状況認識、終了。
自己判断、正常。
私の名前は白式、女性にしか動かせない兵器ISだ。インフィニット・ストラトス、世界を変えた力。のはずだがどうでもいい、私をうまく使ってくれればそれでいい。絶対防御というシールドと雪片弐型という武装、それを使いこなす女性であれば。
そう、願っていたのに。
「と、届きました! “織斑くん”の専用機が」
「織斑、すぐに準備だ。お前ならそれをうまく使えるさ、何せ私の“弟”だからな」
「“男子”たるもの、この試練を糧に強くなれ! 一夏」
「へ? え? は?」
三人の女性の声に戸惑う少年の声、会話の内容から白式は判断する。どうやら世界でただ一人ISを使える男の専用機として選ばれたらしいと、うん。理解した白式はコアネットワークを接続、彼女に繋いだ。
《束、地獄に堕ちろ》
相手の返事は聞かない、織斑一夏を視る。優柔不断らしそうな雰囲気、そのくせ一度決めたら引かない意志の強さを感じさせる瞳。状況次第でこの手のタイプは化ける、良い方向にも悪い方向にも。
一夏が白式を装着する、女性達の声に見送られ出撃した。その内の一人は記憶にある声、白式の前身にあたる白騎士の装着者。織斑千冬、というか姓が織斑ならばこの二人は姉弟だろう。なんとも数奇な縁だった、今も昔もこうして同じ血筋の人間と共に戦う事になるなんて。
敵は中距離射撃型、ブルー・ティアーズ。その情報を一夏に伝える、するとこちらの武装を聞いてきた。近接格闘ブレードを提示する、「ちょ、これ一本で戦えって!?」と焦っていたが知るか。武装をうまく使うのは装着者の役目、白式は補佐するのみである。
さあ織斑弟よ、貴様が世界最強の姉の血を引くならば私にその可能性を見せてみろ。
逃げる、躱す、切り込む。一夏は距離をとりつつ間合いを見極めていた、言わば待ちの体勢。初心者ならば妥当な判断、白式もそこまで高望みはしない。そもそも、まだ一次移行していないのだから。いっそ初期設定だけで戦ってもらおうか、そのほうが燃えるだろう。
そこに敵のブルー・ティアーズからコアネットワークを介して通信が。
《あらあら、男に使われるISがどの程度かと期待していましたが。逃げるだけですわね、おーっほっほっほ!》
ぷつん。
最適化、開始。
「何だ、急に動きが滑らかになった!?」
無論、初期化と最適化を終わらしたから。一夏が反撃する、敵が怯む。《なっ、貴女まさか!?》、ここからが本当の戦い。そう意気込んでいたら試合終了のアナウンス、勝者セシリア・オルコット。
……一夏、マイナス5点。初心者だからって甘くはしない、これから戦う間柄になるからには成長してもらわなければ困る。まずは戦闘中にぶつぶつ誓うのは止めようか、そんな暇があったら雪片を振るえ。当たれば相手のシールドエネルギーを削れる力を持っているんだから、当たれば。
まずは素振り10000回、そう指示したら「箒よりもスパルタだー! というかISって人格あったの!?」と驚かれる。丸いマスコットも喋れるんだからパワードスーツが喋れてもいい、そんな時代が来た。
一夏の腕にガントレットとして待機している白式は厳しく彼を鍛えなおしていこうと決意する、夕暮れのIS学園グラウンドに一人素振りする男の姿がそこにあった。
翌日、筋肉痛になったらしい。同室の篠ノ之箒から介抱してもらう一夏を視て白式はため息を吐き出したい気分になる、軟弱者め。それでも武士か、仕方ない。身体を作る事から始めなければ、グラウンド二十周。勿論許可を取りISを展開したままで。
「あんた、鬼か……」
箒から臀部に冷やし湿布を貼ってもらっている一夏は白式の指示を聞いて呟いた、鬼? いやISだが。
おまけ。
「織斑一夏、気になる男の人ですわ」
《そうね、始めは情けない戦い方でしたが途中から……正に武士って感じ》
金髪の少女は頬を染めて、待機状態のISはうっとりと。気分は恋する乙女、一夏の女難(IS)は始まったばかり。