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No.39227の一覧
[0] 【一発ネタ】提督と瑞鶴ちゃんがgdgd話すだけのSS【艦これ】[ロッテンマイヤー三曹](2014/01/12 02:55)
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[39227] 【一発ネタ】提督と瑞鶴ちゃんがgdgd話すだけのSS【艦これ】
Name: ロッテンマイヤー三曹◆e077d124 ID:3b6076b7
Date: 2014/01/12 02:55
日本を脅かす謎の生命体、深海棲艦。
その驚異を振り払うべく、日本海軍は対深海棲艦を想定した最新兵器、『艦娘』を実戦投入した。
海に隣接した鎮守府は艦娘運用の拠点として、本土防衛の要として、日夜戦いに明け暮れている。
倒せども倒せども、次から次へと深海棲艦はやってくる。
しかし、そんな激戦の合間にも休息はある。これはそんな、何がある訳でもない一日の様子だった。




鎮守府の総指揮官として提督の任に就いた男は、自分の指揮下にある艦娘のことについて思いを巡らせていた。
我が軍の象徴であり、誇りである艦艇。それを模して設計された艦娘。
それは良い、流石は我が軍の技術部の仕事だ。船乗りとして、あれらを指揮出来ることに無上の誇らしさを感じられる。
それでいて強力無比。深海棲艦が如何に大群であろうと、我らが艦娘の前では塵芥も同然だ。

だが、疑問がある。艦娘について、提督である男は一つだけ心底不可解な点があった。
『艦娘』の名を冠するあれらの外見は、少女なのだ。艦船の物に酷似した装備を搭載している、少女。
絶大な威力を見せつけ、敵をなぎ払い、海を支配するのは我らだと戦場を縦横無尽に駆ける、少女。
中には少女と言うには少々疑問が残る妙齢の女性や、幼すぎる童女も居るが、揃ってうら若き乙女なのは間違いない。

……何故、少女なのだ。艦娘は祖国と国民を守るための兵器だ。
少女である必要性は何処にある。今ではすっかり見慣れてしまったとはいえ、その疑問ばかりは終ぞ答えが見えない。
別に巨大な訳でもなく、屈強な肉体を有するでもない、可憐な少女たち。少しばかり容姿が整い過ぎているとは思うが……
何故少女なのにああまで強いのか。いや、少女だからこそ、ああまで強いのか……?
男の脳内では、もう何百回も自問したであろう考えが毎度の如く、ぐるぐると巻いて渦潮を作っていた。

「何故だ……何故、少女が……上層部は妙な精神疾患でも、いや技術部……それとも、おかしいのは私なのか……?」
「ねえ、提督さん? さっきから何をブツブツ……ちょっと気持ちわる―――じゃなくて、怖いんだけど」

執務室で己の机に肘を付き、頭を抱えて呟き続ける男を、一人の少女が気味悪げに見ていた。
彼女は瑞鶴。日本海軍の航空母艦であったそれを元にされた、鎮守府の中枢戦力である一人。
巫女服の様な色調の弓道着、だというのに袴の裾が膝上という、なんとも面妖な服を着込んでいる。
提督は視線を宙から瑞鶴へ移すと、重々しく言葉を向けるのだった。

「瑞鶴、何故お前は少女なんだ? いや、どうして少女である必要があったんだ」
「提督さん、それ前にも鳳翔さんに聞いて困らせてたよね……女の子困らせて楽しむ趣味でもあるの? ていうか次は私が標的?」

か細いながらも柔らかく、女性らしい体躯。スっと通った目鼻立ちに、勝気そうな眼。
男であるのなら余程特異な趣味でもない限り、一目で恋に落ちてしまいそうな美少女。
そんな瑞鶴が、上官である提督をドブの底でも覗くような目で見ていた。
あの妙な言葉遣いを好む重巡洋艦、鈴谷であったなら「きんもーっ☆」なんて言いそうな目で。
提督は死にたくなった。

