サントリーの新浪社長が「45歳定年制」を訴えて、案の定、炎上した。

 

もっとも、企業のお偉方は本音ベースでは、定年を引き下げたいと思っているのはいうまでもない。

 

それはさておき、この手の話が出るたびに気になっていたのだが、企業経営者は定年制を根本的に勘違いしている。

 

経営者は、定年制を「60歳まで雇わなくてはならない、企業にとっての足かせ、不利な制度」と考えているが、実際は逆だ。

 

むしろ、企業保護のための優遇策だ。

 

現在の労働法制では、「年齢を理由とした解雇」は認められていない。

 

本来ならばダメなのに、特例として「60歳で強制解雇」が認められている。

 

法律から「定年制」の項目を撤廃したら、むしろ逆。企業は社員が死ぬまで雇い続けなくてはならないことになる。これほんと。

 

加齢で身体機能が衰え、明らかに業務に支障をきたしている、などの理由があればクビにできなくもないが、それだって「年齢を理由にした解雇」ではなく、「業務が遂行できないからクビ」という理屈になる。

 

そもそも、この手の働き方改革論者がお手本とする米国の場合、定年制は「禁止」されている。

 

米国は実力主義。だからこそ、実力とは関係のない理由で(建前上は)クビにはできない。

 

肌の色や性別でクビにできないのと同じロジックなのだ。

 

ついでに言うと、そもそもなんで日本に定年制が導入されたかというと、企業の人件費を抑えるためだ。これほんと。

 

戦前の日本は今と違って、アメリカみたいに転職上等、バッチこい!みたいな社会だった。

 

とくに1930年代、戦争が激しくなってくると若い男が徴兵され、人手不足はどんどん深刻になってくる。超売り手市場だ。

 

人件費はうなぎのぼり。それでも人が取れない。

 

というわけで、転職を防ぐために定年制+終身雇用が導入された。

 

ついでに新卒一括採用も、新入社員を有利に採用するため、企業の理屈で採用されたものだ。

 

まあ、新浪社長が「役立たず社員は45歳でクビにしたい」と思うのであれば、給与体系を「年齢給は極小、功績・業績給がほとんど」という仕組みにすればいいだけの話だ。

 

ただ、それをやると、当然ながら、優秀な若手社員の給料が跳ね上がってしまう。全体としての人件費は減らない。

 

だから新浪社長としては、日本中の企業が横並びで初任給は低くしつつ、年齢給が上がってきたらクビにできる制度にするよう、国に音頭を取ってほしいという、実に虫のいい要求をしているというわけだ。

 

と、いうことを考えたのも、官僚独特の早期定年制度(しかも再就職のあっせんなし・・・最近は本当に、そうなのよ!)の結果、某ゴミ氏が晩節を汚しまくっているからなのですよ。

 

でもまあ、45歳定年制を本当に導入したら、出生率はがた落ちするんじゃないだろうか。それどころか、みんな貯金に全振りするだろうから、消費は最低ラインに落ち込むだろう。