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2007.3.9 

特定失踪者問題調査会 専務理事 真鍋貞樹

 3月9日、共同通信に下記のような記事が掲載された。

拉致問題でテレビ広告 15日から全国の民放で 2007年03月09日 12:49 【共同通信】

 政府の拉致問題対策本部は9日、北朝鮮による日本人拉致問題の解決を目指す姿勢をアピールするため、テレビのスポット広告を、15日から半月間実施すると発表した。政府が拉致問題でスポット広告を行うのは初めて。費用は2006年度補正予算で認められた約1億500万円。
 全国114の民放地上波局で放送される。15秒版と30秒版の2種類で、拉致被害者の画像などをバックに「家族を、人生を、奪い去った、北朝鮮による拉致。すべての拉致被害者を、日本は必ず取り戻す」といったナレーションが流れる。

 このニュースをみて、呆れるやら情けないやらの気持ちで一杯になった。椅子から崩れ落ちそうな気分である。一体政府の拉致問題対策本部は何を考えているのだろうか。日本国内に政府の姿勢をアピールして何になるのだろうか。これで拉致被害者の1人でも帰すことができるとでも思っているのだろうか。特定失踪者の情報の一つでも得られることができると言うのだろうか。
 私たちは日常的に政府関係者が現場で身を削る思いで苦労をしながら情報を集め、拉致問題の解明と解決に尽力しようとする真摯な姿勢に接している。現場に近ければ近い方ほど、そうした苦労が報われることがない。マスコミで取り上げられることも、国民に知られることもない。政府の政策に反映することも少なく、徒労に終わることも多い。「過労死」という言葉があるが、私は彼らが「徒労死」してしまうのではない
かと真面目に心配している。
 彼らは多くの制約の中で苦労に苦労を重ねているのである。その制約の最たるものが「予算」の壁である。どんなに捜査や調査をしようとしても、「予算」の壁の前でやりたいこともできない状況に置かれている。1億円もの予算を彼らに分配すれば、より多くの拉致情報が得られることは間違いない。それこそ生きたお金の使い方ではないだろうか。
 拉致問題の真相解明に役立つのであれば、文句も言うまい。しかし、日本国内向けに、「政府は一生懸命やっている」という姿勢をアピールするだけのパフォーマンスに1億円もの税金を投入することは全く無駄である。即刻中止し、その資金を現場で苦労している職員に分配して、拉致情報の収集に努めるべきである。それが、拉致問題対策本部の使命ではないか。




2006.10.17

「『核兵器を持つか持つべきでないか』の議論をすべきではない」か。

 中川昭一自民党政調会長の「北朝鮮が核兵器を持った以上、日本も核兵器を持つか、持つべきでないかの議論をすべきだ」との発言が物議を醸している。自民党の中川秀直幹事長や山崎拓元幹事長などが「そのような議論を進めること自体、誤ったメッセージを諸外国に伝えることになる」との批判をしている。
 ここで、問いたいのは中川秀直氏の「核兵器を持つか持たないかの議論自体をすべきではない」というのは、果たして自由で民主的な国家の指導者として正しい認識と判断であるかどうかという点である。中川秀直氏のこの認識と判断は、日本が自由で民主的な国家として成熟していないことを内外に示すメッセージになる。なぜなら、それは「日本は議論をしなくても国家意思が決定される」ということを内外に示すことになるからである。核兵器を持つか持たざるかという問題を、広く議論をし、その結果「日本は持たない」という結論に達すれば良いではないか。議論をすれば日本が核開発に邁進するとでも言うのであろうか。
 日本には良い前例がある。憲法9条の改正問題を提起し始めた頃に「議論をすること自体が改憲に道を開く」と反対したのは社会党・共産党・公明党そして一部の自民党だった。それからもうすでに20年以上経過しているが、憲法改正の議論は決着をみていない。決着はみていないものの、憲法改正議論をタブーとするのではなく、広く議論をすることで、現行憲法の問題点なども明らかになってきたのではないだろうか。
 仮に幅広く核兵器の問題を議論することがなければ、その議論は永田町の権力者の間だけの議論になってしまう。国民には一切知らされることなく、それこそ「核兵器を持つべきである」という議論が水面下で広がっていくことだろう。中川秀直氏は、そうした水面下での議論の広がりを期待しての批判だったのだろうか。
 歴史的にはいずれの核兵器保有国でも、核兵器開発というのは、国民的議論を経てというというよりも、一部の科学者や政治家たちの間で秘密裏に進められてきたおぞましい一大プロジェクトである。国民には一切知らされない国策とか国防上の機密とされてきたものである。
 なぜ今更ながらに、核の問題を議論することが誤ったメッセージとなるのだろうか。核兵器や核開発の問題を、これまでのような秘密裏の一部のエリートだけのものにしないで、幅広く国民的な議論をするような経過を辿っていくことが不可欠なのである。
 私は、幅広い議論の結果「日本は核兵器を持つ必要性はない」という結論に達することを期待している。
 今回の北朝鮮の核実験を契機に確かに「日本も核兵器を持つべきだ」という議論がある。国防上有効な対抗手段という趣旨である。しかしながら、この北朝鮮への対抗としての核武装論では、現在の日本を含めた国際社会の北朝鮮に対する批判や制裁の正当性を消し去ってしまう。その理由は簡単なことである。核開発をした北朝鮮を批判・非難しておいて、自分もその批判の焦点である核兵器を持てば、論理上、自己矛盾に陥るのである。そして、北朝鮮と同じように、核兵器という悪魔の武器を使って恫喝し威嚇する国に日本を変えていくことになる。悪魔を退治するためには悪魔になれ、という論理と一緒である。そして、評論家たちの指摘のように、世界中に核拡散を助長してしまうことである。
 では、どうすれば北朝鮮の核兵器の脅威から現実的に日本を守れるのかという議論になる。「平和的な交渉で解決を目指せ」というステレオ・タイプの議論はさておき、この点については現実主義的な見方をすることが大切であろう。その現実とは、日本は事実上、米国の核の傘のもとにある、という一点である。日本は米国の核を自国の安全保障のために現実的に利用している。これが日米同盟の核心の部分である。
米国の核を現実的に利用していてそれ以上の核は必要なのだろうか。必要だとする立場の見解は、米国の占領統治からの独立であろう。自前の核を持たない限り、日本は米国から「独立」しえないというものである。しかし、核の傘をさしてくれている米国は、日本がその傘から出て行き、自分で核の傘を持つことは容認し得ないことであろう。しかも、この立場は、北朝鮮の「核兵器を持たなければ自国の独立は成し遂げられない」というものと全く同じである。悪魔を退治するためには悪魔になれ、という論理が再びここでも表れるのである。
結論として、米国の核を現実的に利用しながら「日本はいつでも核兵器を作り、持つだけの技術は揃っている。ただ作ったり、持ったりしないだけだ」と宣言するだけで、北朝鮮の核開発に対抗する効果は十分にある。
 金正日のような独裁的な権力者にとって、核兵器は最も魅力的な武器である。それは、世界を自分が制御できるという「核の幻想」を持つからである。独裁者の危険なオモチャになっている。それに対抗して自由で民主的な国が行うべきことは、一部の権力者だけに核兵器開発の議論を進めさせるのではなく、幅広く核兵器の議論を呼び起こすことが大切である。核兵器という悪魔の兵器を独裁者に渡してはならない。ゆえに、中川昭一氏が述べるように、幅広く議論を進めていくべきであって、まちがえても、中川秀直氏のように議論を止めさせることではないのである。議論を止めさせることは、悪魔的な権力者による「核の幻想」を一層強めるだけである。幅広い議論の結果を予測することはできないにしても、悪魔的な権力者による「核の幻想」は、幅広い議論があからさまに展開されることによって防ぐことができるだろう。
                                                      (真鍋貞樹)



