その翌日からは、主に大坂に居を構える、…それも徳川方の諸将へのご機嫌伺いに馳せ参じる毎日となりました。

京には大殿の源次郎殿もいらっしゃいますし、その源次郎殿の奥方の利世殿は、豊臣恩顧の武将として名高い大谷吉継様にございますゆえ、豊臣方の方は安心でしょう。

殿は、徳川家の養女である私を妻としているとはいえ、一度は戦までした徳川方の方々の中で、気苦労の絶えない毎日となってしまっています。

そんな殿を、少しでも癒すことが出来たらと、あれこれ考えるてみてはおりますが、これと言った案が思いつきません。

考えすぎると煮詰まって、余計に良い案が浮かばず途方にくれている時、ふじが躊躇いがちに、

「お久しぶりに、お二人で遠乗りなど行って来ては如何にございましょうか。
若様達は、私共にお任せくださいませ。」

と言いました。

普段はこのようなことはあまり言わないふじが、二人で遠乗りになど、なんと有難いことでしょう。

その日の夜、寝屋にて早速、殿を遠乗りに誘うことと致しました。