「断じてそんな趣味はない。私は純粋な疑問としてお前に聞いているんだ」
「そんなこと言ったって知らない物は知らないわよ。最初からこうだったって以外、言い様なんて無いもの」
「というか瑞鶴。さっき私のことを気持ち悪いと言ったか」
「言ってない言ってない。空耳よ、提督さん」

そうか……と、提督は肩を落としつつも会話を打ち切ることにした。
言葉の意味を深読みするべからす、会話の先を深追いするべからず。女所帯で過ごす内に付いた渡世術であった。
そう、この鎮守府には提督と艦娘しか所属していない。男は提督、唯一人なのだ。
他人が聞けば羨ましさで憤死しそうな環境であるが、実体験した身としては言い様のない孤独感に苛まれるというのも、贅沢な悩みなのだろうか。

「別に良いじゃん。提督さんだって、可愛い子ばっかりで嬉しいでしょう?」
「論点はそこではないのだが……例えば少女以外の、もっと戦術的に有用な外見とかだな」
「屈強な男とか? ……やだ! 提督さんって、もしかしてソッチの趣味!?」
「瑞鶴。お前、三日間補給抜きな」

ジョーダンよジョーダンっ! と慌てて弁解する瑞鶴。
幾ら見た目が絶世の美少女だろうが、男色呼ばわりだけは許さないのだ。
女所帯の情報の伝達力はかくも恐ろしい。
ここで曖昧な返事などしたものなら、明日にもホモ提督として鎮守府全体に名を知られるのを覚悟しなければならない所であるのだから。

「というか瑞鶴、今さらだが何で此処にいるんだ。別に呼んだ憶えはないが」
「いや、秘書艦なんだから当たり前じゃない。お仕事しないと怒られるもの」
「……待て、昨日送った指令書はどうした。今日から一時的に赤城を秘書艦に戻すと知らせた筈だが」
「指令書? そんなの私、貰ってないわよ」

訝しげに首を傾げる瑞鶴。揺れる身体と一緒に袴がフワリと舞った、極めてけしからん。
そんな煩悩は頭の片隅に押し遣り、昨日の指令書がどうだったかを思い出そうと頭を捻る。
文自体は直筆で書いた、送り忘れもない、届けるのを頼んだ相手は……そうだ。

「他に居ないからといって、夕立と伊19に任せたのが不味かったか……」
「それ赤城さんも貰ってないでしょ……そういえば昨夜、あの子たち食堂で紙飛行機飛ばして遊んでたわね」
「廊下でバケツ持ち二時間、長門と日向に連行させろ。私が許す、抗議は受け付けるな」
「りょーかい。後で伝えとく」

やれやれと溜息を吐きながら、懐中から手帳を取り出しメモをする瑞鶴。
小生意気なのが玉に瑕だが、こういう仕事に実直な所は素直に好感が持てると感じるのだった。
提督は、どっかりと椅子に座り直して天井を見上げる。予定が大幅に狂って仕事が進まなくなってしまった。
胸のポケットから潰れた煙草のケースを取り出し、火を付ける。後のことを考えると吸わなきゃやってられない。
すると、手馴れた様子で瑞鶴が灰皿を机まで持ってくるのだった。

「む、スマンな」
「程々に。私なら良いけど、赤城さんの前じゃ止めときなさいよ。加賀さんにバレて怒られても知らないんだから」
「……その危険性が在ったな。イカンな、秘書艦を変えるのは次にするか」
「タバコ止めたら? 翔鶴姉もタバコ臭い提督は嫌って言うと思うよ、聞いたことないけど」
「それは非常に興味を惹かれる提案だが……コイツを辞めるのも、難儀でなあ」

プカプカと煙を浮かべながら、提督は苦笑するのだった。
激務の合間に嗜む煙草は人生の友と言って差し支えないのだが、やはり今一つ部下からのウケが良くない。
厳格で知られる加賀が秘書艦だった頃など、鎮守府内全面禁煙という鬼の様な仕打ちをされたこともある。
秘書艦が変わり、加賀の定めた規律が形骸化した今では、提督室でだけコッソリと吸えているのだが。

