医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2024年4月10日
選択のポイント【No.500、501】

今回は、薬剤の投与に関する医師の注意義務違反(過失)が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.500の事案では、病院側は、処方を行わなかったことにつき、十二指腸潰瘍に対する間歇療法(再発の都度、初期療法を繰り返す)に合致するものであるから、過失とならないと主張しました。 しかし、裁判所は、本件事...

2024年4月10日
No.501「ワーファリンを継続使用していた慢性心房細動の患者に対し、医師がイグザレルトへの切り替えに伴うワーファリンの休薬を指示した後、患者が心原性脳塞栓症を発症して死亡。医師に薬剤投与に関する注意義務違反が認められた事案」

東京地方裁判所令和5年9月29日 判例タイムズ1514号 185頁 (争点) 医師に薬剤投与に関する注意義務違反があったか否か 医師の注意義務違反と原告らの損害との因果関係 *以下、原告を◇1ないし◇3、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和11年10月生まれの男性)は、従前、高血圧症、心房細動の...

2024年4月10日
No.500「十二指腸潰瘍が悪化し穿孔が生じて患者が死亡。抗潰瘍薬を処方漏れした医師の過失が認められた地裁判決」

静岡地方裁判所浜松支部平成22年2月22日判決 ウェストロージャパン (争点) 医師に診療上の過失があるか否か 医師の過失と結果との間の因果関係 *以下、原告を◇1ないし◇3、被告を△と表記する。 (事案) A(平成16年10月当時77歳の女性)は、昭和60年、乳がんの手術を受けた。また、そのころか...

2024年3月 8日
選択のポイント【No.498、499】

今回は、麻酔のミスについて、医師の過失が認められた事案を2件ご紹介します。 No.498の事案では、過失について病院側は争わず、損害額等が争点となりました。 そして、重度の後遺障害を負ったロシア国籍女性の将来介護費の算定にあたり、原告側は、「寿命は、生活の本拠における食料、気候、医療水準等の生活環境...

2024年3月 8日
No.499「整形外科において、患者が肩関節脱臼の整復治療にあたり局所麻酔を投与された後、低酸素脳症となり、後遺障害が残存。医師に麻酔薬の投与における過失を認めた地裁判決」

京都地方裁判所令和3年11月9日判決 ウェストロージャパン、裁判所ウェブサイト (争点) 患者が局所麻酔中毒によって呼吸停止に至ったか 医師に手技上の過失ないし義務違反があったか否か *以下、原告を◇、被告を△1および△2と表記する。 (事案) 平成28年4月15日、A(66歳の女性・家事および夫の...

2024年3月 8日
No.498「無痛分娩のための腰椎麻酔の後、母親が心肺停止状態になり、心肺停止後脳症等の障害を負い、重症新生児仮死の状態で出生した子は約6年後に死亡。麻酔薬注入時の医師の注意義務違反を認め、合計で約3億円の損害賠償を命じた地裁判決」

京都地方裁判所令和3年3月26日判決 判例時報2512号60頁 (争点) 債務不履行に基づく損害賠償請求権の帰属主体 損害額 *以下、原告を◇1ないし◇3、被告を△と表記する。 (事案) 平成24年11月5日、◇1(昭和51年生まれのロシア国籍の女性・妊娠39週0日)は、破水したことにより、△診療所...

2024年2月 9日
選択のポイント【No.496、497】

今回は、医師の説明義務違反が認められた判決を2件ご紹介いたします。 No.496の事案では、病院側は、本件手術が患者の病態に対し、唯一最後の治療方法で、速やかに行う必要性と緊急性があった旨強調しましたが、裁判所は、唯一最後の治療方法であるからといって説明義務が軽減ないし免除される理由とはなり得ないし...

2024年2月 9日
No.497「動脈瘤の疑いから術前検査として患者の同意を得た心臓カテーテル検査につき、明らかな動脈瘤がないことが判明して術前検査としては不必要になったが、医師がその説明をせず、狭心症の確定診断目的で同検査を行ったことにつき、慰謝料が認められた地裁判決」

横浜地方裁判所平成29年2月23日判決 医療判例解説70(2017年10月)号47頁 (争点) 心臓カテーテル検査に関する説明義務違反の有無 *以下、原告を◇、被告を△1ないし△4と表記する。 (事案) 平成27年12月18日(以下、特段の断りのない限り同年のこととする)、◇(本件入院時69歳の女性...

2024年2月 9日
No.496「糖尿病網膜剥離手術により患者が失明。医師の説明義務違反を認めたが、説明義務違反と失明との相当因果関係は否定し、慰謝料と弁護士費用の損害賠償を病院側に命じた地裁判決」

名古屋地方裁判所昭和59年4月25日判決 判例タイムズ540号276頁 (争点) 説明義務違反の有無 損害 *以下、原告を◇、被告を△1及び△2と表記する。 (事案) ◇(会社経営者男性。失明時54歳)は、幼児期から左眼がほとんど視力のない弱視(30ないし55センチメートル手動弁)であった。昭和38...

2024年1月10日
選択のポイント【No.494、495】

今回は、術後管理上の過失が認められた判決を2件ご紹介します。 No.494の事案では、病院側は、患者のトイレでの転倒は、患者のつまずきや、滑ったためだと主張しました。しかし、裁判所は、一般に、下血を含む出血があれば、貧血が起こり、貧血の症状として脳細胞への酸素供給が不足することや、これに体動や排便時...

ページの先頭へ