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新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

本ならではの気づき

 自分が出版業界に就職した当時、業界全体の売上も書店数も、ほぼピークにありました。それから30数年、ざっくり言うとどちらも半減したようですが、最近、おや? と思ったのが、経済産業省が書店振興プロジェクトに乗りだすというニュースでした。行政の旗振りがどこまで効果的かはわかりませんが、書店の棚から気になる一冊を手に取って読み、そこから得られた様々な心象が、今の仕事の原点にあることはまちがいありません。3月新刊の新潮新書は次の4点、それぞれに書籍ならではの知識や気づきをもたらしてくれます。
2024/03

様々なホンネのかたち

 なかなか本音を口にしづらい世の中になった、とよくいわれます。理由は様々あるでしょうが、その一方で、ネットやSNS上では、よく考えられた意見から単なる誹謗中傷までが日夜あふれかえっています。「とくダネ!の小倉さん」と言えば、人によって好き嫌いは分かれても、言いたいことを言う名物MCとして3年前までフジテレビの「朝の顔」でした。ときに失言や炎上騒ぎがあっても22年間にわたって司会者をつとめ、回数や期間ともに最多・最長記録を達成、放送史にその名を刻みました。
2024/02

何ごともよく動く年に

 2024年が明けました。竜の年というのは何ごとにつけ物事がよく動き、権力にも変動の多い年だといわれます。アメリカの大統領選挙、戦争、パンデミックや温暖化のように世界的なニューストピックにはなりにくいものの、水面下で静かに進行している病があります。「10代のメンタル」がそれで、現在が史上最悪という声もあるそうです。
 便利で快適なライフスタイルを追い求めてきたはずなのに、一体どうしてなのか、70万部超のベストセラー『スマホ脳』の著者アンデシュ・ハンセン氏は、その理由を、日進月歩で進化していく技術とは裏腹に、ヒトの脳は1万年前にサバンナで暮らしていた頃と何ら変わっておらず、とにかく生き延びるため、刺激があるたびにいちいち反応しては不安になるのだといいました。
2024/01

それぞれの「闇」を掘る

 暗闇、心の闇、闇商売、闇から闇、闇に消える――。門の中の暗きところで神意を聞くこと、入り口を閉じてふさいでしまうことなど、この字の起源には諸説あるようですが、ふだんは見えないもの、見せたくないもの、という比喩的な意味でよく使われます。
2023/12