神田須田町の鉄道模型店・カワイモデルが先月閉店しました。
創業以来90年以上というメーカーそして小売店として知られ、近年は細密化著しい鉄道模型の世界にあって、愚直なまでに昔ながらの模型製品作りにこだわっていた印象があります。
実のところ、Nゲージ主体の私にとっては、カワイモデルはそれ程お馴染みのお店ではありませんでした。とはいえ、東京に長く住んでこの趣味をやっていれば、まったく縁がないということもありませんでした。
最近では少々低調になってますが、私は16番も少しは手掛けたことがあります。専ら1輛で完結するトロリーモデルが主体でした。そんな小生にとって悔やまれるのは、カワイモデルの「路面電車」をとうとう買わなかったことです。
カワイの「路面電車」、いわゆる鋼製4輪単車でした。日本の鉄道模型化委では、路面電車の完成品といえば長らくこの製品しかない時代が続きました。正に「ワン・アンド・オンリー」だったのです。
もちろん現在の細密化された車輛と並べてしまうと、少々オーバースケール気味ですし、デティールも見劣りがしますが、長らく孤塁を守ってきたというこの製品に敬意を表して、そのうちに買わなくてはとずっと考えてはいたのです。しかし当鉄道の予算にも限りがあります。カワイの路面電車はどうしても優先順位が低いまま、とうとうメーカーの消滅と相成ってしまいました。
もしもどこかでこの製品(特に後年「都電仕様」も出ています)を見かけたら、方向幕には(カワイモデルのあった)「須田町」(ちなみにかつての須田町は都電の全系統の4分の1が集まる要衝でした)を入れて、今はなきカワイモデルを偲びたいと考えています。
路面電車の完成品を買い逃した小生ですが、カワイモデルのパーツなら手元にあります。いずれもトロリー用の「ビューゲル」と「トロリーポール」です。
ビューゲル
トロリーポール
いずれも見てくれはゴツいですが、動作は確実そして頑丈で、「堅牢」の2文字がよく似あう好製品です。また、安定供給され入手しやすかったのも魅力でした。私もキット組立品などに使用したことがあります。私の腕を反映したゴツい出来の模型には、かえってこのパーツの方がお似合いだったりします。
カワイモデルのあった須田町界隈、万惣フルーツパーラー(ここのフルーツオムレツを食べ逃したのも我が後悔事の一つ)もなくなって久しいですし、須田町ストアの名残をとどめていた地下鉄神田駅も様変わりしてしまい、そしてとうとう「模型のカワイ」の看板もなくなり、なんだか寂しい限りです。万世橋の対岸、秋葉原地区が鉄道模型店のメッカと化しつつあるのとは対照的です。