情熱大陸

俳優 Vol.1298

岡部たかし

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04.28(日)

よる11:00

「おもろいか、おもろないか」
追い求めるのは人間の性(さが)

初めて岡部たかしと挨拶を交わしたのは去年9月、自身が立ち上げた演劇ユニット「切実」の稽古場だった。岡部は「今からやるので、感想聞かせてもらえますか? 初めて人に見せます!」と笑う。
のらりくらりとした佇まいで、おだやかな関西弁を話す。芝居中の語気や表情の機微は、日常に溶け込むように自然でいて、なぜか面白い。芝居中は一瞬たりとも気を抜かず、役の空気を纏っているが、稽古や本番が終わると一転、お茶目な表情をクルクルと変えながら周囲を和ませる。
今でこそ売れっ子の岡部だが、ここまでの道のりは順風満帆ではなかった。高校卒業後、建設会社で現場監督を務めたが、職場に馴染めず1年で退社。フリーター生活が続くなか、大阪で観た「劇団東京乾電池」の公演に感銘を受けて役者を志し、24歳で上京する。役者とアルバイトを掛け持ちする日々で、うまくいかない状況を周りのせいにすることもあった。
ただただ楽しくて続けた役者の道に転機が訪れる。
2022年ドラマ「エルピス 希望、あるいは災い」の村井役で一躍全国に名が広まり、今やNHKの連続テレビ小説にも続けて出演するほど、引っ張りだこだ。
なぜここまで...と、本人に素朴な疑問をぶつけてみた。
「以前、仕事をしたことのある監督や脚本家から呼ばれることは、前の芝居は間違ってなかったんやな、ちゃんと面白がってくれてたんだなという確認となり、それが1番嬉しかった」と話す。その実直さが、いまの成功に繫がっているのだろう。
ドラマ、映画、舞台、日々様々な役と向き合う。人間の面白さは、喜びや楽しみだけでなく、悲しみや怒りの中にもあるという。
「やっぱり面白くしたい。人間は誰しも複雑だけど、どこか滑稽やから。どの役を演じても、おもろいと思われたい」
山あり谷ありで来た51歳が夢中で演じる"おもろい"とは――

Takashi Okabe

1972年、和歌山県出身。24歳で俳優を志して上京し、劇団東京乾電池に所属。
退団後は、山内ケンジ氏がプロデュースする「城山羊の会」を中心に、数多くのドラマ、映画、舞台、CMに出演を続けている。
2022年、ドラマ「エルピス ―希望、あるいは災いー」で演じたテレビプロデューサー・村井役で注目を集め、NHKの連続テレビ小説では2023年度後期「ブギウギ」、2024年度前期「虎に翼」と、2期連続で出演を果たす。
自身が立ち上げた演劇ユニット「切実」では演出も担当している。

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