2006.4.17

<論評>
多発した看護婦の失踪

 曽我ひとみさんの失踪前に、北朝鮮の工作員と協力者が、曽我ひとみさんの通っていた看護学校生たちをビデオにおさめ、そのビデオから曽我ひとみさんが拉致の対象者とした選定されたという情報がジェンキンス氏からもたらされたことがあった。ジェンキンス氏によるこの情報の真偽のほどは確かではないが、拉致の対象者の選定にこうした作業が行われていたことは容易に察しがつく。
 こうした拉致の対象者を選定する作業が恒常的に看護婦を相手に実施されていたのではないだろうか。事実、日本国中で看護婦の失踪が多発しているのである。特定失踪者の中でも、看護婦の失踪は他の職業の方との失踪に比べ「多すぎる」のである。下記にその方々を列挙しよう。
1959年 Tさん     失踪場所 名古屋方面?
1959年 安達恵美子さん 失踪場所 京都
1960年 木村かほるさん 失踪場所 秋田
1969年 Hさん     失踪場所 北海道
1971年 Yさん     失踪場所 愛媛
1976年 国広富子さん  失踪場所 山口
1978年 曽我ひとみさん 失踪場所 新潟
1979年 Oさん     失踪場所 山梨
1984年 山本美保さん  失踪場所 山梨 (元看護学校生)
1989年 加藤悦子さん  失踪場所 愛知
1991年 保泉泰子さん  失踪場所 愛知
もちろん、この看護婦の全てが拉致の被害者であるとは考えられない。しかし、この中で、拉致被害者は曽我ひとみさんであり、1000番台リストの失踪者が、木村かほるさん、国広富子さん、そして山本美保さんである。看護婦は職業別にみても、拉致被害者が多い職業である。
それはなぜか。残念ながら、まだ推測の範疇でしかないが、次のようなことが考えられる。
第一に、曽我ひとみさんのように、明確に結婚相手としての拉致である。拉致された男性の結婚相手として、看護婦という職業は「魅力的」である。日本の男性にとっても、看護婦との結婚は羨望の的である。
第二に、看護婦は医療関係の基礎的な知識を持っていることである。拉致された人が、監禁状態に置かれている状態で、もし日本人の看護婦がそのケアにあたっているとすれば、拉致された人たちはまず「安心」するだろう。もちろん、看護婦は麻薬を含めて医薬品の基礎知識を持っているのだから、さまざまな工作活動に利用するには有効な職業である。
この推測を裏付けるほどの情報ではないが、次のような事実がある。
第一に、西新井病院の姉妹病院である金万有病院がピョンヤンに実在する。その病院には、在日の医師や看護婦が多く派遣されている。この金万有病院の建設と運営のために、多額の費用と大量の物資が日本から運ばれていた。
第二に、名古屋を中心として、北朝鮮との医療交流が盛んに行われていた。
第三に、北朝鮮への医療品は、中国の広州経由で大量に運ばれていた。
第四に、主体思想研究会の発祥の地は、群馬大学医学部である。
第五に、朝鮮総連傘下の医協などを通じて、大量の医薬専門書が日本から北朝鮮に送られていた。
北朝鮮と日本との医療交流などは、「人道的」との名目で行われた。病院はある意味「聖域」である。藤田進さんが西新井病院の施設に監禁されていたという情報があるように、病院は第三者や警察関係者ですら容易には立ち入れない場所である。つまり、こうした「人道」を隠れ蓑に、いくらでも工作活動が可能だということである。
看護婦の失踪と拉致を直接結びつける確たる証拠はない。しかし、こうした観点からの拉致問題の真相究明は不可欠な作業である。(真鍋)



