第48回目の心ぴくです。
今回見た映画は「ハンニバル・ライジング」「ツォツィ」「クィーン」「スパイダーマン3」「バベル」「ゲゲゲの鬼太郎」「スモーキンエース 暗殺者がいっぱい」「歌謡曲だよ人生は」「パッチギ!LOVE&PEACE」「黄色い涙」の10本です。
「クィーン」
役者の演技はすごく良かったが、ダイアナ妃の死の真相に迫るのでもなく、見終わったあと、だからなんなの感が漂ってしまった。惜しい作品
「バベル」
メキシコのシーンの、リアルな演出には唸らされたが、東京のエピソードは何だか嘘っぽく感じられた。中途半端なラストもちょっとと言う感じ。
「ゲゲゲの鬼太郎」
水木しげる漫画のにおいが全然しない別物映画。
少しは、低予算だが楳図かずおの精神を生かした映画<猫目小僧>を見習って欲しかった。
いい大人が見ていて恥ずかしくなる映画。
「黄色い涙」
大好きな漫画家、永島慎二の原作の映画化だと知り見に行きました。30数年前、NHKの銀河テレビ小説でやっていたドラマ<黄色い涙>と同じ脚本家の市川森一さんの担当だということで、原作の雰囲気を壊さずに撮れていた事には感心しました。
しかし登場人物がアイドルグループの嵐の面々だったので、テレビドラマの配役(森本レオ・下条アトム・岸部シロー)ほどの個性が感じられなく途中まで感情移入できなくて困りました。同じ脚本、別の俳優でもう一度見てみたい大変惜しい作品です。
ということで今回の心ぴく映画は大甘の6本になってしまいました。
「ハンニバル・ライジング」
殺人鬼レクター博士の誕生編。ストレートな復讐物になっているのが心地いいです。幼い頃、流れ者の兵士達から受けた酷すぎる仕打ちに対して復讐鬼になることにより生きる意味を見出すレクター。手を変え品を変えして行われる残虐な復讐シーンも相手が、ケダモノのような奴らなので、やったれ!と言うでカタルシスを感じます。ラストの尻切れトンボのような印象が惜しいですが、大甘で心ぴく映画決定です。
「ツォツィ」
アパルトヘイト廃止後。現在の南アフリカを描いた秀作です。
白人と黒人の貧富の格差から、現在では黒人の中での格差が問題になっているという社会背景を浮き彫りにしています。ストーリーは貧困と虐待によって家を飛び出した少年がギャングとなって盗みを繰り返す日常を描き、ふとしたことで赤ん坊を誘拐してしまうことで徐々に人間性を回復してゆく様をシンプルに描いています。これから、誰が望んでいるのか知りませんが、格差社会に突入していく日本にとって、人事でない社会が描かれています。
私の取りこし苦労なら良いのですが・・・。そんな心ぴく映画です。
「スパイダーマン3」
やはり面白い。話が詰め込みすぎの感じはあるものの、青春人間ドラマの基本を外していないので、他の単なるスーパーヒーロー物とは一線を隔す出来栄えは健在です。
大人も共感を覚える人間的苦悩も、いい具合にスパイスとして散りばめてある所が憎いくらいです。これはホラーから奥深い人間ドラマの傑作までものにするサム・ライミ監督の力であることは紛れもなく、4・5と期待せざるを得ません。できれば違う分野の(日本で言うなら単館系)作品も見たいのですが、4をやるならそんな暇などないかの知れませんね。とにかく見て損はないアクション青春映画の傑作です。
「スモーキンエース 暗殺者がいっぱい」
コメディー色が強いアクション映画だと思ったら意外とミステリー感覚の謎解きも用意されている、てんこ盛りの1時間半でした。分かり難さはありますが、リアルな銃撃戦が素晴らしく、久しぶりでアクションを堪能しました。証人を守るFBIとマフィアが雇った殺し屋達の死闘。全ての登場人物の個性が描き出されていて、誰が生き残るか分からない展開に興奮させられました。特にレイ・リオッタ扮するFBIと女殺し屋がなかなか良かったです。それとクレイジーな空手少年も・・・。
アクションシーンだけ見ても満足できる映画です。心ぴく決定です。
「歌謡曲だよ人生は」
60年代から70年代の歌謡曲をモチーフにした10数本の短編を集めたオムニバス映画です。
いい出来と悪い出来の差が激しく、<愛しのマックス><ラブユー東京><懺悔の値打ちもない」><逢いたくて><みんな夢の中>が心ぴく映画になっていました。
<愛しのマックス>は漫画家の蛭子さん監督作で全然期待をしてなかったのですが、漫画の世界と異様にマッチして怪作に仕上がっていました。面白かったです。
<ラブユー東京>も同様に怪作で、陳腐なカラオケ映像のような作りが逆に曲の歌詞を盛り上げ、爆笑物の作品に仕上がっていました。
<懺悔の値打ちもない>は昔のATG映画や日活ロマンポルノの雰囲気で、正攻法で描かれた演出が非常に心地よく、昔のその系統の作品を見直したくなりました。セリフが一つもない中で主人公を演じる余貴美子が素晴らしく、傑作<ヌードの夜>を思い出しました。
こんな日本映画をもう一度見たいと思わせる短編の傑作です。
<逢いたくて>
ストーリーは普通ですが、やはり園マリの唄が素晴らしく、主人公が走る場面で何故か感動してしまいました。名曲がなせる業です。
<みんな夢の中>
これも唄が映像に勝っていました。同窓会で古い小学校に集まるという、よくあるエピソーをこれだけノスタルジックに心ぴくな感じにしたのは、まぎれもなくこの唄の力です。
というわけで、あくまで私好みの心ぴく映画です。
「パッチギ!LO」E&PEACE」
井筒監督入魂の力作です。<パッチギ1>よりエンターティメント性は確実に落ちていますが、その分監督の言いたい事がはっきりと出ていて感動しました。戦争に美談も英雄もない、みんな被害者だという主張に大いに共感させられます。ただ言いたい事が先走り、舌足らずの演出が、ある人には誤解を与えるかもしれませんが、色々な意見を聞いたり見たりして判断するのは観客の自由であり、見識を広げて真実を判断するいい材料になっていると思います。近頃こういう腹の据わった日本映画が少なくなってきました。
異常なほどです。ここに描かれていることを学校で教えていないせいで、嘘を描いていると思っている人もいるそうですが、ここで描かれているものは紛れもない事実です。
国と国が戦争になる最大の原因は、人間同士と同じくコミュニケーション不全から起こるといわれています。つまり外交不全です。歴史の共通認識を持つのが戦争回避の最高の手段だと言ってもいいでしょう。冷静に歴史を見つめることが出来ない人間が半数を超えたときにこの国は確実に不幸になると思います。逆に冷静に歴史を見つめる目を持ったときに初めて、わが国の意見に他国が耳を傾けるのです。他国の間違った政治状況も非難できるのです。そういう開かれた国になる第一歩として、不愉快に感じる観客もいると思いますが、見てください。自分の頭で考える一歩になると思います。感情に流されずに真実を直視する勇気。そうしたものも与えてくれる映画です。井筒監督がんばれ。傑作心ぴく映画です。
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