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No.37158の一覧
[0] 【ネタ】アル中忍者・更生伝(NARUTO・原作キャラ駄目人間化)[スーパードライ](2013/04/21 00:12)
[1] 1話「なにごとも他力本願」[スーパードライ](2013/04/21 00:15)
[2] 2話「俺じゃなくても、変わりはいるもの」[スーパードライ](2013/04/04 11:32)
[3] 3話「ハードルは高ければ高いほど、潜りやすい」[スーパードライ](2013/04/02 22:48)
[4] 4話「友情なんて、気付けば成立してるもの」前編[スーパードライ](2013/04/04 13:56)
[5] 4話「友情なんて、気付けば成立してるもの」中編[スーパードライ](2013/04/05 15:33)
[6] 4話「友情なんて、気付けば成立してるもの」後編[スーパードライ](2013/04/06 14:15)
[7] 5話「パーティの定員が4人までとは限らない」[スーパードライ](2013/04/07 16:41)
[8] 6話「侍も7人いれば派閥争いくらい起きる」[スーパードライ](2013/04/21 01:33)
[9] 7話「世界観なんていうのは元々在るようで、無いようなもの」[スーパードライ](2013/04/28 18:07)
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[37158] 【ネタ】アル中忍者・更生伝(NARUTO・原作キャラ駄目人間化)
Name: スーパードライ◆35137455 ID:8bb44f69 次を表示する
Date: 2013/04/21 00:12

突然だが、皆さんはマダオという言葉を聞いたことがあるだろうか?
マダオ─────マ=まるで、ダ=ダメな、オ=おっさんの略称である。
マダオは古今東西何処の世界にも存在する。
会社の窓際にも、日曜のリビングにも、早朝のパチンコの列の中にも、金曜夜の飲み屋にも必ず一人は彼らがいる物だ。

「うっ、ぅぅ……」

そして勿論のこと、この木の葉の里にもマダオは存在する。
誰の手にも負えない、本当にどうしようもないマダオが。

「酒ぇ、頼むから……後一杯でいいからよぉ」

そのマダオは少年だった。
まだ、若干12歳であるにも拘らずマダオだった。

「飲ましてくれよ。俺ぁ、酒がねぇと生きられねぇんだってばよぉ……」

そう、こんな人生を棒に振ったまるで駄目なおっさんのような台詞を吐いて、ドブの溝の嵌ったまま寝ているこの少年─────名をうずまきナルト。
そんなマダオな彼こそが、この物語の主人公なのである。








その少年は生まれたときから孤独だった。
物心ついたときには両親が居らず、そのため彼は幼少の頃から子供ながらに一人で生きなければならなかったからだ。
彼の孤独は想像を絶する物だったことだろう。
当然だ。
一番親の愛情を必要としている時期に、それを与えてくれる存在がないのだから。

加えて、彼は彼の住まう木ノ葉の里の住人から迫害されていた。
理由はナルトも知らない。
だが、その原因がどうやら自分にあるのだと子供ながらに分かっていたから、ますますナルトは人との接触を避けるようになった。
つまり、親からの愛を他人の愛で埋める事も出来なかったのである。

ナルトは幼少の頃からずっと孤独に耐え続けた。
しかし、そうは言ってもナルトはまだ子供である。
幾ら頑張って耐えた所で、その許容量は大人とは比べ物にならないほどに小さい。
下手をすれば後一手、何か簡単なきっかけを与えれば壊れてしまうほどナルトの心は軋んでいたのだ。
だが、彼は幼少期のある日に偶然それを見つけた。
否、そうあるべくして見つけてしまったのだ。
自分の心の孤独を綺麗さっぱり洗い流してくれる魔法の飲み物─────つまりは酒を。

「くっそぉ……どいつもこいつも馬鹿にしやがってよぉ。畜生……」

最初は、ほんの興味本位だったのだ。
幼少の頃ふと通りかかった居酒屋の窓から見えた大人があんまりにも美味そうに飲んでいるものだったから、どんな飲み物なのか一度試しに飲んで見たい。
きっかけはそんな何処の子供にだってある好奇心からだったのだ。