2006.4.14

<論評> 金英男さんの拉致事実によって考えるべき点は何か

 1978年に韓国で拉致された金英男さんと1977年に新潟で拉致された横田めぐみさんが結婚していたという事実は、少なくとも10年前に「救う会」が発足した頃には誰も予想できなかったことである。拉致事件をはじめとする北朝鮮の謀略の実態が次々に明らかにされているものの、その全容が解明されているわけではない。この事実は、拉致の事実そのものを解明するには、断定的に「拉致とは**である」とか「**は絶対にありえない」という断定や予見を避けることが「絶対に」必要だということを我々に教えている。
 こうした見方から改めて、1968年から1970年頃まで連続した日本での高校生や若い人たちの失踪事件を洗い直す必要があるように思う。
 具体的には、下記の人たちの失踪である(敬称略)。
1968年の屋木しのぶ、水島慎一、斉藤裕、国井えり子
1969年の今井裕、白鳥英敏、大屋敷正行
1970年の古川文夫、矢野和幸
 この人たちは、いずれも10代での失踪である。このうち、屋木さん、水島さん、斉藤さん、国井さん、大屋敷さんはいわゆる1000番台リストにあがっている人たちである。しかも、国井さんについては、写真が北朝鮮からもたらされた。斉藤さんは「ニセ写真問題」が発生したものの、斉藤さんを目撃した金国石氏によれば「写真は別人であり、現に存在する」と証言していた。
 そして今回のことで注目しなくてはならない失踪者が大屋敷正行さんである。大屋敷さんは、金英男さんと同様に、高校の同級生と海水浴に出かけての失踪である。大屋敷さんが失踪した大瀬崎海岸の近くでは、当時北朝鮮の関係者と思われる男女が出没していたとの情報がある。しかも、不審船が目撃されている。
 朝鮮総連の元関係者の証言によれば、工作員の上陸ポイントは太平洋側にも存在するということである。当然、伊豆半島、房総半島もその範疇にあったと考えられる。事実、西新井事件の犯人、朴某は伊豆七島の大島を調査していた。さらに、手嶋龍一氏によれば「1970年ごろ、北朝鮮の工作船が東京湾に出没していた」という。
 こうした様々な情報を総合して判断すれば、大屋敷さんの事件もおぼろげながら真相が明らかになってくる。まだ確証に足るものではないが、今回の金英男さんの事実の判明は、横田めぐみさん以外の日本人拉致事件の真相究明にも目を向けて行く必要性があることを示したのである。つまり、「拉致とは日本海側だけの事件ではない。しかも、1976年以降だけの事件ではない」ということである。(真鍋)




2006.4.12

<論評>
個人保護法は速やかに改正すべきだ

 個人情報保護法による個人情報保護の「過剰性」が問題になっている。何でもかんでも個人が特定される情報は一切秘密にされる。現在の異常なまでの過敏な状況は馬鹿馬鹿しい限りである。異常なまで個人情報の保護をしなくてはならないほど、日本人は何かに恐れているのだろうか。それは犯罪やテロなのか。それとも借金取りなのか。
 もし犯罪やテロだとすれば、それ相応の個人情報の保護は必要であることはいうまでもない。しかし、今日の過剰性は、犯罪やテロから個人を守ろうとしてもその個人が特定できないために、個人を護れなくなっているという馬鹿馬鹿しさがある。
 消防署が、災害弱者を緊急時に速やかに保護するための、「災害弱者リスト」の作成を自治体に要請したら、個人情報だとして拒否された、というのはあまりにも馬鹿馬鹿しい。
 われわれ特定失踪者問題調査会の調査でも似たような状況はしばしばある。例えば、ある高校に失踪者が在籍をしたかどうかを尋ねても、同じように拒否された。その高校では、「警察の要請があれば」ということだったので、所轄の警察に相談したところ、同じように「個人情報なので」と拒否。頭にきて、「警察庁へ要請するぞ」というとしばらくして「検討します」とのこと。その後、なんの返事もない。その失踪者とはすでに40年も前の方の話である。そういう方の調査まで個人情報保護なのだろうか。こうしたことは日常茶飯事になっている。
 こうした過剰性はどうして生まれたのだろうか。結局のところ、日本人の「横並び思考」と「責任回避根性」ではないだろうか。皆がそうするから自分もそうしなくては都合が悪い、何かあって責任をとらされるのはごめんだ、というわけである。
 こんなことでは、もし現在でも拉致が行われ、失踪した方がいたとすれば、その方を誰も探すことができないだろう。自分のプライバシーを護ろうと過剰に反応するために、かえって自分の人権そのものが保護されなくなるのである。こうしたことは簡単に想定できるはずなのに、それができないような日本人とは一体何なのだろうか。拉致問題の解明が数十年もかかり、全面解決もいまだ遠い理由を日本人の精神構造から考えると、この「横並び思考」と「責任回避根性」が原因のひとつなのかもしれない。
速やかにこの馬鹿馬鹿しい個人情報保護法は改正すべきである。(真鍋)



2005.10.27

<情報> 英国の新聞「The Telegraph」が日本人拉致問題に言及

 同紙が、北朝鮮による拉致事件を下記のように報じた(日時不明)。最近、北朝鮮によるニセドル事件の犯人が北アイルランドで逮捕されたこと、EUが北朝鮮の人権問題を決議し、国連に上程する動きをみせていることなど、欧州でもようやく北朝鮮の人権問題に関心を払い始めたことが理解できよう(真鍋:以下は真鍋の翻訳)

「北朝鮮が昨日、韓国人の拉致被害者のみならず朝鮮戦争における戦争捕虜を依然として拘束していることを認めた。韓国の統一省による103人の失踪者の調査依頼への北朝鮮側の回答によれば、朝鮮戦争が終わって52年経った今日でも、戦争捕虜が北朝鮮に拘束されているという。他に拉致された11名については依然として北朝鮮に拘束されている。生存しているかどうか不明であった6人の戦争捕虜と拉致された10人は、可能性として死亡したという。その他の人たちは北朝鮮から説明されなかったと統一省は述べている。平壌は、来月に予定されている南北の分断による離散家族の再会において、21名が含まれていると言っている。この情報は、韓国政府が北朝鮮に対して、圧力を加えるためにニュースを再度流したものである。北朝鮮が数十年にわたって拘束をしていたのは、拉致された人たちが将来工作活動に役に立つと考えていたからである。2002年には、それまで長期にわたって疑惑とされていた日本人の拉致事件が、北朝鮮の工作員の訓練のために行われていたことが明らかになった。多くの韓国人の拉致被害者は漁船員だった。彼らの漁船は北朝鮮の警備艇によって拿捕されていた」