「ふーん。というか提督さんは、やっぱり翔鶴姉みたいな御淑やかな子が好み?」
「何の話だ。これ以上、私の何の弱みを握るつもりだ。秘書艦を変えると言った恨みか? 加賀に煙草はバラすなよ、頼むから……」
「黙っててあげるわよ、私だって怒った加賀さんは怖いし。ていうか秘書艦なんて頼まれたら喜んで譲ってあげるわよ」
「……今の話、冗談でも金剛に聞こえる場所で言うなよ」
「……ごめんなさい。私が軽率だったわ」

提督の鬼気迫る様相に、瑞鶴が口を滑らせたと苦い顔をした。
二人の脳内に「デース!」という喧しい幻聴が過ぎったが、全力で無視するのであった。
虎視眈々と秘書艦の座を狙う艦娘の話は禁句であった。鎮守府の運行に多大な影響が出るという意味で。
アレの懇願に負けて一度秘書艦に据えた時の出来事は、今となっては口にすることも憚られる惨劇だったのだ。



現在の時間はヒトヒトマルマル。もうすぐ正午の鐘と共に昼食になる頃だ。
小腹の空く時間帯だろうと、提督は備え付けの急須で手ずから茶など淹れるのであった。

「熱いぞ、火傷するなよ」
「あ、ありがとう。こんなの私がやるのに」
「今は仕事が無いんだ。何かしていないと煙草の本数が減るだけだからな」

大人しく椅子に座っていた瑞鶴は、些か恐縮した面持ちで湯呑を受け取っていた。
提督が気安い言葉使いを咎めないこともあって普段の態度からは忘れがちだが、こういう様子を見ると自分が提督なのだと今一度実感するのであった。
煙草を見逃して貰っている礼と口止め料の意味も込めて、隠し持っていた茶菓子も出してやる。

「それで話は戻るけど、提督さんの好みってどんな女の子?」
「戻さんでいい。そんなの聞いてどうする、私を鎮守府から抹殺したいのか」
「大げさねえ。秘書艦やってると、結構色んな子から聞かれるのよ。嬉しい?」
「身の危険を感じる。主に噂の拡大と、加賀の制裁が恐ろしい」
「まあ、私たちの知ってる男の人って提督さんだけだしね。加賀さんの提督愛はちょっと行き過ぎてる気もするけど」
「お前は愛と呼ぶか。あの秩序と風紀の尊守に伴なう武力行使を……」

あの冷たい無表情の裏に、燃え盛る激情を秘めた正規空母の顔を思い浮かべる。
凛とした佇まいに漂う理知的な雰囲気。外見は、見ているだけでくらくらするような美女なのだが……

「あんな美人が尽くしてくれるのに、贅沢ね」
「鉄の女過ぎる。あれが秘書だと倍の仕事が片付くが、私の心労が十倍に跳ね上がる」
「じゃあ赤城さん? 仲良いものね、提督さん。加賀さんが嫉妬するくらいに」
「赤城か。そりゃあ、あいつは艦隊でも最古参だからな」

加賀の姉妹艦である赤城。長い黒髪に、何時も柔和な微笑みを浮かべる女性だ。
提督とは鎮守府着任当初からの付き合いで、まだ戦力の揃わなかった時期の艦隊を支えた立役者だ。
加賀を吹き荒ぶ木枯らしと例えるなら、赤城は穏やかな春風といったところか。
そういう意味では、姉妹艦であって対照的な二人と言えよう。

「そういえば私、赤城さんが戦ってるのって見たことないのよね。あの人も加賀さんと同じくらい強いの?」
「お前が入ったのは、もう赤城が艦隊勤務から遠ざかってた頃か……奴は尋常じゃないぞ。一大局面で赤城か加賀か選べと言われたら、私なら迷うことなく赤城を行かせる」
「そ、そうなの? 能力的には加賀さんの方が上って聞いたけど」
「艦としての性能はな。だが一度の出撃あたりの戦績は赤城が上だ、経験も今の最前線張ってる金剛姉妹より積んでいる」

