、人は自分に出来る事しかできない。現実とは非情であり、願うだけでは何も変わらない。
出来る事をしなければ意味など無い。

空を見上げ、一度気持ちを切り替える。
中学三年生の冬。世間では受験の真っ只中。一夏もその例に漏れず、学生らしく受験に勤しんでいた。
今も黒い学生服に身を包み、試験会場の場所を記載したメモを片手に会場へ足を進める。

一夏は自分の性別が男だと言う事を悔しくは思っても、それに対して文句を言わない。自分を生んでくれた両親に申し訳ないから。
ただ一夏の両親は彼が幼い頃に蒸発したらしく、顔も知らない。姉である千冬も詳しくは話そうとしなかったし、自分もそんな姉を問い詰めることはしなかった。これ以上、姉に迷惑をかけたくなかったからだ。

とは言え、今考えなければならないのは受験の事だ。これを受からなければ話にもならない。
一夏が受けるのは藍越学園と言う有名私立高校。ここに入学を希望したのは、就職率がよかったからである。ここの卒業生はほとんどが学園の関連企業に就職が約束されている。

少しでも姉の負担を減らしたかった一夏としては、中学を卒業してすぐに就職したかったが、姉に止められた。高校くらいしっかり卒業しろと。
説得と腕力には逆らえず、一夏は高校に進学する事に決めた。

「しかし・・・・・・・」

一夏は現在、大きな問題に直面していた。それは・・・・・・・。

「迷った」

迷ったのだ。高校受験のために用意された多目的ホール。あまりにも大きなその建物で、一夏は思いっきり迷ってしまった。

「おかしいな。何でだ。きちんと案内どおりに来たはずなのに・・・・・・」

間違えるはずが無い。時間に間に合うように早く家を出て、会場で気持ちを落ち着けるように余裕を持って来て、案内の通りに進んだのに・・・・・・・・迷った。

「これは何かの陰謀か? 陰謀なのか!?」

と、口に出すが「んなわけあるかぁっ!」と一人でノリツッコミしてしまった。

「やべっ! 中学三年にして迷子とかすげぇ恥ずかしいぞ、俺!」

まさか十五歳にもなって建物で迷子とか恥ずかしすぎる。恥を忍んで誰かに聞こうと考えたが、あたりには誰もいない。案内板も無い。
無い無いづくし~。
どうしようどうしようどうしよう、と汗をダラダラと流しながら、一夏は混乱していると、不意に何かに呼ばれたような気がした。

「えっ?」

周囲を見渡しても、一夏の他には誰もいない。キョロキョロと周囲を見渡すが、何の変化も無い。

「気のせいかな?」

焦って幻聴でも聞こえたのかと思ったが、また呼ばれた気がした。その時、一夏自身なぜ呼ばれたのか、また呼ばれた声の方に向かおうと思ったのかわからなかった。
でも行かなければならない。そんな奇妙な意思に支配されていた。

しばらく進むと、部屋があった。シュッとドアが開くと、中には一人の女性がいた。

「ん、あー、受験生か。はい、向こうで着替えて。時間押してるから急いでね。ここ四時までしか借りられないから」

などとこちらの顔を見ずに指示を出す。どうにも相当忙しいのか。

(着替え? 最近はカンニング対策にそこまでするのか?)

と疑問を浮かべながらも、一夏は指示された方に進む。この時、一夏も何故色々と聞き返さなかったのか、今では謎だがその時は深く考えずに部屋の奥の扉を開いた。
まるでそうする事が運命だと言うかのように。

「っ・・・・・・・」

息を飲む。部屋の中には中世の甲冑のようなものが鎮座していた。
IS――インフィニット・ストラトス。
一夏が求め、決して手の届かない存在。憧れて、求めて、でも絶対に手に入れることが出来ない、そんな存在。

一夏は複雑そうな目でISを眺める。彼自身、これほどの距離で実物を見るのは二度目だった。一度目は姉が装着していた所。二度目は今。と言っても、待機状態を実際に見るのは、これが初めてではある。
手を伸ばす。触れることは出来ても、起動できない一夏にしてみれば置物と同じ存在でしかない。
そのはずだった。

しかしそれが彼の運命を一変させた。

「!?」

キンッと音が鳴った気がした。自分の脳内に流れてくる数多の情報。身体が宙に浮くような奇妙な感覚。世界が巡るような光景。映像化され脳裏に映し出されるおびただしい、一夏が知るはずが無い知識。

ISの基本動作、操縦方法、性能、特性、etcetc・・・・・・・。
全てが把握できる、全てが理解できる。そんな奇妙な感覚。視覚に直接映し出されるISの情報。

「わかる。俺は・・・・・・・こいつがわかる」

動く、否、自分は動かせる。こいつを、ISを。心が、身体が震える。手が小刻みに揺れている。
動揺、驚愕、疑念・・・・・・様々な感情が心の中で渦巻くが、その中で一夏の心の大半を占めていたのは、一つの感情だった。

すなわち、歓喜!