2005.10.24

<情報> 「小泉首相の父親、在日朝鮮人の北朝鮮送還事情を主導」
朝鮮日報日本版 2005.10.24より

 同紙によれば、小泉純一郎首相の父親である小泉純也氏(当時、自民党国会議員)が、北朝鮮への在日朝鮮人の送還事業に大きく関わっていたという。「インサイダーライン」発行人の歳川隆雄氏による調査の結果とのことだ。
 当時の北送事業に関わった日本人の多くが、「良心の呵責」から、現在日本人拉致問題の解明と日本人救出運動に深く関わっているのは明らかな事実である。とすれば、同様に小泉首相もその「良心の呵責」を受け継いでいて欲しいものだ。ところが、同紙によれば、この事実は小泉首相にとっては最大のタブーの一つとのことだ。なぜタブーなのか今ひとつ明らかではないが、当時の自民党と、日本社会党、日本共産党そして朝鮮労働党との関係性の中にその秘密があるのかもしれない。日本の歴史の中で語られていない暗闇の部分なのかもしれない。(真鍋)

<情報> 「平壌のふざけた紙幣印刷者 スーパー・ドル」
Herald Tribune 2005.10.24より

 同紙に、上記の題目で大きく評論が掲載された。北朝鮮がニセドル紙幣の「印刷所」であると断定しての評論である。もちろん、北朝鮮はこの情報を否定している。
 その評論の中で、数人の脱北者が、印刷所の場所や、北朝鮮を含めて中国や東南アジアでニセドルが撒かれたことを証言したことが紹介されている。これは、よど号事件の犯人の一人、田中義二がカンボジアで、ニセドルのロンダリングをしようとしていたときに、警察に逮捕されたことで証明されている。
 米国は核開発と同様に、ニセドルの印刷、麻薬製造といった犯罪を北朝鮮が国家ぐるみで行っていることに対して、「テロ国家」「悪の枢軸」といった表現を用いて非難していた。先日は、北アイルランドでIRAの分派の代表が、北朝鮮で印刷されたニセドルのロンダリングに関わっていたとして逮捕されたばかりだ。
 こうして眺めれば、拉致問題も、よど号事件、核開発、ニセドル、麻薬といった様々な問題とリンクしている可能性があることが判る。そのリンクを明らかにしていくことによって、拉致問題の全容も解明されていくことになるだろう。(真鍋)

 
同紙、紙面より


2005.10.13

<情報> 朝鮮日報(日本版)が中国への貿易制裁を米国が検討と報じる

 同紙は、中国政府が北朝鮮からの脱北者を強制送還させていることについて、米国議会や人権団体が、中国への貿易制裁を検討していると報じた。
 かねてより懸念されていた中国政府の「冷たい措置」に対する米国側の「圧力」が加わりそうだ。この問題は、米国で制定された北朝鮮人権法の規定にもすでに盛り込まれているものであり、具体的な対応が検討されることになるだろう。
 それにしても、日本版北朝鮮人権法を巡る日本政府や政党の動きは全く見えない。郵政民営化であれだけの「辣腕」をふるった小泉首相は、この法案へ関心すら持っていないようだ。小泉首相は、もう一度「辣腕」をふるって、日本版北朝鮮人権法を即刻制定すべきではないだろうか。(真鍋)



2005.10.9

<論評> 杉浦大蔵衆議院議員の功罪

 マスコミを連日賑やかせ、若者の「政治意識」を覚醒させたとして評判の新人議員が言うまでもなく「ニート」代表を自称する杉浦大蔵議員である。マスコミの報道は彼に対する批判と憐れみと同情が混在している模様だ。それは、彼のような人物の当選の過程は前例がなく、政治的にも評価が分かれているからであろう。
 彼のような人物の当選には功罪がある。
 彼の功は、誰でも被選挙権をもつものならば、国会議員になることができるということを証明したことだろう。特別の政治的知識・識見や能力を持たなくとも、国民の政治的指導者たる地位を得ることができる、ということは日本の政治的な歴史上革命に近いことだ。これまで多くのタレント議員がその知名度を利用して当選をしてきたことはあるが、全く知名度のない人物が、しかも政治的に何もしてこなくても政治的指導
者になるということは考えられなかったことだ。
 故田中角栄氏は、候補者になるために門を叩いた若者を、徹底的に指導したことで有名だ。早い話が「草履番」や「雑巾がけ」をさせて、苦労させてはじめて政治的指導者になれる、ということを教えたのだ。ところが、今回の杉浦議員の立候補と当選の過程はそれと全く異なる。ペーパー一枚を自民党に提出しただけで候補者となり、選挙活動もしないままに国会議員に当選した。
 この現実は、国民に新たな政治的覚醒をもたらしたということだ。すなわち、「国民が政治的指導者を育てる」という役割を持たつことを自覚せざるを得ないことだ。知識や能力を持たない政治的指導者に対して、これまでのように国民が依存することはできないからだ。この国民の責任意識を持たせた彼の功績は大きいだろう。
 一方の罪は、同様に「誰でも国会議員になれる」ことを作ってしまったことだ。国会議員は政治的指導者であり、また権力者である。その権力を持つ人物が、「誰でも良い」訳にはいかない。政治的、社会的に経験と苦労を積み重ねて、国民の誰よりも優れた見識を持ってこそはじめて政治的指導者たる「選ばれた存在」になることができるはずだ。
 彼は「これから勉強します」と言う。卑近な隠喩をすれば、研究経験の全くない者がいきなり大学の教授となり、学生を前にして「これから勉強します」と言っているようなものではないか。その俄か教授に対して、学生が温かい眼差しを向けて、「先生を育てるのは私たち学生の責任です」と言っているとしたら笑止千万ではないか。
 もっと有体に言えば、彼よりも優れた能力、見識そして実績があった候補者は山ほどいた。それが「小泉劇場選挙」で次々と落選の憂き目を喰った。落選した有能な人物と、杉浦議員とでは比較しようがない、いや比較する意味もない。選挙である限り、「勝ち負け」があるのは当然だが、当選した人物が、目の前にある大きく困難な政治課題の解決を迫られている時に、「これから勉強します」では政治的指導者たる資
格はないと言わざるを得ない。
 政治的指導者になるためにはそのプロセスがいかに大切なものであるかを国民に忘れさせたこと、それが今回の杉浦議員の最大の罪である。もちろん、彼を候補者として選んだ自民党と、それを許容し投票した国民の罪でもある。(真鍋)