艦隊の最大戦力の一角である赤城。実はそれを知るのは鎮守府でも古参の一部の者だけだったりする。
過去の大きな作戦成功の影には必ず赤城の活躍があり、一線を引いた現在でも提督が最も信頼する存在だ。
今でも重要な作戦の決行には必ず赤城を立ち会わせている。秘書、参謀としても、とにかく頼れる存在なのだ。
もっとも最近では、食っちゃ寝妖怪などと呼ばれるくらい気の抜けた様子も見受けられるのだが……

「そもそも赤城を後方に下げたのも、奴が強すぎて後任が育たなかったのが理由でな。見掛けによらず、変に武人気質な頑固さがあるから手を抜くのは絶対にしないし。その点、お前や翔鶴は融通が利いて助かっているよ」
「ちょっとご飯が大好き過ぎる人としか思ってなかったけど……今日からはもっと敬うわ、うん」
「そうしておけ。いいか、あいつだけは絶対に怒らせるなよ? あれの本気は加賀の比じゃない。古参の武闘派ほど赤城に丁寧なのはそれが理由だ」
「き、肝に銘じておきます。じゃあ、赤城さんが好きだから仲良しって訳じゃないのね」
「仲が良いのは確かだが、何より頭が上がらんというのが正確だ。部隊運用の関係で泣く泣く主力艦隊から外したこともあるし、赤城の後釜に入った加賀もそれは同じだろうな」
「あの加賀さんに頭の上がらない人が居たなんてねえ……本気で意外かも」

鎮守府の大奥として恐れられる加賀だが、同じ空母である瑞鶴は畏敬の念も殊更強いだろう。
何せ瑞鶴に限らず、赤城以外の空母全員が加賀の生徒みたいな物なのだから。
美人ほど怒ると怖い、という奴である。加賀の鋭利な美貌は、指導の場でこの上なく威容を発揮するのであった。
その様子は軍の広報物でも紹介されている。あれがなければ正直、この鎮守府は女子供が集まっただけのユルい集団として叩かれ放題だっただろう。
どこまでも仕事の出来る女性である。赤城だけでなく、やはり加賀にも頭の上がらない提督であった。

「じゃあ金剛さ」
「ないな」
「即答!? でもでも、すっごい美人じゃない! 女の私でもくらっと来ちゃうくらいだし、提督のこと大好きだし」

金剛型一番艦、金剛。英国で開発された戦艦を元とした彼女は、金剛姉妹と呼ばれる四姉妹の長姉だ。
絹糸の様な長い栗色の髪。肌は白磁の様に白く透き通り、色素の薄い瞳は神秘的さすら感じさせる。
美女、美少女揃いの艦娘の中にあっても、金剛の美しさは際立ったものと言って間違いない。
それでいて総司令官である提督に女性としての好意を全身で表すのだから、今すぐ死んでしまってもおかしく無い様な幸運に巡りあっていると思わなくもないのだが……

「私もアレを初めて見た時は全身が痺れたさ。それこそ美の化身か女神の類としか思えなかった。というか今でも思ってる」
「じゃ、じゃあ何で?」
「うるさい」

たった一言、一刀両断である。
しかし偽りなき本心であった。金剛の美しさは艦娘でも一際だが、喧しさも艦娘で随一だ。
ハリのある美声と英国出身らしい訛りのある口調から繰り出される愛の囁きは、さながら機関銃の如く。
情緒もクソも在った物でない。百年の恋も冷めると言うが、ここまで残念極まる物だとは知りたくもなかった。

