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No.30844の一覧
[0] 【習作】アンリエッタの途方も無い憂鬱【憑依・TS】[だぼわん](2011/12/14 19:33)
[1] 二話:「穴掘り」のルイズ。[だぼわん](2011/12/13 19:43)
[2] 三話:ペガサス級戦艦[だぼわん](2011/12/14 22:18)
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[30844] 【習作】アンリエッタの途方も無い憂鬱【憑依・TS】
Name: だぼわん◆609b579b ID:db34f440 次を表示する
Date: 2011/12/14 19:33
    【アンリエッタの途方も無い憂鬱】


    一話:俺の名を言ってみろ。

                  作者:だぼわん













俺はアンリエッタ・ド・トリステインである。


何を言ってるか解らないだろうが、一応説明しておく。

俺は前世では29歳の日本人で一サラリーマンだった。

そして親戚に死んでもらって忌引きを取り、趣味のバイクで峠を攻めていたところカーブを曲がりきれずに谷底にアイキャンフライした。

当然即死である。
・・・・名目上とは言え親戚を皆殺しにした罰が当たったのだろうか。


まぁともかく俺は死んだのだ。

しかし、その筈が俺が目を覚ますと突如赤子となって生まれ変わっていたのだった。
それもゼロの使い魔の登場人物である、アンリエッタ・ド・トリステインとして。

TSである。
そして転生である。
さらに憑依ものである。

俺は割りとSS読みの趣味も持つ、所謂趣味人であったが、自分がこうなるとは露ほども思わなかった。

そしてそうであるが故にゼロの使い魔の物語など、うろ覚えの上に途中で一時的に切ってしまったので不鮮明極まりない。

こんなことならホンキでゼロの使い魔暗記しときゃ良かったと後悔するも、そんな事が事前に知れるわけも無く。

ってゆーか、そんな事ホンキで考えられる人間がもしいたらキチガイ以外の何者でもないのだ。
仕方ないね。

「じーじ、今日の政務は終わりましたか?」
「いいえ。しかしもう少しで終わりますゆえ、少々お待ちいただけますか。」
「・・・むう。では、そこで待ちます。なるべく早く終わらせてください。」

そんな俺は今6歳。

うろ覚えの原作知識と当てにならないSS知識を総動員して、生き残りを図っている真っ最中である。
具体的にはまだ子供なので徹底した魔法の訓練とか杖術の訓練とか、マザリーニに媚び売ったりとかである。

・・・・そう、マザリーニ。

国王(父親)がくたばった後はこの男が居ないとトリステインは詰む。

ってゆーか今いなくなっても詰む。

つまり俺も詰む。

それだけは確かなのだ。

原作知識とかSS脳とか関係なく、現状を理性的に分析する脳みそさえあれば誰にだって解る。俺にだって解る。
つまりは、そういうことである。

ロマリアから出向してきて、時期教皇に成れるって言うのにそれを蹴って鳥の骨とか罵るトリステインのために尽くすというマゾ野郎。
王家に忠誠心持つ義理とか一切無いのに、誰にも感謝されず国の為に身を粉にして働くワーカホリック。

その生き様に想う所が無いわけではなく、
実の所ロマリアに帰ったほうがコイツにとっては幸せなのかも知れぬとか考えたりもするものの、
トリステインと俺にとってはこの男が居ないと非常に困るのである。

そして万が一にも原作乖離してトリステインを抜けられると、俺が詰む。

故に、頑固親父を差し置いて俺は何かある事にマザリーニの政務室に押しかけては甘えたり媚売ったり神学や政治を教わったりしているのである。
忙しいかもしれないが、子供に懐かれて悪い気のする者もおるまい。
あんまり時間は取らせないように気は使ってるし。

そして国王はぐぎぎ状態。
スマヌ。
超スマヌ。

でもこれアンタの国の為に必要な事なのよ。

あと、支離滅裂なアンタの話よりもマザリーニの話のほうが面白いのよ。←ココ重要。

無駄に人生経験豊富だし。


「お待たせしましたな。今日はなんのお話にしましょう。」

「うむ。この間の続きで、単位の統一化に関する案で、じーじの話が聞きたいのです。」

「ふむ。・・・・・アレから考えた限りでは、単位そのものの厳密な制定は難しくないかと。
いまでも単位の取り締まりは王家が執り行っていますからな。少々厳しくした所で反発は少ないでしょう。」

「では、工房に徹底させるのは難しそうですか?」

「そうですな。我々には我々の、連中には連中の歴史と言うものがありますからなぁ・・・・。
統一規格という概念は素晴らしいものの、それを全ての工房に徹底させるのは骨が折れますぞ。」


それにしても、この好々爺といった感じのマザリーニ。

実はまだ30台なんだぜ・・・これで・・・・信じられるかい?