2005.8.30

<宣伝> 『九評 共産党』の販売について

 中国共産党の歴史、思想そして実態について、赤裸々に記した同書の邦訳版を数冊入手しました。ご希望の方に、当方より販売させていただきます。送料込みで、1500円でお送りいたします。数に限りがありますので、お早めにお申し込みください。
 同書は、著作者は不明ですが、中国国内の政治に詳しい人物による命がけの「暴露本」です。中国共産党の暴政の記録、謀略的政策の実態などが丹念に描かれています。中国国内ではもちろん発禁処分となったものです。米国では、中国の拡張するパワー」への警戒感が強まっています。日本でも、単純な経済交流や日中友好ではすまされなくなりつつあります。こうした時に、中国共産党の「隠された本質」を知る絶好の書です。
 同書は、下記の書店で扱っていますので、そちらからでも購入できます。(真鍋)

 
『九評 共産党』
著者 大紀元新聞グループ編集部
発行 博大株式会社
   東京都新宿区百人町2-20-25 〒169-0073
   FAX 03-3368-3896
e-mail info@hakudai.jp





2005.8.29

<情報> 2002年4月の段階で、警察当局は「拉致被害者は40人近くいる」と認識

2002年4月4日のロイター通信で、下記のような英文記事が流されていた。ロイター通信ということもあり、当時、日本国内でそれほど話題にならなかった模様だ。しかし、現在の時点で改めてこの記事を読むと、当時の段階で、警察関係者は「拉致の被害者は40人近くいる」という認識を持っていたことが判る。

記事の概略

「日本の警察高官によれば、現在の10人の拉致被害者に加えて、30人近くの拉致被害者のリストがあるとのことだ。同高官によれば、北朝鮮はそのうち一人の生存、二人の男性が死亡していることを示したという。また北朝鮮は有本恵子さんが生存していることを示唆したという。さらに、同高官によれば、ほとんどの拉致被害者は日本海側であり、1970年代半ばから拉致が始まったという」(翻訳は筆者)

 このように、当時の警察では有本恵子さんの生存情報などを掴んでいた模様だ。この記事の出た5か月後に、政府は有本恵子さんの拉致被害者認定を行なった。
 また、当時の警察は、拉致は日本海側の事件で、1970年代半ばから、という認識を持っていたことが判る。当時の一般的な拉致問題の認識を超えていなかったわけだ。
 日本海側だけで40人程度ということであるから、全国的に見ても、藤田進、加瀬テル子事件のように、1970年代以前や太平洋側でも多くの事件が発生していることから、少なくとも拉致被害者の数は2倍程度の80人程度になると考えられる。
 警察は拉致問題の全容解明と拉致被害者救出のために、このリストを公開すべき時が来ているのではないだろうか。(真鍋)



2005.8.2

<情報>

朝鮮日報(2005.8.1 日本版)に、「北朝鮮に拉致された日本人名簿の虚実」と題した社説が掲載された。その趣旨は「特定失踪者問題調査会」の主張の根拠が薄弱というものだ。
 下記でその社説を読むことができるのでご一読されたい。

http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/08/01/20050801000022.html

 この社説に対する批判は、今後、調査会としてしかるべき方法で行なっていく。ここでは、個人的な見解を述べておく。
 特定失踪者問題調査会の調査は「日本人の過去の失踪者の中に拉致被害者が存在するはずだ」という仮説に基づいている。その仮説の正当性について件の記者は疑問を抱いているようだ。もし、その仮説に正当性が無いとするならば、逆にその根拠を示してもらいたい(社説ではその根拠を金正日の発言に委ねている!)。
 言うまでも無く、誰が一体拉致被害者か、という根本的な事実について、日本側は誰一人知ることができない。それを知っているのは金正日ただ一人である。それを前提として、この調査を行なわなければならない。もし、朝鮮日報の記者がその真実を明らかにしようとするならば、他のどのような方法論を我々に提示しようと言うのだろうか。
 主張の根拠が薄弱というのは、その拉致の客観的「証拠」が薄弱だ、という日本政府の公式見解、あるいは北朝鮮の我々に対する批判と文脈は一致している。拉致の「証拠」が明白ならば、我々が調査するまでもないことなのだ。この一切「証拠」を残さない国家犯罪の被害者をどのような方法論で探し出していくのか、という非常に困難な調査を我々は強いられている。「証拠」が存在しない犯罪の解明には、あらゆる情報(目撃情報、写真情報そして状況証拠)に基づいて推論的に積み上げていくしか方法は無いのではないか。
 今回の社説は、「客観主義」の陥穽に嵌ってしまっている現代のジャーナリズムの限界を自ら露呈しているように思える(真鍋)。



2005.7.29

<情報>

 ノ・ムヒョン大統領が、28日、野党第一党のハンナラ党に連立政権を提案したが、ハンナラ党が拒否していたことが判明した。大統領の提案の理由は、政治改革(選挙制度改革)のためには韓国政界に根強く残っている地域間の政治闘争を終焉させる必要があるためだという。
 韓国の政治闘争は、政党間の闘争に加えて地域間の闘争があり、大統領の選出地域から多くの政府要人が任命され、それが政治汚職を発生させている土壌を生んでいるとされている。
 ハンナラ党はこの提案を「現実的ではない」という理由で拒否したが、大統領の提案の裏側には、大統領が議会による弾劾を回避するためのものがあるのではないかと疑っている。(真鍋)



