数字に見る「フジテレビ騒動」の本質。その2
(2011年8月31日)

カテゴリ:マーケティング
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後日、と言いつつとりあえず第2回目を書いておこう。内容は制作費に関することの続きだ。
恐ろしいほどの減少幅の制作費であるが、実は今年度はその減少に歯止めがかかるはずだった。5月に行われた民放各局の決算説明会では、制作費をこれ以上圧縮しない動きが見られている。こちらの記事を見ればわかるように、テレビ朝日とテレビ東京は増額。他の3局は横ばいから削減ということであり、これまでとは明らかに潮目が変化したと思われた。
ところが2011年度の第一四半期の決算を見ると、各局とも減少傾向が続いていることがわかる。前回に続いて、こちらのページを参考にして、グラフにまとめてみた。
まず、全局で制作費の減少が続いていることがわかる。東日本大震災の影響による収入の減少が影響しているのだろうと思われる。
テレビ東京の二桁減が目につくが、絶対額ではフジテレビが-17億円で最大だ。それでも各局の中では最高の制作費である。
しかし、もともと多額の制作費を有している局は、またリストラもダイナミックにならざるを得ないのである。これはテレビ局に限らず、一般企業でもそうだし、家計で考えても同じことだ。
仮に月の出費が20万で生活している家計があったとしよう。仮に10%の支出削減をする場合はどうするだろうか。まずは、各項目を10%ずつ減らすことを考えるだろう。そもそも、万単位の出費が少ないからである。


これが50万だとどうだろうか。先の家計よりは高い単価の出費があるはずだから、これをバッサリと切ることになるだろう。たとえば万単位の外食のような贅沢を控えるわけだ。リーマンショックのあとに、銀座や六本木の飲食店がダメージを受けたのはこういう構造があったからだと思う。
企業でも同じで、景気後退時に大きな企業ほど「バッサリ」とリストラをする。工場を閉鎖したり、事業を売却したり、F1からの撤退などもそうだ。しかし、小規模の企業になるほど、コツコツと節約するしかない。
数字を見る限り、フジテレビのように元の金額が大きいとなると「バッサリ」いかないことには、削減ができないのである。コンテンツの調達方法も抜本的に見直すこととなれば、韓国からのコンテンツ輸入のような選択肢は経営的には必然かもしれない。
もっとも、各局ともに下期の数字は回復を見込んでいるようなので、この制作費削減には歯止めがかかる可能性がある。しかし、そもそも不況の時に制作費削減という選択肢は、本当にテレビ局にとって有効なのだろうか?かなり危険な側面もあるし、そもそもメーカーの原価低減とは、意味が異なっているのだ。そのあたりについて、次回は営業利益などを眺めながら考えてみたい。
しかし、気になるのはテレビ東京だ。もともと89億の制作費が約13%の減少である。分母が小さいので「バッサリ」も難しいのではないか。特に義理はないのだが、妙に応援したくなってしまう。