第83回アカデミー外国語賞ノミネート作品。
前々から評判が非常に高く、気にはなっていたものの、
見るからにヘビーそうな概要に、すっかり尻込みしていたが、
先日WOWOWで放映される際に、予告(番宣か)を目にしてから
よし、観よう!! と、自分の中で決心して挑んだ映画。
この意気込みというか、自問自答して出したモチベーションがあったからこそ、
乗り切れたといえる。
オープニングの、レディオヘッドのあやうく不穏とどこか安らぎを感じさせる音楽が流れる中、
どこかに収容された少年たち。1人の少年が髪を刈られながら、憎しみとも悲しみとも取れる
何かを見透かした、それでいて、射抜く目がカメラは捉える。いやドキュメンタリーなら
カメラが離れられないといった画である。
このオープニングから、ただならるこの映画の予兆を感じ取ることができ、
こちらも、本腰を入れ直す。
そして現在(いま)。
2人の女と男が部屋にいる。 彼らは双子だ。
自分たちに心を全て開かなかった母が死んだ。 そしていま、遺言引受人からそれぞれに宛てた
母からの遺言を受け取る。
娘には“父を探して、この手紙を”
息子には“弟を探して、この手紙を”
正直彼ら2人には、さっぱりだ。
母のことはもちろん愛しているが、そこまで分かり合えていたとは思えない。
それなのに、父のこと? 兄がいる??
しかし母の遺言は、埋葬の仕方まであまりにも痛烈で
双子たちは、母の故郷パレスチナへと向かう。
物語は、母のルーツを探るミステリーだ。
異国の地で少しずつ母に近づく2人。とフラッシュバックでわたしたちは
母=ナワルに迫る。
それは、あまりにも過酷な女として、母としての半生である。
もう、まさに「灼熱の魂」である。
かなりヘビーな内容だが、遺言から母を辿る。という点が
エンターテインメントに仕上がっている。
とにかく、全てが完璧な作品。
ここ観た3年間くらいの映画の中で、一番かもしれない。
とにかくおすすめ!! とは大声で言えないのですが(ヘビーなので)
ひとつ言えるのは、このエンディングを最大の悲劇ととるか、
愛の赦しととるかで、大きく意見は分かれると思う。
双子とともに、わたしが真実を知った瞬間、
頭の中で、呆然となりながら、今まで巡ってきた映像がフラッシュバックされ、
オープニングへと辿りつき、自分の胸の奥底が熱くなっているだろう。
そう、灼熱の魂を感じて。
ラストの手紙が全てであり、母として最大のメッセージを子供たちに与えることができた。
これはもちろんフィクションだ。
でも、わたしたち日本人には到底想像することが出来ない
苦痛と暴力が、今もなお、他国で行われているのだ。
そこには、選ぶことの出来ない宗教があり、逃れることが出来ない争いがある。
赦すことは、愛なのだ。
これは、大林宣彦監督に取材させていただいた時に、おっしゃってた言葉だ。
それがないと、戦争は世の中から終わらない。 大きな戦争も小さな戦争も。
この映画を観て思った。