歓喜したのだ。手に入れることが出来ないと思っていた力が、ISを動かす事が出来るという事実が、彼の心を昂ぶらせる。
知らなかった情報が、まるで元々知っていたかのように自分の中にある。

その瞬間、織斑一夏の世界は一変した。
一夏が、力を手に入れた瞬間だった。




『はい、始まりました。朝まで煮テレビ』

一夏は自宅の今でお茶を片手にテレビを眺めていた。

『今日の話題は、先日男性で始めてISを動かした織斑一夏君についてです』

テレビから流れる自分の名前に気恥ずかしくなる。テレビでは世界で始めて男性でISを動かした一夏について議論が続いている。
あの日から、一夏の日常は変わった。

「まさか、こんなに騒ぎになるなんてな・・・・・・」

一夏自身、ここまで大騒ぎになるとは思わなかった。いや、確かに騒ぎになるとは思っていたが、連日テレビや新聞、ネットで大騒ぎになっている様子を見ると、さすがに彼も疲れてしまった。

毎日マスコミが押しかけ、世界中の研究機関からも声をかけられ、生態データをくれとかも言われた。俺は芸能人かはたまた希少動物かと思ったが、似たようなものだと諦めた。

「でも俺はISを動かしたんだよな」

あの時の感覚を思い出し、手を幾度も握っては開き、握っては開く。決して手に入れることが出来ないと思っていた力。儚いどころか、絶対に届かない夢であったISの操縦者。
自分はそれを手に入れた。思わず顔がにやけてしまう。

「何をにやけているんだ、馬鹿者」

声と共に、ボスッと頭に何かがのっかかった。

「痛って……って、お帰り千冬姉」

頭に乗った何かを手でどけつつ、顔をむける。そこには彼の姉である千冬がいた。

「ただいま。しかし何をにやけてる」
「いや、俺もISを動かせるんだなーって思い返してた」
「動かせるだけだ。あまり調子に乗ってると、痛い目を見るぞ」
「わかってるよ」

忠告を受けつつも、顔はにやけてしまう。と、一夏は自分の手に持った物を見る。
「これって・・・・・・・」
「制服だ。IS学園の」

IS学園。それはアラスカ条約と呼ばれるISにおける世界ISの運用規定を定めた条約に基づき、日本に設立された世界で唯一のIS操縦者育成の国立の特殊高等学校である。

まあ簡単に言えば某A国を初めた各国が、『てめぇ、ジャップの作ったISで世界が混乱しただろうがボケ。責任持って人材育成と管理の学校作って技術寄越せ。ただし金は自分らでだせよ』と言うヤクザの言いがかりみたいな感じで設立された学校である。
ともあれ、中身は全うな学校である。

「あれ? でもIS学園って女子高だろ。俺が通っても大丈夫なのかな? と言うか制服って男物だよな? まさか女装して入学しろとか?」

言いながら、どこのゲームの話だよと思わなくも無い。

「馬鹿なことを言うな。きちんと男物だ。そもそも私は女装を趣味とした弟を持った覚えは無いし、そんな風に育てた覚えも無い」
「心配しなくても、俺にそんな趣味は無いし育ててもらってもいないから。ついでに女物だった場合、断固として拒否する!」

そう。ISは女性しか動かせない。必然的に学園も女性しかおらず男の生徒は一人もいない。
いかに一夏でも憧れのISを操縦するために女装をしなければならないのであれば、まだどこかの研究機関に所属したほうがマシだ。

モルモットと女装。どちらの方がマシかは意見が分かれるだろうが、少なくとも一夏は前者を選択する。

「安心しろ。そこらは国が手を回して男のままで入学できるようにした。制服は特注品だ。あと入学手続きの方もこちらで済ませておいた」

やることが早いが一夏としてはありがたかった。国と姉には感謝である。
国は色々と思惑があるだろうが、こちらとしては感謝しておこう。姉にはただただ感謝するしか無い。

彼としてもISを動かせたし、あの時知識が流れ込んできたが、それは一過性のもののようで、今ではそのほとんどが頭から消えうせている。
あれは何だったのだろうか。疑問に思いながらも、あの時の浮遊感を一夏は忘れられずにいた。
ISについて学べる学園に入学できるのは、一夏としても願ったり叶ったりなのである。

「あそこはどの国も手出しできないし、入学すれば少なくとも三年間は安全だ」

一夏の価値は男で始めてISを動かせると言う事で、うなぎのぼりになっていた。かつての誘拐の時以上に、彼の価値は高まっていた。
誘拐などの強攻策に出ようと考える人間や組織がおそらくは後を絶たない。無論、各国が牽制しあい、秘密裏にガードをつけたり計画を潰そうと躍起になっているだろう。

少なくとも表面上は静かなままが続くと思われる。
だがあの時を思い出し、一夏は少しだけ表情に影を落とした。直後、パンと背中を叩かれた。

「いてっ!」
「なんて顔をしているんだ、お前は。気にするなと、私は言ったはずだが」
「いや、でも・・・・・」
「ほう。口答えするか」

千冬が不敵な笑みを浮かべるのを見て、一夏はすぐにごめんなさいと土下座した。
姉にはどうやっても勝てない。剣道で強くなり、他にも柔道や空手、合気道、ボクシングと言った部活にも顔を出して鍛えてもらったはずなのに、何故か千冬には勝てる気がしない。
と言うか勝てませんでした。

(千冬姉、強すぎだろ・・・・・・)

何をやっても、格闘技では勝てなかった。唯一自信を持っている剣道でさえ、彼女の前には歯が立たなかった。
そんなのってあり? と思ったが、これも単に自分が未熟なだけと考え直す。

「分かればよし。いつまでも過去ばかり引きずっているのは、建設的では無い上に不毛だ。大切なのはこれからだ。それにお前にはIS学園での日々は、何よりも得がたいものになるだろうさ」

千冬は冷蔵庫から取り出したビールを片手に諭すように言う。その様子がまるで学校の先生みたいだなと思わなくもなかった。

(しかし千冬姉って、普段はどこで何やってるんだろうな)

IS搭乗者を引退して以来、この人がどこで何をやっているかを一夏は知らない。週に一度家には帰って来るし、元気でいるようだから深くは聞かないが中々に謎である。

「とにかく、しっかり励めよ、少年」

笑う千冬に一夏もああっ、と力強く答える。この日、一夏はIS学園に進む事が決まった。





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