2005.7.26

<情報>

小住健蔵さんの拉致認定について

 2004年7月24日に、これまで公の場に姿を現すことの無かった小住健蔵さんのご家族が、「救う会道南」の集会に出て、初めて支援の挨拶を行った。これまでの関係者の地道な努力の結果である。政府はこれまで全く対応をしなかった小住さんについて拉致被害者としての認定を急ぐべきだろう。
 さて、今回の集会で、昭和60年に警察庁が発行した「見破られた北朝鮮工作員」というパンフレットが、西岡力救う会副会長から紹介された。いままであまり知られていなかった小住健蔵事件(西新井事件)の顛末が詳細に記されている。
 その中には、いかに当時の警察が懸命に北朝鮮の工作活動を捜査していたかが強調されている。実際、当時の捜査当局の努力は並大抵なものではなかったと推測される。
 その懸命の捜査が拉致問題の全容解明あるいは救出に向かわなかったのは何故なのだろうか。その最大の要因が政治である。小住健蔵さんの事件は、金丸・田辺訪朝を前にして、政治的圧力によって封印されてしまったのだ。以来、1997年の「救う会」「家族会」の結成後にも、ほとんどマスコミにも注目されてこなかったものだ。今回の集会に参加した函館市民にもこの小住健蔵事件を知らない人が多かったのが、それを証明している。
 有本・石岡・松木事件、寺越事件そして小住事件のいずれも政治家が関与して、隠蔽されてきたものだ。拉致された国民を救出する責任と義務を持つ政治家によって封印されていたのだ。この事実を国民は厳粛に受け止めて、拉致問題は単純に「被害者やその家族が可哀そう」という問題ではないことを知るべきだ。知ると同時に、日本政府や政治家に対して、この日本の政治構造にある「怪しげなもの」を根本的に改めるよう怒るべきだ。そこを変えなければ、いくら家族会が懸命に経済制裁の実行を政府に求めても、その意思や覚悟を持たない政治家が動くことはない。そして、仮に経済制裁を実施したとして、「その次」にある「救出」というものに至ったとき、再び「怪しげなもの」が表れて、拉致事件を再び隠蔽してしまいかねない(真鍋)。



2005.7.22

<情報>
朝鮮総連結成50周年の「便覧」について

 朝鮮総連発行の『便覧』が久しぶりに発行された。中身に目新しいものは無いが、その中で、9.17小泉・金正日会談をどのように総連として「宣伝」しているかが判る箇所がある。特に、2004.5.22の二回目の会談については、「金正日の勇断」として解釈しているところがある。そのまま掲載したい。

「また、2004年5月22日、金正日総書記の勇断によって小泉総理の2回目の平壌訪問と朝日首脳会談が実現し、朝日間の信頼を回復し朝日平壌宣言を誠実に履行する決定的契機がつくられた。第2回朝日首脳会談を契機に国交正常化への大局的な流れが現実のものになりはじめるや、これに一貫して反対してきた日本の右翼反動勢力は『拉致問題』を極大化して、この流れを逆行させようと反共和国、反朝鮮総連、反朝鮮人策動に狂奔した。しかし、朝日国交正常化への流れは、朝日両国人民の共通の念願と利益、新しい時代の志向に即した歴史的流れであり、何ぴとも妨げることはできない」(p.137)

 北朝鮮政府の宣伝と全く変わることのないものであって、とりたてて珍しい文書ではない。ただ、この『便覧』では唯一ここに「拉致問題」が記載されている。朝鮮総連が好きな「謝罪」や「反省」の弁は全くない。まったく他人事として扱っている。朝鮮総連の中にも、「拉致問題」については謝罪をしている支部や個人が存在しているのに、中央では全く頬かむりだ。加えて、北朝鮮国内における人民の惨状については全く記載されていない。これでは、末端の在日の人達の信頼を回復することはできないだろう。となれば、ますます総連の組織人員は減少していくに違いない。最後の部分は以下のように書き換えたらどうだろうか。(真鍋)

「朝鮮総連の解体への流れは、朝日両国人民の共通の念願と利益、新しい時代の志向に即した歴史的流れであり、何ぴとも妨げることはできない」



2005.6.23

<情報>

朝鮮日報 日本版 2005.6.22

南北会談中の韓国、反北朝鮮集会にピリピリ

 ソウルで開催中の南北閣僚級会談で22日、韓国代表団が北朝鮮代表団と一緒に参観予定だったソウル近郊の映画撮影所の近くで、北朝鮮による韓国人拉致被害者の家族らでつくる団体が集会を開くとの情報が入り、参観場所が急きょ変更された。
 21日にも北朝鮮代表団の移動ルートで別の団体が抗議行動を行い、同代表団が強い不快感を示したとされ、北朝鮮側を刺激し会談ムードが壊れるのを避けようとしたものとみられる。
 韓国側などによると、同撮影所に出発する直前に集会の情報が入り、ソウル中心部を流れる漢江の遊覧船観光に変更された。韓国側は変更は「安全上の理由」とだけ説明した。(共同)

<解説>
 韓国での反北朝鮮活動の実態が、日本ではほとんど報道されない。さらに、韓国国内での世論調査を日本の報道がわざわざ掲載し、98%の国民が「反日感情」を持っているという結果を流している。この日本のマスコミの「韓国は反日一色」という「偏向報道」のためか、日本人の多くが、韓国国民は「親北朝鮮・反日本一色に染まっている」というような印象を持っている傾向が強い。
 もちろん、「反日と親北」の傾向が強いのは事実だ。しかし、それだけではない、ということをしっかりと認識を持つべきだ。時に、韓国国内の反北朝鮮活動家は、「親日」ではけっしてないが、日本人と共通の価値(自由、民主主義、人権)といったものを共有できる層だ。
 もともと「親」とか「反」とかいった二項対立的な区分をして、国民全体の動きを判断しては、間違った認識を持ってしまう。「親」であろうとなかろうと、自由と民主主義、人権という共通の価値を共有できるかどうかで判断をしなくてはならない。その意味で、現在の韓国政権とは価値の共有はできそうにないし、韓国の反北朝鮮活動家と我々は共有できる。(真鍋)