「落ちこぼれ落ちこぼれって九官鳥みてぇにベラベラ好き勝手なこと言いやがってよぉ。俺だってなぁ、好き勝手にこうなったんじゃねぇってんだ……ヒック、うぃー」

初めての酒は、酔っ払った大人が打ち捨てた酒瓶の中の一滴だった。
酷く苦いむせ返るような味だった。
だが、その後に訪れる何ともいえない心地よさと高揚感はナルトの孤独を薄れさせ、彼を得体の知れない快楽へと溺れさせていった。
思えば、これが全ての間違いだった。

「俺ぁ、天下のナルト様だぁ……何時かは、ヒック。火影になる男だぞぉ? それを寄って集ってあいつらはよぉ」

その後、ナルトは何度となく酒を求めるようになった。
あのときの高揚感とこみ上げてくる熱情が忘れられないからである。
だから、ナルトは酒を手に入れるためならなんだってやった。
時には大人の飲んでいる物をくすね、またある時は同い年の知り合いに無理やり買いに走らせたる。
酷い時には酔った勢いで、同級生や通行人を締め上げ、金品を巻き上げてはそれを元手に飲み歩くような時もあったほどだ。
もはや完全に悪党の所業である。

「畜生ぉ……。舐め腐ってんじゃねぇよ、ったく……あぁ?」

それから5年と少しばかりの歳月がたち、いまやナルトは酒なしでは生きられない身体と化していた。
所謂、アルコール中毒者─────ひいてはマダオである。
ろくに学校にも行かず、外に出て働くわけでもなく、日に一回お人よしの知人によって運ばれてくるビールや焼酎を呷っては愚痴をグダグダと履き続ける。
そんな社会のトライアングルの底辺の更に下に位置する人生を、今現在ナルトは目下爆走中であった。
元の事情はどうあれ、救えない男である。

「酒が、ねぇ……」

そして、話はそんなアル中マダオの現在に回帰する。
無数の空き缶と中身のない一升瓶に囲まれた部屋の中で、ナルトは現在多大な焦りを感じていた。
昨日に彼の知人が持ってきた酒が、まだ全然飲み足りていないというのに尽きてしまったからだ。

「ねぇ……何処にもねぇ、まるっきり全然何一つ残ってねぇ」

それは重度のアルコール中毒者である彼にとっては、死刑を選択されたも同じだった。
何故なら『まるで、駄目でどうしようもない、落ちこぼれ』─────略してマダオな彼にとって酒とは、イコールで人生に直結しているからである。
つまり、酒がないと彼の人生は終わるのである。

「あぁ……ぁぁ……」

聞くに堪えない声を上げながら、空き缶からこぼれた残り酒でベトベトになったフローリングにナルトは倒れ伏せて嘆く。
情けない話だが、酒が切れると彼は一定時間いつもこうなのだ。
高揚していた気持ちが一気にナーバスになり、強気だった口調が急に弱々しい物へと変わってしまう。
とかくアルコール中毒者などと呼ばれる人種は、決まってこのような症状に見舞われるのだが、無論それはナルト少年にとっても同じであった。

「駄目だ。俺はもう駄目だぁ……おしまいだぁ……」

涙を流し、頭を抱えながらブツブツと独り言を呟き始めるナルト。
その様はまるで、どこぞのサイヤ人の王子が散々調子に乗った挙句の果てに意図も簡単に打ちのめされて戦意を喪失したかのような非常に情けないものだった。
しかし、酒を燃料としてその日その日を生きているナルトにとってはこれでも深刻な死活問題なのだ。
もはや体裁や格好など気にしてはいられない。
それほどまでに酒が飲めないという事実に対して、ナルトは焦っていた。

