入学試験

目次

1.大阪大学と京都大学の入試問題のミス

 

・入学試験問題ミスによる追加合格
・問題作成の問題点を3点
・対策を2点

2.また京大で更に入試問題ミス

 

 

 

 

1.大阪大学と京都大学の入試問題のミス

 

入学試験問題ミスによる追加合格

 

大阪大学と京都大学で過去の入試問題の出題ミスがありました。
科目は両校とも「物理」です。
このミスによって、大阪大学では30人、京都大学では17人の追加合格を出したそうです。

 

 

次の新聞記事を基に、入試問題作成についての問題点を考えてみます。

毎日新聞2018年2月3日東京夕刊(改行は私がしました)

” 京都大、大阪大という日本を代表する有力大学で、相次いで入試の出題ミスが発覚した。
信頼が求められる入試を巡って、こうした事態はなぜ起きたのか。
問題作成に携わる教員たちが指摘するのは、大学の経営環境の厳しさを背景にした業務負担の増加だ。
「国からの予算面での支援が必要」との声も上がる。【大久保昂、池田知広、鳥井真平】

近畿地方の国立大に勤める理系のベテラン教授は、入試問題の作成業務について、こう語る。
これまでに10回以上も化学の問題作成を担当してきたが、負担感は消えない。
研究や講義を抱える中で、最優先で取り組まなければならないからだ。
問題の推敲(すいこう)などのために10回ほど教員同士で会合を重ねる。手当が出たためしはない。

問題を作る際は、普段は読むことのない高校の教科書に目を通す。時には自腹を切って購入することもある。
受験生が学んでいない内容をうっかり出題してはいけないからだ。
一方、最先端の学説や研究に精通している高校教員や予備校講師もおり、そうした観点からも疑問を呈されないよう細心の注意を払う。
「突っ込み」が入らないように微調整を繰り返した結果、完成時には、当初考えていた問題と丸っきり姿を変えていることも珍しくない。
「本当に測りたい能力を測れているのか、分からなくなることがある。
予備校の先生の方が受験問題についてはノウハウを持っているので、予備校に最終チェックしてもらいたいくらいだ」と話した。

実際、私立大を中心に入試問題の作成を予備校などに外部委託する動きが広がる。
文部科学省によると、2007年度は71校だったが、13年度は98校に増えた。
自前で問題を作る大学の中にも、試験後の出題内容のチェックは予備校に依頼しているケースがある。

国立大の体力の低下を指摘する声もある。
入試問題の作成に携わった経験のある別の国立大教授は、京大や阪大でミスが続いたことについて、
「疲弊しているということではないか。どの大学も人の手当てが難しく、みんな忙しくしている」と声を落とした。

入試を巡る問題に詳しい東北大の倉元直樹教授は「正確かつ高度な問題を作るには、相当な労力が必要。少数の教員に押しつけず、
大学全体でシステム的に取り組む必要がある」と指摘する。
その上で、「各大学とも予算が削られる中で専門性の高い教員を抱えることが難しくなってきている。国の支援が必要だ」と訴える。

文科省は今回のミスを受け、チェック体制を強化したり、解答例の公表を各大学により強く促したりするルール作りに着手する。
ただ「入試は通常業務の範囲内なので、チェック体制の強化のために予算をつけるのは難しいのではないか」としている。”

引用終わり

記事を読んで、頭に浮かんだ問題点を3点記してみます。

 

問題作成の問題点を3点

 

【1】素人が入試問題を作っているのではないか?

そもそも大学教員は、研究と教育が専門領域であり、入試問題作成は素人である。
(小中高教員とは異なり、大学教員になるには「教員免許」は不要であり、
なかには研究のみを本務と考え学生教育が苦手な教員もいるが、ここでは触れない)

細分化された自分の専門領域については詳しいだろうが、その領域を高校生がどのように学んでいるかについては知識が少ない。
入試問題作成担当と決まった時点で高校の教科書など参考資料が配布されるので、高校教育に関する知識はその時点から学ぶのが通常だ。

高校教育に疎い素人が入試問題を作成するようなものである。
ある意味では、当人にとっては気の毒なことである。

【2】入試問題作りの過程で、教員間の力関係が影響しているのではないか?

教員の世界においても企業と同様、構成員の実績や役職において力学が働く。
入試問題案作成会議において、力を持つ教員が自分が作った問題案と回答案を示すとする。
この時に、その教員と同じ領域を専門とする下位の教員が疑義を持った場合、会議で何を発言できるだろうか?
正論を唱えることができるだろうか?
上位教員の覚えを悪くし自分のキャリアが不利になるとするならば、正論を唱えることが出来るだろうか?

また、研究領域を異にする教員が問題案に対して疑義を表明することができるだろうか?
実は専門外の教員の指摘こそが入試問題の間違いを見つけやすいのではないかと考える。

【3】入試問題の中身で、当該大学ないし教員の力を披露しようとしているのではないか?

入試問題の内容は、高校教員・予備校教員の注目の的である。
2021年からは今の「大学センター入試」に替わり「大学入学共通テスト」が始まる。
この新しいテストの作問に求めらるのは、受験生が決まった解き方が出来るかどうかを見るだけでなく、
回答する過程における思考力の多様性を判断できるかどうかである。
このことを意識して大学教員が問題を作ることは大切である。

その意味で、入試問題には大学の格と呼ばれているものや教員の自尊心が如実に表れることになる。
このことを意識しすぎて、必要以上に凝った問題を作る流れが出来つつあるのではないか?

当然のことながら、凝った問題を教員が努力して作れば作るほど出題ミスが増えることになる。

対策を2点

 

対策としては、次の2つの方法があると考えます。

(1)
入試問題を予備校などの専門家に外注する。
「大学が受験生に問いたい意図」「大学が測りたい受験生の能力」を大学側が専門家に明確に伝えるならば、専門家は希望に沿った作問を考える力がある。

(2)
学内に入試作問専門の部署を作り、それに主に従事する教員を配置する。
仮に教員の週当たり授業担当義務数が5コマであるならば、入試作問教員は半数のコマ数に減ずる。

 

予算措置が必要になるが、社会に対する影響を考えるに必要な経費だと考えます。

 

 

2.また京大で更に入試問題ミス

 

また京都大学で入試問題ミスがありました。

化学の問題自体を2問削除するよう受験生に入試修了30分前に受験生に伝えたということです。

しかし、この削除された問題に先に手を付けていた受験生は時間をロスしたことになり気の毒ですね。

さらに、化学の問題文で誤りが11カ所、物理の問題文で補足説明が必要な部分が4カ所あり、冊子にまとめるなどして受験生に伝えたとのことです。

(参考:2018年2月26日23時25分朝日新聞)

「1.大阪大学と京都大学の入試問題のミス」にて指摘したとおり、入試問題を外注するか、入試問題作成専門の教員には担当授業数を減ずるなどの対策を速やかに講ずるべきだと考えます。