“人間が社会で生きていく上では、皆誰かの“パシリ”をやるしかないんです。“パシリ”というとマイナスイメージが強いですが、仕事だってそうでしょう。顧客だけでなく、会社のオーナーや上司、時には部下のために“パシる”。それが仕事の本質だと思います。
子どもを医師や弁護士など、なるべく高いキャリアの仕事に就かせようとして、幼少期からせっせと塾に通わせるお母さんが未だに多いじゃないですか。本人が自発的にやっているならともかく、親が強要している状況では子どもを「親の言うことを聞く“パシリ”」として育てているだけなんですよね。それでは、「社会で通用する“パシリ”」にはなれない。
「この子はいい学校に行かせて、いい会社に行かせれば…」と育てても、大きい会社であるほど課せられる仕事が高度になります。単にいい学校行って、資格を取ればいいという道しか通ってない人間では、いずれ無理が生じてきます。そういう人は、会社を辞める時の理由を「人間関係」のせいにしますが、根本的な原因は「親子関係」にあるのではないかと思います。
問題のある家族をたくさん見てきて、ある時から「この親子関係はパシリだな」と思うようになりました。心の病になり、問題行動を起こしているのは、たしかに子どものほうですが、過去の生育歴を紐解いてみると「大変だったなぁ…親からこの学校に行け行け!って言われて」と同情することが、本当に多いんです。子どもとしては親の言う通りにしたのに、全然思い通りにいかない…そこで心のバランスを崩し、怒りの矛先が親に向かうんですよ。その結果、今度は子どもが親をパシらせるわけです。
今はスマホがあるから、部屋にひきこもった状態でメールで事細かに指図をしたり、「あれを買ってこい、これを買ってこい」と命令したりする。親を追い出して自宅篭城しているようなケースもあります。このような家庭では、親が子どもを自分たちの“パシリ”としてしか育てていない。「いい学校・いい会社に入れ!」と強要することもそうですが、「あれをしろ、これをしろ」「あれをするな、これをするな」と抑圧して育てることもそうです。子ども相手に、夫婦の不満をぶつけることもそうですね。
このような育てられ方をすれば、子どもの自尊心は育まれません。自信がなかったり、逆にプライドだけは高かったり…。社会に出たときには、周囲からの要請も多岐にわたりますから、パシリとしての役割も果たせないわけです。結局、家に戻って親を支配するしかなくなる。親をパシリにするんです。そこで経済的な破綻が訪れると、今は簡単に親子間での殺し合いが始まります。
子どもの能力や向き不向きを見極めずに、親の希望で「大きい役割をするパシリ」を育てようとすること自体が間違っていると思います。仕事にいい・悪いはないはずなのに、みんなすごい学校に行かせて、すごい企業に行かせようとする。そのレベルから本人が脱落してひきこもると、親が「もう肉体労働でも何でもいいんで仕事してくれれば」って言うんです。でも、今までそれが出来るような育て方してないわけでしょ?肉体労働者になるんだったら、肉体労働者としてのパシリの育て方がありますから。
あまりにも体裁や世間体など、外見上の「いい所」でのパシリにさせたがる親が多すぎます。それはバブル時代から変わってませんね。本来は、その子のレベルを見て「大人になってどのレベルのパシリで行けそうか」という見極めが必要です。どのレベルなのか?というのは、本人の能力はもちろん、向き不向き、本人の背丈であったり、体の強さであったり…それを鑑みた上での教育ができてないんですよね。
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