2005.6.22

<情報>
21日、RENK(救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク)がソウルで記者会見

昨年5月の日朝首脳会談で合意し、日本が北朝鮮に食糧支援したお米が、市場で販売されている画像がRENKより公開された。そこには、はっきりとWFPと書かれ、日の丸が印刷されているのである。

http://www.bekkoame.ne.jp/ro/renk/20050622PHOTO.htm 画像
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/renk/renkflashno8.htm 速報



2005.6.10

朝日新聞 Herald Tribune 2005.6.10 より

 朝日新聞によれば「台湾の漁船約50隻が9日未明から同日午前にかけて、尖閣諸島(中国名・釣魚島)近海に集結し、日本の巡視船を取り囲んだりする動きを見せた。日本が台湾漁船への操業取り締まりを強めていることへの抗議という」ことだ。
このニュースは特段特別なものではない。面白いのは、Herald Tribuneの記事である。同紙によれば「東シナ海の独島の領有権を巡って、台湾漁船が日本に抗議のため独島におしかけた。独島を巡っては、中国、台湾そして日本が領有権を主張している」というもの。 明らかに独島と尖閣諸島を混同している。さすがのロイターも間違えるということだ。
しかし、こうした間違いは笑って済むものではない。歴史的に本来別々の島であった独島と竹島が混同して理解されてしまって、日韓の紛争を呼び起こし、挙句は南北朝鮮の「反日の連帯」にまで至ったからだ。数十年後に、Herald Tribuneが韓国の歴史家に取り上げられて、「尖閣諸島も独島であり、韓国の領土だったことが、この新聞で証明される」といったことにならないことを望む。(真鍋)



2005.6.9

<情報>

Herald Tribune 2005.6.9より

 日本のメディアではあまり紹介されていないが、最近の同紙ではオーストラリアでの中国当局スパイの活動が大きく紹介されている。中国当局のターゲットは天安門事件と法輪講に関った亡命希望の在オーストラリア中国人、チェン・ヨンリン氏だ。同紙によれば、オーストラリアで活動する中国当局のスパイは400人とも1000人とも言われ、多くはビジネスマンあるいは留学生がその活動にあたっているとのことだ。
 この問題に対するオーストラリア政府の対応は、中国政府をはばかってか、亡命希望の同氏を冷たく扱っている。しかも、ふるっているのは在オーストラリア中国大使フ・イン氏のコメントだ。それによれば、「中国政府には彼を罰する理由は無い。彼の自由を保障する」とのことだ。
 もし中国大使のコメントが本当であれば、これ程懐の深く慈悲深い政府は存在しないことになる。しかし、これまでの中国政府がとってきた「人権問題」に対する措置を振り返れば、このコメントが嘘であることは間違いない。もし中国政府がこれを嘘でないと証明したいのならば、中国国内での法輪講の活動も許可すべきだし、何よりも北朝鮮からの脱北者の強制送還を即刻やめるべきだろう。(真鍋)



2005.6.8

<情報>

Herald Tribune 2005.6.8  1面、3面より

 同紙に、中国と日本のナショナリズムの勃興について批判的な記事が出ている。日本人記者と外国人記者の2人による執筆だ。日本のナショナリズムの記述では、安倍晋三議員を例にあげて、拉致問題に熱心な国会議員がウルトラ保守で、それに批判的な野中広務元議員がすばらしい平和主義者という構造の前提に立って書いている。こうした構造を前提に記事にしたことは面白いものでも、目新しいものではない。面白いのは、記事の後半に引用された中国の大学生と研究者のコメントだ。中国の学生のコメントは「日本の侵略は中国の発展に大きな犠牲を強いた。もし、日本の侵略がなければ、今頃中国は共産党の政権にならなくてすみ、もっと裕福な国になっていただろう」というものだ。研究者のコメントは「我々中国は日本の靖国問題を批判している。しかし、我々が北京の中心部に毛沢東の神社(?)を持っていることは恥ずかしいことだ。なぜなら、毛沢東は日本が中国人を殺した以上の数の中国人を殺しているからだ」というもの。
 日本でもしばしばあることだが、外国メディアに対しては「本音」がよく語られる。こうした大学生や研究者も「本音」を述べたのだろう。そこで、ここでは「本音」で語りたい。大学生のコメントに対しては「申し訳ない。日本が戦争に負けたために、中国を共産化させてしまった。その責任は日本にある」と率直に「お詫び」したい。そして、研究者に対しては「申し訳ない。日本が靖国神社を粗末に扱ってきたために、貴国にもちゃんとした英霊を祭る神社(?)が建てられないのだ。これからちゃんと靖国神社を扱っていく」と。(真鍋)



2005.6.4

<情報>

『中国事情』2005年5月号、中国事情研究会、pp5-9より

 本紙に、北朝鮮から脱北した日本人妻の平島筆子さんについての論及がある。永年、この問題に精力的に尽力してきた三浦小太郎氏の論文である。その中に「記者会見の場で平島さんが叫んだ『金正日将軍万歳』は余りにも痛ましい叫びだった。同時に、涙に濡れていた瞳に写っていた絶望感の深さは、単に演出だけでなく、様々な苦悩に満ちた闇の反映にも写った」とある。こうした平島さんの苦悩を日本政府あるいは周囲の人たちが十分に理解しなかったと、三浦氏は自責の念を記している。
 我々は、あまりにもこうした苦悩に鈍感になってはいまいか。北朝鮮問題に絡んで、善意や正義といった表向きの理念に基づく解釈はいくらでもできる。しかし、北朝鮮に絡んだ悲劇の苦悩を理解できるのは、平島さんをはじめとするご本人と、そうした人たちを精一杯支援しているごく少数のポランティアの人たちだけだろう。この少数の人たちの苦悩をどのようにすれば、我々の共通の認識にすることができるのだろうか。「万歳と言わされた平島さんはかわいそうに」と思うだけで終わってしまって良いのだろうか。
 我々は、この共有し難い「苦悩」を、自分の身に置き換えて考えることぐらいしかできないかもしれない。しかし、その「苦悩」の中からこそ、問題解決の糸口が見出せるのだろう。
 他者の「苦悩」に鈍感になってしまった国家や国民には、こうした問題解決を図る意思すら存在しないだろう。そんな国家が表向きの善意や正義を振り回して国連常任理事国入りの支持を得ようとしても、所詮は表向きの支持で終わるだろう。日本政府と日本国民は、まずは、こうした悲劇の当事者の「苦悩」を共有していくことから始めなくてはならないと思う。(真鍋)