「以前、アレが出撃から戻った際。アレが装備を壊して落ち込んでいると榛名から聞いた時があってな、らしくもないと私は様子を見に行ったんだが」
「何か、オチが読めたような……」
「海など見て、気を落としている様に見えたから慰めようと肩を叩いたんだ。するとアレは『ヘイww提督ゥww触ってもイイけどサーwww場所とw時間をw弁えなヨーwwwwww』と抜かしおったんだ」
「うわっちゃー……」

瑞鶴が堪らないとばかりに手で目を覆った。
予想はしていたが、それ以上の事実だったようだ。アレは何時だって予想を越える女である。
戦力として最上。それでいて上官の神経を最高に逆撫でしてくれる在り方は、一つの芸術として賛辞を送ってもいい。
何時でも人に期待に応えるが、期待してないことまでやってのける。それが金剛という奴なのだ。

「アレを秘書艦にした時の悪夢は生涯忘れん……資材、加賀の血圧、私の胃……犠牲となった多くのものたちの為に、私は今後二度とアレを秘書艦にはせん。怒りの余りに我を忘れ、アレを背負投げした私に罪はあるまい」
「それ私もみてたよ。凄い綺麗に着地してたよね、直後に加賀さんのボディーブローで沈んで、提督さんと二人がかりで袋叩きにされてたけど」

朝は起床ラッパより早く提督の私室に突撃。「グッモーニン提督ぅー! 起きるデース!! 寝起きもきゃっこいいデース!!」
昼は勝手に改造した提督室でティータイム、執務机を撤去して馬鹿でかいテーブルが鎮座していたときは目眩がした。「ウーン、紅茶が美味しいネー!」
夜は音もなく提督室から消え、アレの分の仕事までこなして私室戻ると、何故かベッドで金剛が爆睡。「すやすや……うん、提督ぅ、そんなとこ触っちゃ駄目デース……」
そして資材の消費を無視した超大型開発計画の実地。「愛も資材も惜しむモノじゃないデース! 私と提督の、輝かしい未来のためにネ!」
他にもスコーン事件や英国式カレーの惨劇、比叡暴動事件に加賀激震とアレ絡みの珍事には事欠かない。
アレの涙ながらの懇願と色仕掛けに負けて秘書艦にしたのは一生物の不覚であった。
その負積を回収するのに加賀、赤城、霧島、高雄と事務能力の優秀な人員を総動員しなければならなかった。
それでも手が足りずに愛宕や龍田のような借りを作るのが怖い連中の助けまで必要とするハメに。

「でも金剛さんでも駄目かあ。提督さんって本当に女の子に興味あるの? まさか冗談じゃなくてホモだったりしないわよね」
「そんな訳あるか。私は部下に恋愛感情は持たん、今後も絶対にな」
「私はお似合いだと思うんだけどな、加賀さん」
「無責任な加賀押しは止めろ……奴の耳に入ったら、どんな恐ろしい結果に繋がるか予想も付かん」

瑞鶴に限らず、艦娘たちは女子らしく恋バナなんて物が大好物だが、加賀にそれが当て嵌るとは思えなかった。
提督が部下である艦娘に気があるなんて信じられたら洒落にならない。
しかも当事者が自分なんてことになった日には鎮守府に嵐が起こるだろうと提督は思うのだった。

そうやって瑞鶴との無駄話をしていると時間が経つのも早い物で、もう正午の鐘が鳴るのであった。

「昼だな。瑞鶴も食堂か?」
「うん。ていうか提督さん、そろそろアレが来るわよ」
「分かっている。一昨日のヤツで行くぞ、お前が扉を開けろ」
「りょーかい」

灰皿と吸殻を隠し、机の引き出しから一本の丈夫な縄を取り出す。
それで扉に細工をしてから数秒も待つことなく、何やら慌ただしい足音が。
ドタドタ、バタバタと。アレの気性をそのままにした様な音が間近まで迫る。
瞬間を見計らって瑞鶴が扉を開け放つと、アレの姿が提督室の前に顕になるのだった。