「俺はあれがないと駄目なんだよ。頼むよ、くれよ。酒くれってばよぉ……」

鬼気迫った顔で床に散らばる空き缶や空き瓶をナルトは物色し始める。
しかし、酒が残っている缶や瓶など一つとしてありはしない。
当たり前だ。
全部自分で飲んでしまったから床に捨ててあるのだから。
もっとも、そんな事実は今のナルトの頭の中には小さじ一杯分の砂糖ほども残ってはいないだろうが。
ともかくこの十二歳児、お先真っ暗である。

「……あぁ、そうだぁ。ヒナタだ。おーい、ヒナタいるかぁ!?」

酒が切れて酔いも覚めたのか、今度は錯乱したかのようにナルトは何時も何処からともなく自分に酒を運んできてくれる知人の名前を大声で叫び始める。
一旦落ち込んでから、一泊置くとまた騒ぎ出すというアルコールに餓えたマダオの典型的な症状である。

「どこだぁ、ヒナタぁ! いねぇのかぁ!? 酒だ! 酒買ってこいやオラァ!」

駄々っ子のように手足をバタつかせ、居もしない知人の名を連呼し、ナルトは騒ぎ立てる。
勿論この騒ぎは薄い壁を通して両隣の中年夫婦や中忍試験を三浪し、今度こそはと勉学に打ち込む受験生な下忍くんにも丸聞こえなのだが、そんな彼らは暴れるナルトを注意しようとはしなかった。
否、これまで幾度となく注意はしてきたのだが、その度に酷い目にあっているため関わりたくないのだ。
酒が切れてナルトを止められるのはこの里で唯一、そんな駄目駄目な彼を甲斐甲斐しく世話する彼の通い妻だけ。
それが分かっているからこそ、彼らはそんな彼女がナルトの叫びに呼応して彼の元を訪れるまで知らぬ存ぜぬを決め込むのだ。

「なっ、ナルトくん……? どっ、どうしたの?」

そして今日はナルトの運がよかったのか、それともナルトの知人の少女─────ヒナタの運が悪かったのか、彼女はナルトが騒ぎを起こし始めた時にはもう既に彼の家の傍らまで来ていた。
自分の名前が呼ばれたことに慌てて、ヒナタは大急ぎでドアを開け、ナルトの部屋の中へと踏み込んでいく。
こんなことを物怖じせずに行えるのは木ノ葉の里と言えども、ナルトの部屋のスペアキーを所有しているヒナタくらいの物である。

「おぉ……そこに居たかヒナタぁ。お前ちょっと酒買ってきてくれってばよぉ。何でもいいからさぁ」

もはや亡者のようになったナルトを前に、ビクつくヒナタ。
こんな光景を彼女が見るようになってからもう既に5年以上の歳月が流れて入るが、それでも慣れないものは慣れないものなのである。
それがまだ、ナルトと同い年の少女であるのならば尚更というものだ。
もっとも、そんな駄目男のナルトを5年も支え続けてまだ投げ出さない辺り、ヒナタも相当なのは間違いないのだが。

「ナルトくん。火影さまからもうお酒飲んじゃ駄目って言われたんじゃ……」

「誰があんな糞爺の言うこと聞くか馬鹿ぁ! それとも何か? お前は俺の言うことよりも、あの爺の言うことのが大事だってのか? えぇ!?」

「そっ、それは勿論ナルトくんの方が大事だけど……。でも、相手は火影様だし……」

「四の五の言ってねぇで、お前は俺の飲む酒買ってくりゃあいいんだ! 口答えすんな、馬鹿ヒナタぁ!」

戸惑うヒナタに掴み掛かり、拳を振り上げるナルト。
その様はもはやマダオというよりは暴漢のそれである。
しかし、ナルトはその振り翳した拳を振るうことはなかった。
幾らアル中とはいえ、彼はマダオだからである。
感情のアップダウンは確かに激しく、自分よりも弱い者に対しては何処までも高圧的だが、生活資金及び生活習慣及びおはようからお休みまでの家事、炊事、掃除からその他諸々までの面倒を見てもらっている女を殴る度胸など彼にはないのだ。
まあ、事実ヒナタという生命線が断ち切れればそれはイコールで彼の死に直結するのである。
アル中マダオ忍者の少年N(12)、人知れず孤独死。現代忍者社会における不干渉な人付き合いの実態とは、などと朝の朝刊に載せられるような事態になってもなんら不思議ではない。
幾らアルコールで頭をやられていても、生存本能でそれを感じ取れるからこそマダオはマダオなのだ。