国王が崩御してから苦労していたとか思ってたけど、実は全然そんな事なかったぜ。

国王が生きてても、言う事聞かない貴族を取り締まるのはマジ大変なんだな・・・・。余所者だし。

三十台で既に白髪の方が多いとか、どんだけ苦労してんだよ。

禿げてないのが奇跡だな。
涙が出てくるぜ。


「何故でしょう?」

「まず第一に、規格を統一する事によって得られるメリット。これを理解できる程の教養をもつ者が少ないということですな。
そして第二に、コストが掛かるという事。規格を統一するためには、これまで使っていた全ての工具とそれによって作られた工具。
その全てを取り変えねばなりますまい。それは、短期的に見ると工房にとって大きなマイナスですな。」

「むぅ・・・・・・・。」

「そうですな・・・・あとは、この政策によって大きく得をする工房は、現状ほぼ造船関連に限られますからな。
統一化によって大きく生産力が増すほど複雑な工業製品は、今のところ船だけです。
よってこの政策を発布するとなれば、造船関係者のみを対象としたものとなるでしょう。
しかしもっと工業力が上がればまた話は別でしょうが、
造船工場だけが統一規格化の最初の負担を強いられるとなると、少々反発が強いでしょうな。」


あ、そうか。

ネジとか工具とかも大量生産する現代だからこそ統一規格が有効なのであって、
人の手作りでほぼ間に合う時代では規格を統一するといってもピンとこないわけか。


「では、部品の規格統一は造船に絞るとして、規格の統一に積極的に協力する工房には奨励金を出すというのはどうでしょう?」

「それならまぁ、あらかじめ大きなギルドを押さえれば上手くいくでしょう。
しかし、次の問題が発生します。船の生産力が上がり多少安くなったとして・・・・・需要が無いのです。
国防のため、国力増強のため有効な案だとは思いますが、船を買うのが国ばかりでは国庫が傾きますな。」

「うむむ・・・・・。」

その程度の事は考えてるといわんばかりにスラスラと論破するマザリーニ。
そうか。ただ作るだけではゴミを作っているのと大差ないからな・・・・・。
船なんて平民にとっては一生ものの高い買い物だし、空軍に使うにも限度があるか。
対ゲルマニア戦や対レコンキスタ戦に有効だと思ったのだが・・・・。

「・・・!、そうです、ではその船でなにか国家事業を起しては?
国で買い上げ民間に貸し出すのです。それならば、いままで船に手が出なかった者も船乗りになれるチャンスが生まれるとは思いませんか?」


古代中国では馬でそんな事をしていた筈。歴史でやった。
流通は活性化するし、農耕にも使えて騎馬兵の大量生産にもなる一石三鳥の政策だった。

船の場合は農耕には使えないが、流通には驚異的な威力を発揮する筈。

空飛ぶ船とか艦載量マジありえないからな。


「ほほう・・・貸し出しですか・・・それは中々興味深いですな。」

「そうでしょう。これならば船に需要が生まれます。船乗りも増え、様々な用途に使えましょう。」


「ふむ。陸の流通は概ね馬車が主流ですからな。国中を船が飛び回るとなれば、素晴らしい経済効果が期待できますぞ。
しかし、問題は残ります。それ程の流通を満たす物資は何処から仕入れたものか・・・・と言う事です。
風石も多く消費します故、国外へ出てゆく金も大きくなります。
トリステインの生産力は、そこまで大きなものではありませんからな、現状では。」

「それは・・・・やはり前言ったように、試験農場をつくり、アカデミーの無駄飯食い達に農業を研究させるのが手っ取り早いと思います。
少々強引でも、あの連中には故事の粗を探すのではなく新しい物を作れと発破をかけてやらねば。
頭だけは良いのが売りなのですから、もっと建設的な方向へその能力を向けてもらいましょう。」

「まったくですな。・・・・そして有効な案でもあります。以前お聞きした時は聞き流しておりましたが、
改めて聞くと自分の視界の狭さを思い知ります。貴族が畑仕事などと反発するでしょうが、ふむ。やる価値はありそうです。」


「うむ。出来ればすぐにでも父上に奏上して欲しいですね。そして早ければ早いほど良い。
あのアカデミーの頭でっかち共も、国王直々の命令とあれば動かざるを得まい。
そして農業技術が上がり、農家の次男三男が職にあぶれれば尚良いのですが。」

「・・・・・姫様は戦を考えておいでですか。・・・・ふーむしかし、平民の軍ですか。有効な事は有効ですがしかし・・・・。
国営となると、造船所と貴族の癒着も考えねばならなるまいし・・・・うむむ。」


・・・・!!?

