デルムリン島、ここはモンスターと子供が仲良く暮らす楽園。
鬼面道士と言った種族のモンスター、ブラスは島で唯一の子供から爺ちゃんと慕われている。この島にまだ赤ん坊だった子供が流れついて拾った時、すやすやと眠る顔を見てブラスに芽生えたのは慈愛の心。
モンスターにだってそういう感情はあるのだ、人が世代を繋ぐように。傍にあった紙切れの文字Dからブラスは、太陽のように育ってほしいとその子の名をダイと名付けた。
あれから数年の時が流れ島のモンスターとも仲良くなったダイ、いや赤ん坊の頃から島のモンスター達はずっとダイの傍にいた。恐らくダイの何かにひかれたのだろう、ブラス自身も。
島の浜辺でグリズリーという熊のモンスターがダイに何かを期待する目で見ている、それにダイは頷き何処からともなく〈にく〉を取り出した。只のにくじゃない、しもふりにくだ。最高級のにく、ほっぺが落ちる程美味いにく! それをグリズリーにあげた、がつがつと食べるグリズリー。周囲のモンスターは羨ましそうに見ている。
「えへへ、おいしい? あっ皆の分もあるから仲良く食べよう!」
『ぐおおぉぉぉっ!?』
モンスターの歓喜の声、ダイは張り切るようにしもふりにくを皆にわけ与える。それを見てブラスは思った。
(仲良くというより……餌付け? ダイは勇者より魔物使い、いや流行のモンスターマスターがピッタリかもしれんのぅ)
しみじみと頷きお茶を飲む、そんなブラスに同意するかのようにぴぃっ! とゴメちゃんが黄金の羽をはばたかせた。
そういえばとブラスはダイに幼い頃読み聞かせた絵本を思い出す、あの時からダイはその絵本に出てくる青い髪の少年の活躍に憧れたのだろう。彼が率いる3匹のモンスター、大会で勝ち上がり決勝戦で姉と戦う。そんな冒険活劇に。
勇者よりもモンスターマスターダイ、この瞬間ハドラーが否大魔王バーンが率いる魔王軍の運命はある意味で決まったのかもしれない。
そして訪れる家庭教師にして勇者アバン、その弟子ポップ。その日ダイはいつもと同じくモンスター達と遊んでいた、ポップはその光景にぽかんと口を開けて見ている。
「いっけー! キメラ、かがやくいき!」
「きゅいっ!」
マヒャド級のブレスが放たれ海が凍った、マヒャドってレベルじゃねぇ。範囲広っ!?
可愛らしい鳴き声に騙されるとはこの事か。
ちなみに遠くで誰でも勇者になれるレッスン! をブラスに薦めていたアバンも目撃、ブラスはいつもの事と気に止めずアバンの勧誘をどう断ろうかと考えていた。
さらに彼らは驚愕する事になる。
「スラっち、おっきいのぶちかませー!」
「ぴいっ! 合点だ!」
スライムから、すべてのまりょくがときはなたれる!
大・爆・発! 破壊跡が残る。
(あのスライム喋らなかったか?)
ポップは遠い目をして呟いた、アバンは汗がだらだらと止まらない。
(スライムってあんなに強かったでしょうか?)
デルムリン島のモンスターが特別なのだ、ダイの遊び兼育成の結果成長したのである。マジで魔族と渡り合えるほどに。
これはハドラーが襲撃する数日前の出来事。
ドラゴンクエスト、ダイのワンダーランド。冒険の書を記録しますか?