「違ぇ……。違うんだよ、ヒナタ。悪い、ごめん。今の本心じゃねぇんだ……」

先ほどの激情から一転、今度は子供のようにヒナタの胸に顔をうずめてナルトは彼女に泣き付き始める。
女房に捨てられたくなくて、必死に縋りつく駄目亭主の図である。

「痛くなかったか? 怒鳴って悪かったってばよ……。本当にごめん。俺酒切れると自分でも何がなんだか分かんなくて……」

気が強くて怒鳴り散らしたかと思えば、今度は平謝りを繰り返す。
絶対的に頭の上がらない存在にアル中マダオが相対したときの典型的な行動である。
また、そうした感情を自分で制御できないというのも特徴だ。
その様はもはやアルコール廃人と言ってしまっても過言ではないのかもしれない。

「俺ってば、俺ってば……お前がいなけりゃ駄目なんだ。生きていけねぇんだ。だからお願いだ、捨てないでくれぇ……。」

世間一般の人間からみれば不思議に思うことだろう。
なんでこんなアル中でマダオをヒナタが見捨てないのだろうか、と。
もういい加減愛想尽かしてもいい頃合なんじゃないのか、と。
けれども、そうした声に反してそんな駄目男なナルトを見捨てられないのが日向ヒナタという少女なのである。

「……大丈夫だよ、ナルトくん。私、どこにも行かないよ」

率直に言ってしまうと、ヒナタはナルトに惚れていた。
彼女がこんな駄目アル中の何処に惚れる要素を見出したのか定かではないが、日向ヒナタという少女は幼少の頃からうずまきナルトという少年にゾッコンだったのである。
とはいえ、幾らなんでも当のナルトがこんな風ではヒナタも愛想を尽かすのが普通と思う方もいるだろう。
実際、並の女性ならとっくに見捨てているような男だということは今更語るべくもないのだから。

「本当かぁ……?」

「うん、私はずっと一緒にいるよ」

しかし、世の女性の皆が皆惚れた男を簡単に見捨てられるような人間ばかりならDVカップルなどという言葉はこの世に存在しないのである。
幾ら辛く当たられても、暴力を振られても、体のいいATM代わりに使われようと、昼休みにジャンプと焼きそばパン買いに走らされようと惚れた弱みと時たまに見せるやさしい態度でついつい男の言いなりになってしまう女性。
こうしてナルトを子供のようにあやしているヒナタもまたそんな人種の女性の一人だった。
マ=まるで、ダ=だめんず・うぉーかーな、オ=女の子。
つまり彼女もまた、マダオである。

「……私がいないと、ナルトくん駄目になっちゃうもんね。私がいないと」

もう既に駄目になっているという突っ込みはさておき、日向ヒナタという少女の本質はこれなのだ。
自分がいないと自分の惚れた男であるというナルトは今よりももっと駄目な人間になってしまう。
だから自分が傍にいて支えてあげないと、と……つまりはこういう事だ。
ナルトを支えるという行動そのものに対して喜びを見出してしまっているのである。
ある種のマゾヒズムといってしまってもいいだろう。
つまりヒナタという少女は駄目な男に振り回されることが大好きになってしまった本格的に残念な子なのだ。
ろくでもない男のせいで人生を台無しにしてしまう典型のような女の子である。

「だから、ちょっと酒買って来い。お前の金で」

「……はい」

これはそんな駄目な男を、あの手この手で必死に支える少女が意図せず立派な忍者になってしまう残念な物語である。







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