何故解ったし!?
前から思ってたけど、コイツ頭良すぎだろ常識的に考えて。

戦争とか口に出した事無いぞオイ!
平民兵の登用とか、普通の貴族ですぐに思いつくとかどんな頭の構造してんだ!?

転生とか現代知識とか目じゃねーぞ!?


「ふーむ。やってみるとしますかな。まずは『貸し出し政策』の前例作りとして、農具などの貸し出し制から始めるとしますか。」

「あ、ああ・・・なるほど。いきなり船等と言う大きなものの貸し出しは通りにくいですか。」

「左様です。それに上等な農具さえあれば農業の効率も良くなり、生産力が上がるのも確か。
そうすればさらに国力もあがり、民の暮らしぶりも良くなりましょうぞ。」


・・・・。

あれ?
なんかおかしいぞ?


「あの、・・・・本当にやるのですか?いつもは話を聞くだけで一つの案に100は駄目出しするというのに、
今日は随分アッサリしてるではないですか。」


「私は姫様が気に入らぬから、容易に賛成せぬと言う訳ではありませぬ。
優れた案に対していたずらに掣肘をかけるなど致しませんぞ。
姫様の出された『貸し出し政策』は中々素晴らしい案です。
このじじ、蒙を開かれた気分です。」


「そのように手放しで誉められると、照れるではないですか。本当に今日はどうしたのですじーじ。」


いつももっと辛口なのに、今日は妙に優しいな。

こんなマザリーニ初めて見たぞ。
・・・嫌な予感がする。


「ふふ、嬉しいのですよ姫様。このように優れた生徒を持った教師として、そして優れた主君を持った家臣として。
相変わらず、姫様の慧眼はとても6歳とは思えません。
これまでも、実はあなたがなさった提案を部分的に採用する事もあったのですぞ?
姫様がこのままご成長なされればこの国は安泰です。・・・・正直な所、一つ肩の荷が下りた気分です。」


・・・・っちょ、まだ30代だってのにもうすっかり爺気分だコイツ。

ふざけてじーじとか呼んでたのが不味かったか・・・・!?

それ以前に、肩の荷下りてないから!全然一つも下りてないから!

変なとこで安心しちゃ駄目でしょ。お前にはこれからも馬車馬の如く働いてもらわなきゃいけないのに。

ブラック企業も真っ青だぞコラ!お前の大好きなお仕事が山のように山積してるんだぞこの野郎!(二重語)

てゆーかマジでやばい。
こんな展開まじありえない。

バタフライ効果にも程があるだろ。

こんな小娘一人差し置いて、ロマリアに帰るとか無いと思いたいが・・・・最悪の展開もありえる。


「ご冗談を。私など王女とは言え、未だただの小娘に過ぎませぬ。まだまだあなたの力が必要なのです。
私が良いと言うまで、貴方は一線から退かせませんよ。・・・・それ以前にじじ、あなたはまだ40にもならぬではありませんか。
引退を考えるのは早すぎです。欲がないというのも考え物ですね。」


いつに無く饒舌でまくし立てる俺。


そうだ。ちょっとまてお前。

俺なんか単に前世の記憶があるだけの凡人に過ぎないんだって。

俺一人じゃ内政TUEEEEEEEEとか現代知識SUGEEEEEEEEEとかできないんだって。

解れよ、神童も二十歳過ぎれば只の人とか言うだろ。

無理。
無理だって。
あの優しいけどアホのお母様と、優しくないしアホの貴族共と心中とか御免こうむるって。

お前だけが頼りなんだ。

・・・・・いざとなったらどっかのヘ○ンみたく土下座してでも引き止めるぞ。

て言うかあのヘイ○がうらやましいぜ。少しでもあの強運を分けて欲しい気分だ。


「おおっ・・・・これ程までに、私を買って頂いているとは・・・・このじじ。感無量ですぞ。
ご安心なさってくだされ。このじじ、滅多な事ではこのトリステインを離れる気なぞありませぬ。」

「誓ってですか?」

「この聖書と始祖ブリミルにかけて誓いますぞ。」

「・・・・ならばよろしい。」


今にも感涙に泣き出しそうな顔で、マザリーニが打ち震えている。
オーバーなヤツだ。自分がどれだけこのトリステインに貢献しているか解っていないのだろうか?