「ヘイ提督ぅ! 私と二人っきりで、愛のランチターイムを゛っ―――!?」

扉に括りつけられた縄を提督が引くことでピンと張り、全速力で突っ込んで来たアレは足を引っ掛け盛大にコケた。
ドンガラガッシャンと床を転がり、端にある暖炉にドカンと音を立て頭から飛び込んでいった。
アレは戦艦だけあって丈夫なので、これでも傷一つないのだろう。そんなところも、また腹が立つ。
他の艦娘が引っ掛かっては危ないので罠は回収して机に放りなげておく。さあ、飯に行こう。

「昨日は狸蕎麦だったから、今日は山菜蕎麦にでもするか」
「提督さんって蕎麦ばっかりだよね。たまには日替わりにしなよ、お米食べなさいお米」
「ノォーウ!! 酷すぎマース!? あっ、でも痛くされるのもチョット気持ちよくなってきちゃったカモ!? だから無視しないで提督ぅー! ヘルプミー!! 引っ掛かって暖炉からでれないデース!?」

しかしアレが知恵を付ける前に鎮圧方の手数を増やさねば……次は長門にラリアットでもさせるか。
そんなことを考えながら、最高に喧しくなった提督室の扉をそっと閉め、瑞鶴と二人で食堂を目指すのであった。











当鎮守府の登場人物


提督
鎮守府で一番偉い人。偉いのは階級だけで実権は半分くらい加賀さんに握られているとかいないとか。
好きなものは煙草、苦手なものは加賀さん。アレは好きとか嫌いとかって次元にはない。
見た目麗しい艦娘に囲まれながら浮いた話が一つもないので、ホモかEDではないかと噂されている。
実際は童貞こじらせたヘタレなだけである。ただのムッツリスケベ。


瑞鶴ちゃん
現秘書艦。比較的規律に甘く、かつ仕事が真面目なことで提督からは大変重宝されている。
好きなものは翔鶴姉、苦手なものは加賀さん。別に提督のことは好きでも嫌いでもない。
最近、姉が提督のことをちらちら見てるので、変なのに引っ掛からないで欲しいなあと思っている。
最終手段として、加賀さんに「今、提督の部屋で私……」と煙草の匂いを付けたままやるのを残している。
故に翔鶴姉への守りは万全なのであった。


加賀さん
正妻空母。提督の鬼嫁として鎮守府で最も恐れられるお方。
好きなものは提督。苦手なものはアレ。唯一怖いものはマジギレした赤城さん。
鎮守府内の法の番人であり、彼女が居なくなれば鎮守府はものの数日で核とモヒカンの蔓延る世紀末世界に変貌するだろうと言われている。
ソースは艦隊の頭脳霧島。推察の視点がズレている辺り、やはり彼女も金剛姉妹の一人であった。
提督が好きで仕方ないが素直になれず、気が付けば提督に恐怖を刻むばかりが日課になってしまっている。


赤城さん
艦隊最古参。最強にして最恐の空母。
好きなものはご飯。苦手なもの?「饅頭こわいです」提督とは凄く仲良し。
かつては「赤鬼」「鬼赤城」「アカギ・ジ・オーガ」と呼ばれ鎮守府で最も畏れられ尊敬された怪物。
「フフ、怖いか? 赤城さんが」という天龍の言葉は、今でも鎮守府の名言録に残されている。


金剛ちゃん
アレ。アレ呼ばわりが定着して提督から名前で呼ばれなくなった可哀想な子。
好きなものは提督、苦手なものは加賀さん。あと最近、三女がただの天然でないと気付いて密かに戦慄している。
加賀さんという強力なライバルが居るため、恥もへったくれもない強烈なアプローチを日夜提督に繰り返している。
美の女神と見紛う容姿、料理も堪能。完璧なスペックに見えて、やることなすことが提督と加賀さんの胃に深刻なダメージを与える天性のマッチポンプ。
最近では提督や加賀さんの愛の鞭が日に日に激しさを増す中、何かに目覚めつつあるのだった。



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