2005.5.26

<情報>

中国国内での公開処刑の写真が流出

 中国国内で実施された公開処刑の写真があるニュースサイトで見ることができる。時期、場所などは不明だが、公安関係者からの写真の提供と思われる。公開処刑は非近代的かつ非民主的な国家でのみ行なわれる野蛮な行為だ。こうした野蛮な行為が平然と現在でも実施されていることに、国際社会は強く抗議を中国当局に行なうべきだろう。 こうした中国政府の非人道的措置に対して、国際社会からの批判は根強くあったが、中国政府は「中国国内に非人道的行為は存在しない」と正式にコメントしてきた。中国政府が2008年のオリンピック開催に向けて、国内の非人道的行為を隠蔽し続けるのならば、国際社会はオリンピック開催地の変更を真剣に考えていくべきだろう。(真鍋)



2005.5.26

<朝鮮日報 日本語版 社説 2005.5.25より>

 日本外務省の谷内正太郎事務次官が、最近訪日した国会・国防委員らに「北朝鮮の核問題に関連し、米国と日本が情報を共有しているが、米国が韓国を信頼しないため、日本が得られる北朝鮮の核関連情報を韓国と共有することに躊躇している」と述べた。
 谷内事務次官は「北朝鮮の核問題を解決するためには、韓米日3国の団結が核心であり、もっとも重要であるが、最近、韓国が韓米同盟から脱している」とし、「米国と日本は右側におり、中国と北朝鮮は左側にいるが、韓国は今、中国と北朝鮮により近いようだ」と述べた。
 政府はこれに対し、駐韓日本公使を呼び、「韓米関係と韓国政府の対北朝鮮政策に対し、誤解を招きかねない不適切な発言」と抗議した。

<解説>

 米国・日本両国政府の頭痛の種は、韓国ノ・ムヒョン政権の「左傾化・親北朝鮮化」だ。金大中政権時代からの「太陽政策」を継承としている現政権は、前政権よりもさらにその傾向を強めている。それが東アジアの安定にむしろ逆効果をもたらしているという認識は、現ノ・ムヒョン政権にはほとんど無いように見える。したがって、こうした懸念を率直に谷内事務次官が指摘したことは、日本側からすれば妥当だ。というよりも、もっと明確に韓国側に示すべきだろう。
朝鮮日報はこの谷内発言を良い意味で苦々しく思っている。同社説では「韓米日の協力体制に重大な問題が生じたことは相手国も知っており、国民の皆も知っていることなのに、この政権側の人たちだけが「問題なし、うまく管理している」と主張している。これで済まされる問題ではない。この政権のために働く人のなかにも、状況の深刻性を感じる人は確かにいるはずだ。そうした人々は国が重大な局面に置かれた時点で一言の直言もできないとすれば、いったい何のため、そのポストに就いているのかも聞きたい」としている。
日本側としては、韓国国内のこうした妥当な認識が一層強まるような方法論を駆使していくべきだ。それは、もっと韓国側が苦々しく思うようなことをきちんと物申す、ということだろう。(真鍋)



2005.5.17

Herald Tribune 2005.5.16
<記事> ロイター発

 ネパール西部パルパ、タナフン、バグランでマオイスト(毛沢東主義者)が、学校を急襲し、450人の子供たちを拉致した。通常ではマオイストは、子供たちを洗脳し、マオイストの支持者にしたのち解放している。

<解説>
 マオイストという時代に一周遅れている集団の犯罪である。しかし、こうした方法論つまり子供を拉致して洗脳し、反政府活動の「工作員」として送り返す、というものは世界中のマオイストに共通している。北朝鮮の労働党をマオイストと定義はできないが、こうした左翼過激主義者の方法論が類似していることは注目するべきだろう。日本人拉致の目的も同種の意図があるかもしれないからだ。(真鍋貞樹)


2005.5.12

<記事>
Herald Tribune 2005.5.12,13より

5月5日から8日間の日程で台湾の野党第二等の親民党(People First Party)の党首である宋楚瑜(James Soong)が中国を訪問し、中国国内で大歓迎を受けている。中国の同氏の故郷である湖南の湖南大学、そして北京の清華大学でそれぞれ講演し「台湾は中国の経済発展と豊かさから学ぶべきだ」、「台湾海峡の経済発展は中国と台湾には共通の責任がある」そして「中国は一つだということを台湾も認めるべきだ」と述べた。

<解説>
国民党の連戦主席に続いて、野党第二党の訪中だ。もともと経済界による支持が中心であるがために、経済優先主義を採用する現実主義的政党である上に、1944年に中国本土の湖南省で生まれ、1949年に台湾に渡った同氏ならではの行動と発言だ。こうしたスタンスならば中国が大歓迎をするわけだ。「台湾の台湾化」という李登輝前総統そして陳水扁総統の「理想主義」は、台湾国内の経済界から崩されていることになる。当然、陳総統はこうした発言に対して厳しく批判をしているが、支持率の低下は顕著だ。台湾において「現実主義」と「理想主義」の対立が根深いことを示しているが、日本側としては、この「理想主義」をどのようにバックアップしていくかを真剣に考えるべきだろう。
尚、Herald Tribuneでは、同党首の「台湾独立には反対だ」という静華大学での発言を掲載していないが、現地筋からの別の報道では記載されている。この報道の違いがどのような理由によるのかは不明だ。(真鍋貞樹)


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