ふう。

だがここまで言うからには、とりあえずそうそう居なくなりはしないだろう。

・・・・まだ不安は残るが、そこはコイツを信じるしかない。
原作では次期教皇の座を蹴ってまで、何故かトリステインに忠を尽くした男だ。

その「何故か」を突き止めない事には本当に安心はできないのだが、ここは一先ずよしとする。

しかし・・・。
なんとかしてコイツをトリステインに繋ぎとめておきたいのは山々なんだが、実の所殆どボランティア状態なんだよな。

給料は滅茶苦茶出てるけど、使う時間が無いんじゃ0と同じだし。

弱みもないし不正もしないし、情で縛ろうにも常識的に考えてあの仕事量に勝る情って一体何なんだって感じだし。

身を粉にして働いてるのに鳥の骨とか言われてまで働く理由とか思いつかないし。

いっそ直接聞いてみれば良いのかも知れないが・・・・・なんか怖いし。


「・・・・もうそろそろ、魔法の訓練の時間ですね。時間を取らせて済みませんでした。」

「なんの、済まぬ等と仰らないで下さい。姫様との討論はこの国にとって、実に千金に値する価値があります。
魔法の訓練、頑張って来て下され。」

「ふふ、ありがとうございます。お世辞でも中々嬉しいものですね。では、“逝って”来ます。」

「?明日もお待ちしておりますぞ。」


・・・・明日も10年後も、待っててくれよ?本当に。

お前に愛想つかされないように、できるだけ姫様業も頑張ってみるからさ。


*



ギィ・・・・パタン。

俺は今の身長だと見合げる程でかいドアをうんしょと開けて、外に出た。

ドアの横には俺付きのメイドがビシッと背を伸ばして控えている。

・・・・俺付きのメイドとか、凄いよね。

なんか偉い人になった気分がする。

いや、実際立場的にはえらい人なんだけれど。


「今日は少々長かったですね。お勉強は捗りましたか?」

「ええ、とても有意義な時間でした。」

「それは良かったです。・・・・では今日はカリーヌ様がお待ちですので・・・・御武運を。」

「ありがとう。気休めでも嬉しいわ。」



かりーぬ。

ルイズの幼馴染設定は原作と変わらないが、多分既に原作とは違う所もある。
俺の魔法・杖術の師匠がかの烈風カリーヌだということだ。

初日で、「王女だからといって手加減や無用な配慮は要りませぬ。」

とか啖呵きってから凄いスパルタなんだよなあの人・・・・・。

今となっては最初の方は遠慮してたんだと解るが、それでもあの厳しさって何なんだ。

そこから段々容赦が無くなってきて、最近はホントに命の危険さえ覚えるほど。

後悔先に立たず。一年前の俺を出来ればぶん殴ってやりたい。


・・・正直、自分には才能あると思って調子乗ってました。
王家だし。

しかし上には上がいるもんですなー、正直大人になっても勝てる気がまったくしません。

流石は虚無のママン。

しかも訓練方式が何処で覚えたのかハートマン式だから、超ぱねぇ。

訓練モードになったら普通に俺のこと罵るし、王族だからって容赦ないし。
口調自体は丁寧だから、よりキツイ。

メイジには肺活量が必要とかいって、普通に庭を走らせたりするし。

立ち止まったら普通に鞭とか飛んでくるし。

フライ何時間耐久とか、レビテーション何時間耐久とかマジでヤバイ。

レビテーションなんか岩を落したら終わりだけど、フライの場合落下するんだからな!

そしてなまじ想像を絶する美人なだけに(年いってるけど。)、
最近罵られたり鞭で叩かれたりするたび背筋にビビッて来る感覚が一番やばい。


疲労困憊で倒れ臥した所に、
あの冷たい釣り目で見下ろされて罵られたりするともう・・・・あふぅ。

・・・・マゾじゃない!俺はマゾじゃないんだからな!?


あーでも、ばったり倒れこんでる所をつま先で蹴り上げられたりしてもあの人のこと嫌いにならないってあたり、もう手遅れかも。

調教されきってますな。王女なのに。


いや、でも普通にマゾじゃないと付いていけない訓練って言うか、

あんな人に訓練付けられたらだれでもマゾになりかねないって言うか、それだけなんだけどね。

訓練以外のときは普通に優しいし。

訓練の成果は目覚ましいものがあるから、やる気にもなるし。


・・・なんか、平賀サイトの気持ちが良くわかった気がする。

厳しい中に、ほんの少しの優しさを混ぜられるとコロッといっちゃうよね。

時々やりすぎたかな?って凄く不安そうな顔になったり、よく出来た時に凄く優しかったり。

そのせいで酷い仕打ちも何か許せちゃったりする。

これがツンデレ理論か。


それにルイズももう母親の血の片鱗を見せ始めているんだよな・・・、ドSの。
それでいて人を惹きつける魅力と言うかカリスマと言うか・・・二人ともそういうのがある。

中身凡人の俺としては、容姿以外にカリスマ要素持ってないから凄く羨ましいです。


「中庭に着きましたわ。姫様。・・・中には腕っこきの医師が三人待機しております。
外側からはサイレントをかけますので幾ら叫んでも外には聞こえません。安心してください。
・・・改めて、御武運を祈っております。」

「あはは・・・ありがとうね。」


医師て。
医師てなんぞ。

そう思わんことも無いが、実の所結構お世話になっちゃっているのだ実際の所。

小さな怪我とか跡残ったりしたら大変だし、魔法行使の疲労で気絶すると心臓止まったりする事があるから。

・・・・医者の立会いが前提の訓練なんだよね。
もう慣れた。


「遅い!・・・姫様、時間は有限です。
姫様ほどの才能を伸ばすには、この時期に徹底的に叩き込むのが一番だと申し上げた筈。
幾ら才能があろうと、磨かねば只の石。価値の無い蛆虫です。いえ、貴方は未だ蛆虫以下のゴミクズに過ぎない。」


髪を後ろで束ねた桃色の髪の女が、中庭に着くなり罵詈雑言で迎えてくれた。
いい加減かなりトウが立ち、皺も目立つ御仁だがそれでも美人だ。

しかし性格は苛烈で強引。中庭もいつの間にかトレーニング用に相当改修されてしまった。

初めから錬兵場でやりゃ良いのにと思わんでもないが、一応おれは姫様なのでと言う事らしい。

・・・・何時の間にか優雅さとかかなり減っちまってるな。

林とか、生え際が後退するかのごとくジリジリと消えて行ってるんだよ、魔法の余波で。
もうちょっと手加減とか考えて欲しいね。

まぁ始めに手加減無用とかかっこよく言っちゃった俺が悪いんだけどさ!?


「貴方はは厳しい私を嫌うでしょう。
だが憎めば、それだけ学びます。
私は厳しいが公平です。
私の教え子になったからには、立場による差別は許しません。
ロマリア豚もゲルマン豚もガリア豚も私は見下しません。

・・・・・すべて平等に、価値がない!

私の使命は役立たずを刈り取ることです。
愛するこのトリステインの害虫を!
分かりましたか、このウジ虫が!・・・・中庭30週!早く行きなさい!」


「イエスマム!」

「声が小さい!!」

「イエスマム!!!」

「よろしい!行け!」

「イエスマム!!!」


畜生!どうしてこうなった!?

こんなキャラだったっけ、この人?

それ以前に、俺ホントに王族か!?


「遅い!5週追加!」

「イエスマム!!!」

「良い返事です。少しはマシになってきましたよ、この蛆虫!」

「ありがとうございます!マム!」


あと最近気付いた。

幼児期にトラック走らせたり腕立てやらせたりしてもそれ程意味無いじゃんとか思ってたけど、精神力はかなり付くようだ。

魔法使わなくても、増えるのね。

それにだんだん頭が真っ白になっていろいろな事がどうでも良くなってくる。

この精神状態だと、なんか魔法の精度が良く上達するようだ。


まぁ腕の良い水メイジが三人も控えている時点で発達障害とか考えるだけ無駄だし、
この人が直々に訓練つけるのは3日に一回だし。

インターバルを大きく置いてるのは、現代スポーツ科学にも通ずる所があるので、合理的なのはわかる。

それにしても、まさかこんな事になるとはなぁ・・・・・。

この人の弟子が逃げ出すやつが多いって良くわかるわ。

あとマゾに目覚めるってのも。


俺は違う。まだ違うと思いたい。

それが無駄な足掻きでも、抵抗する事には意味があるのだ。そう信じる


「足が止まっていますよ!?もっと気合を入れて走りなさい!」

「イエスマム!!」


ビシィッ。
そんな事を考えていると鞭が飛んできた。・・・・この人ほど鞭の似合う御仁はいるまい。


───ゾクゾク。

うはぁ、やばい。

・・・・俺の明日はどっちだ!?










つづかない。














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